ガンヴォルト 現地オリ主原作開始前スタート   作:琉土

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第九話 蒼き雷霆(アームドブルー)との会話、交渉戦(ネゴシエイション)

 

 

 

 

「それじゃあガンヴォルト、そろそろ本題に入ろうと思う」

 

 私のこの言葉によって先ほどまでの柔らかな雰囲気が四散し、緊張感溢れるソレに変貌する。

 

 その本題とは、シアンの事だ。

 

 

「単刀直入に言いますが、私はシアンを連れ戻しにここまで来ました。それは私達皇神グループで計画されている歌姫(ディーヴァ)プロジェクトに必要な人材である為です」

 

「歌姫プロジェクト…」

 

「はい。この計画は簡単に言えばこの国の範囲内で従来のソナー機能だけでなく、能力者の能力の発動を阻害する物です。勿論無差別では無く、対象も選べます」

 

「……っ! それは!」

 

 

 これだけ聞けば能力者ならばそんな反応をするのは普通だ。

 

 シアン達にはこの計画については攫われる前に話を済ませており、少なくとも反対はしなかった。

 

 まあ、元は能力者を洗脳による戦力化だった時と比べればかなり穏健な対応だと思う。

 

 

「……これは私達の国内の治安と能力者を守る為に必要な計画なんです」

 

「それでは……それではシアンの自由はどうなるんですか! シアンは漸く学校に通い始め、友達も出来ているんです!」

 

 

 ガンヴォルトとの雑談の際、良く出てきた言葉が自由と言う物だった。

 

 彼はその言葉に並々ならぬ拘りがある様で、何でも育ての親であり、フェザーの頭目であるアシモフから影響を受けているらしい。

 

 シアンを連れ去った理由も、殺して欲しいと懇願した彼女を助け出し、自由にする為であり、ある意味共感を持てる部分もあるのだ。

 

 そう、シアンがまだ攫われて無かった頃、彼女を取り巻く環境は余り宜しいものでは無かった。

 

 その理由は簡単な事で、その当時は能力者を人として扱わない研究者の排除が完全に出来なかったからだ。

 

 なまじそう言った頭のネジが何処かぶっ飛んでいる研究者は非情に優秀であり、その上歌姫プロジェクトにおいては必須だったのもやりきれない事実である上に、歌姫プロジェクトに必要なデータだけでは飽き足らず、本人の意思など無視する様に関係無い研究をしていた事が発覚した時には怒りを通り越して呆れてしまった。

 

 そうした事もあり、私はシアンを少しでも癒す為にデイトナや紫電を連れて空いた時間にちょくちょく会いに来ていたし、「外の世界で歌を歌いたい」を言う約束も交わしていたのだ。

 

 だけど、そうした私達の奮闘を以てしても、彼女を初対面のガンヴォルトに「殺してください」等と言わせてしまう程に追い詰めてしまったのだけれど……。

 

 そういう訳で今はもうそう言った研究者は()()()()()()退()()()()だ。

 

 その方法は……私の能力を用いたとだけ言っておく。

 

 本当はやりたくは無かったけど、彼らの知識その物を無駄にするのも惜しいし、殺すのはもっとマズイ。

 

 よって、真っ当な研究()()をする様に()()()()したのだ。

 

 だけど、この方法を取れたのはガンヴォルトがシアンを攫った事を引き金に、彼女が居なくなった事で、彼女の能力を研究していた彼らが溢した台詞が切欠であった。

 

 そう言う意味では、ガンヴォルトに感謝しなければならない。

 

 

「それについてはシアンが居ない間に色々と済ませました。例えば歌姫プロジェクトで使われる機械があるんですけど、一度シアンと接続してデータを取り終えれば週に一度通ってもらう程度に抑えられますので、これまで通り同じ学校に行く事に支障はありませんし……」

 

「…………」

 

「彼女達の事を私達の目から隠れて玩具にしていた研究者達にも、()()()()させてもらいました。彼女を好き勝手に、()()に弄んだ報いを受けて貰いました」

 

『フェムト……』

 

「申し訳ありません、シアン、モルフォ。私達の目が節穴だったばかりに、貴女達には不便をかけました。ですからもう、私達の所に戻っても大丈夫……という訳にもいかないのです」

 

「……? フェムト、それは一体どう言う事だ?」

 

「皇神にはフェザー以外にも敵が色々と存在しています。例えば東の海を越えた大国であったり、()()()()()()()()を名乗る過激派組織だったりね。その中の誰なのかは知らないけど、最近スパイが居るだなんて話が出ているんです。そして、そのスパイがシアン達を狙っている何て噂も」

 

 

 実際、この話は本当の事である。

 

 私が皇神グループで情報処理を担当している関係で、外部からの不正アクセスは勿論なのだが、皇神内でも繋がっていない筈の場所から電子の謡精に関する情報の不正アクセスがあるのだ。

 

 その場所を辿ってみれば能力者狩り(ハンター)部隊を管理している情報端末であった事から、()()()()が候補に挙がっている。

 

 その人物の名前は【パンテーラ】。

 

 デイトナの後に私の知らない間に皇神の能力者として登録されていた、性別すら自在に変更する虚像を操る能力【夢幻鏡(ミラー)】の能力者だ。

 

 他にもこの部隊には第七波動も含めたあらゆるものを引き付ける特殊な磁力を操る【磁界拳(マグネティックアーツ)】の能力を用いる【カレラ】も居るけど、彼は所謂戦闘狂(バトルジャンキー)である為、候補からは外れる。

 

 夢幻鏡はデータを見せて貰った際、紫電の念動力(サイコキネシス)やガンヴォルトの蒼き雷霆(アームドブルー)と比べても本当に恐ろしいと思った能力の一つ。

 

 基本、幻に関わる事なら何でもできてしまうのだ。

 

 だからこそ、幻によって私を含めた他の人達の認識が弄られているのをリトルからの指摘で気が付いた時には肝を冷やした。

 

 ただ、この事からパンテーラはまだ第七波動の秘密には気が付いていない事の裏付けを取れたのが不幸中の幸いと言うべきだろう。

 

 何故ならば、対象であったのが私も含めた人間だけだったのに対して、第七波動達には何ともなかったからである。

 

 つまり、第七波動達を生物であると認識していなかった為、対象外だったのだろう。

 

 ……さあ、ここからが正念場だ。

 

 ガンヴォルト相手では純粋な戦いの場では勝ち目は無い。

 

 だからこうして()()()()()()()()()()()に持ち込む事で、地の利を得る。

 

 最低限の勝利条件は、ガンヴォルトの説得。

 

 この序にフェザーも芋づる式に取り込めれば万々歳だ。

 

 国内の脅威を取り除くだけでは無く、戦力の拡充も出来るのだから。

 

 ……これまでの彼は明らかにシアンの事を守ろうとしている。

 

 叶うならば彼女にはこれまで通りの生活を贈って欲しいとも、自由であって欲しいとも思っている。

 

 そして、彼は形だけではあるけど、形式的にはフリーの傭兵なのだ。

 

 だからこそ、この方法を取る。

 

 

「そこでなのですが、ガンヴォルト。()()をしたいのです。そう、フリーの傭兵としての貴方に対して」

 

「依頼……ですか?」

 

「ええ、その内容は()()()()()()。彼女が日常生活を贈れるように、陰で支えてあげて欲しいのです」

 

「フェムトさん! それって……!」

 

『これまで通りって事なの?』

 

「大雑把に説明すると、これまでの学校生活に加えて週に一度先の説明に合った機械と接続してもらう形になります。そしてこれも最終的にシアンに依存しない形でシステムを維持出来る様にするつもりでもあります。そうすれば本当の意味でシアンも自由になります」

 

「…………」

 

「ですが、それでもシアンが狙われていると言うのもまた事実。私達もリソースをそちらに回したいのですが現状では色々とカツカツな為、それもままなりません。それに赤の他人に護衛されたり監視されたりするのはプライベート面では大問題でしょう? どうせなら共同生活を贈っている彼に護衛と監視を依頼した方が効率的だし、そして何よりも、嫌では無い筈です」

 

「フェムト……キミは……」

 

「急にこんな事を依頼されるのは貴方の都合も考えれば困る筈です。ですので、貴方の仲間ともしっかり相談するといいでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()様ですし」

 

「……っ! 何時からそれを」

 

「最初からですよ。私だって電流を操る能力者です。この位探知できなければ名折れもいい所ですので。それに、こう言った事に対する臨機応変な対応もするだろうと予想してましたし、私も同じ事をしていますのでお互い様です」

 

 

 そう言いつつ、私は飲み物であるオレンジジュースを飲み干し、一息付く。

 

 その後、席を立ちつつガンヴォルトに話の終わりを伝え、玄関に向かおうとする。

 

 

「キミは…」

 

「ん?」

 

「キミは何故、僕にここまでしようとしてくれるんだ?」

 

「それは、私の罪滅ぼしです」

 

「罪滅ぼし?」

 

「ええ、ガンヴォルト。貴方は覚えていないのかもしれませんが……私は、一度貴方に会っています。貴方を苦しめていた研究所で、同じ被検体として」

 

「なっ……!」

 

「その時の私は失敗作扱いされて、とある研究者を追い出す為のダシに使われて、一緒に別の研究をお願いされる形で追い出されました。その内容は、蒼き雷霆の可能性を模索すると言う物でした。そこでの私の生活は、今の私を形成するとても大事で、掛け替えの無い時でした。私を担当する研究者にも恵まれ、ぬくぬくと笑顔で過ごしていたんです。……貴方が苦しんでいたであろう時に」

 

「…………」

 

「ですが、転機が訪れてあの研究所はフェザーに襲撃され、貴方はその時に保護され、今に至ったのでしょう。そして私も、この事が切欠で皇神の能力者部隊に所属する事になりました」

 

『……そうだったのね』

 

「ええ。……私と同じ研究で生まれた同胞であり、成功例であったガンヴォルト……。貴方の事が心配でした。拾われた先で元気にしているかってね。だからこそ、もし貴方と再会したら手を差し伸べようって決めていたんです。私の事を助けてくれた大切な研究者の彼と同じように」

 

「……ボクは」

 

「ですが、このお節介を押し付けるつもりもありません。何故ならばガンヴォルト、貴方は今()()だからです。自由だからこそ、縛るような真似もしたくありませんし、選択する際の責任の重さも把握していると思っているからです。……どのような結果であれ、私は貴方達の選択を尊重します。ですが、これはあくまで私個人の話。私以外の皇神に所属する能力者達はその場限りではありません」

 

「…………」

 

「ですので、フェザーの仲間やシアン達と相談しつつ、自分達で決めて下さい。自由とは、そう言う物でしょう?」

 

「……分かったよ、フェムト」

 

「……うん。ありがとう、フェムト」

 

「私個人が最大限に通せる筋はここまでです。では、良い返事を期待しています。詳細も、依頼を引き受けてくれた場合はその後にきっちりと契約内容を詰めましょう。そして、出来れば共に歩む仲間として、歌姫プロジェクトの先に有る灯台に照らされた光の先を、共に歩める事を切に願います」

 

 

 そうして私はガンヴォルトに対して頭を下げつつ、この場を去ろうとした。

 

 それをガンヴォルトが待ったをかける様に私を呼んだ。

 

 

「フェムト」

 

「? はい」

 

「今更かもしれないけど、ボクの事はGVと呼んで欲しい。ガンヴォルトだと長いって仲間から良く言われているんでね」

 

「……ふふ。分かりました。ではGV、シアン、モルフォ。また会いましょう」

 

 

 愛称を呼ぶ事を許された私は、きっと良い返事を貰える事を半ば確信した。

 

 まあ、流石に取らぬ狸の皮算用をするつもりは無いけれど。

 

 僕達の会話を通信機越しに聞いていた紫電達も、ホッと胸を撫でおろしている事だろう。

 

 何しろ私は戦闘経験が無い故に甘ちゃんな所があると皆からも言われていますし、私自身も自覚していますので。

 

 ……約一名激しく落ち込んでいる気配も感じてしまったけれど。

 

 シアンは兎も角、GVはまだ自覚していないみたいだしね。

 

 チャンスはまだまだあるから、そんな風に落ち込む必要は無いと私はデイトナを通信機経由で慰めながら、この場を去った。

 

 そして後日、GVから依頼を受けると言う返答を、私は貰う事となるのであった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。












サイドストーリー





《灯台に照らされた光の先ねぇ……正直どう思うよ? モニカ》

《現段階で分かる訳無いでしょう? ジーノ》

《フェムトの言う灯台の光(サーチライト)……それが何を意味するのかは本人に聞かねば分かるまい》

「じゃあ、皆はボクが依頼に乗るのは賛成すると?」

《オレ個人としては賛成してぇなぁ。シアンちゃんの待遇もあまり変わらないんだろ? 上手くすれば皇神の内情も把握出来るしよ》

《私は余り賛成出来ないわ。その話が本当なのかもまだ分からないし、GVを誘う罠だって考えられるもの》

《もしそうなら、オレだったらGVの隠れ家をぶっ壊してシアンちゃんを攫う事を優先するぜ? それをやらなかった上に、しっかり戦力も伝えてるんだ。敵対者相手に示す誠意としては明らかに上等の分類だぜ? 普通、力のある企業や国はオレ達の様な組織相手に話し合いなんてするのは下策だって考えるみたいだしよ》

《確かに、その辺りはジーノの言う通りね……。それでGV、肝心のシアンちゃんはどう思っているの?》

「……しばらく時間が欲しいって言っていましたけど、多分皇神に戻るのに賛成すると思います。フェムトは雑談の中でシアンとの約束を果たそうとしていた事も話してくれました。そして、彼女を取り巻く環境も改善出来ている事も」

《……それだけの待遇も含めて考えれば、貴方も一緒なら賛成するでしょうね》

《それでGV。お前はどうする? 皇神の依頼を受けるか、それとも断るか》

「……正直、ボクもまだ色々と整理が出来ていません。ですが、フェムトは信用できるとボクは感じました」

《そうか、ならばお前の思う様に行動するといい》


 そうしてアシモフ達との会話を終え、通信機を切ろうとしたその瞬間、ボクの装備であるダートリーダー等の整備を担当してくれている人の声が響き渡った。

 その声の主は確かアシモフの知り合いで、何処かの機関に所属していた()()()だった人の物だ。

 細身で黒髪の、どこか大雑把でアシモフ相手でもぶっきらぼうで遠慮の知らない口調で話す胆力を持ち、()()()()()になっている高い技術力を持った人物。

 その人はボクが物心ついた頃は昏睡状態であったけれど、初めてフェムトに出会ったその日に目を覚まし、この半年であっという間にフェザーに馴染んで今の立ち位置に立ってしまった。

 アシモフもそんな彼に対しては余り頭が上がらないらしい。

 曰く、()()()()なのだとか。


《おいGV! お前今フェムトって言っただろう! 詳細を聞かせろ! 今すぐにだ!!》


 こんな風にボクに対して怒鳴り声を上げているけれど、この人は今でもボクがミッションに向かう事に対して気に入らないと思っている人だ。

 だけど、ボクがミッションに帰った後は必ず差し入れとして果物が用意してあったり、蒼き雷霆にも詳しいらしく、ボクに対してアシモフとは別視点でより効率的で専門的な生体電流の操作を教えてくれた人物でもあった。

 そんなぶっきらぼうで、何処かお節介で優しい所もあるその人の名前は――




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