103th Fighter squadron『Folgore』 作:COTOKITI JP
《1975年 12月 9日 『ラハマ南西 高度1500』9:35AM 》
ここ、イジツは季節による気候の変動がかなり激しい。
夏になれば猛暑がやって来て、冬になると途端に極寒の地と化す。
勿論ラハマも例外ではなく、今も尚空を飛ぶ
「へっ……へーくしょっ!!」
《大丈夫かキリエ?》
《風邪でも引いたんじゃないの?》
「こんな朝早くから出撃なんて聞いてないよ! ぶぇっくしっ!!」
冬の空に浮かぶ綺麗な編隊。
それを構成しているのは六機の戦闘機、『隼一型』である。
仲間達の心配の声に対して文句とくしゃみで少女、キリエは、疾風迅雷とも呼ばれ、あの
そして、彼女らがこんな朝早くから出撃している理由もまた、穴に関する事であった。
《皆、見えたぞ。 穴だ》
目前に見えたのは、地上より僅かに離れた高度にある巨大で先の見えない真っ黒な穴だった。
《妙ですわね……普通なら暫くすれば自然消滅する筈ですのに……》
《それに、今までの穴とは比べ物にならない位大きいね。 僕が観測した中で最大かも》
この女性づくしのメンバーの中で唯一の男である少年、アレンはケイトの操縦する赤とんぼの後部座席からその様子を見ていた。
アレンも言っていた通り、この穴はあまりにも大き過ぎた。
恐らく今は亡き飛行船、羽衣丸を横に並べても六隻位は易く通れる程の直径があった。
穴の様子を注意深く観察している中、ザラが何かに気付いた。
《レオナ!穴のちょうど下辺りに人工物があるわ》
《なに!?》
他の僚機もそれに気が付いたらしく、機体を僅かに傾けて穴の真下にある人工物へと目を移した。
「アレって何かの基地じゃない?」
《滑走路がある、飛行場の可能性あり》
確かに滑走路があり、管制塔らしき建物や格納庫、所々にある点にしか見えない物は恐らく対空砲だろう。
そこにあるのは明らかに飛行場だった。
まだ確証は掴めないが、一つの可能性が頭に浮かぶ。
《まさか……ユーハングが来ているのか!?》
『ユーハング』。
それはイジツとは別の世界からあの穴を通じてやって来た者達であり、航空機をこの世界に広めたのも彼等である。
しかし、ユーハングの人々はなんの前触れもなく忽然と姿を消してしまったのだ。
穴の真下に飛行場なんて建てていたら、皆普通はユーハングが来たと思うだろう。
飛行場は遠目に見てもちゃんと整備されているらしく、今も機能しているようだ。
《これは早くラハマに知らせないと》
《上から何か来ますわ!!》
真上からの突然の奇襲。
僚機の反応が早かったお陰で奇襲は何とか回避する事が出来た。
《ケイト!今すぐラハマに戻って隼に乗り換えて来い!》
《分かった》
自分達とは反対方向に逃げていく赤とんぼを見送り、先程攻撃を仕掛けてきた戦闘機に目を向ける。
それは彼女らの知らない戦闘機だった。
大まかな機体の形状は、九七式戦闘機と零式艦上戦闘機を足して二で割った様な見た目をしていた。
武装は機銃が機首に二丁、両主翼に二丁ずつ備えられている。
今まで多くの空賊と戦ってきたが、このような戦闘機は一度たりとも見た事も聞いた事も無かった。
「うわっちょっヤバい!こっち来たァ!」
合計六丁の機銃を持つ敵機は、キリエに向かって単純計算で隼の三倍の火力を浴びせて来た。
それだけでは無い。
機体性能その物も優れていて、隼と格闘戦になっても中々後ろが取れない。
《気を付けろ!機体性能も高いが、中にいる操縦手も練度が高い!》
何時ものように二機一組で分かれ、敵機と格闘戦に入る。
早速キリエが敵機の後ろに着き、機銃を撃つが横旋回で一射目を回避した。
旋回中を狙い、主翼へ向けて二射目を放ったが、今度は機体を翻してスプリットSで回避した。
三射目もバレルロールで躱されてしまい、焦り始めてきたキリエは何とか四射目で仕留めようとした。
敵機はそれらしい回避機動を取ろうとはせず、それを好機と見たキリエは
「あっ!」
気付けば、オーバーシュートを起こしてしまい、敵機は自分の後ろにいた。
撃つ側と撃たれる側が逆転し、キリエは7.62mmと12.7mmの反撃を食らう。
「うわぁっ!!」
左主翼とエンジンとその周りを撃ち抜かれ、左主翼はボロボロ、胴体からは燃料が漏れだしていた。
キリエはすぐさま旋回して逃げようとするが、エンジンにダメージが入った挙句に主翼のエルロン部分にも被弾したらしく、上手く旋回が出来なかった。
どうやら敵機も万全な状態の隼と格闘戦をするのは避けたかったようなので、翼がやられた事を知りこれ幸いと二射目を放とうとした。
《キリエ!!避けろ!!》
レオナが叫ぶが、その間にも敵機はある程度の偏差は付け終わり、機銃の銃口が火を吹こうとした、その時だった。
何が起こったのかキリエには分からなかった。
本来ならば自分が撃墜されていた筈なのに、後ろを見れば大破炎上した敵機が落ちていくのが見えた。
「えっ?何? 何が起こったの?」
困惑するキリエ。
しかし、答えが返ってくる事はなく、それ所か彼女を更に困惑させる事態が起きた。
《真上に更に機影だ!数は五機!》
《アイツらがキリエの後ろにいた奴を撃ったんだ!》
呆然としているキリエのすぐ側を先程後ろにいた敵機を撃ち落としたと思われる不明機が下へと通り過ぎる。
狙いはコトブキ飛行隊ではない。
あの敵機だった。
《どうやら加勢してくれるようですわ!》
加勢、とは言ったものの、その後の展開は一方的だった。
あの不明機は格闘戦はせずに一撃離脱戦法のみを使って敵機を撃ち落としていた。
「アレってもしかして飛燕?」
《いや、よく見たら飛燕とは翼の形が違う。 私達の知らない戦闘機だ》
《それに武装も違うみたいね。 あの飛燕もどき、翼下にガンポッドが搭載されてるわ》
それだけではなく、機銃の威力もかなり高いようだ。
12.7mmですら歯が立たなかったあの敵機がたった数発で空中分解を起こしている。
恐らくは20mmクラスの機関砲を搭載しているのだろう。
《あっ最期の一機が墜ちた》
チカの間の抜けた声と共に爆散した敵機の残骸が舞落ちていった。
敵機を殲滅した事を確認するや否や直ぐに帰ろうとする不明機にレオナが慌てて無線で会話を試みた。
《救援に駆け付けて頂き感謝する。 こちらはコトブキ飛行隊の隊長を務めているレオナだ。 出来れば其方の所属を伺いたい》
言い終わってから暫くしても返答が来なかったので、無視されたのかと思いきや、漸く返答が来た。
《礼は必要無い。 元より我々の意思で行った事だ。 それと、申し訳ないが所属を明かす事は現時点では出来ない。 まぁ、いずれ直ぐに知れ渡るだろうがな……》
《……? どういう事だ?》
それ以上、あの不明機が話す事は無く、編隊を組みながら遠くの空へと去っていった。
とうとうゲーム版コトブキ飛行隊に海外機、『F6F ヘルキャット』と『BF109E型』が実装されましたぞぉ!!