バイオショック:インフィニット・ストラトス   作:布団叩き

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一夏のお顔は手塚治虫先生のブラック・ジャックを想像していただけると伝わりやすい気がします


破壊

「守護者…?」

 

「ああ。俺はそうプログラムされている。何があろうと君を守ることが俺に与えられた使命だ。まあ急に色々言われてワケが分からんだろうが、事情を話すのは後だ」

 

「ええと…ひとまずよろしく、でいいのかな?」

 

シャルロットは怒涛の急展開を前にして正常な判断力を残していた。自分の部屋に飛び込んできた巨大な鳥、それが変化したであろう青年。普通に考えればあり得ないことだらけである。

 

「早速で悪いが、ちょっと外の掃除をしてくる。机の下か何かに隠れててくれないか」

 

それだけ言って、青年は自分で開けた穴から再度大空に飛び出していった。体を大の字に広げ、スカイダイビングの要領で落下した。シャルロットが慌てて外を覗き込むと、すぐに階下から眩い閃光が発生し、部屋に突っ込んできた巨大な鳥が塔の下から急上昇してきた。部屋の中に強い風が流れ込み、本や紙が大量に舞う。シャルロットはすぐさま言われた通り壁に備え付けてあった机の下に潜り込み、頭を抱えて体を丸めた。

 

 

 

 

まだだ、まだ足りない。もっともっと、もっともっともっと落とす!

 

ーーー翼を狙え!撃ち落とせ!

 

無駄だよ。お前らにはどうにもできっこない。

 

ーーー退避!退避ぃ!

 

行かせるか。カラスの餌にでもなってろ。

 

ーーーダメです!墜落します!う、うわああぁぁぁ!

 

あーあ、街中に落っこちちまった。市民を守るファウンダーズが聞いて呆れるな。やったの俺だけど。

 

 

 

 

ソングバードは投与されたビガーを駆使して敵船を次々と墜としていく。ポゼッションでターレットを操り操舵室を破壊、デビルズ・キスでエンジンを爆破。後ろから迫る飛空挺に対してはピーピング・トムで姿を消したと思えば真下から体当たりで船体を真っ二つに…。

 

ジェレミア・フィンクは恐ろしい怪物を作り出してしまった。それはこの惨状を見ればひと目でわかる。街に墜ちて黒煙を上げる船、そこら中に転がるファウンダーズの死体とモーター・パトリオットの機械部品、逃げ惑う住民たち。どこを見ても被害は甚大だった。

 

バサリと大きな音を立て、破壊の中心地に降り立つソングバード。それまで我先にと飛空艇から物資を奪い去ろうとしていた黒人や貧民街の住人たちが蜘蛛の子を散らすように路地裏や門の向こう側に逃げていった。塔の中で放った閃光に再度包まれたソングバードはその姿を変え、織斑一夏という人間に成り代わっていた。こちらを凝視する者、脇目も触れず門へ向かって走り去る者、様々な民衆の様子をしばらく眺めていた一夏は目の前を見据え、派手に墜落している旗艦クラスの飛空艇の入り口を探した。

 

「…お邪魔しますっと。みんな死んでくれてると楽なんだけどな」

 

飛空艇に入り込んだ一夏は警戒を怠らぬよう、死体から奪ったマシンガンを構えつつ船内を探索する。やがて操舵室にたどり着くと、シートに座ったままうなだれる恰幅の良い男性を発見した。よく見ると鼻から血を垂らし、目は見開かれているものの焦点があっていない。墜落の衝撃にやられたのだろう。自分でやっておきながら罪悪感は微塵たりとも無く、むしろ憐みすら覚えた。

 

「んー…流石にそんな都合よく見つかりはしないか」

 

合掌して死体の内ポケットを弄るが、必要としていたものは見当たらなかった。そこそこで捜し物を諦めることにした一夏が操舵室のドアの方を見ると、二つの影があった。油断なくマシンガンを構える一夏に対し、影の主ーーールーテス兄妹はあくまで冷静な態度で呼びかけた。

 

「全てはあるべき場所へ」

 

「これで全ては元どおり」

 

「そして、それをすべきは君だ」

 

「でも、場所がわからない」

 

「そして、その情報はここに」

 

女の方ーーーロザリンドの手元には分厚い羊皮紙の束がある。そしてその表紙には『ティアの利用と活用法について』と題があり、極秘との記載もある。

 

「…あんたら、何者なんだ?パッと現れたら消えたり…幽霊か何か?」

 

「いずれ分かるわ」

 

「しかし今はこちらに集中したまえ」

 

一夏は警戒しつつロザリンドの持つ資料を受け取る。そこにはシャルロットと彼女が住む天使像についての情報がびっしりと書き連ねられていた。一夏がしばらく資料を読むのに夢中になっていると、兄妹はどこかに消えていた。

 

「…ほんと何なんだ、あいつらは」

 

まあいいかと再度資料に目を落とし、天使像の情報を頭に叩き込む。腰部にある装置がシャルロットの力を吸い取り、コロンビアを地上から隠すエネルギーの源として利用している。それを破壊し、コロンビアの存在そのものを世に知らしめる事で世界は混乱状態に陥る。それに乗じてここから脱出し地上へ帰る。こんなものが空に浮いてるなんて事が分かり、行政がてんやわんやになれば1人や2人の人間の戸籍なぞ幾らでも捏造できるだろう。シャルロットを生家に連れ帰るための大雑把な計画は練り上げられた。そしてその生家の情報も、この資料には載っている。先程から一夏が探し求めていた情報はこれである。

 

「フランス…へぇ、オルレアンの出身なのか…意外だな。北欧系かと思ってたが…」

 

行き先は決まった。さてーーーと、船外に出た一夏を突然衝撃が襲った。反射で船内に転がり込んで続く爆発を回避し、遮蔽物に身を隠して近くのファーストエイド・キットを乱雑に掴んで中身を使用する。次第に外での爆発が止み、騒がしい軍靴の音が近づいてきた。

 

「さすがファウンダーズ、手回しが早いな…」

 

「出てこい鳥野郎!街をめちゃくちゃにした報いは受けてもらうぞ!」

 

これではシャルロットのもとに行けない。ピーピング・トムの能力で人数を数えてみたが、船内に乗り込んできただけでもざっと20人は下らない人数だった。最悪なことに外にはハンディマンとファイアマンが待機しているのも窺える。いくら全てのビガーを保有し、圧倒的な戦闘力を誇るソングバードも人海戦術をぶつけられては無理があるというものだ。絶体絶命のピンチとはまさにこの事か。

 

「む」

 

辺りを見回していた一夏は自分の横にあったバッキング・ブロンコの瓶が詰められた箱を見つけた。中を覗いてみると十数本、綺麗な状態で保管されている。その内の数本を掴み取り相手方に向けて投げつけた。ファウンダーズの驚く声と瓶が割れる音が聞こえたタイミングで船首へ向けて走り出した!その一瞬のうちに床に広がったビガーの水溜りに向けて自身の手からバッキング・ブロンコを飛ばす。ビガーの原液に反応した能力は通常以上の効果を発揮した。

 

「おーすごい。新発見新発見」

 

普段ならせいぜい2、3メートル四方の範囲にしか効果を及ぼさないこの能力だが、今回はそれを遥かに上回る範囲になった。そこにいた者のほとんどを巻き込んで長時間展開されるバッキング・ブロンコを見て、一夏はこれは使えるなと考えた。そう考え事をしながらも、ファウンダーズの叫び声を気に留める事なく全速力で船内を走り続ける。背後にはリターン・トゥ・センダーを展開して敵の射撃を無効化するのも忘れない。船内はそこそこ複雑な造りになっているが、一夏がどこへ逃げようともファウンダーズは追い続けてきた。それどころか曲がり角で増援とばったり、なんてこともあった。もちろんその時はビガーで対処したが。

 

「はーもうウザいったらありゃしない…ここはでかいのを1発ドカンといっときますか」

 

そう言って一夏は背後のリターン・トゥ・センダーを左手に、デビルズ・キスを右手にチャージし、甲板に出る扉の目の前でターン。急停止したターゲットにファウンダーズはたじろぎ、足を止めた。しかしそれは一夏の思う壺。

 

「じゃあな兵隊さん!あの世でも仲良くしてるんだな!」

 

両手のビガーを練り合わせ、炎を纏った弾丸をマシンガンの如くばらまく!細い通路で遮蔽物もない状況で兵士達にこの攻撃を避ける術はなく、彼らは身体中に焦げ穴を開けた無惨な死体となってその場に倒れ伏した。

 

「うーん上手くいった…コイツはアリだな。フィンクに流し込まれたモンが早速役立つのは癪だが」

 

一夏がソングバードに改造された手術…それは大まかに言えば生体同期型ISの埋め込み手術だった。その中でフィンクは彼がこれまでに得たビガーやISに関する技術と記録を全て一夏の身体にインプットしたのだ。その中にはティアによって得られた海底都市・ラプチャーの技術も含まれていた。ラプチャー独自の技術である武器強化ステーションに、火炎機構を備えたリベットガンというものが存在する。発射機構の中に熱を発生させる装置を仕込み、発射された弾が炎を纏った状態にするものだ。今回一夏がビガーを駆使して行った攻撃もここから発想を得たものだ。

 

操舵室に入った一夏は機器を操作し、半壊した船体に再度命を吹き込んだ。船の後方から低い音が鳴り、次第に強くなってくる。窓から外を覗いてみると、待機していた者たちがあたふたと慌て始めていた。

 

「よしよし、いい慌てっぷりだ。…ソングバード!」

 

一夏が自らの化身の名前を叫ぶ。閃光と共に巨躯の怪鳥へ変化した一夏は天井を突き破って大空に羽ばたき、両手にショック・ジョッキーをチャージ。巨大なクリスタルの塊を作る。それを眼下の飛空艇は向けて大きく振りかぶって投擲した!船体に当たってパリンと割れたクリスタルは巨大な電撃となり、船の周囲に降り注いだ。そして外に待機していた部隊は大打撃を負う。ほぼ全員が動けなくなったところで、トドメを刺すように船のエンジンが大爆発。機器類が感電し、火の入りかけたエンジンが耐えきれなくなったのだ!先ほどエンジンを復帰させたのはこのためだった。

 

(よしよし、綺麗に片付いた)

 

その様子を空中から眺めていたソングバードはご機嫌と言わんばかりに、ハミングするように鳴きながら天使像の方へ向かって羽ばたくのだった。

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