月夜の噛ませ犬 作:ひいなのまつり
親友? あのオオカミとフェレットが?
流石にそれは……まあ、友人というくらいの仲ではあるんじゃ無いか?
別に、照れ隠しとかそう言った意味は無いさ。
あのイタチもどきの方は良いとして、男はオオカミを体現したような顔だけいい男は、とっとと特定の相手と結婚するべきだな。
エイミィに会う度に歯の浮くような事を言い出すし、エイミィも笑って流すだけで強くは拒絶しない。
アイツ分かってるのか? エイミィは僕の妻だぞ。
今の彼女の姓はハラオウンだからな。
あのナンパオオカミには、ユーノも言いたいことを言うべきだ。
ユーノの横にいても、なのはを食事に誘おうとするとか、僕がその立場ならその時点で殴ってる。
とはいえ、あの時はまだなのはと付き合ってもいなかったか。
だとしてもだ、後からなのはが「焼餅を焼くユーノくんが焚き付けられて無かったら、まだ独り身だったかな」とか言っててもだ。
結果オーライとは言え、あの男はユーノの為で無く自分の為に動いていたし、なのはに隙があったら持って行かれてなかったとは言えん。
あの男は彼氏や夫よりも、自分の方が優れた雄と言って憚らないからな。
僕達がアイツにイライラしてると、エイミィやなのはが嬉しそうだとか、そういうのはいい。
彼女たちに危機感を持って欲しいという点では、ユーノと意見が一致している。
というか、モテるんだから女には困ってない筈なんだがな。
早く結婚してしまえばいい。
そうだな、うちの妹とか良いんじゃ無いかと思う。
フェイトも満更でも無さそうだし。
あの男と最初にあったのは、ジュエルシード事件だった。
ジュエルシードの暴走を了承した上で取り組んだ彼の兄――――正確には血縁は無い、その兄が世界を壊す魔王への階段を進んだ時。
夜の一族という、現地の少数民族のオーバーテクノロジーには驚いた。
そして、彼に施された明らかに管理局の知る魔法体系の痕跡にも。
後になって、夜の一族由来と思われる技術が、管理世界でも極秘で利用されていたことにも。
彼の特性は、あまりにも魔導師に対して致命的すぎる。
否、管理世界にとって危険すぎる。
もし、彼が彼の兄と同じ道を行くとすれば、止めることは非常に困難になるだろう。
だから、管理局としても首輪を付けるべきだと思うんだ。
そうだな、エリート捜査官を妻にするなんて如何だろうか?
我ながら悪くない案だと思うんだがな。
親戚になると思うとゾッとするが。流石に自分の妻の横で義理の姉を口説くなんて事は……恐らく無い…と信じたい。
一応、アイツのおかげで自分の気持ちに気がつけた事もあるし、曖昧なままの関係と距離が何時までも続くわけじゃ無いことも教えられた。
だからこそ、あの男にも教えてやりたいという意趣返しも無くはない。
それに、エイミィが絡まなければ、そこまで嫌いな奴でも無いからな。
予約困難な美味い店のペアチケットくれたりするし、闇の書事件では世話にもなった。
とにかくエイミィにさえ絡んでこなければ、オコジョもどきと同じくらいの扱いはしてやっても良いんだ。
それに、もし既にフェイトにも手を出しているなら、無理矢理にでも結婚させてやる。
ハーレムとかふざけた事は許さん。
嫉妬とかそういうのじゃ無くて、正義としてだ。
そういえば、あのオコジョもどきは結婚すれば勝利だと思ってるかも知れないが、あの男は割としつこいぞ。
それとあの男が、やたら僕に月村すずかの事を話しかけてきたのはどうしてだったのか、今でも分からない。
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僕は彼のことは苦手だな。
なのはを口説きに来るし、なのはを口説きに来るし、なのはを口説きに来るし。
彼のせいで、否が応でもうかうかなんて出来なくなった。
なのはとは同棲にまで持ち込んだし、こっそり指輪だって買ってある。
なのはの誕生日でナンバーロックした鍵をかけて、こっそり金庫に入れてある。
彼は苦手だ。
間違っても友人だなんて言いたくはない。
想像しただけでゾットするね。
「いつまでも、なのはちゃんが君の側にいると思うか?」
そんなことを言ってくるとか、本当に苦手な人だ。
というか、一番の危険要因は君だろうにと、珍しく言い返したら、彼は男性に話しかけられているなのはを指さした。
聞き耳を立てると、どうでも良い内容だった。
なのはと話すこと自体が目的だったのだろう。
「僕と恋のレェェェースをしたいなら、引き立て役に位はしてやろう。まあ、今から初めても周回遅れだろうけどね」
なのはが魅力的なのは、僕が一番分かってる。
直ぐに追い越してやるさ。
気が付けばそう言っていた。
…恥ずかしかったな、あれは。
なのはに聞こえてなかったら良いけどね。
なのはの誕生日に花だって贈ったし、デートプランだって色々調べた。
そもそも管理局のデータベースを私用に使える僕が、情報戦で負けるはずも無い。
過労する程の仕事を押し付けられているんだ。
僕の代わりもいない以上、バレたとしても問題には出来やしない。
そもそも、その痕跡なんて残さない。
考古学は元より身体が資本ではあったけど、データベース編纂業務で鈍った身体も鍛え直した。
事あることに上半身を露出して、無駄に凄すぎる肉体美を披露する奴なんかには負けたくない。
今まで、出世になんて興味も無かったけど、何かとエリートを自称する彼に負けたくは無かったから考えを変えた。
肉体、肩書きだけじゃ無い。
なるべく自分の気持ちを正直に伝えるようにもした。
「何も言わなきゃ何も進まない。でもそれって負けなんだぜ? 他の走者に抜かれてしまうだろ?」
苦手な男に言われなくちゃ、そんなことさえ気がつけなかった。
居心地の良い関係が、何時までも続くと思っていた。
でも、競争相手がいるのなら、停滞は敗北で常に前へと進まないといけない。
そんなこと、知りたくも無かったのに、彼のせいで実践までさせられてる。
彼が学校で稼いできた距離の分は、管理局で本気で取り戻させて貰った。
本当に周回遅れが追いつくまで待つとかそんな殊勝な事なんてしないやつだったから。
少々、あの男を意識しすぎたとは思わなくも無いが、結果としてなのはの彼氏は僕だ。
僕の勝ちだ。
それは今だけかも知れないが、僕は常になのはへと全力で進み続ける。
だからこれからも、勝ち続ける。
管理局職員にだって、もうなのはに手を出そうとする男はいない。
「彼氏がいても関係ないからドライブに行こう」なんてふざけた事を言う管理外世界の彼以外は。
まあ、彼以外に競争相手がいるとは思わないけど。
結婚式には彼を呼んで
悔しがるに違いない。
それが僕の復讐だ。
そういえば、月村さんの良いところを教えてくれていたのは何だったんだろう。