目覚めたら全身柱間細胞になってた 作:卑の意志を継ぐ者
某月某日︰季節冬
冬木市大改造から2ヶ月が経過した。
あれからマッケンジー宅には時臣がチラリと土地の視察に来たくらいで他の魔術師たちや間桐家は確認にすら来ていなかった。
冬木市全土に同じようなものが大量に存在しているためそちらには向かっていたようである。
クウマの目論見通りとなったが、彼は冬木市全体の神秘性と霊地の格が上がったとは夢にも思わなかった。
気がついたのは写輪眼で星を眺めようと空を見上げた時に翡翠色の魔力が冬木のそこかしこから立ち上っているのが見えた時である。彼はビビって腰を抜かした。特にその魔力は人体に悪影響は無いようだし、回収するのもアレなので放置しておくことにした。
空間は多大な魔力が冬木市全体で発生しているのをいいことに忍術の研究及び修行を始めていた。
マナが溢れるこの土地でいくらか魔術――忍術使ってもバレないか、と考えてのことだった。実際それは正解である。
誰かと戦うつもりはさらさらないのだが、自分の身が戦いに巻き込まれないとは考え難い。
自衛の手段を得るのとそれを上回る忍術使ってみたい欲が彼のやる気を突き動かしていた。
まずは原作にあった干支がモチーフの12種類の印の形を脳内から捻り出し、思い出せる範囲で印を結んでみる。
忍術が発動しなかったら印をちょっとずつ調整してまた試す。発動したらその印の順番を書き込んでまた別の印を試していく。
こうしてトライアンドエラーを何度も繰り返して使える忍術を増やしていった。
真っ先に多重影分身を使えるように頑張ったおかげで原作登場の木遁や土遁のいくつかは使えるようになり、更にオリジナルの忍法を編み出すところまでたどり着くことができた。
ちなみに修行場所はマッケンジー宅の近くに土遁で掘った穴を木遁で崩れないように補強した即席訓練場だ。
そんな忍術開発に勤しんでいたある日のこと、ふとクウマの右手の甲に違和感を感じた。
Fate時空で手の甲に違和感と言えば一つしかない。一つしかないのだ。
クウマは意を決して違和感に視線を向ける。
赤い二つの円の中心には瞳孔のような丸が配置され、格円には三つ巴の文様が写輪眼のようにくっついている。
輪廻写輪眼の文様と言えば分かりやすいだろうか。
どう見ても令呪である。
令呪の配布条件はまず御三家の血統に配布された後聖杯のことを知っているか聖杯を求めている魔術師に対して配布されるはずだ。
彼の『死にたくない』という願いを『じゃあ生き残るためにサーヴァントを授けてあげよう』という形で大聖杯が解釈して受理したことが今回の真相である。
大聖杯がやらかすとはこの柱間細胞……黙ってませんね。
聖杯君は本末転倒という言葉を早急にインプットした方がよろしいだろう。
⚫
「おぉ、クウマ。ちょっとおいで」
「何ですかグレンさん」
マーサさんの最近の趣味である家庭菜園に付き合った後ストーブの前で暖を取っていた時だった。マーサさんは取れた野菜を水道でジャブジャブと洗っている。
育てているのが根菜や白菜とはいえこの厳冬でそれを可能にしているのは確実に地下に根づいた木遁のせいだろう。
「この間詠鳥庵で服を買うついでに骨董品も見ておってのう」
詠鳥庵は冬木市深山町の呉服屋だ。服の他にも陶磁器や瀬戸物を中心に骨董も扱っており、その評判も上々。
クウマも何度かマッケンジー夫妻の頼みや暇を持て余した散歩ついでに店を見ていた。
「いつもワシらの手伝いをしてくれてるお前さんにちょっとしたプレゼントをあげようか、とばあさんと話してこれを買ってきたんじゃ」
そう言って渡されたのは格調高い正方形のケースだった。
グレン促されるままに開けてみると四つの玉のようなものが入っていた。
それぞれの玉には四季をモチーフにした様々なデザインが抽象的に描かれており、クウマの素人目で見ても素晴らしい技巧が施されているのが分かる。
一つを手に取って眺めてみると何か仕掛けがあるようだったがそれを起動する手立ては見つからなかった。
「俺なんかにいいんですか?すごく高そうなんですけど」
申し訳なさそうにクウマが言うとグレンはいやいやと笑って彼の頭を撫でた。
「いいとも。君がやって来てからはばあさんやワシも何かと精力的になっていてな。ワシらからの感謝の気持ちとして、受け取って欲しい」
「……本当にありがとうございます。俺は幸せものですね」
⚫
同日午前二時、マッケンジー夫妻が寝静まったのを確認したクウマは胸をドキドキさせながら外に出た。
庭先にはこんこんと雪が降り積もりマーサさんからもらったブーツやコートがなければ霜焼けしてしまうような冷え込みだった。
クウマの知らないうちに木遁の根から樹が生えていたようだ。雪がくっつき樹氷のようになっているためパッと見では気が付きにくくなっていたが。
外に立てかけていたシャベルで雪を払い、木遁で角材を生み出して魔法陣を創っていく。
結局彼はサーヴァントを召喚することにした。そこそこ自衛手段も手に入れたことで楽観主義を加速させた彼は自分の内から湧き出る興味というものに抗うことができなかった。
だってロマンあるじゃん?とは彼の談である。
魔法陣は新都の不思議な喫茶店でファッション雑誌に紛れて置いてあった魔導書に描かれたものを使用している。もちろん魔導書を拝借したのではなく写輪眼を使って写本をさせてもらった。
魔法陣は大抵宝石やら魔力を通した水やら血液やらで作るが要は魔力と神秘が封入されているばよかろうなのだ。
作り終えた魔法陣に右手をかざし、左手にメモ用紙を携えた。やはりあの長い詠唱は途中で忘れそうになってしまうのだ。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
周囲に漂う翡翠色の魔力がゆっくりと陣を中心に渦巻き始める。
「
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
クウマの右手が妖しく輝き、そこから伸びた紅い魔力が陣の中心へと注がれていく。
――――告げる。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
生み出される魔力の流れに乗り雪が荒れるように振り回される。クウマは陣の中から何かに視られたような気がした。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
誤認の恐れがあるため空間→クウマに変更しました。
クウマ︰本SS主人公。スーパー楽観主義者。多分エルメロイ教室のフラットと同じ部類かと思われる。
新都の不思議な喫茶店︰TYPE-MOON系列の作品にしばしば登場する喫茶店『アーネンエルベ』のこと。
店長であるジョージは骨董品収集の趣味があり、自分が集めた魔導書は店内のマガジンラックにファッション雑誌などと一緒に立てかけている。
写輪眼︰前々回後書きで出したクウマの転生特典その③。現在の目はまだ二つ巴の状態。驚異的な動体視力と魔力視を可能にする。
柱間細胞(偽)のおかげであんまり酷使も怖くない。任意でON/OFFが可能なため魔眼の中では(開眼時に精神疾患を患うことを除いて)高性能な部類。ついでに素人でも可能なほど魔眼の移植がしやすい事で有名。魔眼蒐集列車は泣いていい。
視線が重なった対象に幻術をかけることが可能。魔力放出や対魔力、あるいは精神力でレジストができる。
このFate時空にも数は少ないが写輪眼は存在し、魔眼界隈では度々行使できる力が多いことで話題に上る。しかし万華鏡に至るまでの事例は確認されていないのでランクは黄金止まりである。
万が一万華鏡写輪眼が観測されれば数十、数百倍の値がついてもおかしくはない。
皆様はどんなサーヴァントが出てくるか当てられるでしょうか?(雑伏線張りマン)(情報少なすぎて多分無理)(次で出てくる)
それはともかく感想頂けると非常に励みになります。
物語があるところまで到達したら幕間なども投下する予定です。