ロストマン
Sideエミヤオルタ(カルデア)
――――■■日後
あの事件から時は流れ。またいくつかの問題が起こり、いくつかのお祭り騒ぎを経ながらも、サーヴァントたちはカルデアで変わらない日々を過ごしてた。
特に状況に変化もなく――エミヤオルタの治療法も見つからないままだ。
そして、
「マスター、頼みがある」
「…………」
遂に、その日が訪れた。
告げるエミヤオルタに、藤丸も逃げずに頷く。
向かうはダ・ヴィンチちゃんの強化ラボ。
「本当にいいのかい? 一応忠告するけど、今度の今度こそ中身がすべてなくなるぜ」
「ああ、構わない。どうせ早いか遅いかの違いだ」
ダ・ヴィンチちゃんの最終確認に、エミヤオルタはまるで何でもないことのように答える。
今から行われるのは霊基の最終再臨。
エミヤオルタの能力を限界まで引き出す強化だ。
それは同時に――エミヤオルタの崩壊を意味している。
「…………」
「…………」
もう、決まっていた結末だ。
エミヤオルタの霊基は治らない。――ならば、せめて兵器として最大限に利用するのが道理だろう。召喚リソースだってただじゃない。むしろ、この結論は遅いくらいだ。
そう訴え、今強化が行われる。
施術は一瞬だった。
再臨の終わったエミヤオルタは、
「――よくやってくれたな、マスター。俺を語る中身は全てなくなった。正真正銘、オレは無銘の英霊になったわけだ」
自らの悲願を達成し、ニヒルに笑う。
「…………」
「……まったく」
藤丸は答えない。
そんなマスターの顔を眺めながら、エミヤオルタが思い出すのはあの特異点。
「……顔をあげろマスター」
今にも泣きだしそうな顔で俯く藤丸へ、エミヤオルタは笑う。
「オレがここまで来れたのは、あんたのお陰だ」
何も救えなかった。
何も成しえなかった。
そんな男の――叶わなかった生前の願いを叶えてくれた。
だから、
「そんな顔をするな。――大丈夫だ、マスター。これからもオレは、ここで頑張っていくから」
曇りのない笑みで答える。
マスターの顔は見えない。
それでも。
――
――――
――――――
更に時は流れ。
……ああ、瞼が重い。
終焉が近い。
一秒前すら遠く。
恐らく、遠くない将来。本当にエミヤオルタは中身を失い、からっぽの英霊となるだろう。しかし、
「…………」
日記をめくれば嫌でもわかる。
カルデアに召喚されたこと。
白鳥をクレーンで吊り上げたこと。
藤ねえと再会したこと。
そして――数々の戦場で、最期まで背中の
無駄のない。まるで業務連絡でも書き記すかのような簡素な文字だが、その日記は温かさに溢れていた。
後悔は数知れず。
それでも……。
「エミヤオルタ」
「……ん? ――ああ、出番か」
呼びかけるマスターの言葉に、エミヤオルタも答える。
「よし、行こうか。マスター」
「うん。――これからもよろしくね、エミヤオルタ」
「…………ああ」
それでも……ここに来たことは間違いではなかったのだ……。
自分の中身がすべて消えることを望むエミヤオルタ
そんな彼に、カルデアの人たちはどんなことを思うのだろう?
彼の望みが叶う、その前にもしこんな珍道中があったなら……。
――なんて妄想から生まれた、コラボイベント&エミヤオルタの幕間風二次創作
『亜種特異点ジャガーころしあむ(オルタ)』でした!
毎度毎度、間が空いてしまい本当に申し訳ありませんでした……。
そんな中、最後までお付き合いいただいた読者の皆さんには感謝しかありません!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!