遠い昔、どっか彼方の銀河系にて──。
コスモカルデア学園で行われる過酷でもない中間テスト。
それは、ヒロインXとヒロインX(オルタ)……もといえっちゃんにとって耐え難い現実であった。
成績の良い生徒からのノート借用、勉強会という名のお菓子暴食会、意味のない三徹……。
現実に抗えば抗うほど、若き2人の精神は疲弊し、やがて深夜テンションへ至った。
シェアルームを飛び出し、着の身着のまま駆け出した2人。
うねりをあげる宇宙船『ドゥン・スタリオンⅡ』のエンジンは、目的地を設定せずに暗黒空間を爆走し、片っ端から買い集められた和菓子とジャンクフードの数々が無重力の室内へ浮かぶ。
船内にノリで備え付けられたカラオケマシンは、エンドレスで数年前のヒット曲をかき鳴らした。
狂気狂乱の宴は、世界崩壊の前日のように続いていた。
──だから、この出会いは運命だったのだろう。狂った2人が、狂った男達に巡り会ったのは。
第45話 サーヴァントユニヴァース二次創作
「偶然じゃないんだー! いやーお!」
「ふたり……出会えたのはきっとー……いぇい」
船内の無重力空間の中、私とえっちゃんは中古で手に入れたカラオケマシンに歌声を叩き込んでいました。
採点なんてしません、そもそもテストというものの存在意義が分かりません。
破滅に繋がる現実逃避だとしても、私達は止まりませんでした……物理的にも。
「Xさん、お菓子と飲み物、無くなってしまいました」
「あっ、ほんとだ。ドゥルキホルテで買い込んだ分が全滅ですね」
えっちゃんが徳用黒糖饅頭の大きな空袋を、マイクの握っていない方の手で振っています。
私も『厚切りポテトチップス、ケルトな美味しさチーズ味』の最後の一枚をぱりっとかじります。濃厚でうまい!
「仕方なし……近場で降りて補充しますか」
「周辺惑星を検索しますね、えっと……」
マイクとから袋を両手から離した、体操服姿のえっちゃんが、自動運転にしていた『ドゥン・スタリオンⅡ』のシステムをぽちぽち操作します。
「一番近海にあるのは、『スイトロプ』という惑星ですね」
「聞いたこと無い星の名です」
「辺境特有、見どころもないのどかな田舎惑星……だそうで」
「ドゥルキ無さそー」
「スペースバックスも出店していないみたいです。でも、お茶屋さんのお菓子の評判は良いみたいです」
「コーラでチーズを流し込みたい気分ですが……たまにはえっちゃんと並んで、和菓子とお茶をいただくのもいいですね!」
宇宙船が片田舎へ向かい推進を始めます。
「さぁ! 私達の現実逃避は始まったばかりですよ!」
「貴殿らさぁ……若いからって暴飲暴食しちゃだめだぞ」
そして現在に至ります。
「くっ、可愛いお茶屋さんでコスモ黒蜜抹茶パフェを食べたのがあだになるとは……!」
宇宙船の停留所近くのお茶屋さんで、抹茶アイスと白玉と粒あんとたっぷりの生クリームに、お好みの量のとろーりとした黒蜜をかけていただくパフェをがっついていたら、意識が遠くなり、気がついたら悪の本拠地っぽい牢屋の中。
壁は、後ろ以外はすけすけスケルトン。えっちゃんが隣の部屋でぐったりとしているのがよく見えます。
「手足にしびれ、頭痛、意識は朦朧……おのれヴィラン! 毒を盛りましたね!」
「うーん……」
「卑怯者! 私が気絶する前に自己紹介をしてください! さぁ!」
冷たい床に剥き出しの太ももをぺったりとつけたまま、透明な壁の向こうに立っているサーヴァントを睨みます。
「……では、シリアスに格好良く行うか」
身長ぎりぎり170cm越えてる男は、肩で留めている黒い重厚なマントを腕でひるがえらせ、緑の瞳で私を見ます。
「我こそは、ヴィラン連合の外伝を汚すものにして、宇宙全土を救済する力を自らの獣性によって簒奪した者。
因果の末路、罪と罰の
悪を意味する黒い艶々とした日本風甲冑に身を包み、布に覆われた指先を彼はぴんと伸ばします。
髪は整えていないのか黒色のぼさぼさで、顔の右半分は木製のおどろおどろしい仮面で隠されていました。
どこからどう見ても完ぺきな悪役です。
世界がひっくり返って1万3回新シーズンに突入したとしても、こいつが味方側で採用されることはないでしょう。
「呼び方を選ぶのがめんどくさい! ささっと真名を言ってください!」
「真名はまだシーズン中盤により言えぬ。
アルターダークバーサーカー04、縮めて04と呼ぶがいい。
4は大好きな人との年齢差の意味だ☆」
「……おっさんですか? おっさんなのに乙女趣味で語尾に星とかつけちゃったりするんですか?」
「おっさんじゃない、肉体は20代前半だ。そして俺に口喧嘩で勝てると思うな、いっぱい泣かせるぞ」
口数の多い敵に、私は強く歯ぎしりをします。
(ヴィラン連合……! 宇宙を股に掛けて大きな悪事を行ったり行わなかったり、仲間内で争ってぐだぐだになりかけたりもする悪の組織……!
その外伝ですからえーっと……二次創作みたいなもんですね)
体調不良の私を見下ろしている04に悟られないよう、スケルトンな隣部屋にいるえっちゃんの様子を横目で見ます。
メガネの下に脂汗を浮かべ、体操服姿で荒くふぅふぅと呼吸している彼女は、絶体絶命っぽいです。
「この惑星……『スイトロプ』は悪たる俺の領地。貴殿らは不用心にも迷い込み、敵の手に落ちたという事だ」
彼が手を広げてからぐっと握ると、革がこすれあってきゅっきゅっと鳴きます。
「あの美味しそうなパフェに……毒を盛ったのですね?!」
気分はどんどん悪くなります。地面に倒れ込みながらも、敵へ真実の言及を続ける健気なヒロイン私。
「……違うけど、惑星名物にそんな事しないけど」
ヴィランは気まずそうに目線をそらしながら答えました。
「コスモカルデア学園在籍のうら若き乙女よ、血糖値……という言葉を知っているか」
「なんとなく」
「血液に含まれているブドウ糖の値を意味する。
糖は血流にのって筋肉や脳、臓器に届けられ、その箇所を動かすエネルギーとなる」
「はぁ……」
「ちゃんと聞いて、クロスする運命を歩む少女よ」
なんか教師陣を思い出す口振りに、私は冷たい床にころころ転がりながらふてくされました。
「糖が体内に取り込まれると、この値が上昇する。
この数値は高すぎても低すぎても、体内に悪影響を及ぼすのだ」
「……で?」
「押収した宇宙船の中を勝手に見たのだが……貴殿らの生活、ひどいな」
「なっ……!」
「ストレス、生活習慣の乱れ。最も体によくなかったのが、短期間で多量の糖の摂取」
私の頭に浮かび上がる、思い当たる行動の数々。
「体が糖を取り込みすぎてしまい、高血圧から血管が悲鳴をあげ、四肢のしびれなどの不調が現れ、気絶……」
彼は残酷な真実を床に寝そべる私へ言い放ちます。
「……毒じゃなく、暴飲暴食による高血糖ですね。
サーヴァントなので糖尿病にはなっていませんが、数日安静にして、今までの食生活を見直してくださいね」
苦しそうにうめき声をあげる隣の部屋のえっちゃんの額から、汗がつーっと一筋流れました。
「わ、私とえっちゃんをどうするつもりです!」
ヴィランは腕を組み、顎に手を添えながら答えました。
「ヴィラン連合のオークションに出してお小遣いにしようかな……。
けど、黒い方は珍しい血筋だし、家柄フェチの『あの人』へのお土産にしようかな……悩むな……。
でも今更女の子を持って行ってもありきたりか……」
「ぎゃー! 絶体絶命!」
私は叫びます。
ここは銀河警察もめんどくさがって来ない辺境の惑星、頼もしい仲間がいるコスモカルデア学園も遥か彼方。
誰の助けも望めないからです、ピンチ!
「……いつまで遊んでいる」
絶望を深くするように、もう1人のヴィランな声が。
「おお」
04が振り返り、親しげに声をかけます。
「あけみっちー殿!」
桔梗の花の模様を付きの紫の陣羽織を着た、白と黒のツートーンの髪を持つ、難しい顔をしている年上そうな男性。
「……あけみっちー?」
彼は04の言ったその単語の意味するところが分からなかったのか、眉間にシワを寄せました。
「……申し訳ありませんでした、ギャラクシー日向守殿。あけみっちーの語感のよさにつられ……」
「気になさらず。私の目的の為に領地を貸してくださっているのですから、貴方の方が立場は上だ」
「あけみっちー殿」
「……」
「日向守殿、ごめんなさい」
揃ったヴィラン2人は、私の事など歯牙にもかけず、大人特有のめんどくさい世間話を続けています。
「目……的……」
現れたあけみっちーの言葉が気にかかり、思わず口から出てしまいました。
白髪の彼は小さく笑みを浮かべると、ぶつぶつと何事かつぶやき始めます。
「そうだな、いずれ銀河全土に知れる事。先んじて知っている者が多少増えようと問題はない……か」
「証明班、スポットライトを日向守殿に」
04が両手を叩いて合図を出すと、強い光があけみっちーに浴びせられます。
白と紫の色纏ったヴィランは腕を広げると、服の布を空間に舞わせながら、高らかに野望を語り出しました。
「ダークマターのエネルギーを利用し! 銀河創世まで時を逆戻す!
そして……ビッグバン、宇宙の誕生を信長様に置き換える……『ギャラクシー信長様計画』っ……!!
それが私の野望だ! ふははははははは!!!!」
「宇宙の全てがノブになるんだってさ……な!」
私はごろんと転がって04を見上げました。
「……04、どういう気持ちでコイツに協力してるんです?」
彼はぼさぼさ髪を手で撫でました。
「いや、夢に向かって頑張ってるな……きらきらしているなーって……。
あと個人的な恩義、あと夢敗れて破滅する様子を最前席で見たい。頑張っている人間は大好きさ!」
「性格がシンプルに悪い!」
「いぇーい」
ピースサインを片手に作る彼。
「──油断、しましたね」
恐ろしい野望をぶちあげたヴィランの声を裂くように、彼女の声が聞こえました。
「オルト・ライトニング!」
頼もしさを感じる赤い雷が透明な壁にひびを入れ、その後に続く怒涛の蹴りが障害を完全に粉砕しました。
「……04」
「日向守殿は退避の準備を。この……」
赤いブレードが謎のバーサーカーに迫りますが、筋力が高いのか、彼はそれを片手で受け止めます。
「竜の息吹纏う少女の相手は、俺がしよう」
「新顔のヴィラン……ですか」
魔力をまとった刃を受け止められながら、空中で完璧に静止している格好いいえっちゃんがそこにいました。
輝く瞳を大きく開き、顔に闘志をみなぎらせている彼女は、先ほどまで脂汗を流し、ぐったりしていた人物と同じには見えません。
「……ネクロカリバーを手で止めるとは、熱くありませんか?」
「もちろん熱いさ、痛覚を無視してるだけで」
「まさか、改造サーヴァント……!」
「正解だ! ……格好いいだろう!」
男は不適に笑います。
えっちゃんは光で出来た剣の刀身を一度消滅させ、宙で回転しながら着地、体勢を整えました。
「えっちゃん!」
未だ閉じこめられている私は、彼女へ声をかけます。
「過剰であった血中ブドウ糖を全て魔力に変換し、無理やり体調を整えました。くっ……」
答えるえっちゃんの背や足は、かたかた震えています。
「高血糖からの低血糖……魔力でごまかしているが、そう長くは保つまい。
その血、我が主への土産としよう」
バーサーカーは的確に診断し、左半分だけで獰猛に微笑むと、日本刀と槍を両手に持ちました。
「Xさん……手を、私に……」
「えっちゃん?!」
「はや……く……」
正面を向いたまま、こちらに伸ばされた白い小さな手。
私は高血糖で震える手を持ち上げ、触れようとします。
──こつんと、透明な隔たりが私達を阻みました。
「俺の当座の活動資金になるがいい!」
振りかぶられたヴィランの剣と槍が彼女に迫りますが、私はえっちゃんを信じて目を開き続けました。
「この光は……!?」
えっちゃんの全身から、ほとばしる赤い雷。
「何故だ! 貴殿にそんな余力……はっ、まさか!」
「貴方の推測通り」
透明な壁で触れ合えなかった彼女と私の手。
でも、その間を繋ぐように、きらきらと光る粒子が私からえっちゃんへ送られていました。
「Xさんの体を蝕んでいた血中のブドウ糖を、私に移した。
これでXさんの高血糖は治り、私の低血糖も補われた!」
えっちゃんの体の震えは収まりました。
そして、武器の黒い持ち手の両端から、赤い光の刃が伸び始めます。
「──
彼女は姿勢を低くし、敵を見定めます。
「
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!」
駆け出すと共に、えっちゃんの宝具が炸裂し、建物もろとも、謎のバーサーカー04の胴体を半分に切り落としました。
「馬鹿な……俺が……こんなところでぇぇぇ!!!!」
負け惜しみ混じりの断末魔が響きます。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
ヴィランの吹き飛んだ胴体は、いつの間にか地面に空いていた溶鉱炉っぽい赤い縦穴に落ちていきました。
……声は遠ざかっていきます。
「Xさん、大丈夫でしたか」
「……ふぅ、ひどい目に会いました」
スケルトンな壁は強度はそこまででもないのか、えっちゃんの武器の持ち手をガンガンぶつけると、ぽろぽろ壊れました。
「下半身は蒸発させましたし、上半身は穴に落としました。流石にあの状態から復活はないでしょう」
えっちゃんの手を借りながら私は立ち上がります。
「……展開に困らない限りは」
そう話しながら曇るえっちゃんの顔を見ながら私は頷きます。
「そうですね……先の展開にこの宇宙が困らない限りは……」
肩の力を抜こうとしたその瞬間、けたたましい警報と音声が鳴りました。
『所有者のロストを確認……この基地は爆発します! この基地は爆発します!』
「まずいですよ、えっちゃん! 雑な爆発オチで私達を殺そうとしています!」
「急いで脱出を!」
私と彼女は手に手を取って廊下を走ります。
「Xさん、こっちが押収した宇宙船の置き場みたいです」
中古カラオケマシンまで搭載した愛しの『ドゥン・スタリオンⅡ』は無事のようでした。
空に近かった燃料も何故か満タン、お菓子のゴミが散乱していた内部も不思議な事に片づけられています。
「エンジン吹かして全速力で逃げますよ! なるべく最寄りのドゥルキ方面へ!」
「……その、どこかで優しいお味の和食をいただきませんか?」
「……ですね」
食生活の乱れという指摘された恐ろしい現実に打ちのめされながらも、私達は旅を続けます。
──その先に、「中間テスト受けなくても何とかならないかなー」の希望を求めて。
「04、生きているか」
「……」
「ふん……」
少女の宝具を受け炭のようになった男をチビノブ達に回収させると、私は巨大宇宙船の船内……ブリッジへ戻る。
「ノッブ、ノブブ!」
「ノブー!」
画一的な制服に身を包んだのチビノブの手により、宇宙船は出発準備を整え、隠し港から秘密基地を後にした。
「銀河警察の無線を傍受しろ」
「ノブ!」
私の指示に従うチビノブは、機器を駆使してクラッキングを行い、程なくして船内に銀河警察の連絡が流れ始めた。
「ふむ……星を丸ごと押収とは……」
背後から聞こえる足音。
「野蛮な……銀河警察は悪に対して余裕がないと思いませんか? 日向守殿」
頭だけを後ろへ向けると、すっかり元通りに回復した04が立っていた。
「相変わらず、驚異的な回復スキルですな。それも改造で付け足したもので?」
「いや、俺の簒奪の副産物さ、日向守殿。それとも、機械の生命維持装置をつけた方が良かったか?」
彼は黒の外套をなびかせながらチビノブの一体へ近づく。
「チャンネルを変更しろ。火急で知りたい情報がある」
「ノブ……」
銀河警察の面白みの無い連絡通信から、彼の指示の元チャンネルが切り替えられた。
流れ出すその音。
『銀河を宛もなくさまよう皆さんこんばんは。1ヶ月に1度のアルターエゴラジオのお時間です。
本日のパーソナリティはメルトに代わってわたし、パッションリップです……はぁ』
「パッションリップちゃんだー! 2ヶ月ぶり4回目!」
04は腰を屈めると、座っていたチビノブの胴体を両手でむんずと掴んで下ろし、椅子を奪う。
「お便り読まれるかなぁ……」
座り、足を組むと、番組に耳を傾ける。
『アルターエゴラジオの人気コーナー、アルターなお悩み相談ー』
やる気の無い少女の声の後に、気の抜けた拍手の音が続く。
『えっと、ペンネーム、アルターお腹真っ黒さん……わぁ、性根が透けて見えるようなお名前ですね』
「マジかマジか! 俺のお便りじゃん! 日向守殿聞こえました?!」
私は手近なチビノブの頭を撫でる。癒される……ノブー……。
『ご相談内容は……「長い間離れていた大切な人に、プレゼントをしたいのですが、何を贈るのがいいでしょうか?」ですか』
星は瞬き、チビノブ達は独特の鳴き声をあげながら操舵を続ける。
『そんな事をラジオに相談しちゃうんですか……?
相手のプライバシーとか1㎜も考えていないんですね、どん引きです、サイテーです……。
こんなひどいお便りにもお返事しないとだめなんですか? ええと……』
少女はめんどくさがりながらも、答えを出す。
『自分の頭で考えてください。トラッシュ&クラッシュ! はい、次のお便り』
ありきたりなお悩み相談コーナーが続く。
自らのお便りが粉砕されたと言うのに、04は上機嫌だ。
「ひと月に一度のアルターエゴラジオは最高だな……。
来月のパーソナリティはアルターエゴ界に輝く伝説のあの方だし、楽しみだぜ……」
すっきりとした面持ちで気持ちを言い終えると、彼は椅子をくるりと回して私の方を見る。
「土地も資産もチビノブ生産プラントも無くなって弱ったな……。
近場の星に、昔お世話になりましたヴィランが住んでいますので、そこに向かいましょう」
あの男の顔を思い出すと、腸が煮えくり返りそうだ。
「しかしあやつは信長公に幾度も謀反を……」
「ノッブは気にしてないと思うよ」
「お前にあの方の何が分かる!!!!!!!!!!」
「こわっ……近寄らんとこ……」
「ぐぅぅぅぅ……!!!!」
私は歯を噛み締め、気持ちを落ち着かせてから、04に問いかける。
「……04、本来の主の元へ戻らないのか?」
言葉を聞くと、彼は軽やかに笑った。
「──なぜ? 世界が俺に悪であれと望んでいるのに」
唐突に04は立ち上がる。肩から伸びるマントが、黒竜の翼の皮膜のごとくたなびいた。
「『あの人』の行う悪と、向けられる呪いを簒奪するのが我が役目。
原典から遠く離れた星の海の中であろうと、それは変わらない」
彼は手近なチビノブを無造作に掴むと、腕に抱いた。
「日向守殿、貴方がどこにいようと『織田信長』を求めてしまうように」
「ノッブ! ノボォ!?」
古井戸のような闇に満ちた瞳を持って笑う男の腕の中で、チビノブは両手をばたつかせている。
「……『ギャラクシー信長様計画』、この野望は、紛れもなく私の意志だ」
私は彼からチビノブを奪い取った。
「どうだろう? 偉そうにふんぞり返っている運命が、貴方の心を上から塗りつぶしただけかも……」
暗い緑の瞳に、苦々しげな顔をした私がくっきりと映っている。
「……流石、運命に抗おうとした謀反者は言うことが違いますな」
分かりやすい皮肉を言うと、彼はにこりと微笑んだ。
「そこをつつかれると本当に傷つく。日向守殿は厳しいなぁ……」
チビノブ達が、私と彼のとげとげしいやり取りと、あわあわとしながら見ている。
「いずれお互いに刃を向けあうのですから、それまで仲良くしましょう?」
緊迫した空気に満ちたブリッジの中で、誰にも理解できない精神構造をした男が私に言う。
「ええ。その時までは」
油断ならない相手だと改めて心に刻み、返事を返す。
船は、とあるヴィランの根城へと静かに向かっていた……。
第45話 とても番外編 サーヴァントユニヴァース二次創作
終わり
登場ヴィラン紹介
アルターダークバーサーカー04
真名:?
黒い鎧とマントを身につけた、ぼさぼさの黒髪に暗い緑の瞳を持つ確固たる悪役。
サーヴァントユニヴァースを混沌に落とすヴィラン連合の端に、いたりいなかったりする暗黒な男。
身長はスキルを使用して好きな人より下となるよう調整している。そう、好きな人は見上げたいタイプ。
得意な事は資産・資源の管理と町づくり、整理整頓、お掃除、観察眼を駆使した人間関係の破壊。華がないと本人も気にしている。
支離滅裂に見える行動と言動は、演技もあるが、絶対的な余裕と強い加虐性からくるもの。
本来は主である『あの人』に仕え、外付けのアルターエゴとして振る舞わなければならないのだが、なにぶん狂っているので、力を簒奪し、出奔した。その結果、同朋に蛇蝎のごとく嫌われた。もう故郷帰れないね。
奪った力由来の異常な回復スキルにより、惑星爆発からでも復活できる体は、ギャグ空間に両足突っ込んでおり、『爆発オチからの実は生きていました展開』が無限に出来ちゃう事に頭を悩ませている。
感謝と恩義を感じているあけみっちーに協力し、行動を共にしているが、彼の計画がうまく行くとは思っていないし、彼の主たるノブとは価値観が違いすぎるので、そのうちさっくりお別れする予定。
暗黒銀河軍師ギャラクシー☆ミツヒデ
真名:明智光秀
サーヴァントユニヴァースを混沌に落とすヴィラン連合に属する男。
本人は二つ名などいらないと突っぱねたが、申請書類に必ず書かなければならない事項であったので、サンプルから一番ましだと思うものを選んだ。後に激しく後悔している。
得意な事は細やかな気配りと、長期間に渡る壮大な計画。
宇宙創世を『信長創世』にすり替える『ギャラクシー信長様計画』を現在進めており、これがうまくいった暁には宇宙全てがノブになる。
けれど悲しいかな、計画というものは完成間際でヒーローに見つかり、潰されるのが物語のお約束となっている。
現在はアルターダークバーサーカー04と行動を共にしているが、彼とはどんな平行世界で何度出会おうとそりが合わないので、使えるだけ使ったらさっくりお別れする予定。
ギャラクシー☆チビノブ
真名:チビノブ(ギャラクシー☆ミツヒデ製)
ミツヒデの手により遺伝子改造され、プラントで大量生産されたすごいチビノブ。
そのオリジナルは伝説の傭兵チビノブだとかそうでないとか、あとちょっぴりのミツヒデ遺伝子。
へいきんあいきゅーは300。
チビノブは資金稼ぎのため販売され、安い労働力として、要人警備、スペースバックス、ドゥルキ、コンビニ、駐車場整理、地域のどぶさらい、レンタル家族、道路工事、スタントマン、バラエティ番組の前説、銀河宅配便、花見の場所取り、プロレス……など、あらゆる職種で頑張っている。
しかし、その汎用性の高さと従順性により、銀河の若者の就職先を奪い、大きな社会問題となっているのも事実。
ミツヒデの手によって全チビノブの遺伝子には特殊なオーダーがインプットされており、彼の命令で現在の職務を放棄し、殺戮を開始する。
その名も『オーダーノブノブノブノブ』。
これが銀河にもたらす巨額の経済損失と人材不足に、まだ誰も気がついていなかった……。
単語説明
ドゥルキホルテ
色んな雑貨を安く販売しているディスカウントストア。可愛い動物のマスコットが飾られている店舗は華やかでよく目立つ。
あんな物もこんな物も売っていて、何かと懐の寂しい蒼輝銀河の若者の心を掴んでいる。
惑星スイトロプ
アルターダークバーサーカー04が所有……というより統治していた星。
スイトロプとは、スイートロープがなまって変化したもの、つまり甘縄、甘い罠に非ず。