アサシン47と仲間達がかつて倒したはずの異形、機械化サーヴァント。しかし、その敵は過去の人間の亡者と共に復活していた。
アーチャー961はその機械化サーヴァントを、星座の力……水瓶座の概念を宿した存在ではないかと、考えを口にする。
敵の能力を考察し、逃げるのではなく、立ち向かう事を選んだ一行。
3体のサーヴァントによる協力戦闘が始まった。
アサシン47は銃撃、バーサーカー04は槍と日本刀の波状攻撃で亡者を砕き、水瓶座の機械化サーヴァントの注意を引く。
しかし、幾ら亡者を倒しても、機械化サーヴァントは謎の液体を撒いて復活させてしまう。
──だからこそ、2体のサーヴァントは一撃にかける。地下廃墟内のドーム骨組みに立ったアーチャー961は、全力の魔力放出を敵にぶつけた。
飴色に溶けていく風景。機械化サーヴァントも同じ様に砕け、融解し、戦いは3体のサーヴァントの勝利に終わった。
魔力放出の熱気で焼けていく地下廃墟を後にするモモ達。
モモとアスカはアサシン47に対し、「これからもよろしく」、「一緒に旅をしよう」と語りかけるのだが、その言葉はあっけらかんと否定された。
「行かないよ。
「本当にお別れですの……?」
まだアサシン47の言葉の意味を受け止め切れていないアスカが、戸惑いながら彼女に聞く。
「うん」
問い掛けに、深々と頷いた。
「
ボトルの本数を確認し、折り紙でコウモリを折りながら、彼女はてきぱきと準備をしている
「それにさ、サーヴァント3人も養える余裕無いでしょ? さっきの戦いで液体リソース減っちゃっただろうし」
装備の点検が終わると、彼女はすっくと立ち上がった。
「立つ姫跡を濁さず! さよなら、モモちゃん、アスカちゃん、04さん、961さん!」
彼女の言葉に、アスカは艶やかな髪を触りながら、露骨に寂しそうな表情を浮かべる。
アサシン47はその表情に、名残惜しそうな微笑を返した。
「あっ、そうだ」
顔はぱっと変わり、明るい声で言葉が続く。
「刑部姫」
放たれた単語の意味が語られる次の瞬間を、私とアスカ、2体のサーヴァントは静かに待った。
「それが、
日本っていう島国にあった、姫路城っていう綺麗なお城に住んでいたお姫様なの」
……真名を明かすということ。それは、私達への深い信頼の証。
「これはバーサーカー調べですが、お姫様ではなく長生きして化生に変じたキツネです、マスター」
真面目な空気に耐えられなかったのか、彼は私の耳へそれなりの声量で囁いた。
「最後くらいかっこつかせろー!
もう……バーサーカー04さんは、いつかマスターへ自分のことをちゃんとお話しすること!」
いい雰囲気を台無しにされてしまったアサシン47……もとい刑部姫は、立てた指でびしりとバーサーカーをさした。
「04君のせいで場が乱れたので仕切り直ししまーす……。
お世話になりました! ご飯、とっても美味しかった」
刑部姫が丁寧に腰をおる。
「色々教えてくれて、ありがとう」
「どういたしまして、えへへ……」
私が正直な感謝の気持ちを言うと、彼女は頭の上のゴーグルの位置を照れ隠しのためにくいくいと調整した。
「折り紙使う時、思い出してね、
贈り物の、色とりどりの紙と上質な手触りの和紙は、倉庫に大切に保管してある。
「うん、絶対に忘れない」
私も深く頷いた。それから、彼女にどうしても伝えたい気持ちを言った。
「サーヴァントは何も残せないだなんて、私は思わない。だって、貴女は沢山の感情をくれたもの、思い出を話してくれたもの」
刑部姫の消えてしまった仲間、マスターのマコト君。私はきっと、それを忘れることはない。
「……今の言葉、姫の心にすんびっしっ! と刺さったかも」
お互い手を恐々出しあって、照れながら握手をした。
「お元気で、刑部姫」
アスカも握手をする。白い手同士が重なり合う。
「アスカちゃんもこれから先しんどそうだけど……頑張って」
「平気です、わたくしは1人ではないのですもの」
彼女は刑部姫の前で、機嫌良さそうに胸を張った。
「みんなの旅を応援してる。それじゃあ……」
初めは敵で現れて、最後には素敵な仲間になった彼女は、沢山の思い出を抱えて旅立っていった。
振動で小さく動いてしまうハンドルを微調整し、タイヤを真っ直ぐに。
「運転……下手じゃない?」
「じょーずじょーずですよ、マスター」
緊急時に私もデザートランナーを運転できるようにと、少し練習を始めたのだ。
「こっちにブレーキついてるし、危なかったら俺が止めるよ」
バーサーカーは足を組んで、タブレットを操作し何かを調べあげている。
「……あのね」
「うん?」
彼の顔がこちらを向いた。
「私、貴方が消えても、貴方のこと、覚えていたい……」
「ふーん」
「……バーサーカー、どうか真名を教えて」
質問をしてしまったことによる緊張感から、頭の中にベルが浮かんで、わんわんと鳴り始める。
彼、どんな反応をするんだろう。
「■■■■……」
意外な態度だった。
彼は戸惑う素振りも見せずに、さらりと真名を口に出す。
だが、あの都市28のキャスターが話した時と同じ、私の耳では正しく聞き取ることが出来ない。
「ごめんな、マスター」
彼は暗い緑の目だけを動かして私を見る。
「俺の名前も魂も、もう1人の運命の人に全てあげてしまったから」
後方で、アスカがアーチャーに紙飛行機の折り方を教えている声が聞こえた。
「じゃあせめて、その人の名前を……教えて」
心臓がばくばくとうるさい。だめだ、運転中は気持ちを落ち着けないといけないのに。
「……言えないな。でもずっと……」
彼は長い沈黙を挟んだ後、「黙っていた方がおもしろい」と。
そして、笑んで、半分だけの唇の上に立てた人差し指を滑らせた。
「アーチャーは上手に作りますのね!」
沈黙する私達とは対照的に、後ろの2人は和気あいあいと言葉を交わしあっている。
「廊下で飛ばしてみましょう! わぁ……」
別れたアサシンが飛ばしたものだろうか。
車の外、フロントガラスから見える青い空に、黒と黄色、2つの紙飛行機が飛んでいた。
それは舞い上がると、太陽と重なり見えなくなる。
……紙飛行機が、もう一度私達の前に姿を表すことは無かった。
第14話 青い空の下、夢は飛んでいく
終わり
第14.5話 ぼくとお姫様のお話
「マーちゃん! マーちゃん!」
……おっきーが、僕を呼んでいる。
火事のせいで熱い床に頬をつけて倒れたまま、彼女を見る。
やけに視界が暗いけど、おっきーに怪我はないことが分かった。
「なんで……
おっきー、泣いていた。
「大好きだからだよ、おっきー」
当たり前の事だから、当たり前のように答えを返した。
「おっきー、僕のこと、覚えていてね」
ひとりぼっちになる彼女の事が心配で、ついそんな事を言ってしまった。
「覚えてる! 絶対に忘れない! だから……」
ああ、安心した。
ずきずきと痛む肺から、深い息を吐く。
僕よりすごいおっきーが、僕のこと覚えていてくれる。
おっきーが僕のことを他の人に話してくれれば、その人も僕のこと覚えていてくれる。
それがぐるぐる続けば、僕が死んだって、誰にも忘れられない。
……まるで、何百年も語り継がれる映画のスターみたいに。
「おっきーのお城、いっしょに見れなくてごめんね。もえちゃう前に、にげて」
「や、やだ、マーちゃん……」
「またゲームしようね、ネズミのとうぞく団のゲーム」
楽しかったことが次から次へと浮かんでは、真っ暗などこかへ消えていく。
「47さん、行きましょう……貴女まで死んでしまいます……!」
「やだ……マーちゃん! マーちゃん!!」
おっきーの声が遠ざかっていく。
良かった、逃げてくれたんだ。
僕が3歳の頃からずっと一緒にいてくれた、大切な友達。
元気でね、また……どこかで会おうね。
「さよなら。でもずっと……あいしてる」
そう言った後、大きな音がして……何も、分からなくなった。
第14.5話 ぼくとお姫様のお話
終わり
登場キャラクター紹介
マコト
身長/体重:? cm・? kg
出身:地下都市 年齢:8歳(死亡時)
属性:混沌/中庸 性別:男性
好きなもの:ゲーム、お菓子、おっきー
嫌いなもの:かまってくれないお父さん、お母さん
アサシン47のマスター。上流階級の少年。
都市378で開催された聖杯戦争に巻き込まれ、死亡した。
終末世界のアサシン
クラス:アサシン
真名:刑部姫0047
マスター:マコト(既に死亡)
姫路城に住まうと言われた城化け物。その正体は年を経たキツネとも。
……何があったのか、スナック菓子やジュース、ゲーム、漫画など、すっかり人間文明にかぶれている。
マスターとの関係は良好で、終わりがくるまで仲良く暮らしていた。
モモ達と別れた後、彼女は夢を見た。もう一度マスターと思いっきり遊ぶ夢である。
有り得ないことだと知りつつも、彼女は笑って、荒野を歩き続けた。
夢はいつか叶うものだと信じていたからだ。
終末世界のランサー
クラス:ランサー
真名:?0074
マスター:?
アサシン47と行動を共にしていた女性サーヴァント。トネリコの槍を振るう誇り高き将。
機械化サーヴァント襲撃の情報を伝え、みなを逃がすため
終末世界のセイバー
クラス:セイバー
真名:?0230
マスター:?
アサシン47と行動を共にしていた壮年の男性サーヴァント。伝説に誉れ高いケルトの猛者。
ランサー74の消滅の後、怯える3体のサーヴァントを逃がし、虹色に輝く剣の宝具を解放。
無数の亡者の撃破と引き換えに消滅した。
終末世界のキャスター
クラス:キャスター
真名:?0120
マスター:?
アサシン47と行動を共にしていた女性のサーヴァント。天空の神にして冥界の神。
ランサー74、セイバー230の消滅で混乱を極めたキャスター101とアサシン47を励ました後、亡者と水瓶座の機械化サーヴァントを道連れにするため宝具を発動、消滅した。
終末世界のキャスター
クラス:キャスター
真名:?0101
マスター:?
アサシン47と行動を共にしていた女性のサーヴァント。千の夜を物語ることで生き延びた賢人。
……仲間を立て続けに失い、リソースもない。
絶望にさいなまれるアサシン47に、彼女は1つ、希望の物語を語り、眠らせた。
そして、自らのリソースを全て譲渡。残った亡者をおびき寄せるため遠くへと走った。
死を誰よりも恐れていた彼女は、セイバー230の宝具の光を見て、キャスター120の言葉を聞き、変わった。
「死が周りに振り撒かれた時、自分だけが生き残る道を選ぶのではなく、自分を覚えていてくれる大切な仲間にだって、生きていて欲しい」と願うようになったのだ。
水瓶座の機械化サーヴァント
クラス:?
真名:詳細不明(十数体のサーヴァントを混合したもの)
マスター:?
サーヴァントを粉砕して、機械の体に詰めたもの。その体は水瓶座の力を宿す。
能力は、自身の不死と、酒を媒介にしたその譲渡。
大きな水瓶を支える1本だけの足はバランスが悪く、酒をどんどんこぼしてしまうが、無限に湧くので問題はない。
にごった偽りの神酒を撒き、塵となったかつての人へ偽りの生を与える怪物は、3体のサーヴァントの協力で倒され、融解させられた。
……この水瓶はもう二度と、誰かをもてなすことはない。
私は神の給仕役。あふれる酒を持ちながら、神を探して西へ東へ。
心を込めて高らかに、歌いながらパレードを。
頭を振って酒を撒き、万の人を誘いましょう。
この世の神はどこにいる? この世の救いはどこにある?