英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。 作:聖剣エクスカリ棒
ヒム出してーなー!!!
エクスが短い散歩を終えて控え室に戻ろうとしていると、廊下にやけに女子生徒が多いことに気がつく。
その女子生徒達の見つめる先にあるのはA組控え室だ。
不審に思いながらも廊下を進み、そして女子生徒達が見ているものを理解する。
「あ、エクスさーん!無事…とは言い難いかも知れませんけど、とにかく第1種目は突破されたようで何よりです」
爽やかな笑顔で駆け寄ってくるのはサポート科の加賀美だった。
「お疲れ様です。社長も第1種目突破した感じですか?」
「はい、なんと……え?なんか呼び方おかしくないですか?」
加賀美のセリフにエクスは首を傾げる。どこかおかしいところがあっただろうか。
「エクスさんって実は葉加瀬さんよりの思考してますよね」
「それって褒めてます?貶してます?貶してるならブチ切れますけど」
「…まぁ、立ち話もなんだし座りましょう」
「え、なんで答えないんですか」
加賀美に促され、どこか話をはぐらかされた事を感じつつエクスは廊下のベンチに座る。エクスが座ったのを確認して加賀美もその隣に腰を下ろした。
「いやーきつかったですね。エクスさんも気絶したまま連れてこられてましたけど、やっぱり難しかったですか」
「まぁ…障害物競走自体は余裕、だったんですけど…思わぬ敵にやられましたね」
加賀美の質問にお茶を濁すエクス。加賀美もなんとなく察したのかあー…という声を上げながら小さく頷いている。
「まぁ、この体育祭って全員で蹴落とし合う感じなんで気にしてはないんですけどね」
「ま、そうですね。そういうイベントですからねぇ」
物は言いようを体現したようなエクスの発言に見事に引っかかる加賀美。
このような嘘じゃないけどそのまま受け取ると違う意味になる言葉を軽々と考えつくのはエクスの得意なことの一つだ。
「エクスさんって優勝したらどうします?」
「…どういう意味です?」
単純に理解できずに聞き返すエクスに加賀美は真面目なトーンで答える。
「優勝したらかなりの注目を浴びるじゃないですか。そしたら、職場体験にも結構影響すると思うんですよ」
「あー…、なるほど」
雄英の職場体験についてエクスはあまり詳しくない。というより殆ど知らないのだが、大凡の検討はつく。
「でもまぁ、優勝、出来るならしたいですけどね。けど別に優勝しなくても職場体験は出来るでしょうしあんまり気にしてないです」
「…なるほど」
「社長はどうなんですか?」
エクスに聞かれ、加賀美が大きく息を吐いて背もたれに体重をかける。
「実は私って、ヒーロー志望なんですよね」
「え、そうなんですか!?」
「実は。これまだエクスさんにしか言ってないので他言無用でお願いしますね?」
驚くエクスとは裏腹に酷く落ち着いた様子で加賀美は語り出す。
「私の個性って、正直、何も出来ない没個性なんですよ。ただ周りと関係を築きやすくなるだけで。
といってもまぁ、この個性のおかげで知り合えた人とかも居るんで全然この個性がいやって訳じゃないし、むしろ感謝してるんですけど…。
それでもやっぱりヒーローにはなりたいじゃないですか。カッコイイですし。小さい頃からの夢なんで。
そこで考えたのが、仮面ライダーG3とかアイアンマンみたいな強化スーツを使うことだったんですね。だからサポート科に入った訳です」
「…すごいっすね。上手く言えないんですけど、諦めないで考え続けたのとか、めちゃくちゃ尊敬します」
エクスの言葉に微笑みながら、加賀美が続ける。
「ありがとうございます。いやぁなんか、恥ずかしいですね。こういうの。
……でまぁ、先程のエクスさんの質問にお答えすると、サポート科って自分の作ったアイテムは持ち込みが許可されてるので、優勝したらそれを掲げて『個性なんかなくてもヒーローになれる。だからどんな夢でも捨てるな』って言いたいですね。
戦えない私でも化学の力でヒーローになれるってめちゃめちゃロマンあるじゃないですか。
だから私は、この先非戦闘系の個性を持って生まれた子達の夢の為にもヒーローになりたいです」
なんか話それちゃいましたね、と笑う加賀美の手をエクスは両手で掴む。
「なりましょう、社長!社長なら絶対になれますよ!絶対!その為にも絶対優勝してください!」
エクスの真剣な瞳を見た加賀美は一瞬驚いたような表情になった後、照れくさそうに笑った。
「エクスさんっていい人ですね。まさかライバルに優勝しろと言われるとは思いませんでした」
「それだけ社長の夢は素晴らしいって事です。でももし、社長と戦うことになっても俺は手加減しないんでそこはよろしくお願いします」
「…っ、望むところです。誰が来ても勝つだけなので」
互いに手を握り、火花を散らす2人。そこでエクスと加賀美は揃って違和感に気がつく。2人が揃って周りを見ると、大勢の女子と一部の男子に囲まれていた。
「えっ…と、これなんですかね。エクスさんなにか仕掛けました?」
「違います。俺じゃないです。ていうかあの人誰ですか」
エクスの視線を追って見れば、控え室廊下になぜか明らかに部外者であろう女性の姿。幼児番組に出てきそうな服装の女性はエクスと加賀美を見ながら息を荒くして必死に写真を撮っている。
「もう私にはなにもわからないです。エクスさん何とかしてください」
「無茶ぶりしないでください。僕が何か出来ると思います?」
状況が理解できない上に未知の状況であることからその場を動けない2人。そんな2人に救いの手を差し伸べるように放送が響いた。
『さぁ休憩もあと5分!第1種目を突破したチャレンジャー達は直ぐにスタジアムに集合だ!』
「よし、行きましょう」
「っすね。お互い頑張りましょう」
2人はその場から逃げるように足早にスタジアムへと向かった。
「予選を通過した上位42名の皆はおめでとう!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!そして次からいよいよ本選よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!!」
ミッドナイトの声が響き、ステージにあるモニターが灯る。ミッドナイトが指し示すモニターに一同が注目する。
「コレよ!」
モニターに映し出される文字。そこには大きく『騎馬戦』と書いてあった。
だが勿論、雄英の騎馬戦がほかの騎馬戦と同じであるはずはない。ルールはこうだ。
参加者は最低2人から最高4人で騎馬を組む。そして、先程の障害物競走の順位によって下から5ポイントずつ与えられ、その上位チーム16名が次の競技に進むことが出来る。相手のポイントはハチマキを奪うことで奪える。
又、制限時間は15分でハチマキを奪われようと騎馬が崩れようとアウトにはならないらしい。
そして最後に、1位には1000万ポイントが与えられるとのこと。
「なるほどなぁ」
単純でありながら様々な作戦を立てることが出来るルールに、エクスは素直に感心した。
説明が終わり、騎馬を組む時間が与えられた。
「師匠ー。組みましょー。どうせ1人ですよね?」
エクスがアルスに話しかけると、アルスは嫌そうな顔をした。
「なんでそんなこと言うやつと組まなきゃいけないんだよ。それにボク、もうチーム決まってるし」
「え、マジで言ってます?」
アルスのドヤ顔を見てエクスは驚愕する。だが、アルスの個性はかなり強力なものであり真っ先に狙う人物が居たとしても不思議ではない。
「それじゃ、僕のチームが行くまでせいぜい生き延びてくださいね?」
「おーぅ」
アルスと別れて、今度は幼馴染の姿を探す。目的のレヴィは思いのほか直ぐに見つかった。
「レヴィさーん。一緒組みましょう」
手を振りながらレヴィに走りよる。すると、レヴィは困ったような表情になった。エクスは嫌な予感がした。
「ゴメン!実はもう組んじゃってテ…」
「まじで言ってます!?みんな組むの早くないですか!?」
まだ始まってすぐだと言うのに、こうも組むのが早いとはどうなっているのか。恐らくは説明の段階で既に目をつけていた人達だろう。
「エクスくんモ、ハヤクしないと組む人いなくなるかもヨ〜?」
「うっわまじじゃん!まじで最悪だわ。レヴィさんも頑張ってくださいね!」
「エクスくんもネ〜!」
手を振るレヴィに見送られながらエクスはメンバーを探す。だが、始まってすぐにも関わらず続々とグループが出来始めていた。
そんな時、中心から少し外れたところで、エクスは自分の友人が1人で立っているのに気がついた。
誘わない理由は無いと、エクスは走り出す。
「葛葉さん!組みましょう!まだ誰とも組んでないですよね!?」
エクスに声を掛けられてビクッと肩を震わせた後、葛葉が振り返り、次第に目を輝かせていく。
「え、俺と?まじ?」
「まじです。組みましょう。俺もまだ1人なんで」
エクスに誘われ、葛葉が笑顔を浮かべる。
「もう全っ然おっけーよ。早く他のメンバーも探そうぜ」
「ですね。でも他に宛てはあんまり…」
エクスが首の後ろに手を当てて辺りを見回すが、自分達と組んでくれそうな人物は見当たらない。
「最悪このまま2人って手も…」
「だとしたらクソ弱ぇ騎馬になるな」
「っすよねぇ…」
肩車でフラフラ歩く騎馬では戦いようもない。
「葛葉さん、だれか誘ってきてくださいよ」
「いや無理。俺のコミュ力じゃ逆立ちしても出来ねぇわ。ABOはどうなの?」
「仲良い人総当りして葛葉さんだけですね」
うんうんと頭を悩ませる2人。そこに駆け寄る人影が1つ。
「エクスさん、組みましょう。あんな別れ方しましたけど背に腹は代えられません」
加賀美がエクスの肩に左手を置き、右手を自身の膝に乗せて肩で息をしながら途切れ途切れに言う。
「この人誰?」
「とある会社の社長でお金持ちです」
「まじ!?金持ちなの!?」
「エクスさん、誤解されるような言い方はやめてください」
思いっきり嘘という訳では無いが殆ど嘘のような言葉に加賀美が焦ったように言う。
「あくまでまだ次期社長候補ですし、お金だって貯金している分しかないんで!」
「え、まじもんの未来の大企業の社長の卵…!?金持ちじゃん!」
「だから違いますって!」
金だ金だと騒ぐ葛葉を落ち着かせようとする加賀美とふざけて葛葉に乗っかるエクス。
「あ、そうだ。エクスさん。この方を紹介して頂けると有難いんですが…」
「葛葉さんです。ビビるほど強いです」
「葛葉です。養ってください」
「雑!?あまりにも雑すぎませんか!?あと葛葉さんはいい加減お金の話題から離れましょう!?」
緊張感の欠片も感じられない空気感の中、もう1人エクス達3人に近づく人物が居た。
「あの〜、ここってまだ入れます…か?」
3人の顔を見比べながら、低い姿勢で声をかけてきたのは第1種目でエクスを襲った片割れである剣持だった。
「星川さんとかと組めばいいじゃないですか」
エクスの純粋な疑問の言葉に頬を掻きながら剣持は口を開く。
「星川は他の生徒と組んだんだよ。んで、B組が思ったよりグループ別れててこれは入れないなって察したから、人数まだ入りそうなここにって…」
「ん…?つまりハブられたってこと?」
「それはひたすらに話が飛躍しすぎ」
首を傾げる葛葉に被せるようにツッコミをする剣持。そして、じゃなくて!と叫び、話の流れを無理やり戻した。
「で、どうっすかね…?入れて貰えます…?」
剣持の言葉に顔を見合わせる3人。
「どうします?僕は全然いいですけど」
「んー、任せる!」
「私的には剣持さんが居たらボケとツッコミの比率が合うので有難いのですが…」
ヒソヒソと話をする3人を固唾を呑んで見守る剣持。数十秒経って、3人が剣持の方に向き直る。
「えー、じゃあ葛葉さん…」
「え、俺!?いやいや!社長〜、頼みますよ〜!」
「結局私ですか!?」
コホンと咳払いをして、加賀美が1歩進みでる。
「私達としては剣持さんにぜひともうちのチームに入って頂きたいです。いかがでしょうか」
加賀美の言葉を聞いて剣持の表情が明るくなる。
「お願いします!」
「では、これからよろしくお願い致します!」
剣持の返答を聞き、頭を下げる加賀美。それに剣持も頭を下げる。そして、互いに顔を上げたあとに加賀美が両手を叩いた。
「それじゃ改めて!お互い自己紹介しましょうか。結構適当…というか、所属がバラバラなチームなので作戦とかも立てましょう!ではまずは、エクスさんからお願いします」
加賀美に促されてエクスに視線が集まる。
「えー、エクス・アルビオです。よろしくお願いします。…フハハ、何だこの空気」
エクスに釣られて笑いが広がる。
「んんっ、えーでは葛葉さん!お願いします」
「葛葉です。勝ちます。よろしく」
葛葉の自己紹介に3人から歓声が上がる。
「いや待って、なんだよその反応。めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!?」
うわぁぁと両手で顔を覆ってしゃがみこむ葛葉を見てエクスが爆笑する。
「次は、えー…すみません、お願いします」
名前が分からないので手を差し伸べて剣持に促す。剣持も頷いて口を開いた。
「剣持刀也です。えー…、やばい、特に何も言うこと無かったわ。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる剣持。
「そして私が加賀美ハヤトです。サポート科なのでサポートアイテムを使えますから皆様の力になれるように尽力させていただきます」
よろしくお願いします、と改めて頭を下げる加賀美に拍手が沸き起こる。
「それで、早速なんですけど作戦を立てたいと思います。うちのチームは絆も何も無いようなチームなので、運要素を極限まで削っていこうと思いますが…如何ですか?」
「だいじょぶでーす」 「おけ」 「異議なーし」
加賀美の問いに雑に返す3人。その事に苦笑いしながらも加賀美が続ける。
「それで、まずは騎手なんですが――」
『いくぜ!残虐バトルロワイヤル!カウントダウン!』
緊張感が辺りを支配する。
『3!』
『2!』
『1!』
『スタート!!』
スタジアム中に煙が溢れた。
最近結構フレン見てるんですけど…、めちゃくちゃエビオムーヴしてますよね。すぐ叫ぶし嘘つくし。
ガチプラベが物凄い数のてぇてぇを生み出してくれたので投稿ペースにブースト(EX)が付きました。
ちなみに最後のはヴィラン乱入とかでは無いです。