アダムの手によって修復された音声データが、途中から再生を始める。
それは、世界を救うために己が身を投げ出した英雄と、人々の記録。
第四部隊を任されていたアルジュナは、宿敵カルナとの決着よりも敵本拠地の撃墜を頼まれる。宿命よりも、世界の未来を優先してほしいという願いだった。
イアソン含む第一部隊は、サーヴァント50人と無数の人間からなり、敵であるリリスのバーサーカーに対しての囮役となっていた。
その部隊の最後の役目は……敵バーサーカーとの相打ち。イアソンは自らの船アルゴー号を
400年前より伝えられた声によって、961達は真実の一端を知る。
死血湖周辺に散らばっていた破片はアルゴー号のものであり、イアソンは己の命と船を引き換えにして、敵を倒したのだということを。
暗い空気に包まれる一行であったが、ドレイクは何か思いついたようで、アンとメアリーに『例のアレ』を持ってくるように言い、周辺の探索を再び始めた。
待機を命じられたガレスと961、そしてアダムは400年前の戦いに想いを馳せる。
『
それにしては辺りに破壊の跡がないと訝しむアダム。答えの出ない問いに頭を悩ませていた所、ドレイクもアンもメアリーも帰ってきた。
ドレイクが手に持っていたのは、船を操るのには欠かせない舵輪の欠片。
アンとメアリーの二人が持ってきた小箱に入っていたのは、小さな木片。
キャプテンは皆に対し、『船が壊れていた』という状況に対する解決策を、笑顔で口にした。
一方そのころ。およそ千里眼でもないと見いだせないような砂の彼方に。
敵が、機械化サーヴァントが活動を開始していた。
「全員集合! アダムもだよ、こっち来な!」
迷宮を抜けるため、そして北極へと向かうため、次なる移動手段を必要としている俺とドレイク達。
『伝説の船が壊れていた』という大きな問題も解決するため、準備を整えていた。
谷間の砂地に突き刺さっていた残骸を調べ、状態が良い物をまとめ、大きな破片の元へ集めていく。俺は腕がないので、ロープに物を結びつけて引きずっては運んだ。
その作業を終える頃には、太陽は天高く昇り、時刻は真昼ごろとなっていた。
「準備も整ったし、さてと……それぞれ組を作って、何が起きても離れ離れにならないよう、体をくっつけておきな」
俺達を呼び集めたドレイクは、手に、地下都市で保管されていたという『
「メアリー、わたしにぎゅっと掴まっていてくださいね」
「こんな感じで良い?」
「そうそう」
キャプテンの指示に従い、アンとメアリーは互いを抱きしめあう。
と言っても、背丈に違いがあるので、白髪のメアリーがアンの腰に頭を寄せ、腕を伸ばして絡みついているような格好だが。
「私とアーキマン殿の体は、ロープで結びますね」
紐を手にもって、ガレスが俺に近づいてくる。
「頼む」
「……」
「なんだ、ガレス」
いかにも何か言いたげに、俺をじとりとした目で見てきた彼女へ問いかける。
「もうロープの予備もありませんから、ちぎったりするような行動はしないように」
念を押すような口ぶりだ。彼女は、俺が囮となるために飛び出したあの時の事を言っているのだろう。
「……しない」
ガレスと目をきちんと合わせてから、答えを返した。
「信じます、アーキマン殿」
少女は穏やかな眼差しをこちらに向けてから、慣れた手つきでロープをくくっていく。
「結んで、確認して……これでばっちりです!」
何があっても離れないよう、体にくくわれた紐は、長く垂らされ、ガレスの腰の辺りと繋がっている。俺と彼女の間には空間があり、アンやメアリーほど密着はしていない。
少しゆとりあった方が動きやすいし、問題が起きた時も迅速に対応できて良いだろう。
「あの……」
おずおずと、控えめな態度で手を上げてたのは。
「なんだい? えーっと、ロボット旦那くん」
「アダム! アダム……です! 覚えてください! アン嬢、メアリー嬢!」
「はいはい。なんですの、アダム」
『リリスの夫』を自称するあの四足歩行型機械だった。
「私は……誰に掴まれば?」
アダムを除いた全員が目を見合わせる。
「アーキマン殿の足に掴まれば、何が起こったとしても大丈夫だと思います」
答えに悩んでいた俺達の中から、提案を出したのはガレスだった。
彼女の指示に従ったアダムは、細く黒い足4本全てを俺の足へぴたりと密着させる。
「アーキマン、私を離さないでくださいね」
こちらを見上げ、俺の顔を、オレンジ色の胴体に埋め込まれた大きなレンズに映しながら、哀れっぽい声で懇願してくるアダム。
本気か冗談か、分かりかねる態度だ。
「かなり揺れるとキャプテンは言っていた。
……なるべく努力する」
「そんなー」
ひどく棒読みな声が、膝より下から聞こえてきたが、俺は無言を貫いた。
アンとメアリーは、先んじて伝えられていた揺れに備えるためか、抱き合う力を強める。
身の安全の確保を済ませた俺達を見て、ドレイクは声を上げ、これより始めることの説明をする。
「みんなにも言ったとおり、アタシが取る方法ってのは、この船と我が
けど、アタシの力だけでは無理だし、船同士の相性も良いって訳じゃない」
俺は辺りに集めた残骸を目に映す。
風化しつつも形をしっかりと残している、かつてはマストや甲板であった物。ドレイクの目線の先もそれであった。
「アルゴー号とアタシの船には縁ってヤツがないからね。
船という乗り物同士ではあるけれど、作られた時代も背負ってる伝説も違う。アタシの舵輪を核に、残骸を材料としたって、バラバラと崩れちまうだけ。
──だから、こうする」
彼女が右手をかざすと、淡い光をまといながら、ドレイクの船の舵輪、そのひとかけらが浮かび上がった。
「英雄イアソン、アンタから奪わせてもらう。
船も、嘆きも、悔しさも、やり残したであろうことも、全て、全て……」
詠唱のような言葉を口にしながら、ドレイクは瞳を一度閉じ、再び開く。
双眸を染める色は……琥珀を想わせる輝く金。
「海賊らしく、いいえ
放たれたその声はダユーのものだった。
キャプテンドレイクの体の内より意識を表層化させた彼女は、左手を持ち上げた。
すると、舵輪にまとわりついていた光は糸状となって周辺に広がり、集められた残骸へ次々と宿っていく。
「煌々たる伝説を持つ船、その竜骨の一片まで舌を這わせて、噛み砕いて……」
湧き出す光は空間を染め、奔流となって、ドレイクとダユーの濃いマゼンタ色の髪を激しく乱した。
欠片はゆっくりと宙を舞い、糸で縫い合わされる布地のように、立体的に繋がっていく。動きに迷いはない、どのような姿となるべきか、欠片自身が分かっているかのようだった。
「アン、転ばないように!」
「海賊ですもの、このくらいっ……なんてことないですわ!」
サーヴァントでも耐え難いほどの振動が始まる。
砂の下に隠されていた残骸がその原因だ。呼ばれてきたかのように光の糸で吊られ、ぞくぞくと浮上してくる。
谷の間から、明るい空を見上げてみれば、
「──けれど……ああ、聞いて、英雄イアソン」
神秘的な光の糸をまとい、船の修復を司っているダユーの声が、揺れに翻弄されている俺達の間を静かに流れていく。
「わたしはグラドロン王の娘、ダユー。どこまでも餓えた女。
だから欲しいの。貴方の船が、流れた涙が、自棄が。
心も思い出も、全て雄鶏のように飲み込んで、わたしの元へ……ふふっ」
神託を乞う巫女のような声で、ダユーは自らの欲望を語る。
揺れは激しさを増して、地面が一段と大きく上下したかと思ったら、そのまませりあがってくる。
足元に広がるのはもはや砂ではなく、地中より浮かんできた、磨かれた木の敷かれる床だった。
「……少しだけ惜しいわ。こんなに素敵な船なのに、奪わないといけないだなんて」
ダユーは振動などまるで無いかのように屈むと、滑らかな床の表面を指でそっと撫でる。
「触れるだけでも分かってしまう。多くの英雄が踏み荒らし、甲板には嘆きが染み込んで。側面には、王女の弟の血が、錆除けの染料のようにべったりと……。
惜しくとも、次なる簒奪のため、涙を飲んで手放しましょう」
狭い谷の間に、木材と金属が舞い踊る。俺達は出来上がりつつある甲板に、なんとか体を乗せている状態だ。
円柱が、流線形が、大砲が、次々と生み出され、光の糸により導かれては結合していく。
「さよなら、アルゴー号」
彼女の声と共に、木材の側面が地形を削り、自らが置かれる場所を力づくで確保していく、そのごりごりとした激しい音も聞こえた。
英雄イアソンの忘れ形見であった残骸は、ダユーの力をきっかけとして、新しい船へと形を変えた。彼女は赤い唇を動かし、儀式めいた修理の終わりの言葉を紡ぐ。
「──伝説の船の胎より、黄金の鹿が今生まれ落ちる」
ひび割れたアルゴー号の舵輪に、
砂で摩耗した姿から、傷一つない、純金製かと見紛う程の輝ける舵に変わる。
……そして、船を覆っていた光の糸と流れは消え去り、全ては完了した。
「わ、わわわ……!」
感動と驚きが混ざった声をあげているのは、アダムだろう。
ロープばかり垂れ下がっていたマストに、白の帆が一斉に貼られた。布は風をはらんで大きく膨らみ、前に進む力を出来上がったばかりの船へ与える。
船首は斜めに上がって天を突き刺し、全体は大きく左右に振れた。むずがる子どものような動きだ。
船は狭い体を谷からずりずりと引き抜いて、果てなく広がる砂漠に身を泳がせようとしている。遠くからこの光景を眺める者がいたのなら、まるで、谷から船が生まれ出ようとしている様に見えたことだろう。
取り付けられている攻撃用の
「──アーキマン」
破砕音や、揺れに翻弄される皆の悲鳴といった音の洪水の中で、彼女の落ち着き払った声が耳に届いた。甲板から投げ出されぬよう、両足に力を込めながら振り返る。
ダユーが、依然として揺れなど存在していないかのような美しい立ち姿で側にいた。
「アーキマン」
肩に、ダユーの白い指が触れた。煌めく琥珀色の瞳と目が合う。
瞳へ浮かんだ光と雫を見てしまった瞬間、揺れも皆の叫びも、何も感じなくなってしまった。
彼女の何か言いたげな態度を見て、俺は、時が止まったとさえ錯覚した。
「不思議……この残骸はまるで、未来のわたし達に向けられた贈り物のようだった……」
俺の足にしがみついているアダムにも、ロープで繋がっているガレスにも聞こえないだ声量で、彼女は俺へささやく。
「やっぱり、愛されているのね、あなた。
本当に羨ましい……女神に呪われるのも仕方がない話」
「それは」
「──欲しくないものばかり託されてきた、素敵な
いつか、本当に欲しいものが分かって、それへ手を伸ばし……手放せると良いわね」
彼女は最後に、口から漏れ出る息だけで俺の借り名を呟くと、金色の瞳を閉じた。
「そろそろ着水……じゃなくて、着砂する!
全員、衝撃に備えよ! 最後まで気を緩めるな!」
緊張感に満ちた言葉を声高に叫んだのはメアリーだ。俺は心配になり、ダユーの顔を見たが、すでに彼女は
「……ありがとね、ダユー。
さあ、新生
瞳を開け、青い輝きを灯したドレイクは、船尾がまだ谷底に触れているせいで斜めとなっている甲板を、肩で風を切りながら揺れをものともせず歩いていく。
目指しているのは、2つの船が合わさって出来た舵輪だ。
「英雄イアソン! アンタの大切な船は、このフランシス・ドレイクがいただいた!」
掴んだ瞬間、船をふわりと光の膜が覆った。その光はキャプテンの体に戻っていき、明るさを弱めた。
「文句があるってんなら、ここまで来て、アタシに言いな!」
彼女は右、左と舵輪を小さく動かし調子を確かめてから、空を仰ぎ見、宣言する。
「──さぁ! 船出の時だ!」
ドレイクの言葉を合図として、船は軋みながらも谷を抜け出て、上へ、更に上へと、体を起こしていく。
限界まで持ち上がった船首がゆっくりと前に傾き、続いて辺りに衝撃波を発生させながら、着水ならぬ着砂をした。
「ははっ!! 日差しが気持ちいいねえ!
砂の上なもんだから、潮風を感じられないのは残念だけど、この爽快感で良しとしようか!」
ご機嫌な声で話しながら、キャプテン・ドレイクは舵をとる。
水ではなく砂の中を泳いでいるというのに、船は帆に受ける風と見えざる力で進む勢いを増していた。
わずかばかりの振動はあるが、ようやく平穏を取り戻した甲板の上で、俺は一度背のびをしてから、「あわあわ……」と連続で言いながら震えているアダムを、足から足を使って外した。
腰のロープは依然として、ガレスと繋がっている。彼女の方を見たが、目を回しているくらいで怪我は無さそうだ。
「船体に損傷無し!」
「マストに異常、ありません!」
上空から降ってくるのは、メアリーとアンの馴染みある声。
「わぁ……いつの間にそんな場所へ!
すごいです! アンさん、メアリーさん!」
「ガレスも登ってみる?」
「はい! 是非に!」
めまいも治り、上にいる2人に誘われた彼女は、俺へ結んでくれたロープと自らにくくりつけたロープを丁寧に解いた。
「それでは、ちょっと行ってきます! アダムさんと喧嘩などしないように!」
弟へ言い含めるような態度で俺に話しかけながら、鎧姿から軽やかな服に変わったガレス。
布を風ではためかせながら、マストを少しずつ登っていく。
「よいしょ……よいしょ……ふぅ。
マストに上がるのって、こんなにも大変なのですね」
「初めてにしては上手だよ、ガレス」
「筋がとっても良いですわ。この船の鐘楼員になります?」
「ご冗談を! まだ騎士の道だって極められていない未熟者ですのに……」
上で始まる3人の微笑ましい会話から、あえて目を逸らし、俺の足元でわざとらしくひっくり返っているアダムを見た。
「いつまで慌てふためいているつもりだ」
「でも……驚くべきことがあると、こんな風に長々と慌てるものでは?」
「……そんな感情など持ち合わせているのか」
「人間が言うところの心……らしきものは持ってますよ。えへん。
予想外のこと有ればびっくりしますし、混乱します」
ロボットは四つ足をくるんくるんと回しながら立ち上がり、バイブレーション機能でもあるのか微細に体を振動させて、表面や関節についていた砂を払った。
「さて、無事に……船が手に入りましたね。
であれば、私達の次なる目標は」
俺の足元からアダムは去ると、上機嫌で操舵を行っているドレイクの元へ寄っていった。
「ドレイク嬢……ドレイク嬢」
「なんだい、その気が抜けそうな呼び方は。
むずがゆいねえ、
「ドレイクキャプテン、本題に……入りましょう。
そろそろ
アダムより物々しい言葉を聞いたドレイクは。
「二人共、敵影は!」
マスト上で周辺を警戒していた、アンとメアリーに報告を求める。
「前方30km先に確認しましたわ!」
「素材は不明、ともかく巨大な人型だ!」
俺は甲板を走り、やや砂で霞んでいる前方を見た。
うつむき、砂に腰より下が埋まっている大きな人型ロボットのようなものが視界に入ったが、シルエットが分かる程度。
「位置、形……間違いありませんね、『射手座の機械化サーヴァント』です」
アダムが得た情報から敵の正体を看破する。
それから、丸みある長方形の体全体を使って、ぐっとドレイクを見上げた。
「敵の情報は……船修復前にお話した通りです。
ドレイクキャプテン、『太陽を落とした女』という異名に負けぬご活躍、アダムは期待しています」
白々しさすら感じる声色で褒められた彼女は、鼻で笑う。
「アタシ一人でその名を得た訳じゃない。
戦略、船員、船、風、波に運、敵さんの乱れ……あらゆるものが揃っていたから、あの海戦に勝てたし、アタシは『悪魔』と呼ばれるまでになった」
「では、今回は……どうでしょう?
『射手座の機械化サーヴァント』相手に、あなた方は勝てますかね?」
挑発とも取れることが出来る発言。それに対し彼女が見せたのは、自信ありげな深い笑みだった。
「こんなに良い乗組員が揃ってるんだ。必ず勝てる、勝つことしか考えてないね」
船は敵へ徐々に近づいてきている。
砂ばかりの荒野には、身を守り、攻撃をかわすことが出来そうな物など何もない。
「どっちにしろ、勝てなきゃ浪漫も追えないんだ。
アタシの旅を気持ちよく始めるためにも、
「敵は……長距離からの攻撃を得意とするタイプ、というかそれしかできません。
この船の速度で懐へ入り込んでしまえば、勝つのは容易いでしょう」
──敵の攻撃を見極め、操舵の技術のみで避けながらの、正面からの削り合い。
それが、相談の末、俺達の選んだ戦い方だった。
「アダムは……ただの愛らしいペットロボではないので、戦闘を少しばかりサポートさせて頂きます。
念のため、周辺に地雷やその他の兵器が無いか、確認をば…」
ロボットの胴体上部が左右にぱかりと開き、その蓋が畳まれてから、内側より小さなパラボラアンテナが展開した。
時計回りで回転している……が、本当にこれで探知しているか怪しいものだ。
(人に対する分かりやすさを重視した、飾りかもしれない)
そのような事を考えていたら、アダムがかたかたと震え出した。
「これ……は、なんと」
「どうしました、アダムさん」
戦闘に備えるため、アンやメアリーと共にマストから降りてきたガレスが、声をかける。
「状況は、私が想定していたよりも……悪いかもしれません」
とアダムが言った瞬間、けたたましい音が辺りに響き始めた。
甲高いアラーム、耳を刺すような警告音、連続する電子音。
統一性は無い、けれど確かに『危機感』を人へ与える音律が、顔を歪ませたくなるような不出来な輪唱となって、船体へぶつかってきた。
船の縁から周りを見れば、赤や黄色といった色の光が砂の上にて、ぽつぽつと点滅を始めている。
「な、なんですの、この音!」
「地面もまばらに光ってるし……ロボット野郎! 何をした!」
アン、メアリーが耳を手で覆いながら、アダムに詰め寄る。
「周囲の光、音は、救難信号……の一種です。
旧世界風に言えば、防犯ブザー? 発煙筒? いや、鳴子?」
「分かるように言ってくださーい!」
「ガレス嬢、私の探知が気取られた……という訳ではないです。
……そして、ごめんなさいとも」
不快な音、詳細不明の光。混乱の中、事態は進んでいく。
「敵、来ました!」
真っ先に反応したのはアンだった。
甲板の縁から何かが登ってきて、状況を飲み込めていないこちらに向かい、躍りかかってくる。
乾いた銃声が響き、攻撃を受けた『何か』は落ちた。ガレスが槍を持って素早く駆け寄り、突き立て、とどめを刺す。
「これは……人型ロボットでしょうか?」
皮膚などは被せられていない、外骨格と人工筋肉が剥き出しの姿。銃弾と創傷を受けた個所は焼け焦げている。昔アスカと共に見た、古いSF映画に出てくるようなロボットだ。
「アン! 敵は1体だけじゃないぞ!
みんな、あっちを見て!」
メアリーが指さした方へ目を向ける。
そこに、あったのは。
『──』
『──』
警告音に揺れる砂の上を、剣や槍などの武器を持って、隊列を組みながら無言で行進するロボット。
総数は、ざっと見ただけでも3000以上はいる。
「『射手座の機械化サーヴァント』め……!
ただ殺すだけに飽き足らず、その
アダムの声に剣吞さが宿る。彼は矢継ぎ早に言葉を続けた。
「レジスタンス、資源回収用のワーム、地上を逃げていた人々……手当たり次第に襲い、資源を強奪して、自らの機能を拡張したのでしょう!
辺りに散らばっている発信機は、救難信号を受け取った者たちを狩るための囮であり、侵入者の位置を暴くソナーです!」
「あのロボット軍団は?」
俺はアダムへ問う。
「子機製造機能でも付け足したのか、厄介な……」
鬼気迫る状況の中、アダムは俺達に伝えるべき情報を改めて口にした。
「『射手座の機械化サーヴァント』、その核となっているのは、400年前、リリスに捉えられたレジスタンス側のサーヴァント。
真名は……お話した通りです!」
会話をしている余裕など無くなってきた。
敵ロボットは船の下部に続々と取り付き、引きずられたり振り落とされたりしながらも、その体自体を梯子として、10、20程が甲板上に登ってくる。
「核となっているのは──賢者ケイローン!!」
俺は相手の真名を叫びながら、粗雑な作りの剣を振りかぶってきた敵を、ひと蹴りで砕いた。
第104話 会敵、射手座の機械化サーヴァント
終わり