フェイト/デザートランナー   作:いざかひと

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 前回までのあらすじ
 学生同士の諍いの現場から、幼なじみであるアスカを連れ出したモモ。
 人気(ひとけ)の無い美しい裏庭で、2人は昼食を食べながら話をする。

 学生がアスカを責めていた理由。それは、生存権の有無によって厳格に区別され、処分される、残酷な現実への怒りだった。
 アスカは語る。「生まれながらに決められた、上流階級という恵まれた地位」、それに苦しむ胸の内を。
 モモは彼女を慰める言葉を見つけることが出来ず、その場は別れる。

 夕方、学園玄関でアスカと偶然出会い、また次の日会おうという約束をしたモモ。帰宅し、ベッドに入りながら、明日を夢見て眠りについた彼女だったが、自らのサーヴァントのせっぱ詰まった声に起こされる。
「都市運営を司ってるAIの野郎、狂ったらしい」とバーサーカー04は告げ、強引にモモを連れ出し、逃げ始めた。

 気温の異常な上昇、火に包まれる都市、焼けていく人々。
 それら全て見捨てるかのようにバーサーカー04はモモを背負い走る。
 たどり着いた駅で2人が目にしたのは、『聖杯戦争』という謎の儀式の開催を宣言するAIの姿だった。

 混乱するモモの前に、寝間着姿のアスカが現れる。
「自分のサーヴァントに守ってもらった」と語るアスカ。
 幼なじみとの再会を無邪気に喜ぶモモに、彼女は乾いた瞳で告げる。
「殺し合い、しましょう?」
 マスターであるアスカの言葉を合図に、戦闘態勢をとるアーチャー961。
 ──これより始まるは、人外(サーヴァント)同士の、人智を越えた殺し合い。


第3話 少女の志しは星より青く

 

 

「えっ……?」

 殺し合いという言葉に、私は呆気にとられてしまった。

 そんな私の前にバーサーカーが一瞬にして移動し、飛んできた何かを掴んだ。

 

「アーチャー殿……俺のマスターを殺す気か?」

 それは青白く燃える矢。掴んだ右手の中で、篭手を焦がしながらあっという間に燃え尽きる。

 

「答えてくださ……いや、答えろ、アーチャー961」

 アスカのアーチャーは何も言わない。ただ、白と青に輝く弓矢を構えた。

 武器、だ。電子ライブラリで見た、他者を殺すための道具。

 

「アーチャー……勝ってね」

 主である彼女の乾いた言葉に、サーヴァントは頷くだけだった。

 次の矢がつがえられる。真っ直ぐ、私に向けて。

 

「……ではこちらも加減をしないぞ、アーチャー!!」

 バーサーカーはその手に槍を出現させた。金属の穂先と木製の持ち手の、飾り気のない武器。

 そして、犬歯を剥き出しにした獰猛な表情で襲いかかった。

 

「アスカ。や、止めよう。アーチャー、家族なんでしょ、怪我を……殺し、ちゃう、かも」

 私は混乱しながら友達に呼びかける。

 

「……家族なんかじゃ、なかった」

 ナイトローブ越しにも分かる細い体を、アスカは両手で抱き……それから、かきむしった。

 

「貴女もサーヴァントの戦いを見れば分かる!! 

 彼らは人間と同じ形をしていても、人間なんかじゃない……兵器なんだって! 殺戮の道具なんだって!」

 熱風に体をあおられて、倒れそうになる。

 目を横に向ければ、2体のサーヴァントの戦闘の余波で瓦礫が粉砕されて細かく吹き飛んでいた。

 

(バーサーカー……あんな動きが出来るなんて……まるで映画みたい……)

 現実とは思えない光景が繰り広げられている。

 矢は空間を裂く音を発しながらバーサーカーを狙うが、彼は壁を走りそれを避けた。

 アーチャーが次の攻撃を行おうとする、が、壁を蹴って接近したバーサーカーの槍をかわすためにその動きを中断した。

 白い外套をはためかせ後ろへ飛び去りながら、矢をつがえ、撃つ。

 

「わたしね、知ってしまったの、知らない方がよかった事、知ってしまったの」

 見慣れた町の風景が、変わる事などないと思っていた世界が、どんどん壊れていく。

 

「システムの声を聞いた? この都市で、1人しか生き残れないんだって」

 武器と武器がぶつかり合う音の狭間で、誰かの泣き声が聞こえた気がした。

 

「分からないの、もう、自分が生きたいのか、死にたいのか分からない……」

 アスカは戦いや崩壊からも目を逸らして、しゃがみ込む。

 

「……あの時、助けてくれてありがとう」

「えっ?」

 唐突な感謝の言葉に、私はうろたえた。

 

「今日のお昼のとき、助けてくれたこと、嬉しかったの。

 ……初めてだったから。打算も裏表もなしに、人間に助けてもらえたこと」

 しゃがみ込んだままの彼女が顔を上げた。すすのついた頬の上に、固い笑顔を無理に作っている。

 

「生きてるだけで憎まれて、うらやまれて、苦しかった……。

 ねぇトバルカイン、貴女が勝って。

 やだよ、こんなに苦しいのに生きるの、もう、やだ……」

「……私」

 暑くて熱くて、涙も出ない。

 どうしてだろう、こんなに胸が痛いのに。

 

「マスター!!」

 バーサーカーがアーチャーの弓の一撃を槍で受け流しながら、私に叫んだ。

 

「どうしたい?!」

「どう……って」

 瓦礫が積もった不安定な足元は、まるで私の心を映しているようだった。

 

「これは俺が決める事じゃない! お前が頭で考えて決める事だ!」

 彼は絶え間なく飛んでくるアーチャーの矢を、槍でなんとかいなしながら、私に声をかけ続ける。

 

「俺はこの時を待っていたんだ! お前がその手で運命の針を動かすその瞬間を!!」

 バーサーカーと10年一緒に暮らしていたけれど、こんな感情的な声初めて聞いた。

 

(知らなかった。彼、こんなに熱い人だったんだ)

 人間の枠を超えた戦いは、バーサーカーのやや劣勢で続いていく。

 

「俺ってば加虐趣味だからな! 

 ずっとイライラしていたんだ! 人の生き死にが勘定される……こんな狭っ苦しい世界に!」

 弓と同じ速度でアーチャーが突っ込んできて、バーサーカーが圧される。

 しかし彼は突進を槍の持ち手で受け止め、決して倒れない。

 

「マスター! 世界は広いんだ! お前が欲しい未来がどこかにきっとある! 掴み取れる! 

 1人じゃできないって泣き言を言うのなら、俺が手と頭を貸してやる!」

 アーチャーは弓と矢を両手に持って、バーサーカーが持つ槍へ交互に打ち付ける。

 

「俺はお前のサーヴァントだ! 家族などではない! 

 お前の暴力を! 感情を! 代行するための道具だ!」

 火花が散るその一撃一撃が、槍にひびを加えていく。

 

(考えなきゃ、自分がどうしたいか、彼に何をしてほしいのか、言葉にしなきゃ……!)

 彼の声が心に届いて、からからに乾いた瞳から、涙が一粒こぼれた。

 

「私の、気持ちは……」

 何を感じているのか、何をしたいのか、うんと考える。

 今までは全部、都市運営のAIやバーサーカーが考えてくれた。

 けどこれからは、自分の頭で考えなきゃ。

 いや──考えたいと、思った。

 

「マスター! お前の気持ちを、言えぇぇ!!!!」

 槍が砕け、アーチャーが手に持つ矢尻がバーサーカーの胴体に突き刺さった。

 60℃の熱風を肺に満たしながら、私は思いの丈を叫ぶ。

 

「死にたくない! でも……戦いもしたくない! 誰も傷つけたくないし、殺したくないよ!」

「……トバルカイン」

 アスカが顔を上げ、機械的にバーサーカーと戦闘を続けていたアーチャーが止まった。

 

「痛い……」

 右手の甲を見る。

 そこにある時計のような形の赤い模様が、色鮮やかさを増していた。

 いや、幼い頃からずっとここにあったのだ。

 ただ、私が『戦う』という選択肢から目を背けていただけで。

 

「令呪……!」

 サーヴァントを使役する、マスターの証。

 ──意志の、戦う意志の証明! 

 

「痺れるほど甘い考えだ……現実を知らないにもほどがある! マスター!」

 攻撃を受けた体で、バーサーカーは言い放つ。

 

「でもそれでいい! それがいいんだ! 叶わぬ夢を叶うって言い続けよう! モモ!」

 彼のその顔は、初めて会った時、自死を乞うたあの時の……満面の笑顔だった。

 

「そんな人間が、俺、一等好きなんだ!」

 ぴたりと停止しているアーチャーを押しのけ立ち上がり、駆け寄ってくる。

 熱せられた合成樹脂の地面に、彼の血が垂れ落ちた。

 

「叶わなかったらどうなるの……?」

 恐々と聞く。

 

「幸福な気持ちで死ぬんだ! 俺がいる限りそんな事させないけどな!」

「死ぬのはいやだよ!」

「は、は、あはははは!!!!」

 彼は血濡れの顔で笑う。彼はサーヴァント、バーサーカー。

 ──理性持たぬ、狂戦士。

 

「勝利条件を、対象の殺害から無力化に変更する……」

 笑顔を浮かべたまま平坦な声で言うと、彼はデバイスを埋め込んだ右腕を天井へ向けた。

 

「都市運営のシステムへ、スキルにより干渉開始……成功」

 天井から細かな水が溢れ出す。

 

「スプリンクラーを作動させた。建物の延焼はこれで防げるはず」

「……アーチャーは、どうするの? 大人しくさせるの? ……殺して、しまうの?」

「殺せない、俺の方がステータス低いからな。でも、戦いを止めさせる事は出来る」

 彼は左側の唇を得意げに吊り上げてから、くるりと体を反転させ、前方へ向けた。

 

「アーチャー殿、私は貴方の真名を知っている」

 ばきりと音がした。アスカのアーチャーが姿勢を起こし、瓦礫を踏み砕いたのだ。

 

「どれほど覆っても、隠しきれない高貴さ、卓越した弓の腕、燃える矢。そして何より」

 バーサーカーはもう一度その手に槍を出現させた。

 

「バーチャル碁を打ち合って分かった。

 全体を広く俯瞰し、未来が見えているかのような戦いの運び方。貴方の真名は……」

「言わないで! モモのバーサーカー!」

 しゃがみ込んでいたアスカが慌てて立ち上がったが、足をもつれさせて転んでしまった。

 バーサーカーは転んだ彼女をちらと見たが、口を止めるそぶりは無く、そのまま決定的な一言を告げる。

 

「──アルジュナ。

 王の子、パーンダヴァ五兄弟の三男にして、雷神の血を受け継ぐもの。

 勝利の後、全てを終わらせ後世に託し、白き山に去った誇り高き戦士」

 ……アーチャーが美しい弓を投げ捨てた。地面に落ちる前に、それは映画で見た雪のように溶け消える。

 

「だめ、アーチャー、だめ……」

 アスカが彼の元へ行こうと地面を這う。大きな瞳の幼さ残るその顔には、怯えがはっきりと浮かんでいた。

 

「私を……」

 彼の顔の下半分を覆い隠す、獣の顎を思わせる意図の黒いギアから、声が轟く。

 

「アルジュナと……」

 手が、瞳を覆っている暗い琥珀色のギアをわし掴む。

 

「呼ぶなぁぁぁぁぁ!!!!」

 そして、壮絶な音と共に砕かれ、剥がされた。

 黒い獣の顎は壊れつつ開かれ、彼の瞳が露わになる。美しい顔にある、瞳の怒れるその色は……金。

 

「ああああああああ!!!!」

 アスカのアーチャー、真名アルジュナは、全身から雷鳴をほとばしらせた。

 

「バーサーカー、私を、よくも、よくもぉぉぉ!!!!」

「アルジュナ殿、いや、何か……ん? ああ、なるほど」

 バーサーカーは何か合点がいったのかぽつりと呟く。

 

異なる欲心(アルターエゴ)……か。──美しいものだ」

 その言葉の意味を、彼に聞く余裕など無い。

 

「無名のバーサーカーごときが! この()に勝てるものか!!!!」

 雷を帯びた瓦礫がずいっ……と浮かび上がる。

 

「電磁石、レールガン……いや、理屈なんてどうでもいい! 

 凄いな……人知を超えし英雄! 本当に素晴らしい!」

「その顔を仮面ごと吹き飛ばしてやろう、俺を知ったものは皆殺しだ!!」

 私は物陰に隠れつつ、なぜか楽しそうなバーサーカーに声をかける。

 

「勝てるの?!」

「──ああ、危なげなく」

 彼が言った瞬間、巨大な瓦礫が目視できないほどの速さで放たれた。

 

「はっ……」

 アルジュナは、獣の外骨格じみたギアがつけられた口を、大きく開いて笑みを作る。

 バーサーカーの左腕が、簡単に消し飛んだからだ。

 

「っ……」

 私は悲鳴を上げないよう唇を噛む。場面の凄惨さにアスカが口元を抑えた。

 

「おー……」

 バーサーカーは、感心したような、どこか間延びする声を上げながら、腕のあった場所を見る。

 

「次は頭だ! バーサーカー!」

「いや、違う」

 サーヴァントは金に輝く瞳を開きながら宣言をしたが。

 

「やり直しだ、アルジュナ殿」

 バーサーカーの左腕が、瞬きの内に再生した。

 

「……何だそれは」

 致命の一撃を与えた側であるアルジュナが、呆けたような表情をつくる。

 

「何だと思う?」

「……加護か?」

「私だって一所懸命考えたんだ。貴方だって、私の真名に思いを馳せてくれ」

「どうでもいい! 一瞬で全身を蒸発させる……!」

 浮かばせていた瓦礫がぼとぼと落ちて、転がる。

 頭部にある耳のようなパーツが金色に輝き始め、その下で、アルジュナは眉を、顔を歪ませた。

 それを見たバーサーカーは、声を上気させながら呟く。

 

「殺意を剥き出しにした表情……実に人間らしい……。

 神話の英雄は強く、美しいな。泥をすすっていた私とは大違い……」

 アルジュナが手のひらに何かを発生させた。目を凝らせばなんとか、銀色の球体だという事が分かる。

 ──それを目にした瞬間、全身を恐怖が支配した。

 

(『あれ』は、だめだ)

 命あるものである限りどうしようもない、そんな、絶対的なものだ。

 

「バーサーカー」

「ああ、詰んだな、マスター」

 あっけらかんと言い放つ。

 

「神罰執行……」

 アルジュナはこちらを睨みつけながら謳う。

 

「うう、ごほっ、こほっ」

 その時、地面に伏せっていたアスカが激しく咳き込んだ。

 遅れて、口からぽたぽたと血が落ちる。

 落ちた血は、スプリンクラーの水に混ざって流れていく。

 

「チェックだ、アルジュナ殿。必殺の一撃を放つ前に、貴方のマスターが死ぬぞ」

 バーサーカーは、輝く緑の瞳から冷徹な眼差しを敵へ飛ばした。

 

「60℃の熱波の中、何時間彷徨っていた? 

 その後立て続けに激しい戦闘だ、彼女の小さな体では耐えようがない」

 バーサーカーが話している間に、アルジュナが手の内に発生させていた光が、徐々に弱くなっていく。

 まるで、アスカの命の灯火が消えていくのと呼応するかのように。

 痙攣が止まらない彼女の元へ、アルジュナは駆け寄った。

 

「マスター! マスター!」

 今にも死にそうなアスカを抱きかかえるアルジュナの元へ、バーサーカーは歩いていく。

 

「取り引きしよう、アーチャー0961」

 アルジュナの金の瞳が、自らのマスターと敵であるバーサーカーを素早く交互に見る。

 

「私には自己も他者も回復させるスキルがある。条件さえ飲んでくれれば、貴方のマスターを治療しよう。

 私がたどり着いてしまった貴方の秘密についても口外しない」

「……言え、バーサーカー04」

「停戦と同盟を。このままでは私のマスターも死んでしまう、一緒に脱出しよう」

 再生したばかりの左手を胸に当てながら、バーサーカーは冷静な声で条件を告げた。

 

「……信用できるか」

「とは言いつつも、貴方は飲むしかない。自分のマスターを殺したくはないだろう?」

 アルジュナは数秒間ざりざりと歯ぎしりをしてから、苦々しげな顔で頷いた。

 

「……勝利条件を達成できた。では、治療を」

 激しく痙攣を繰り返すアスカの青白い額に、バーサーカーはそっと右手を当てた。

 緑の光が内側にゆっくりと染み込んでいき……それが消えると、一筋の汗が流れた。

 

「気管支の火傷、破壊されていた神経の再生……その他もろもろ、治療した」

 アルジュナの腕の中で、アスカは静かな息を立てて眠っている。

 

「さて、問題もまるっと解決した事だし、脱出しよう」

 とんでもない方法で、とんでもないサーヴァントを無力化したバーサーカーに駆け寄る。

 顔を、じっとりとした眼差しで見てやった。

 

「バーサーカーって、性格悪いね」

「一緒にいて気がつかなかったのか? モモは人間観察眼を磨くべきだな」

「……口も悪い」

「私は聖人のようにも悪人のようにも振る舞えるぞ。

 マスターは私の使い方に気をつけてくれ」

「うん……」

 会話を終え、幼なじみを抱き抱えているアルジュナに声をかける。

 

「アルジュナ、ごめんなさい。そしてありがとう、アスカを助けてくれて」

「……俺の事は、アーチャーか、961と呼んでくれ」

「事情があるんだよね。分かった、アーチャーって呼ぶ」

 アルジュナもといアーチャーは、顔を隠すように手を当てる。

 機械のようなギアが再び現れ、覆った。

 

「……上流階級の居住区に、乗り物がある。それがあれば過酷な外の環境にも耐えて移動できる」

「アーチャー殿はお詳しいこと」

「無駄口を叩くな、バーサーカー。

 ……行こう」

「待って!」

 移動を始めようとしたサーヴァント2体を制する。

 

「……他の、人は?」

 この都市の人口は約1万人。

 被害も火事も酷い、助けを求めている人がきっといるはずだ。

 

「スプリンクラーのシステムに干渉した時、救難信号も飛ばした」

 バーサーカーが私の疑問に答える。

 

「直近の3都市が反応した、12時間以内には助けがくる。

 避難用シェルターも、ロックされていたが解放した」

「でも、今、苦しんでいる人がいる」

「……そうだな、マスターモモ」

「助けに、行きたい」

「駄目だ」

「何で……!」

 バーサーカーはデバイスを埋め込んだ右腕を動かすと、天井からぶら下がっているモニターを作動させた。

 

「これは……」

 アーチャーが感心したかのような声を出す。

 そこに映っていたのは、焼けていく都市の内部と、その中で動くサーヴァント同士の戦い。

 

「この都市のAIが集めていた映像だ。間違いない、他の都市でも聖杯戦争のようなものが始まっている。

 ……サーヴァントとマスターが一所(ひとところ)に留まれば、更に争いを呼びかねない」

「でも」

「モモ、きつい言い方になるが、俺は人間を数で見るぞ。

 俺がスキルで数人ぽっち癒すよりも、このまま立ち去った方が、生存人数は最終的に多くなると計算した」

 彼の非人間的な発言を聞きながら、拳に力を込める。

 

「納得しろとは言わない」

 そう続けた彼に、言葉を返す。

 

「納得しないよ、私の信念と違うから」

「……良いマスターだよ、君は」

 バーサーカーは私の肩を優しく叩いた。

 私はまだ思いを訴える。

 

「……上流階級エリアに行く途中、治せそうな人を見つけたら、治療していこう。

 これはマスターとしての命令だから」

 肩を叩いた手を握り返し、彼へ告げる。

 バーサーカーは私に言った。

 

「使えている主に、自分とは相反する意志をぶつけられるというのは……やっぱり良いものだな」

 

 

 第3話 少女の志しは星より青く

 終わり




 単語説明


 マスター
 サーヴァントの所有者の中でも、魔術的な契約で繋がり、この世界への楔として機能している存在を指す。
 楔として機能すればよいので、人間やアンドロイド体のマスターもいる。
 体のどこかに浮かび上がる令呪が、マスターとそうでない単なる所有者かを見分ける印。


 令呪
 サーヴァントと契約しているマスターに浮かび上がる3画の赤い紋様。
 デザートランナー世界では、サーヴァントと契約しているマスターが戦う意志を強く抱いた時、色濃く浮かび上がるようになる。
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