目覚めたら全身柱間細胞になってた 作:卑の意志を継ぐ者
「コタツは良い文明」
「変な電波受信してませんか皇女様」
「……平常運転よ。それと、あまり近付かないでください」
「そのコタツ俺のなんだけどなぁ」
前中後略。
経緯は省くがクウマはキャスターのサーヴァント、アナスタシアを召喚した。
彼女は召喚して挨拶するなり「必要最低限しか関わらないつもりですので」と言ってすぐさま霊体化して消えてしまった。
そんな彼女をおびき寄せるためにクウマはグレンさんにいただいたけど結局使わずに押し入れにしまっておいたコタツを起動し、秘蔵のハーゲン〇ッツを置いて現場で十数分待機してやっと皇女様と面会する資格を得たのだが……。
「お願いします皇女様!ちょっとだけでもいいんで話を聞いていただけませんか?」
「嫌。正直今同じ部屋にいるだけでもかなり妥協しているのよ?」
「そこを何とか!俺にできることならできる範囲でするから!」
「そこは何でもしますから!じゃないのかしら。でもそこまで言うなら……そうね」
いたずらっ子のような微笑みを浮かべてアナスタシアは呟いた。
「そうね。あなた、ハラキリって知ってる?」
⚫
皆様、ご機嫌麗しゅう。
この度召喚されましたサーヴァントのアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァです。
此度のマスターに呼ばれた日はわたくしの故郷と同じような雪景色が広がる夜でした。
わたくしを、アナスタシアを呼び出すには良いセッティングです。雰囲気もそれなりだったと思います。
こういうのは運命の夜、と呼ぶのでしたか?
まぁそれは別にいいのです。問題はその後。
彼──クウマと言いましたか。パスを通してわたくしに流れてきた彼の思念はサーヴァントを呼び出す主としては似つかわしくない……いえ、絶対に相応しくないようなものでした。
何の理由も無く、ただ何かを召喚したいがために、わたくしを喚び出したのです!
不面目とでも言いましょうか。そのような理由で召喚されるのは少し、ほんの少しだけ許せなかったのです。
わたくしは他の英霊のような確固たる矜恃は持ち合わせていませんが、少なくともわたくしを必要とする人に喚ばれたかった。
わがままかもしれませんが、わたくしは真っ当な英霊ではありませんのでこれくらいは許されるべきでしょう?
ですので、姿を消しました。
わたくしが彼にしっかり応対する義理はありません。
そもそも聖杯に何かを願おうともしていない彼といくらコミュニケーションをとろうとしたところで無駄じゃありませんこと?
するとびっくりした彼は急いで窓から自分の部屋へと戻って行ってしまいました。
一瞬彼の手が樹に変貌したように見えたのは気のせいでしょう。今の時代は窓から家に帰るのですね。知りませんでした。
器用に靴を脱いで部屋に戻った彼はいそいそと何かしらの準備を始めました。
押し入れから机と掛け布団を取り出して何をするのかと思えば、天板を外してその間に布団を挟んで机の下からコンセント……でしたか。それをプラグに繋げました。
その後下階から容器に包まれた冷たい何かとスプーンを持ってきて、コタツの上に置きました。
何でしょうそれは。甘い匂いがしますね。
ノートにサラサラと何事かを書いてページを破り机に置いた後彼は部屋の隅っこに引っ込み正座しました。
紙を覗き見ると『アイスです。お気に召したらどうぞ』と書かれてありました。……少しは反省しているようですね。
彼の作戦にまんまと引っかかったようで少し気が乗りませんが……えぇ、それを分かって乗り込んでいるならわたくしの勝ちです。
わたくしは決して屈してなどいません。いいですね?
アイスに……コタツと言うのですね。良い文明です。
これを作った方には後で褒賞を……え、分からない?そうですか。それは残念です。
で、話を聞いて欲しいと?
何言ってるんですかマスター。わたくしとあなたで話すことなんて何もないでしょう?
できる範囲で何でも?ふぅん……。
「そうね。あなた、ハラキリって知ってる?」
わたくしのお父様──ニコライ二世はそれは結構な日本びいきのお人でした。
特にサムライやゲイシャとかの文化についてよく饒舌に語っていたのですけれど……そこで『ハラキリ』と呼ばれる責任の取り方を耳にしたのです。本人は絶対やりたくない、と言っていたのですけれどね。
確か自分の腹部を短刀で切って自殺する、でしたか。
「よく知ってる。……もしかしてやれと?」
「ええ。そのくらいしてもらわないと」
もちろんわたくしの目論見は「そ、それだけはご勘弁を皇女様!!俺、心を入れ替えますから!」と彼の口から言わせることです。
元々本気でやらせるなんて思ってません。それくらいすれば彼も心を入れ替えるでしょう。そう思っていた時期がわたくしにもありました。
「……分かった。少し待っててくれ」
────ちょっと待ってマスター?
え?分かった?分かったって言いましたかマスター?
まさか本気でやるんですか?お腹切っちゃうんですか?
いえ、やれと言ったのは確かにわたくしですけど……。
わたくしがあまりの衝撃に口をパクパクさせていると彼が戻ってきました。その手に鋭い小太刀を携えて。
「ちょ、ちょっと待ちなさいなマスター。本気?本気でハラキリするつもりなの?」
「するけど?」
ただ何の理由も無くわたくしを喚び出したマスターにしては覚悟が座りすぎてるように見えます。
わたくしが止めないうちにクウマはどんどんと準備を進めていってしまいました。
「ま、マスターの覚悟は痛いほど伝わったから……その、もうしなくてもいいのよ?」
「いや、する。皇女様が良くても俺が納得しない」
何この覚悟ガンギマリマスター!!?(錯乱)
わたくしがいいって言ってるのよ!何でそう粛々と自分から死を迎えようとするの!
一人心の中で騒いでるわたくしが馬鹿みたいじゃない!!
これが日本の本当の姿なの……?恥をかいたらみんなハラキリできるの……?
「じゃ、やるよ」
「あ……あぁ、あ」
わたくしの一言で、たかが歴史の影法師の戯言で、今を生きる命が破局を迎えようとしている。
ダメ、それはダメ。
いやわたくしが指示したのだけど……ダメよ!
「ヴィイ!!」
全力で自分の半身とも言うべき精霊の力を解放する。狙いは一点、その手に持ったドスを────
──ザクッ
ドサリと倒れた。わたくしの前で。
ハラキリを止めさせまいと一瞬だけ彼が強化の魔術を使ったように見えた。
「何で……そこまで」
もう自分がしでかしてしまったことに何と言っていいのか分からなかった。
幸い現界はまだ続いているようだがそれもすぐに持たなくなるだろう。
「マスター。ねぇ、返事をしなさいなマスター」
ゆさゆさとわたくしはクウマの身体を揺する。
ぬるい体温が冷たい自分の肌に伝わってくる。ああ、さっきまでこれは命だったのだ。
会ってからそんなに──いえ、ほんの数時間くらいでしょうけど。あなたがわたくしを大切にしようとしてくれたのは知っていてよ?ええ、とっても。
「馬鹿。馬鹿ぁ……!」
語彙力なんてどこかに置いてきてしまったらしい。
柄にもない涙をボタボタと彼の身体に落としながらポカポカと力の入らない腕で彼を叩いた。もちろん、何の反応もない。
「マスター……」
「……御用ですか皇女様」
聞き覚えのある声に涙を拭うのも忘れてそちらを見上げた。
そこには目の前で転がっているクウマと同じ顔がいた。
何…これは!?
幻術なの!?
幻術……?イヤ、幻術じゃない。
また幻術なの!?イヤ……
「何なの貴方────────!?」
「アバ──────────────ッ!!?」
わたくしはつい、目の前にいたクウマに向かって特大の氷壁をかましてしまいました。
わたくしは一つも悪くないと思います。
令呪をもって命ずる。自害なさい、マスター。
ネタバラシ︰部屋から出た後木分身と木遁変化の術で自害する自分とガワだけそっくりなドスを作成して覚悟完了したマスターを演じた。
深夜テンションほど恐ろしいものはない。
アナスタシア︰カドアナクラスタの皆様には本当に申し訳ない。けど後悔はしていない。それが俺の忍道だ!!
ロシアの雪の皇女様。初回登場にしてキャラ崩壊してしまった。大丈夫大丈夫、この話はカニファン時空だからね!
幻術なのか!?︰ナルトスにおいて我愛羅が二代目水影の術に対してのセリフ。様々な派生が存在する。今回はアナスタシアが代役に抜擢された。
クウマの令呪の真相︰令呪は聖杯戦争一回につき合計21画配布されるが今回は画数がいくらか増えている模様。その原因は次回!