フェイト/デザートランナー   作:いざかひと

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 前回までのあらすじ
 機械化サーヴァントとの戦いを越え、未来を見るキャスターから予言を受けたモモ達。
 一晩眠った後、どれほど苦難が待ち受けていようと旅を続ける事をモモ達は決めた。
 好意からの物資支援を受け、サーヴァント達に整備してもらったデザートランナーに乗り、当面の目的地を『上級都市ピオーネ』に定める。
 聖杯戦争の謎を明かし、苦しむ人々を助けたいという事を、改めて思うモモ。
 だが……そんな旅に突如障害が現れたのだった。



第4章 終末世界のお姫様
第11話 それ行け砂漠の盗賊団!


 

「この船……車でいいのかな? えへん……この車は!」

 運転室の床に隊列を作るのは、紙を折って出来たネズミ達。

 

(わたし)率いる、ヒメージ盗賊団が乗っ取ったぁ!」

 ガスマスクのような覆面の下から、可愛い女の子の声が響いた。

 

 

 

 

 ……時間を少し巻き戻そう。

 モニカさんとアーチャー255、キャスター171と別れ、地下都市28を出発した私達。

 数時間の走行の後、日も沈んだので、バーサーカーはデザートランナーを一時停止させた。

 乾いた荒野で動く物体は、この車両以外何もない。

 

「揺れがずっと続くと、知らず知らずのうちに疲労が貯まっていく。

 俺とアーチャー殿で順番に見張りをします。モモもマスターアスカも休んで」

「バーサーカーもアーチャーも……サーヴァントは寝なくてもいいの?」

「人の名残で、眠りたくなることはあるけどなー」

 軽い調子で彼が返答をする。

 

「バーサーカー、あのね……安全な場所にたどり着いたら横になって休んでね、旅に出る前みたいに」

「そんな場所があると良いなー」

「貴方の言うとおり寝て休むね、お休みなさい、私のサーヴァント」

「良い休息になりますよう、我がマスター」

 彼にお休みの挨拶をして、星の煌めきを脳に浮かべながら、割り当てられた部屋のベッドで眠りにつく。

 アスカも、隣の部屋で眠りについているのだろう。

 

「みんな……お休み……」

 明日に思い馳せながら、目を閉じた。

 

 

「午前6時ぴったり! 起床!」

 翌日。

 簡単に歯磨きをして、服を着替える。

 アルミ包装された栄養ブロックを袋から取り出し、ほくほくと割って、もそもそとかじる。

 味が甘いのが幸いだ。粉っぽいのでむせないように、コップの水を飲みつつ食べる。

 その後は廊下を歩いて運転室へ。

 

「おはよー」

「おはようございます、トバルカイン」

 アスカは先に起きていたようで、お気に入りである後方の席に座っていた。

 

「アーチャー殿、角治りました?」

「角ではない、制御装置です」

「えっ奥歯の奥の加速装置?」

「炙る」

「断言しちゃった……」

 2つの運転席に座っているバーサーカーとアーチャーが、中身の無いてきとーな会話をしていた。

 

「救難信号とか飛んでない? 入れそうな都市はあった?」

 私はバーサーカーに首尾を聞きながら、運転席の直ぐ後ろの椅子に座り、シートベルトを腰と肩に巻く。

 

「反応はない」

「前途多難だなぁ……」

 がっくりと肩を落とす。ついでに目線も下に落とすと、床に何かが落ちていた。

 

「うん……?」

 ほこりやゴミかと思ったけど違った。

 色付きの紙だ。植物の絶滅したこの世界では珍しいし、かなりの高級品のはず。

 

「アスカ、紙、落ちてるよ」

 上流階級である彼女の持ち物かと思い、声をかけた。

 

「トバルカインの物ではなくて?」

 アスカはアメジストの髪飾りを指で触りながら、首を傾げた。

 

「でも、私の物じゃない……」

 床の上の紙は、地面から伝わる振動でぷるぷる震えている。

 タイヤが石にでも乗り上げたのか、車体が大きくがたんと飛んだ瞬間、紙は浮かんで、ぱたんと折り目がついた。

 

「ん?」

 かたかた揺れる度に、ぱたんぱたんと、紙はひとりでに畳まれていく。

 衝撃で変形する……形状記憶紙でも使っているのだろうか、見ていて楽しい。

 

「わぁ……」

 数秒も経つと、色紙で出来た可愛らしいネズミが生まれた。

 ネズミはぴょこたんぴょこたんと床を跳ねて、隅へと滑っていく。

 

「──おいモモ、今何を見た?」

 ハンドルを握ったままのバーサーカーがこちらへ振り返り、鋭い声で私を呼んだ。

 

「……ネズミ?」

 そのままを伝えると、車体に強い衝撃が走る。

 

「アーチャー殿! ()()()()()()!」

 鬼気迫る声でバーサーカーは叫ぶ。

 それに反応し、アーチャーが乱暴に席を立って、周辺を見る。

 

「なんですの……どうしてデザートランナーを止めましたの?!」

「敵襲だからだ! マスター2人は席から動くな!」

 アスカと私を指しながら釘をさすバーサーカー。

 席から立ち上がろうとした彼は、その動きを唐突に止めた。

 

「……マジか」

 紙で出来たネズミが、黒い何かを彼に突きつけている。

 

「これ……銃、です?」

 アスカの小さな顎をいたぶるように、銃口がつついていた。

 

「ネズミ、こんなに……!」

 声が焦りでうわずってしまった。

 見た目は愛らしい紙ネズミが、椅子の下から計器の陰から廊下につながる扉から、ぞろぞろ湧き出してくる。

 どの個体も小さな銃を抱えていて、重たそうに持ち上げると、私達の頭を狙った。

 

「全員手を挙げろ!」

 扉が開き、誰かが入って来る。

 

「不審な動きを見せれば!」

 若い女性の声だ。

 

「その瞬間にぶち抜くぞー!」

 背丈は、160cm弱、黒髪は腰の下まで伸ばされ、ボリュームのある2つ結びになっていた。

 顔は戦争映画で見るようなガスマスクで隠して、体は青いダウンジャケットで、もこもこと覆っている。

 上半身の装備とは反対に、足は銃を収めるホルダーを付けてむき出し、靴は動きやすさ重視の革ブーツだ。

 

「っ……」

 私はなすすべなく、シートベルトをつけて座ったまま、両手を挙げた。

 運転席と後部座席の間に立っていたアスカのアーチャーは、指をぴくりと動かし、弓を顕現させる素振りを見せたが。

 

「……」

 自らのマスターを思ってか、大人しく機械部品のついた両手を上げた。

 

「アーチャー殿、堪えてくれ。ここで戦闘すれば、勝敗の如何に関わらず全部終わりだ」

 座ると立つの間の、中腰姿勢のバーサーカーが、焦りで上擦った声で彼を諫める。

 

「さぁ! 命が惜しくば有りボトルぜんぶ出しな! あと甘いものあればちょーだい」

 鮮やかに車内を制圧した彼女は、大振りの銃をがちゃがちゃ鳴らしながら、運転席へ銃口を向ける。

 

「この船の燃料からリソースは融通する、中身は一緒だからな」

 言葉に迷っていた私達を庇うように、バーサーカーが交渉を切り出す。

 

「マジ……本当か!」

 ガスマスクでも隠しきれないほどの嬉しそうな返事。

 

「機関室に案内する」

「してして!」

 指示に従いバーサーカーが立ち上がると、紙製のネズミ数十体が銃を構えたまま彼の後ろをよちよちついていく。

 彼は運転室を出る前に、開いた廊下への扉を気づかれないようにそっと足の裏で押した。

 自動的に閉まるはずの扉は、何か仕掛けが作動したのか開きっぱなしになった。

 

「ボトルー! ぼっとるー!」

 バーサーカーの背中に銃を向けながら、謎の女性は上機嫌に後をついて行った。

 

「こっちだ」

 予備燃料のある倉庫へ行った2人の会話が聞こえてくる……。

 

「燃料たんまり……(わたし)だけだったら半年は保つ……」

「詰め替えをする。容器を」

「えーっと、ポーチにボトル入れてたから……はい! お願いします」

「どうせなら詰め替え方法をよく見ておくといい、ほら」

「わーすごい綺麗……お星様みたいに光るとろとろの液体が蛇口から出て……」

「やってみるか? 何事も経験だ」

「うん! わー……楽しい! ぴかぴかで綺麗! ふふふー!」

「良かったな! あはははは」

「えへへへへ」

「あははははは! ……はははは」

「ぎゃふん!」

 遠くから聞こえた会話と悲鳴の後、運転室に残り、私達へ銃を突きつけていた大勢の紙ネズミ達が、一斉にぺらぺらと倒れた。

 

「……終わりました」

 バーサーカーが盗賊団のリーダーを背負いながらやってきた。

 そのままごろりと床に転がされた彼女を観察する。目立った外傷は無いが、完全に気絶していた。

 

「拘束の為の道具を持ってきます」

 アーチャーはネズミが手放した銃を蹴飛ばして運転室隅に転がしながら、バーサーカーへ声をかける。

 

「俺はここから離れられないので、頼みます」

 サーヴァント2体は短いやり取りを終えると、倉庫へとアーチャーは向かっていった。

 

「彼女、サーヴァント……ですの?」

 アスカは座ったまま、ただの折り紙になって体の上に積もったネズミを触りつつ、バーサーカーに聞く。

 

「うん。でも焦っていたのか判断力が落ちていたな、あんな分かりやすい手に引っかかってしまうとは……」

 気絶している彼女。その顔のガスマスクをバーサーカーが丁寧に外す。

 前髪でおでこを隠している可愛らしい顔が現れた。

 アーチャーから手渡されたロープを、無言でバーサーカーは受け取り、彼女を手早く拘束する。

 ……サーヴァントの簀巻きが出来上がった。

 

「リソースを渡して介抱し、彼女から話を聞こう。

 旅立ってからイレギュラーな事態ばかりで、まともな情報がない」

 剥いだマスクを空いている席に置きながら、彼はそう言った。

 

「拷問しないの?」

 私から、お決まりのネタになりつつあった事を聞く。

 

「マスターモモはどうしてそんな物騒な事を言うんです? 加虐趣味って怖いなぁ……」

「拷問なんて考えたことすらありません」とでも書いてあるような、純朴な顔をされた。

 

「……突っ込まないよ」

 危険なボケだと判断し、身を引く。

 

「ざーんねん」

 バーサーカーは表情を変え、左半分だけの顔で意地悪そうに笑った。

 

「ボトルに詰めて、液体リソースを譲渡……。

 この車の燃料でもありますし、わたくし達にも余裕があるわけでは……」

 先ほどまで銃を突きつけられていたアスカは、黒い髪を手で落ち着き無く触りながら、椅子の上で姿勢を崩している。

 

「気前よく振る舞えば、相手も緩む。

 必要経費だと思って欲しい……とバーサーカーは思った」

「この判断が後に響かないといいのですが……」

 アスカは黒い瞳に不安を浮かべて、姿勢良く傍らに立つ自身のサーヴァントを見上げた。

 

「有益な情報が聞けるといいのですけど……」

「そうですね、マスターアスカ」

 簀巻きにしてからのんびり待つこと、数分。

 

「うーん……(わたし)の城……どこにも無いだなんて……嘘だぁ……」

 彼女がうなされながら、もぞもぞと動く。

 

「マーちゃん……離れたくないよ……マーちゃん……はっ!」

 そして、目を開いて覚醒した。

 

「……ひょっとして、拘束されてる?」

 流石サーヴァントと言うべきか、状況を正確に理解している。

 

「うん」

 横たわっている彼女の直ぐ側で、あぐらをかいて座っていたバーサーカーが答えた。

 

「こ、殺される感じですか……」

 床の上でぶるぶる震えながら青ざめた顔で聞く彼女。

 

「俺のマスターからそっちの方向はNG出てますので、このままお話しする感じですね」

 バーサーカーは両腕でバッテンマークを作った。

 

「拷問とか、ミキサーにかけたりとかも……しない……?」

「しない。残念だな……昔の上司仕込みの108式殺戮技術を披露できないのは……」

 アスカのアーチャーは矢のみを指先でもてあそびながら、その会話を見ている。

 

「エッチな事もNGでお願いできます……?」

「現場判断だけど、うん」

「良かった~。ほら、(わたし)って可愛いから、ちょっといけないハプニングが起こりがちで……」

「物の怪の類とのお付き合いはNGで」

「なんで物の怪の類ってことバレてるの!?」

 簀巻きのまま慌てふためく彼女を無視して、バーサーカーが無言を貫いていたアーチャーの方へ顔を向けた。

 

「物の怪ですよね?」

 アーチャーは答えず、指先に挟む矢を3本に増やした。

 

「ほら~アーチャー殿もこう言ってるではないですか~」

「分かんないよー……何がどうなってその結論に至ったのか分かんないよー……」

 彼女は震えを大きくしながら、「理解できない」というシンプルな恐怖に全身を支配されていた。

 

「アイスブレイクをプリーズ! お話しする前に緊張感を解こう! 自己紹介とかして!」

「えっ……物の怪に名乗るとか縁起悪いですし……」

 無表情で言い放つ彼に。

 

「ひー」

 彼女は小さく裏返った悲鳴を上げた。

 

「終わった……このまま姫は自ら死を懇願するほどのインタビューを受けて、心をボロ雑巾みたいにさせられた後、荒野にボロ雑巾のように捨てられるんだ……。

 その後ワームロボットとかあいつらとかに頭からサクッ、ホクッ、ホグッ……されるんだ……。

 盗賊団なんてやるんじゃなかったぁ……うわーん!!」

 顔面を蒼白させて怯え、しまいには泣き出した彼女が可哀想になって、私は口を挟んだ。

 

「盗賊団のリーダーさん、私はモモタ、モモって呼んでね、あちらに座っている可愛い子はアスカ。

 サーヴァントと一緒に旅してるの」

 バーサーカーが暗い緑の瞳で私を一瞬じとりと見たが、何も言い出しはしなかった。

 

「旅……? 貴女も住んでいた都市壊れちゃったの?」

 彼女はほんの少し桜色の混じる瞳に涙を浮かべながら、床の上から私を見つめる。

 

「それもあるけれど……人助けの旅をしているんだ。

 人も、サーヴァントも、分け隔て無く助けたいと思ってる」

 簀巻きの彼女の顔がぱぁっと晴れた。

 

「……(わたし)の事も助けてくれる?」

「うん、出来る範囲で。ボトルも分けてあげる」

「やったー! モモちゃん優しいー!」

 床の上の簀巻きがくねくね動く。

 

「えっと……名乗るね! 

 アサシン47だよ! コードネームみたいで格好いいでしょ!」

「よろしくね、アサシン47」

「うん!」

 涙目で笑みを作る彼女はとても愛らしい。

 

「バーサーカー、自己紹介して」

「了解だぜマスター」

 バーサーカーは投げやりに名乗る。

 

「俺はバーサーカー04。

 こっちに立っておられるすっごく格好いいフルアーマード特A級サーヴァントなお方は俺の推しのアーチャー961殿。

 ──良さを一目で()()しろ、 新人(ニュービー)

「モモちゃん! この人すごい早口でマウントとってくるんですけど!? 

 あっ……でも961さんカッコいい……推せる……最終回でのマスク割れ楽しみに待っていていいですか……?」

 アサシン47と名乗った彼女の顔がほわっと緩んだ。

 

「好きな事は人間の心がぶっ壊れる判定すれすれを探ること! よろしくな! 

 友愛の証に握手しようぜ、握手!」

 バーサーカーは満面の笑みで手を差し伸べる。

 

「簀巻き状態で出来るわけ無いじゃん! 

 ヤバい。振る舞いと思考と会話がぜんぶ噛み合ってない……これが生バーサーカー……!」

 彼女はまた青ざめ、縄で巻かれた棒状のままぷるぷるしている。

 ……いつまでも簀巻きスタイルは可哀想だ。

 

「何か事情がありそうだし、優しくしてあげよう? 拘束とってもあげて良いかな」

「まぁ……マスター2人の判断に任せるよ」

 私の提案を聞き、バーサーカーは笑顔から滑らかにつまらなそうな顔へ移行する。

 

「そんなに怖いサーヴァントでもなさそうですし、縄を解いてあげましょう?」

 アスカは席から下りながらそう言った。

 私は彼女の身体を抱き起こして、ロープに指をかけて外す。

 2人で少しずつ解いていった。

 

「モモちゃんもアスカちゃんも良い子だね……ありがとう」

「バーサーカーが酷いこと言ってごめんね」

「トバルカインのサーヴァントはその……個性的でして」

「アスカちゃん、オブラート貫通してるよ、その言葉」

 何重にも巻かれた縄は解かれ、彼女の体は自由になった。

 

「えーっと、どれだけ2人がお人好しでも、ただではボトルくれないよね……」

 急に猫背になり、揉み手でおずおずと訪ねてくるアサシン47。

 

「うん。ボトルと引き換えに知ってる事を教えて欲しい」

「情報ちょっとしか持ってないけど、いい?」

「全然いいよ! 少しでもいろんな事を知りたいんだ」

 そう答えた私に、アサシンはふんわりとした笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、姫と仲間達の拠点に行こっか」

 

 

「砂漠といったらネズミの盗賊団ですよ。分かんない?」

「バーサーカー04さっぱり元ネタ分かんない」

 すっかり解放されたアサシンは、ハンドルを握っているバーサーカーと懲りずに会話をしている。

 

「アーチャー殿、炙ります?」

 監視のため、アサシンの真後ろに立っていたアスカのアーチャーは、左手を開くと、その内側に何かを顕現させようとした。

 

「会話に地雷原しかない! 久し振りに生き物と話すんだから楽しくお喋りさせてよー!」

 顔面を蒼白させ、オーバーなリアクションをとる彼女はとても賑やかなサーヴァントだ。

 車内が少し明るくなったようにも感じる。

 

「あっ、04さん、そこの大岩の手前で止めて……ばっちりでーす」

 アサシン47の道案内のもと走らせていたデザートランナーが静止する。

 

「ここですの? 車内からは何も見えませんが……」

 140cmのアスカが、背伸びしてフロントガラスの向こう側の荒野を見る。

 

「隠してあるに決まってるじゃん」

 唇の左端を上げて、彼女はしたり顔を作ると、ダウンジャケットの内側から黄色い紙を抜き出した。

 

「行ってきませい! デザートフォックス!」

 彼女の指の内側で、ただの紙が緻密に折られ、手の平サイズの黄色い狐に様変わりした。

 床をぴょんぴょん跳ねながら車外へ。

 車窓から見える場所に現れると、最高気温80℃越えの熱い砂の上をとことこ歩き、前足で地面をかく。

 

「水や火、雷相手でも無い限り、紙は耐久性あるからねー。

 過酷な環境でもへっちゃらでーす」

 狐の前足の動きが止まると、突然そこに四角い大穴が出現した。

 斜めに下がっていく道が見え、その奥は深い闇に包まれている。

 

「スキルで隠していたのか……うーん、化生」

「04さんは姫に当たりが強いな」

 アサシン47がどんよりと呟く。

 

「えへん……ここから拠点にいけるの。

 外は熱いし、オゾン層薄いから紫外線やばいし。これからの時代は地下でしょ」

 デザートランナーが大穴にゆっくり近づき、隠されていた道へとタイヤをのせる。

 

「ごーごー!」

 地下に入り、光量が少なくなったので、バーサーカーが前方ライトを点けた。

 紙で作られたキツネが先を走り、道案内をしてくれる。

 小さい瓦礫を幾つも踏み越えて、車は天井の高い大きな空間に到着した。

 

「ここまで潜れば、人が生身で歩いても大丈夫!」

 アサシン47が明るい声で告げる。

 

「04さん、運転ありがとうね。騎乗スキル持ち?」

「いや、デバイスを体に埋め込んで色々とズルをしている」

「あー……自己改造系でしたか」

 彼女との会話の間に、デザートランナーのエンジンをバーサーカーは停止させた。

 照明など無いので、倉庫にあった手持ちの懐中電灯を1人1個持った。

 車体横の扉から外に出て、謎の地下都市へ足を踏み入れる。

 

「建築様式が古いですね」

 先に下りていたアーチャーが、ヘッドギア越しに周辺を見回しながら呟いた。

 

「961さん直ぐ分かっちゃったんだね、すごいな……。

 みんなで調べた情報なんだけど、この都市は内乱で破壊されたらしいの。

 その後200年間くらい放置されていたみたい」

 彼の呟きに、懐中電灯のスイッチを点けたアサシン47が答えた。

 

「物資も無いけど、その代わり危険もないよ、安心してね」

 彼女の足元に、折り紙から生まれた手の平サイズキツネが寄り添う。

 

「こっちこっち、ついてきて……04さんは武器を仕舞ってね」

「断る!」

「最終決戦もかくやのテンションで(わたし)を拒絶しないで!」

 コントのような会話を聞きながら、彼女とキツネを歩いて追う。

 明かりで上を照らすと、煤けた天井が見えた。

 10分くらいだろうか、焼け落ちた大きな通路を進む。

 

「到着です、お疲れ様ー」

 見知らぬ場所への恐怖と不安定な足場による疲労感を覚え始めた頃、アサシン47は足を止めた。

 

「みんなただいまー。お客さんつれてきたよー」

 デザートランナーを停めた場所より狭い、丸いがらんとしたホール。

 懐中電灯の光で照らすと、テーブルがあることが分かった。コップやゴミなどの生活の跡も。

 

「これ……」

 私は気が付いてしまった。

 サーヴァントの腕につけられている、人工素材で出来たつるりとした番号札が4個、テーブルの上にのせられている。

 

「アサシン47、その」

 一息遅れで察したアスカが、白い手で胸を苦しそうに押さえた。

 

「いやー……生きているサーヴァントや人と話すのは半年ぶり……」

 アサシンは独り言を続ける。

 アーチャーはその札へ視線を向けると、片手を悼むように胸へ当てた。

 

「アサシン47、それはなんだ」

 全員が察しのついていることを、あえて気が付かない振りをして、バーサーカーが冷たく聞く。

 

「……お墓、みんなの」

 ふんわりとした笑顔で、アサシン47が言う。

 

(わたし)の仲間ね……もう、みんな死んじゃったんだ」

 闇に包まれた地下都市に、彼女の寂しげな声が響いた。

 

 

 第11話 それ行け砂漠の盗賊団! 

 終わり




 単語説明

  
 地下廃墟
 何らかの原因により棄てられた地下都市。原因は聖杯戦争であったり、階級制度に不満を持った市民達の暴動であったりと様々。こういったものも貴重な資源であるため、ワームロボットは見つけ次第発掘、回収をしている。
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