Sideカルデア
冬木一美人な英語教師の放つ宝具によって花札勝負をすることになったカルデアの一行。
竹刀の刺さる荒野のど真ん中で花札をする。――という、改めて考えるとシュールな光景の中、ジャガー改めタイガと弟子1号、更にエミヤオルタまでが何故か慣れた手つきで準備を進める。
藤丸は若干の疎外感を感じながら、そんな3人を眺めていると、
「――ところで、マスターちゃんは花札のルールを知っているかニャ?」
彼の不安を察したのか、勝負の前タイガにそう尋ねられた。
藤丸は頬を掻きながら正直に答える。
「えーと……実はあんまり……」
張り切るエミヤオルタたちの手前言い出せなかったが、実は花札をやったことがなかった。なんとなく名前は知っているが詳しいルールはさっぱりだ。
タイガはしたり顔で頷く。
「うんうん、わかるわかる。親戚に美人のお姉さんがいニャいとなかなかやる機会がないと思います花札。美人のお姉さんがいニャいと。――ということで、説明よろしく黒いアーチャーさん!」
「オレ!?」
タイガに名指しされて驚くエミヤオルタ。
しかし、すぐに満更でもない様子で藤丸の方へ向き直る。
「……やれやれ。じゃあ、大まかにだけ」
「よっ、説明上手!」
「流石、世話好き!」
「外野は黙ってろ」
タイガと弟子1号はそんな彼をここぞとばかりに囃し立て、エミヤオルタは無慈悲にピシャリと遮り、説明を始めた。
「花札はかるたの1種とされている。12月をモチーフにした48枚の札で遊ぶカードゲームだ。札には1月から12月まで各月にちなんだ動植物が描かれ、1月につき4枚ずつある」
言いながら、エミヤオルタは分かりやすいよう藤丸の前へ花札を綺麗に並べる。
エミヤオルタの言う通り、1種類4枚。素人目にも豪華なイラストの描かれた特別な札が2種類と、簡素な札が描かれたカス札2枚だ。
それぞれ、
1月、松に鶴 松に赤タン 松のみ2枚
2月、梅とうぐいす 梅に赤タン 梅のみ2枚
3月、桜に幕 桜に赤タン 桜のみ2枚
4月、藤とほととぎす 藤に短冊 藤のみ2枚
5月、菖蒲と八ッ橋 菖蒲に短冊 菖蒲の2枚
6月、牡丹と蝶 牡丹に青短 牡丹のみ2枚
7月、萩と猪 萩に短冊 萩のみ2枚
8月、ススキに月 ススキと雁 ススキのみ2枚
9月、菊と盃 菊に青短 菊のみ2枚
10月、紅葉と鹿 紅葉に青短 紅葉のみ2枚
11月、柳に小野道風という人物 柳とツバメ 柳に短冊 柳のみ1枚
12月、桐に鳳凰 桐のみ3枚
の計48枚。
「札にはそれぞれに意味がある……が、1度遊びながら説明しよう。――まずは先行となる親番を決める。正式なものもあるが、方法はなんでもいい」
と、エミヤオルタは並べた札を1度回収し、シャッフル。
今度はその山を裏向きのまま、説明しながらお互いのプレイヤーへ配る。
「決め終えたら続いて互いのプレイヤーへ手札として8枚配る。場にも表で8枚並べ、残りの24枚は裏のまま中央に置く。これが初期配置だ、覚えたか?」
「……なんとか」
配られた自分の8枚と場に出された8枚を交互に見つつ、藤丸はなんとかそう答えた。
マスターの様子を見て、エミヤオルタも頷く。
「よし。では、いよいよゲームスタートだ。親から順に、手札から1枚を表にして場に出す。今回はオレから」
と、エミヤオルタは自分の手札の中から菊と盃の描かれた札を場に出した。
「この時、場に同じ種類の札があれば、それを取って自分の陣地へ置くことができる。オレが出したのは9月の札である『菊に盃』。そして場には同じく9月の『菊のカス』がある。よってこれをオレの陣地へ加える」
宣言通り、エミヤオルタは同じ菊の花が書かれた2枚の札を場で重ねて、自分の方へ手繰り寄せる。
その後、場に重ねておいた山札へ手を伸ばし、一番上の札をめくりながら説明を続けた。
「続けて山の上からも1枚札を引く、やはり同じ札があれば自分のものとする。……ハズレだ」
エミヤオルタが山から引いたのはススキのカス札。しかし、場の7枚の中に同じ種類のススキはない。
藤丸は尋ねる。
「場に取れる札がない時はどうなるの?」
「そのまま出した札が場に残留する。これは手から出た札でも同じだ。――これでオレの番は終了。次はマスターの番だ。同じようにやってみろ」
エミヤオルタに促され、藤丸は自分の手札となる8枚を見ながら、習ったことを繰り返す。
「えーと……手から1枚場において、同じ種類を自分の方へ……。次に山から1枚を表にして、これも同じ種類を取る……と」
「その通り。――こうして、交互に札を取っていき、役の完成を目指す」
「役?」
「ああ。代表的な役は月見酒、花見酒。猪鹿蝶だな。マスターも名前くらいは聞いたことがあるんじゃないか?」
「うん。流石に猪鹿蝶くらいは」
そんな藤丸へ、エミヤオルタは山札の中から猪鹿蝶の役となる『萩に猪』『紅葉に鹿』『牡丹に蝶』を取り出して見せた。
「これが猪鹿蝶だ。この3枚を自陣に揃えれば役が成立する」
「なるほど。そのまま猪と鹿、蝶の3枚なんだね」
「そうだ。この役をどれか1種でもどちらかが成立させればゲームは終了。札を配りなおして初めからだ。役にはそれぞれポイントが付けられていて、これを競うのが花札の基本的な遊び方になる。……と、そういえばルールはどうするんだジャガーマン?」
「ノウ! アイム、タイガ! ――勿論、今回のルールは冬木の皆さん御用達12文先取バトルニャ! 先に12文を揃えた方が勝ーつ!」
と、いうことらしい。
ちなみに、役札が全て揃ったところでこのまま勝負して次のゲームへ移るか、それともゲーム続けてより高い役の完成を目指すかを選ぶこともできる。次へ移る場合は『勝負』。ゲームを続ける場合は『こいこい』と宣言する。このゲームの醍醐味の1つだ。
――と、ここまで説明してエミヤオルタは一息ついた。
「……こんなところか」
説明を終えたエミヤオルタへ、タイガと弟子1号はオーバーリアクションで涙を拭いながら拍手を贈る。
「エクセレント……エクセレント! お姉さん、感動したわ!」
「うんうん。やっぱ流石っすね、師しょー。見た目はちょっと厳ついけど、説明してる所は近所のお兄ちゃんって感じー」
「………………」
が、2人の喝采を受けたエミヤオルタは苦しそうに顔を歪めて無視し、話を進めた。
「…………説明はこれくらいでいいだろ? とっとと終わらせよう」
「えっ!? もういいの!? まだ全然……」
さっさとゲームの準備を始めるエミヤオルタに、藤丸は不安からそう声をかける。
実際、藤丸はまだ基本的なルールを聞いただけ。1度も練習なしに本番なんて、不可能なように思えた。
しかし、この不安をエミヤオルタは鼻で笑う。
「あれで十分だ。後は役だが……これは種類が多い。初心者にいきなり覚えろと言うのも酷だろう。そこはオレがサポートしてやる」
「そんな適当でいいの?」
「ああ。気づいているかもしれないが、花札はかなり運に左右されるゲームだ。故に――」
そうこうしている内に準備が整い、ゲームがスタート。
お互いに配られた8枚の札を確認し、そして――
「――はい『手四』6文よ」
開始と同時に、タイガが自分の手札8枚をすべてオープンしてそう宣言した。
見ると8枚中4枚がすべて3月の桜。――これは『手四』と言い、同じ月の4枚すべてが自分の手札に来た場合に成立する役で、成立した場合はこのままゲームをせず相手の勝利となる。
と、藤丸へ説明しながら、エミヤオルタはため息を吐く。
「……こういうことが稀によくある。素人が1人増えたところで、戦況に然したる影響はない」
「運ゲーじゃん!」
藤丸は思わず絶叫する。
初心者相手にそもそもゲームをプレイさせないなんて、プレイヤー泣かせにも程がある!
しかし、憤慨する藤丸をなだめる様にタイガが言った。
「コラコラ、マスターニャん」
「マスターニャん!?」
「全国の花札ファンを敵に回す発言はよくないニャ」
「そうっすよー。勝負はまだまだわからない、わからない」
「……うっ」
確かに、先ほどの発言は我ながら軽率すぎたかもしれない。
気を取り直してネクストゲーム。
藤丸とエミヤオルタに配られた8枚の手札は、
――カスカスカスタンカスタンカスタネ。高得点に繋がる札0。
「…………」
「……まあ、マスター。……まだ逆転の可能性は――」
「はい先行『桜に幕』出して、山からドロー『ススキに月』。手札に盃もあるから、次で月見酒と花見酒、各3文の計6文で私の勝ちね」
「運ゲー! やっぱりこれ運ゲーだよ!」
勝ち誇るジャガーへ、今度こそ絶叫する藤丸。
確かに、花見で1杯と月見で1杯はたった2枚で成立する高得点役。この2枚が手にあれば、勝負はほぼ決まってしまうので、やはり運要素が強いと言わざるを得ない。
「いいや、マスター。今回ばかりはそうでもないらしい。――雑魚には雑魚の戦い方がある。手を見ろ」
しかし、エミヤオルタはまだ勝負を諦めていなかった。
促されるまま、藤丸は自分の手札を改めて見る。
エミヤオルタが示したのは3枚の札。
「これは……菊のカス札2枚?」
首を傾げる藤丸へ、エミヤオルタは頷く。
「ああ、相手の手に『菊に盃』があろうとも、取らせなければ役は成立しない。そして、こちらの手には菊が2枚。場に1枚」
花札は同じ月の札が計4枚。そのうちの2枚をカス札をこちらが抱えている。
つまり――
「……この番で場の菊を取っちゃえば、こっちの手札にある菊を場に出さない限り、相手の役は成立しない!」
「その通り。そして――」
と、エミヤオルタの猛攻が始まる。手のカス札を出して場のカスを取り、山札からめくった札も確保。そのまま、続けざまに手札のカス札を順当に確保する。
彼らの手札に来たカス札は5枚。取れないはずがない。
故に、
「これで『カス』1文、勝負だ」
カス札が自陣に10枚貯まった所でエミヤオルタが宣言した。
たったの1文だが、これでも役は役。ゲームはリセットされて、初期配置に戻る。
唖然とする藤丸へエミヤオルタは言った。
「これが、このゲームの醍醐味の1つだ。どんなに点数の高い役でも、成立しなければ得点にならない」
「だから、相手が高い手なら、より早くあがることで凌げるのか!」
感心する藤丸。高得点を流されたタイガは悔しそうに頬を拭った。
「くっ……やるわね、デミヤん」
「誰がデミヤんだ」
「しかーし! そっちは後11文。こっちは後6文! 依然地の利は我にあり!」
「地の利ではないと思うが」
タイガはエミヤオルタのツッコミを総スルーしながら札を配って、ネクストゲーム。
タイガのリアルラックがこちらを上回っているのか、その後も藤丸たちにとって不利な展開が続いた。
だが、エミヤオルタはこのピンチを悉くカバー。相手が高得点札を取れば、速攻で凌ぎ。逆に相手が早そうなら、これ以上相手へ高い役が行かない様に妨害する。更に、初心者である藤丸へのフォローも忘れない。
縦横無尽の活躍を見せるエミヤオルタへ、藤丸が感心しながら尋ねた。
「上手いね、エミヤオルタ。どこかで花札を?」
「…………」
藤丸としてはただの雑談のような問いだったのだが、意外にもエミヤオルタは少し複雑な表情で俯いた。
そして、遠く見つめながら神妙に答える。
「……昔の話だ。正月になる度、どこぞのバカに付き合わされてな」
藤丸は嬉しそうな――悲しそうな――曖昧な表情を浮かべるエミヤオルタの顔を覗く。
その瞳は、正面で弟子1号と楽しそうに笑うジャガーマンの姿が映っていた。
「……それって」
「無駄話はここまでだ」
と、藤丸が尋ねるよりも早く、エミヤオルタはそう遮ってゲームに戻る。
その後も一進一退の攻防が続いた。
エミヤオルタのサポートもあり、なんとか藤丸も赤短を揃えることに成功。初めて自分で取れた勝利に、ついつい笑顔が漏れる。
――運ゲー。聞こえは悪いが、それは裏を返せば初心者も経験者も同じ土俵で対等に遊べるということだ。
老若男女問わず、初めてでも玄人でも一緒になって楽しめるゲーム。
だからきっと――今、この瞬間。この場はこんなにも居心地がいいのだろう。
藤丸に出し抜かれたジャガーマンは涙目で絶叫し、
そんな彼女を弟子1号が責めるように捲し立て、
その様子を見て藤丸はついつい大きく吹き出し笑う。
そして、エミヤオルタも……。
「……ああ」
「ん? どうした、マスター?」
「…………ううん、なんでもない」
藤丸は首を振りながら、花札をするエミヤオルタの横顔を見る。
きっと無自覚だからだろう。その顔はまるで……。
藤丸はそんな思いをそっと胸の内に止め、誰にも聞こえない小さな声でだけ呟いた。
「もしかして、ジャガーマンの目的って……」
しかし、それを確かめる術はない。
――そして、あっという間に勝負は佳境を迎えた。
「貰ったァ!」
「しまった!?」
と、タイガが雄叫びと共に『桜に幕』を先取。花札にもだいぶ慣れた藤丸が、相手の抱えたアドバンテージに絶叫する。
『桜に幕』は高得点の役に絡みやすい重要な札だ。
なんとしても、次の自分の番でリカバリーしなければ。
――しかし、相手は野獣。
野生の獣が、このチャンスを逃すはずもない。
続けて、タイガが吠える。
「もう遅ーい! 行け、我が弟子!」
「はいっす、師しょー! ――『ラインの黄金』発動!」
瞬間、山札を捲る弟子1号の右手が光った。
まるで希望の光のように。それが必然であると高らかに叫ぶかの如く、山札の上からめくる札を創造する。
現われたのは――『松に鶴』。
「――なっ!?」
「――にっ!?」
当然の出来事に藤丸とエミヤオルタが揃って絶句する。
対する虎とブルマは唖然とする2人を尻目に、手にした2枚を掲げ余裕の笑みを浮かべていた。
弟子1号の起こした奇跡に、藤丸が思わず叫ぶ。
「この花札、宝具もありなの!?」
「ありもあり、大ありニャ」
「これで次に『ススキに月』を取れば『三光』。『菊に盃』を取れば『花見で一杯』が成立して、わたしたちの勝ちっす!」
「ズッル! 反則だよ! 反則!」
「ノウノウ、マスターちゃん。反則じゃありませーん。何故ならこれはトラぶる花札だから!」
「そう! 宝具は使用可能っす!」
「そ、そんな……」
ならばせめて最初のルール説明の時にそう言って欲しかった……。
重要なルールを隠匿し、決めれば必勝のこのタイミングで宝具を使用する意地汚さ……。もといタイガと弟子1号の戦略に藤丸は力なく崩れる。
エミヤオルタは、そんなマスターの肩へ手を置きながら、
「このゲームの仕様なら仕方ない。人生、諦めも肝心だ」
この状況で、場違いなほど平然とした声でそう言った。
「エミヤオルタまで……せっかく、ここまで頑張ったのに……」
流石ドライなエミヤオルタ。藤丸は初めての花札での敗北に、悔しさから唇を噛む。
恐らく相手の手には次で役が完成する札が握られているだろう。
次のターンで必敗。
だが、
「宝具もあり……なるほどな」
勝負を諦めたかに見えたエミヤオルタは、ただ1人盤面を見据えたまま、
「なら――この札、すべて取ってしまっても構わんのだろう?」
そんな、とんでもない事を口にした。
「エミヤオルタ……」
サーヴァントが諦めていないのに、マスターの自分がこれでは立つ瀬がない。
俯いていた藤丸が顔を上げ、自分を叱咤した。
「――勿論! 遠慮なくやっちゃって!」
「……ふん。なら、期待に応えるとしよう」
マスターの激励を受け、エミヤオルタが前に出る。
対するタイガと弟子1号が叫んだ。
「バ、バカニャして!」
「ブーブー! このキザ男ー! 女泣かせー!」
「言ってろイロモノコンビ」
初期手札や場に出る札など運要素の強い花札。自分の意志でコントロールできる札の少ない花札で、相手のアドバンテージを覆すのは難しい。
開始と同時にここまでの差が開いてしまえば勝負はもう決まったようなもの。逆転はほぼ不可能だ。
そう、本来ならば。
――だが、ここに例外が存在する。
エミヤオルタは場に出ている札を見つめながら魔力を回す。
そして、自身の札を手に取って、
「――トレース、オン」
唯一無二の呪文を口にした。
同時、エミヤオルタはすべての札を自らの望むまま、新たに創造する。
手に取った札は『菊』へ。そして、山札から引いた札は『ススキ』へ。
無駄なく、相手の勝ち筋となる盤面を駆逐する!
同時に対面の虎とブルマが露骨に顔をしかめた。
「げっ!? ちょっ、アーチャーさんそれは――」
「先に宝具ありと言ったのはあんただろう?」
「うっ……」
「あー……ちょっとやりすぎちゃったわね、タイガ」
「うるさーい、ブルマ風情が! こっちの手には月と酒があるんだもん! 勝負はまだ分からないわ!」
「ほう、それはいいことを聞いた」
「うっ……」
そして、その後も一方的な展開が続いた。
タイガ&弟子1号がどんな札を出そうと、エミヤオルタは返しにそのすべての勝ち筋を排除。同時に、自分は着々と役のパーツを揃える。
いつでも、どのタイミングでも、好きな札を手に取ることのできるエミヤオルタに勝てるはずもない。
そして、
「――『猪鹿蝶』。勝負だ」
エミヤオルタの宣言と共に、ゲーム終了。
「ぐはっ……!」
同時に、何故かタイガが口から大量の血を吐いて倒れた。
原理は不明だが、どうやら花札の敗北による精神ダメージが肉体へも作用しているらしい。恐るべし『無限の道場』。
タイガが倒れたことにより、固有結界も解除され、風景が元の教会前へと戻る。
「くっ……流石は私の見込んだマスターにゃ……」
敗れたタイガは、観念したのか膝をつき、吐血しながら苦しそうに呟く。
「――しかーし! 今、倒れた私はナマモノ四天王最強の一角! そして事件の黒幕! ……え? 今、私かなりヤバくない?」
が、苦しそうなのは気のせいだったらしい。
次の瞬間にはそう元気に叫びだした。
「ジャガーマン……」
「というか、やっぱりあんたが黒幕か」
あんまりな告白に藤丸は顔を押さえ、エミヤオルタが呆れ顔で言う。
勿論、その程度の哀れみで止まるジャガーマンではない。
「くっ……本当は花札でけちょんけちょんにした後、ボロボロの2人へたっぷりと私の“大人”な魅力を余すことなく教え込むはずにゃったのに……」
「大人……?」
「えーい! かくなる上は!」
「上は?」
首を傾げる藤丸。タイガはなんだかんだで満身創痍。対するは常在戦場のエミヤオルタ。正直、ここから彼女が逆転できるとは思えない。
だが、タイガが大声でその起死回生の一手を繰り出した。
「――セイバーちゃーん! へループ!」
「え…………?」
「――っ!? マズイ!? マスター下がれ!」
「――遅い」
ふざけた空気から一転。
タイガの言葉と同時に、反転した極光が2人を襲った。
大地が割かれ、タイガと藤丸たちの間に巨大な溝を作り出す漆黒の剣士。――アルトリアオルタが2人の前に立ちふさがった。
「くっ……」
「エミヤオルタ!?」
自らを庇って膝をついたエミヤオルタへ、藤丸が慌てて駆け寄る。ギリギリだったため、僅かに回避が間に合わなかったらしい。
すぐに礼装へ魔力を回してエミヤオルタを回復させる。
これでエミヤオルタの傷は癒えたものの、彼女たちに隙も与えてしまった。
一気に形勢を逆転したタイガと弟子1号が高笑いしながら勝ち誇る。
「さっすが最優のサーヴァント、セイバーちゃん! しかもオルタ! 黒は強いって本当だったのねぇ……。さあ、この隙に逃げるニャ!」
「いえーい、師しょー! 大人気なーい!」
「わっはっは! 褒めるな褒めるな! ――というわけで、さらばー!」
「うわっ! あのジャガー、ホントに逃げた!」
と、悪びれもせずアルトリアオルタの影に隠れてそそくさと逃げる黒幕コンビ。
これには流石の藤丸もドン引きする。
エミヤオルタはすぐに追撃しようとするものも、
「まずい。マスター、すぐに奴を――」
「行かせると思うか?」
当然、その前にはアルトリアオルタが立ちふさがった。
眼前で剣を構える漆黒の騎士へ、エミヤオルタが苦虫をかみつぶしたような顔で呟く。
「…………まさか、あんたまでそっちとはな」
「何を戸惑う弓兵。所詮、我らはサーヴァント。貴様が1番理解していよう?」
「…………」
沈黙するエミヤオルタへ、セイバーオルタは臆することなく切っ先を向ける。
「あんな馬鹿だが、今回ばかりは私の主人だ。ここを通りたくば」
「ここを通りたくば……」
「この私を倒して見せろ!」
直後、暴力的な量の魔力がアルトリアオルタを中心に逆巻く。
それが開幕の合図だった。
臨戦態勢のまま、アルトリアオルタは彼らへ勝負方法を口にする。
彼女の告げた、衝撃の勝負方法とは!?
「――チキチキ、ジャガーマン争奪料理対決!!!」
「待って待って待って」
こうして、新たな戦いの火ぶたが切って落とされた!
遂にカルデアのマスターたちの前に現れた真犯人ジャガーマン!
新たに立ちはだかるはジャガーマン配下が1人セイバーオルタ!
彼らは見事セイバーオルタを倒し、ジャガーマンを捕らえることができるのか!?
ジャガーマンと虎聖杯を巡る攻防は熾烈を極め、舞台はついに後半戦へと突入する!
嘘……まだ前半なの……。
というのは置いといて、
うあぁぁぁ! タイころリスペクトで7話にまとめようと思ってたのに、今回の前後編でナンバリングが狂ったぁぁぁ!
――ということに、前回アップしてから気づいて1人悶絶したマヌケは私です、おはようございます
まあ、現状ですら通算で6話目な時点で色々グダグダですが……