フェイト/デザートランナー   作:いざかひと

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 モモを助けるため、灯りの無い廊下を這いずるのはバーサーカー04。
 消えゆく彼はその脳裏で何を思っていたのか……。



 ──思い出すのは浄土の景色。澄んだ光と水にあふれた、誰もが夢見た理想郷。
 そして俺の前に立つ光の存在こそ、何百何千何億に渡り、出会いたかった人に間違いなく。
 だから手を伸ばした。それが破滅へ繋がるとしても。

 


第13.5章 ■■くん、■を救う
第56話  俺の『運命』の話をしよう


 

 

「人を助ける仕組みになってしまった君を──助けに来たんだ」

 張り詰めた表情で、俺は『彼』に心からの言葉を贈り……偽りも悪意もない眼差しで、答えを待ち続けた。

 

「……!」

 光り輝く手が俺の手に重ねられる。

 安堵と喜びで、自然と口角が上がってしまった……我ながら分かりやすすぎる、チョロくない? ……いやチョロくはないよ。

 

(何千何億、何(こう)旅してきたと思うんだ。

 少しくらい嬉しがったっていいじゃないか、恥も見得も擦り切れたぞ……)

 これからは自分に正直に生きよう、今決めた。

 好きなものは好きと言い、嬉しい時は素直に笑ってみよう。

 ──こんどこそ自分らしく、生きてみたいと思ってしまったのだ。

 

「……上様!」

 感情をそのまま乗せた明るい声を出して、正面を向いた瞬間。

 

「──えっ?」

 体が宙に浮いていた。いや、正確には……。

 

(背負い……投げ……!?)

 受け身も取れず、背中から地面に落下。地を満たしている花と清水が、飛沫として共に舞い上がる。

 

「……?」

 なぜ、投げ飛ばされたんだ私。

 混乱しつつも立ち上がろうとしたら、続けて全身に強い衝撃が。

 それは、横から掌底(ていしょう)打ちをぶちかまされたからだと直ぐに分かった。

 

(上様……?)

 倒れずに受け流し、彼へ向き直ると、見たこともない武術の構えをとっていた。

 

「なるほど……そういうことか……」

 俺は腕をさすりつつ、爆速で理解した。

 

「勝った方が! 相手の言うことを聞く! そういう勝負だな!」

 単純明快、分かりやすい! 

 

「私も男の子(おのこ)だ! 燃えてきた!」

 ……しかし問題は、俺が上様と戦って勝てるか、ということだ。

 会えたことでとてもテンションが上がっている頭を意図的に冷やし、1秒を何倍にも希釈して考えてみる。

 

(勝て……勝て……?)

 生前であれば上様の思考を読んで先読みし、動けばよかったが、目の前の薬師如来と化した彼の心の動きは、現在進行形でちっとも読めない。

 

(……あの構え、異国のものを感じる。如来という概念が生まれた天竺より流れてきた武術か?)

 不味い、俺の知らない分野だ。

 関節の稼動域から動きを推測することもできるが……戦闘中に行うとしたら、それはあまりにも()()思考だ。

 

「……」

 お互い、不用意に動けない。

 花の香り漂う清浄な大気に、網膜が乾くような緊張が混ざる。

 

『……』

 先に動いたのは如来の方であった。摺り足のような音のない動作で、一瞬にして距離を詰められる。

 放たれる蹴りを俺は腕の側面で受ける。骨と筋肉に衝撃が伝わり、頬まで揺れた。

 その足首を掴み、体制を崩そうと試みるがびくともしない。

 

「であるならば!」

 吠えながら、戦法を変えるため数歩下がるが、その甘い考えを拳が追撃する。

 腕でいなし、胴などへの致命傷を避けるだけで手一杯だ。

 

(ええぃ! 俺をいじめる平八郎を思わせる悪辣さだ! ……これならどうだ!)

 戦国最強がそんなに偉いかよ! 俺のような裏方も大切なのですが! と、思考を並列させながら次の行動へ。

 

「ふっ……!」

 あちらの土壌で戦う必要などない、場の流れを強引にでも変える。

 彼から放たれた強烈な回し蹴り、その攻撃は、胴体をぐっと低く落とすことで避ける。

 淡い色彩の花が揺れている地面に手をつけ、ぐっと前に踏み込んで跳躍し、相手の懐へ。

 腰を両腕で抑えにかかる。つまり。

 

「相撲! 相撲で決着つけようぜ!」

 足を取り、そのまま、ずだんと押し倒した。

 

「──勝った!」

 そう断言した瞬間、体を掴まれ、投げ飛ばされる。

 衝撃で後ろ向きに3回転がり、そのまま仰向けで地面へ倒れた。

 花と清水が辺りに舞い散る。空が青い、太陽が眩しい。

 

「は……」

 少しだけの放心から我に返れば。

 

「ははははは!」

 私は可笑しくって可笑しくって、子どものように声を上げて笑っていた。

 

「だって、大の大人が……喧嘩して、物事決めるなんて……ふふっ、あははは!!!! 

 誰かに見られたら……は、ははは! あはは!! はっ……」

 喉がくつくつ鳴って、お腹が痛い。

 しばらく童のように、地面をごろごろと転がりながら笑い続けてしまった。

 

「……俺の負けだ、上様」

 私は呼吸を整えてから体を起こし、片膝を立てると、そこへ腕を置いた。

 

「俺はどうすればいい? 帰った方がいいか? 

 ……貴方へ向けられた憎悪や呪いが、私という防波堤を失って、ここまでくるかもしれない……から!」

 気持ちはとても晴れやかだった。

 また会えた、話が出来た、取っ組み合いの喧嘩もできた。

 生前、大人ぶってやらなかったこと全てやった。これ以上幸福なことはないだろう。

 

(ああ──楽しかった)

 満足した。「帰れ」と言われたらそうしよう。

 

『……』

 光を放つ人型である如来は、手を無言でかざす。

 すると、空間に映像が現れた。

 

「これは……」

 立ち上がり目を向けると、時代の流れがそこに映されていた。

 焼けていく城、死んでいく人々。それでも瓦礫の中から物をあさり、命にしがみつき、繋いでいく人間。

 何千という悲劇があり、何万という涙が流れ、何億という命が失われていった。それでも、人間は生きていた。

 その中に、歴史書には残らなかった、無数の仲間達の生きていた証が、繋がり結びついて、息づいていく、続いていく。当然その流れの中に……俺の命の記憶もあった。

 

「……」

 言葉にして、改めて考えを固める必要もなかった。

 映像は世界が焼けていくひどい戦争で終わり、あらゆる人間の文化、文明が消えていく場面も記されていた。

 

「……分かった、つまり地上に行きたいんだよな。

 大丈夫! 今も昔も、貴方の考えは全て丸ごとお見通しだぞ!」

 不安を拭うため、わざと過剰におどけて見せた俺の言葉に、光で出来た如来の頭部が、うなずく動作で上下に動いた……上手く響いてないな俺の配慮、しまった。

 

「しかし……神や仏のような存在は、そのままでは降臨できない、世界が認めない」

 しばし考えて、俺は手をぱちんと打って鳴らした。

 

「いい案がこの正信に浮かびました、聞いてくださいますか?」

 澄み切った青空の下、説明を始める。

 

「改造人間である私の『箱』としての機能を使い、上様の存在を隠し、通常の使い魔の規格で召喚される……世界を騙せばいいのです。

 そして、しかる後に、私は自害なりで己を壊します。

 さすれば薬師如来はそのまま顕現される……どうです?」

 私の案に、目の前の存在は若干たじろいだように見えた。

 ……何をいまさら躊躇する。俺が出す案など、大概おどろおどろしいものだと知っていましょうに。

 

「ご心配なく。

 元より、己以外の魂を降ろす……『箱』として改造された身です」

 つまり俺は、神様などが座す人間型お神輿なのだ。この認識が一番簡単。

 

「……私の肉体と魂をもっと加工しましょう。そうすれば、薬師如来とてなんとか収められるはず」

 説明を終え、返事を待つ。

 数分の沈黙の後、如来はゆっくりと無言でうなずいた。

 

「……じゃあ、やりますねー」

 不安を与えないために笑んだのに、我ながら顔は引きつっていた。

 

「……」

 ろくでもない改造など、先延ばしにせずさっさとやった方がよろしい。

 小刀で鎧の結び目を切り、脱いで、服切って、肌を剥ぐ。

 肋骨を砕いて取り出しやすくして、右腕を入れて心臓を取り出す。

 浄土に浄土らしくないものがぶちまけられたが、浄土なのでそのうち綺麗になるでしょう。

 ……この辺りは面白くないな、回想から省略するか。

 

「……俺のこと、『重い』って今考えたでしょう、そのくらい分かりますよ」

 魂を粉砕し、改造して、箱型の宝具に加工した。

 その中に何とか入ってもらい、元あった胸内へ戻す。

 

「……」

 1時間くらい改造に時間がかかり、それからまた3時間くらい気絶していた。

 体感時間なので、正しいとは限らないが。

 

「……う」

 体を起こそうとすると、全身に細かくひびが入っているような、不快な感触があった。あれです、ゆで卵の殻を剥くために全体を叩いた時の。

 

「あれ」

 数回瞬きする、視界が狭い。

 顔を触ってみると、右半分が消し飛んでいた。

 流れる小川、その湧水に顔を映してみると、ぽっかり穴が空いて、その内側から光があふれ出ている。

 ひとまず布で覆い、縛る。立って辺りを見渡した。

 

「うん、変な感じだ、中からばーんと弾け飛びそうな……」

 全身を常に刷新されているような感覚が続いているが、まぁ、おおよそ上手くいったのだろう。

 

「後は、この状態の『俺』を召喚する相手を待つだけ、か」

 極楽浄土で、1人つぶやく。

 

「……上様、聞こえますかー?」

 返事はない。

 

「俺から貴方へ感覚は繋がっていないのか……生前と逆の形になったのか」

 誰もいない楽園を歩く。頭上には真昼の月があった。

 

「でも、嬉しいんだ……俺が、狂っているからなのかな」

 俺は牙を見せながら獰猛に笑う。

 

「二度とこの手を離さない」

 運命などあるものか、全ては人の行いによって変わるのだ。

 

「ああ、世界救われるまで、一緒だ──」

 決意を新たに、夢を語り、俺は時を待った。

 

 

 

 

 そして俺は……いつの時代とは分からぬが、『誰か』に呼ばれたのだ。

 

 

 

 

 ……覚醒した私は目を開ける。

 明るい空間だが、光は人工の物だった。

 目線だけで周囲を見ると、樹脂のように柔らかい素材で壁も床も出来ていることが分かった。

 体にも目線を落とす。

 今は座っている状態で、服は手術着のようなつるっとした布、肌のあちこちには管が刺されていた。

 これが召喚されたということか? あまりにも実感が薄いし、頭にある『現代知識』とやらもあやふやだ。

 

「あなたがわたしの……サーヴァント?」

 声がしたので、目の前を見る。

 立っているのは……癖のない桃色の髪と瞳を持った、7歳くらいの女の子。

 うきうきと嬉しそうな表情で、少しだけはにかんでいる。

 

「あなたが……」

 俺は唇を開き、質問した。

 

「俺の、マスター?」

 少女は満面の笑みになって、言葉を返してくれる。

 

「そうだよ! よろしくね……えっと、ランサー!」

 俺は左目だけをぱちくりと動かした。どうやら彼女は何か勘違いをしているようだ。

 しかし、少女が差し出してくれた、握手を求める手を無視するわけにもいかず、恐る恐る手を伸ばす。

 

「ええ、マスター」

 手が触れ合う。柔らかい肌、争いにも飢えにも襲われたことのない、幸福な子どもの手だった。

 

「2つ、お伝えしたい事が」

「なぁに?」

 喜びが隠しきれない明るい声を出す彼女に対し、私は早めに訂正をする事にした。

 

「1つ、俺のクラスはバーサーカーだ」

 手を軽く握ったまま立ち上がると、肌に繋がっていた管がぶちぶちと音を立てて外れ、透明な液体が樹脂の床に広がっていく。

 

「2つ」

 液体が少女の履いている靴にぶつかって、二股に別れ、流れていく。

 

「貴方に人としての良心があるのだとしたら、今すぐ自害を命じてほしい」

 マスターである少女の手の甲に目線を落とした。

 3画で描かれた赤い模様が浮かび上がる。

 丸い外枠、長針と短針が1つずつ。西洋時計のような形の令呪だ。

 

「……さぁマスター、この狂った男を終わらせようじゃないか」

 だってそれが、世界を救う最短の道なのだから。

 幼い彼女も、俺のような人の顔した怪物と共に居たい筈がない、きっと承諾してくれるだろう。

 

「……やだ」

 桃色の髪の少女は、首を横に振った。

 

「なぜだ?」

 俺は理解出来ず、直ぐに訳を問うてしまった。

 

「……ひとりぼっちに、なる、から」

 少女の瞳に涙がじわりと浮かんで、くっつきあい、大きな玉となる。

 

「やだ。ひとりは、やだ。

 おばあちゃん、死んじゃって、もう、かぞく、だれもいないの……」

 ──その涙と似たものを、俺は見たことがある。

 

「バーサーカー、わたしと、かぞくになってくれる?」

 父は殺され、母は病死。あちこちに人質に出され、周りに味方はいない。

 そんな幼い頃、1人、真夜中の庭で泣いていたあの人の姿を思い起こしてしまう。

 

(いや不味い……! ああ、弱ったぞ……これは俺の弱点に刺さる……)

 彼女と手をつないだまま、困り果てる。

 

(なるべく早く、使命を全うするために、死んだ方がいいのだが……)

 この体が壊れないと、あの人が……『薬師如来』が顕現できないのだ。

 しかし、子どもを孤独にしてまで、やるべきことなのだろうか。いや、やるべきこと、なのだけれど……。

 今までだって、あらゆる非道を行ってきた。人を殺し、村々を滅ぼし、国すら壊したというのに。

 

(やるべき、こと、が……)

 止めようよ正信。お前、上様と約束したじゃないか。一揆に組した時のように、()()()()()()()? と責める声も、己の心から聞こえたが。

 

(うーん……)

 数秒の間に数千回以上思案して、俺は当面の答えを見つけ出した。

 

「──家族には、なれない」

 少女の肩がびくりと跳ねる。

 

「でも……君が寂しくなくなるまで、側に居てあげようか」

「……いいの?」

「ああ。しかし、ほんの少し、ちょっとだけだからな……」

 少女の涙は止まり、名残が血色のよい頬の上を滑った。

 

「じゃあ! いっしょに映画を見よう! おすすめの映画あるの!」

 ぐいっと手を引かれる。俺は転びそうになりながらも、足並みを揃えた。

 

「どんな映画なんだ?」

「不思議な遺跡に住んでいる女の子が……みんなの奪われた時間を取り戻しに行く! 

 そんな……『世界を救う』お話なんだって!」

「へぇ、面白そうだ」

「ほんとに思ってる?」

「思ってる、思ってる」

「へんじがテキトーだ! 子どもだけど、そのくらい分かるんだからね! もう!」

 ……映画を見終わったあと、その女の子に「モモ」というあだ名を付けてあげた。

 彼女、とっても喜んでいた。

 

 

 

 

 ぐずぐずに溶けながら、思う。

 

 

「……奪われた、薬師如来を。彼ら、どうするつもりだ、『箱』は壊さねば使えぬぞ」

 それにしてもまさか……女神リリスの元に、『あいつ』がいるとは考えてもいなかった。

 

本多正純(ほんだまさずみ)……)

 俺が妻を捨てていた20年あまりの間に産まれ、初めて会った時にはとうに成人していた、紛れもない俺の子ども。

 ……俺が、家族にはなれなかった子ども。

 

(『箱』……霊核を奪われてしまった理屈は分かる)

 生前私は、息子であるあいつに地位や仕事を譲り渡した。

 おおかた、そのあたりのエピソードを拡大解釈して、俺の霊核を抜き去ったのだろう。

 ……「貴方はもう、隠居でもなさってください」と言わんばかりに。

 

「モモ」

 廊下を這う。

 

「助けを呼んでくるぞ。

 俺を殺してくれなかった君を、寂しがり屋な君を、こんな寒い場所で死なせてたまるもんか」

 自らを奮い立たせるために、口を動かす。

 

「君は将来、しわくちゃのおばあちゃんになるまで生きて、そして、暖かい毛布の中で、たくさんの家族や、大切な人に手を握られ、想われながら死ぬんだ」

 自分で考えたとは思えないほど格好いい言葉だ。

 

「ああ……これも、いつか見た映画の台詞だな」

 ──映画、それは今から数百年も前に誰かが撮った、誰かの生きた証。

 少しだけ……サーヴァントに似ている、だろうか。

 

「モモ、君を、助けるぞ、絶対にだ、絶対……」

 四肢が溶けていく。

 廊下を這いずりながら、俺は、闇の中、ただ前だけを目指した。

 その先に、彼女の死という『運命』を変える何かがあると信じて。

 

 

 第56話 俺の『運命』の話をしよう

 終わり

 

 

 第13.5章 正信くん、君を救う

 終わり




 
 ……バーサーカー04のマテリアルが解放されました。


 終末世界のバーサーカー04

 クラス:バーサーカー/セイヴァー
 真名:本多正信/薬師如来
 マスター:モモタ・トバルカイン

 ステータス
 筋力:B 耐久:A+++(スキルにより)
 俊敏:B 魔力:D
 幸運:C 宝具:EX

 身長/体重:172cm・60kg
 出展:史実  地域:日本
 属性:混沌/悪 性別:男性

 一人称:私/俺(一応法則があり、『私』を一人称にしている人物の前では俺、『俺』を一人称にしている人物の前では私……となっているが、バーサーカー04の気分で法則から外れることもある)、など

 二人称:○○/○○殿(目上の人物に対して)/君(特に親しみを感じている相手に対して)、など
(バーサーカー04の気分によってどんどん増えていく)

 三人称:彼/彼女/あいつ、など


 モモタ・トバルカインと契約している、20代前半の、木製の仮面で顔の右半分隠し、武士風の黒い鎧を装備した、乱雑な黒髪に緑の瞳をもつ細身な男。
 黙っていれば知的に見えるが、口を開けば内なる獰猛さを感じさせるサーヴァント。涼やかで聡明な獣。

 道徳も社会秩序も関係ない。彼が重視するのは主の望み、ただそれだけ。
 なので、マスターの属性によっては手段を柔軟に変化させる。
 何かを得るのに対価をきちんと支払うか、殺して奪うか。現れる結果はマスターの心次第である。

 好きなもの:自分のマスター、倹約、早寝早起き、アルターエゴ、徳川家康
 嫌いなもの:意味のない散財、実入りのない議論、運命
 苦手なもの:家族、料理、長期戦闘




 クラススキル


 狂化:EX
 バーサーカークラスで召喚された正信は、2種の狂気を兼ね備えることとなった。
 生来持っていたものと、クラスによって付与されたものである。

 前述のものから説明していこう。

 人ならば誰しもが抱えている獣性、悪性、自己愛が人の形で生まれてきた存在。つまり怪物。
 祖先に人外はいない、偶然の元に誕生した『人でなし』。
 特殊な産まれや、幼少期受けた改造により、異常な精神構造と強度を持つ。
 体が激痛を伴いながら融解していようと、霊核や体が常に軋んでひび割れていようと、気にもとめない。
 何千年たった一人で居ようと、発狂もせず、精神の腐敗もしない。
 感情を向けた相手から見返りなど無くとも生存可能。
 ある種、究極の利他主義。
 それらの行動原理は常人には理解できず、「不気味」「胡散臭い」と映る。

 クラス特性で付け足された『狂化』についても説明しよう。

 正信は常に「徳川家康が死んだ」ことによる絶望的な喪失感を抱いているが、バーサーカークラスで召喚された場合、『狂化』によってそれが紛れ、マスターや仲間に対して穏やかに接する事が可能となる。
 混合された2種の狂気はまさに規格外。彼は狂っている……()故に。
 意思疎通は行えるが、このサーヴァントとの相互理解はほぼ不可能である。


 正信は『徳川家康』の感情の一部(自らの保身のために他者を害せる悪性・己を慈しむ自己愛)として生まれるはずであったが、何の因果か、本体から切り離され、4年も早く誕生してしまった。
 本体の精神は欠けた部分を修復して産まれてきたため、彼は帰る場所を失うこととなり、別個体として成長せざるを得なくなった。
 人格を元にした独立個体なので、分身(アバター)ではなく別人格(アルターエゴ)

 本体とは霊的に繋がっており、感覚、感情、思考を一方通行的に受け取ることが出来る。
『根源』と接続している存在がこの世界には居るが、彼はそれと形式だけ似た……言うならば『徳川接続者』。

 悪性と自己愛から作り出された彼は、『親愛』を担当するアルターエゴ。
 「自分の身を守ろう」とする生命の基本原理は、正信の場合「何があっても本体を守ろう」という本能に置き換えられ、その形はまさに、人間達が美徳として謳う『親愛』と相似した。
 他者を愛し、思いやり、情を向ける……人の悪意の前にはあまりにも無力なこれは、原初の地母神達が子らへ抱いたものとも似ている。

 この偶然にも形だけ似た『親愛』を向けることが出来るのは、本体である『徳川家康』のみ。
 自分自身や、妻、子ども、友人達を愛する権利を、正信は運命により剥奪され、禁じられている。他者を「好む」ことは出来るが、「愛する」ことは出来ない。


陣地作成:B
 バーサーカーなので失われている。
 土地を改良し、居住に向いた場所を作成することが可能。江戸の治水の音頭をとった手腕は見事なもの。

 江戸の街づくりは、当時であれば常識であった占星術や呪術的な見方を無視した様式もあった。
 これは正信本人の『人外(神・仏・妖怪・鬼など)ではなく、人が主役となって生きていく時代を作る』という考えが大本にあったから。
 しかし、家康からの信頼も厚かった南光坊天海の助言もあり、呪術的な仕掛けもしぶしぶ……施された。
 彼は内心とても不信感を抱いたが、「最低300年の江戸の安全保証」を天海から言われたので、気持ちをぐっと飲み込んだ。
 正信が望むがままにこのスキルを振るう場合、霊脈はぶっ壊され、神秘の存在証明が著しく難しい場所となる……サーヴァントである自分自身も含めて。

 彼は語る。
「民が住みやすい街にしましょうね。
 ……なぜ、魑魅魍魎、悪鬼羅刹に配慮した形にしないといけないのです? 天海殿ー? 
 何かノッブ関連の企てごとでも考えておられる? 天海殿ー?」

 
 単独行動:A
 今回は単独の召喚ではないので失われている。
 マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 『ある存在の別側面』として存在するアルターエゴは、マスターなくしても単独でしばらくは活動できる。
 

 保有スキル


 被・加逆体質:B
 同ランクの被虐体質と加虐体質を併せ持つ。
 振る舞い、言葉、その全てが敵を苛立たせ、集中的に彼を狙わせる。戦場において悪目立ちすると言ってもいい。
 戦闘が長引けば長引くほど攻撃性・攻撃力が増していくが、後述する人間観察スキルが失われる。また、無意識のうちに逃走率が下がってしまう。
 彼は生まれ持ったこの性質で青年期かなり苦労したので、人生後半では戦場に立とうとしなかった。
 ……立てば、嬉々として敵を殺しに行くのだが。


 人間観察:B-
 対象を観察、あらゆる対人パターンを想定し、出会った人間全てを決して忘れない異常な記憶力を持つ。

 彼はあるがままに振舞えば、人間社会に受け入れられない事を知っていた。
 それ故に、人と己を照らし合わせ、そうして表れる差異を観察、人間らしさを模倣し、社会に溶け込んでいる。彼が社会から排斥されないのはそのため。

 彼と相対した者は全てを暴かれ、記録される。
 また、観測した対象の激しい感情の動きは、彼の心の飢えを満たし、やる気と元気の素になる。
 夢魔とよく似た生態だが、これをしなければ彼は生きられないという訳でもないので、単なる愉悦の糧。

 心の動きは、彼から見れば砂糖菓子のようなもの。
 しかし、本物の夢魔のように感情がないという訳ではないので、心が動けば悲しみもするし、怒りもする、人間を愛してみたいとも思う。

 彼は自らがアルターエゴであることを自覚しているので、他のアルターエゴに興味津々、同類であれば直ぐに分かる。
 人呼んで「渚のアルターエゴマニア」……渚に何の関係があるのか? 


 薬師如来:EX
 病に苦しみ、貧に苦しみ、生命の業に苦しむ人々を救わんとした薬師如来、その力の一端。規格外の回復能力を持つ者に与え、耐久ランクをA+++とする。
『目覚めた人』が持つ『対英雄』と似た性質もあり、召喚されたバーサーカー04のステータスは(既に変化した耐久を除き)1~2ランクアップしている。ステータス表はアップした後の数値。
 発動時は光が瞳に透けるので、内から輝いているように見える。
 霊核・エーテル体を壊す覚悟で出力をあげれば、魔力放出(光)としても扱える。

 霊基は薬師如来の力に耐えきれずはずもなく、顔の右半分は常に崩壊したまま。なので、仮面で隠していた。
 全身も激痛と共に軋んでいるが、スキルによって再生と崩壊を繰り返し、見た目には変化は現れていない。だが、これのせいで魔力消費量が上がってしまっている。

『徳川家康』と霊的に繋がり、後天的にも改造されていた正信は、箱……つまり仏すら降ろすことのことの出来る器としての適性があった。(後述で説明)


 多くの罪と殺戮、宗教的混乱の元凶(本願寺の東西分裂工作など)であった正信は、死後、世界の外に落ち、呪いと溶け混ざり、悪霊とも言えぬ存在となり果てた。
 しかし『想い』だけを糧として旅立ち、極楽浄土に座すかつての主の元へたどり着いたのだ。
 薬師如来と化していた『徳川家康』と会話し、望みを聞くと、自分の内側を砕き、地上へ主が降りるための『箱』とした。
 このエピソードが無いとただの『本多正信』として召喚される。

 このスキルを持った状態から失われる、もしくはアルターエゴクラスで召喚されると、後述する『徳川の呪い』スキルを持つこととなる。


 徳川の呪い:A
 全ての時代に渡り『徳川』へ向けられていた怨嗟、そのもの。

 正信は死後、徳川の納める世の安寧がため、永遠に呪われることを良しとした。
 南光坊天海の手によって正信の死体に仕掛けが施され、江戸のある地へ埋葬された。生贄……呪い除けの人柱である。
 しかし、200年を越える治世によって想定以上の恨みが江戸と『徳川』へ溜まり、人柱は崩壊、融解した。江戸で起こる奇々怪々の出来事や火事、大災害は、呪いの影響もあったのかもしれない。

 秘された真実と、後世の者に『徳川の非道な行いを立案し、実行した者』と物語られたことにより、正信は呪いの不全な管理者となった。
 呪いは凄まじい熱量と破壊力を持ち、正信を常に焼き溶かしている。また、水の多い土地にわだかまったものなので、同ランクの『完全流体』の性質がある。
 呪いを噴出すれば魔力放出(闇)となり、滑るような高速移動と肉体の変形、レンジを延伸する攻撃が可能になるが、使用すればするほど魂と体が焼け落ちてしまう。
「燃える水が如き呪いよ、我が身に集え。我は徳川の暗黒を司る者なれば!
 ……かっこいいな、俺にも命名の良識があるのでは?」



 宝具解説


 宝具 薬師如来
 ランク:EX 種別:対人宝具
 レンジ:望むがまま 最大補足:全人類
 詳細不明。
 薬師の如来は十二の誓願を掲げると、人々へ、その光をあまねく向けた。


 宝具 ソハヤノツルキ・ウツスナリ
 ランク:C 種別:対人宝具
 レンジ:1~5 最大補足:1人
『坂上田村麻呂』が生涯に渡り使ったと言われる名刀『ソハヤノツルキ』(素早丸(そはやまる)とも呼ばれた)の写し。『徳川』の誇る財宝の1つ。

 正信は生前『徳川』の資源・財政管理を請け負っていたので、「私用に使うのではない」限り、いくつかの宝具を借り受けることが出来る。
 当然持ち主ではないので、真名解放は出来ない。
 バーサーカー04は肉体の内側から剣を引きずり出したが、これは内側で座している主から借りた……ということである。

 晩年の『徳川家康』が病床の身でもこれを振るったという逸話があることから、持った者のステータスを全ランク1アップさせる。
 真名解放を行えば、自らの敵対者を自動索敵し、戦闘を補助する能力を発揮し、これ以上に隠された能力もあると推測されている。

 元々のソハヤノツルキも凄まじい業物。
 流れる星が天を砕いたときに生まれた者と共に現れ、時を経て坂上田村麻呂に渡り、第四天魔王の娘『鈴鹿御前』の剣とも対等以上に渡り合った。


 宝具 正信偈活用型神仏降霊術式八式《しょうしんげかつようがたしんぶつこうれいじゅつしきはちしき》
 ランク:D 種別:対人宝具
 レンジ:1 最大補足:1柱
 常時発動型宝具。本多正信という存在そのもの。
 かつて三河に巣くっていた(まじな)い師達は、困窮する日ノ本を救うため、仏を降臨させることに執着した。より早く、物質的な救いを求めたのである。
 『肉体と魂を、他者の存在を入れる箱へ改造する』という無謀な実験は、中途半端に成功した。その個体が正信。
 簡単に言えば人間型お神輿である。この神輿は二本足で自ら歩く。

 通常時はただの霊核であり、誰もいない空の箱だが、条件がそろえば『徳川家康』=『薬師如来』を内側に収めた状態で彼を召喚できる。
 だが、箱を開封し内に居る存在を解き放つことは、薬師如来:EXスキルの回復力で実質不可能。

 ──もしこの『箱』たる宝具を完全な形で開くことが出来たなら、間違いなく如来は降臨し、世界は救われるだろう。


 人物説明
(作者知識の元による説明ですので、誤っている場合もあります)
 安土桃山時代の三河に生まれた男。戦国最強『本多忠勝』とは遠縁にあたる。
 若き頃、三河一向一揆に参加。徳川家康へ反旗を翻し、多くの反乱者が許され主の元へ帰ったというのに、そのまま出奔、諸国を放浪した。(松永久秀へ仕えていたが、数年で離れている。その後の消息ははっきりせず、加賀一向一揆に参加し、織田側と戦っていたとも、本願寺に協力していたとも言われている)
 20年以上を経て帰参。その後78歳で没するまで、徳川家に仕え続けた。
 幼年期も青年期もようと知れない、謎の多い人物。
 天下太平を作り上げた徳川家康の懐刀にして、友人にして、部下にして……恐れられた男の1人。


 デザートランナーの設定において

 性格
 好きな人のために働くのが大好き。獣のように純粋で、常軌を逸するほど一途。
 他者の心の痛みには敏感だが、自身の心の痛みには鈍感。
 誰かを傷つけることがとても好きで、ひどく嫌い。
 人生の前半期は自らの特性が分からず、迷走していたが、ある人物(松永久秀)との出会いにより、自らに折り合いをつけ、現在の性格へと至った。
 とても用心深く、本心は滅多に見せず、常に飄々とした人間のふりをしている。

 バーサーカークラスで召喚された時、自身を呼び出したマスターを気に入れば、守ることを重視する。
 簡単に言えば『軽く見えてすごく重い男』。

 適正のあるクラスはランサー、バーサーカー、アルターエゴ、■■■■。
 でも一番最後は相当無理と幸運が祟らないと成れない。例えば、■■■■の席が空き、「徳川15代が丸ごと都合よく利用される」など。

 ランサーでは静かに絶望しきった枯れた青年として現れ、バーサーカーでは狂っているが故に他者を思いやれる男として現れ、アルターエゴとして召喚されれば、絶対の主を失った者として壊れた心でやってくる。

 ■■■■で現れたのなら、世界に求められたように振舞う。
 人を滅ぼす、倒すべき■として。黒幕と悪役を自称する彼は、あなたが望んだ敵となるだろう。
 この■の降臨した世界では、全てのヒトは、自らを自らの手で愛する『(まこと)の愛』を知る。

 心の機微に聡く、周りの人間関係を見て「足りないもの」になろうとするので、人間関係のクッション材にいつの間にやらなっている。
 記憶力も抜群に良いので気配りも細やか。筆まめ。
 そのため、彼と相対した人間は、「胡散臭いと思いつつも、言葉に耳を傾けたくなる・話をしたくなって」しまう。
 自分が格好いい生き方のできる人間ではないことを気にしているので、格好いい存在を見ると興味を引かれ、好きになる。


 背景
 男は生前犯した罪と、主へ向けられた憎悪を受け取り、呪いの底へ落ちた。
 仏の教えを乱す『仏敵』であり、あらゆる救いは彼に届いてはいけない……はずだった。

 彼は主が薬師如来となり、人間を救わなければならない地位に置かれたことに激昂し、地の底から天の果てを目指した。

 過去も未来も投げ捨て、体すら無くし、『想い』のみで邁進する呪詛の獣となり果てた彼の下へ、とうとう仏は現れた。
 如来と化した彼と生前のように話をし、簡単には野に下れない主の望みを聞くと、迷うことなく自分の魂と臓腑を砕いて空洞を作り、『箱』になった。そして如来を内側に収めて、召喚される時を待つことにした。

 ……どこまでも壊れた男は魂を失った。
 しかしかまわなかった。未来永劫、誰に名を呼ばれなくとも、男は納得したのである。
「私の持てる愛は、自らを省みず相手へ注ぎ続ける、人がそう呼んだ『親愛』だけなのだから」
「己を愛せぬ虚ろな杯、本体より切り離され産まれた男の、当然の末路である」と。


 『徳川家康影武者説』というものがある。
 もし、『徳川家康』が死亡した場合は、次に彼となる存在に正信の接続先が移動してしまう。
『徳川家康』と繋がっているから正信なのではない。正信と繋がっている者が『徳川家康』になりうるのだ。




 対人関係
『徳川』の敵だと認定したものには容赦がなく、ただの道具のように扱う。
 自分すら愛せないことを自認しているため、家族や親しい人間には弱い。
 己の存在に後ろめたさを感じているので、『徳川家康』くらいにしか本性を見せはしなかった。

 天海こと明智光秀とはビジネスパートナー。
「頭に中にノッブしかない人だ、信用できる」
「天海殿は実に優秀な人で、あの方からの信頼も厚く……あれ? これ嫉妬か……俺もそんなこと思うんだなー……」

 少しの間仕えていた松永久秀に対しては、また出会うことがあれば話をしたいくらいには好んでいる。
「一緒にいて勉強にはなったのだけど、生き方の方向性が違う」
「灸見ると思い出すんだよなー……ああ素晴らしきかな乱世の梟雄!」
「変わんねぇ……この人どこで会っても変わんねぇ……」

 織田信長に対しては、一向一揆への仕打ちもあり、悪感情。
「ノッブはね……ノッブは……うん」
「あの者が戦場に立つ姿を見れば、人であることなど、直ぐに忘れてしまいますよ」

 豊臣秀吉に対しては、生前は一度も会わないよう立ち回っていた。
「直接対面したら俺でも危ない。なんと恐ろしいひとたらしか!」

 その妻であり淀様……茶々様に関しては、関係性の修復など望まないし望んでもいない。
「とても綺麗な人だ」と。

 主である『徳川家康』に対しては、己をこうした運命に対する憎しみも、親愛からなる感情も、全て混ざった重すぎるあれそれを向けているが、普段は全く表には見せない。
 大人なので。そして引かれることを理解しているので。
 胸の中で暴れ狂うこの感情に『恋』など『愛』など名前を付けることにし、いつも静かになだめている。名づけられぬものの危険性はよく知っていたからだ。
 ……だが油断することなかれ、人間とこの男ではそもそも『愛』の定義が違う。

「あの方は私の本体であり所有者。そして私は彼の道具が如き存在なのですよ」
「……、……、……」


 バーサーカー04としては
 上記していた通り、バーサーカークラスで召喚された正信は「徳川家康が死んだ」ことによる絶望的な喪失感が紛れているので、マスターや仲間に対して穏やかに接する事が可能となる。
 また、自分にとても正直になった&重要な仕事を任されたことで、テンションがいつもやや高め。
 本体に似たのか、ネーミングセンスは絶望的に無い。
 また、「肝心な時に、居てほしい時にいない」という宿命を背負ってもいたりする。

 モモのことは、趣味も合い、とても大切に思っていた。
 アスカのことも守るべき存在であり、頼もしい仲間だと認識していた。
 アーチャー0961に対しては、同じアルターエゴとして気になっていた。格好いい人なので心配はしていない、信用はしている。

 世界についても、マスターであるモモについても色々知ってしまったが、それを伝えきれず消滅した。
 彼の真名が音で表現できないのは、最後には世界から失われることが決められているからである。
 
 世界の底で血反吐をこぼし、天を睨みながら叫ぼうか。
 ──だからこそ、『愛』に全てを!
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