103th Fighter squadron『Folgore』 作:COTOKITI JP
《1975年 12月 30日 『独房の中』9:58PM》
自警団とやらに取り囲まれたクレメンテは、戦闘機から引きずり降ろされ、隼乗りの少女の説得も虚しく衣服以外の持ち物を剥ぎ取られた後に独房にぶち込まれた。
いや、着陸した時からこうなる事はある程度予測していた。
自陣にのこのことやって来た所属不明の戦闘機のパイロットの扱いなんてどこもこんな感じだろう。
そんな事よりもこの世界の住人と実際に会って話す事が出来た事が大きな成果だ。
言語は我々の物でも通じる。
街の様子としてはウチと大差ないように感じられた。
ただ場所が場所なのでエラく汚く見えてしまうのが難点だが。
しかし自警団の連中、ボディチェックもしないとは随分と杜撰なものだ。
お陰でブーツの中に隠していたアーミーナイフや野営等で使用する携帯式の火打石に護身用のレミントン・デリンジャーと予備の弾は取られることは無かった。
ただ脱出する気は無い。
脱出した所でBF109F4は完全に自警団の手中にあるだろうし、彼等とヴェストヴィントが対立する要因にもなりかねない。
今後の物資の補給は現地で行うしかない以上、現地の人々と友好関係は保っておきたいのは作戦司令本部も考えている。
たった一人のパイロットのミスで貴重な取引相手を失ったりなんてしたら目も当てられない。
ここは暫く展開が動き出すまで待つしか無かった。
一先ず今日はもう何も出来る事が無いので寝心地の悪いベッドに身を預け、意識を手放した。
眠っている間にもシダルカが動き出しているのを、クレメンテも、ここに住む彼等も知らなかった。
《1975年 12月 31日 『独房の中』5:34AM》
熟睡していたクレメンテは飛び上がらせたのは凄まじい爆発音だった。
狭い僅かな窓からしか外は見えないか、耳に入ってくる情報が全てを物語っていた。
「空襲か……」
この街に空襲を仕掛けてきたのは何者か?
候補として上がった内の一つはシダルカか、又はそれと同じ武装勢力。
とは言っても今後の取引相手にもなる可能性のある街の住人をわざわざ攻撃する事にメリットは無い。
そもそもシダルカはそんなリスキーなことをする程大雑把な性格はしていない。
シダルカは近年、物資の不足に悩まされている。
だから現地での入手先を模索しているのだ。
攻撃なんて以ての外である。
他の武装勢力に関してはまだ飛行場や部隊が発見された報告は挙がっていないそうなので何とも言えない。
一番確率が高そうなのはこのレッドランドに住まう未知の第三勢力によるものだ。
ついこの間も別の部隊が所属不明の戦闘機小隊と交戦したらしい。
作戦司令本部は所属不明機の機種や練度から彼等を『空賊』と暫定している。
奇妙なのは空賊の使用する機体がどれも日本機だという事だ。
「まだ逃げてなかったのか!? 早く来い!逃げるぞ!!」
考え込んでいたら扉の方から鍵を解錠する音が聞こえ、吹き飛ぶように扉が開き、そこにはクレメンテを捕らえる際に団員を指揮していた自警団の男がいた。
自分達で拘束した癖にここにまだいる事も忘れていたらしい。
ともあれ、ここでじっとしてる訳にもいかない。
今は脱出が最優先だ。
建物から連れ出される際に空を見た。
明朝でまだあたりは暗く、ぼんやりとしか見えないが空を飛ぶ複数の航空機を視認した。
「アイツら、アンタらの知り合いか?」
「知らねぇよ!!
「成程な、じゃあ何処に逃げる?」
「なんでお前そんなに冷静なんだよ!とにかく、この先に長い間使われてない防空壕がある!皆そこに逃げてる筈だ!」
確かに辺りを見ると殆どの人間がクレメンテ達と同じ方向に逃げている。
防空壕まで完備されている所を見ると、どうやらこの世界の兵器の主力はやはり航空機らしい。
となると、行ったことは無いが他の街にもこのように防空壕や飛行場があるのだろうか?
観察すればする程面白い世界だと思いながら入口に半ば飛び込むように入っていった自警団の男に続いてクレメンテも階段を駆け下りて下に降りる。
その際に、少し立ち止まって空襲を仕掛けてきた航空機の正体を確かめようと空を見た。
その独特な形状をした機体は、シルエットだけでも分かった。
今も街を焼き払っているその機体を眺めながら呟く。
「B17か……なかなか面白い機体を持ってくるものだな」
感想をクダサイッ!
我らがヴェストヴィントは主人公勢と敵対するか?
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戦争だ!!我等にはそれが必要だ!!
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世に平穏のあらんことを