英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。 作:聖剣エクスカリ棒
ここ最近で一気に認知度が増した関東さん。多分登場はしな…しない…いやするか…?するかもしれないです。(するとは言ってない)
終了までの残り時間3分。先程まで逃げに徹していた葛葉達の騎馬が突如攻めてきたことで状況は一変していた。
迫り来る騎馬に銃弾を浴びせてすれ違いざまにハチマキを奪っていく葛葉チームは明らかに氷壁の向こう側を目的としていた。
「社長、どうやって壊します?」
「剣持さんの個性で削ります。先程の様に擬似ワープもありなんですが、他のチームを巻き込んだ方が私たちに割くリソースも少なくなるので破壊します」
「削るなら少し時間かかりますよ?」
「そこは私たちで耐えましょう。最悪、ジェットパックを使えば何とかなります」
ハチマキを取るよりも進む事をメインに動き、まもなく氷壁に辿り着く。
剣持が氷壁に触れると氷壁がガリガリと削れていく。
「30秒ちょい掛かりますんでお願いします!」
「わかりました!」
既にサポートアイテムのストックはなく、葛葉の持つ銃とジェットパックを使い切れば完全に底をつく。
故に、極力サポートアイテムに頼らず守り切らなければならない。
更に剣持の個性の都合上この場を離れることも出来ない。
「葛葉さん、お願いしますね。貴方次第です」
「まっかせてくださいよォ。誰が来ようと返り討ちにしてやりますから!」
「こうなったら僕何も出来ないっすね」
「大丈夫ですよエクスさん。私もです」
動くことが出来ないことを察した騎馬やハチマキを奪われた騎馬が狙いを定めて迫り来る。
「っしゃこいやぁ!」
葛葉が叫び、拳を平手に打ち付ける。
こちらに来る騎馬は今のところ5つ、A組生徒は居ないようだ。
「あと9発か」
銃にありったけの弾を込めて狙いを定める。銃に気がついた騎馬は一瞬動きを止めた。
そこに葛葉の放った弾丸が突き刺さる。5つの騎馬は体勢を崩して倒れ込んだ。
麻痺が解けるまであの5つの騎馬は復帰出来ないだろう。
「思ったよりも来ませんね?」
「俺らにビビってるとかじゃねぇ?」
今倒したばかりの騎馬以外がこちらにくる様子はない。
「戦ってる騎馬が多いですからね。それに、向こうはまだ私達のサポートアイテムを警戒してるんだと思います」
「てことはあれですか。僕達がまだサポートアイテムを持ってると思わせなきゃいけない…?」
「いけないってことは無いですけど、そう思わせて損は無いですね」
「なるほど」
襲ってこなかった騎馬達は各々で激戦を繰り広げており、こちらへ向かってくる騎馬は見当たらない。
「もうすぐ削り終わりますんで、準備しといてください」
騎馬が1つ余裕で通れるほどの横幅の穴がどんどん奥へ広がっていく。剣持の言う通り、あと数秒もすれば氷壁に隙間が出来るだろう。
「なんか思ってた倍くらい楽でしたね。ヌルゲーっすよこんなん」
「まだ油断するなって。…っし、穴があき「死ねやクソモブ共!」葛葉!」
BOOOOOMB!!
剣持の叫び声と同時に起こる爆発。
「チッ…」
爆発を起こした張本人である爆豪に瀬呂のテープが張り付き、自分達の騎馬へ引っ張り戻す。
「アイツ…ギリギリで受け止めやがった。こっちは死角から奇襲掛けたのにだ」
爆豪の睨むような視線の先で、同じく爆豪を鋭く睨む葛葉。
「あいつまじでありえねぇわ。ぜってー左手無くなったと思った」
「どうします?このまま中に入れば挟み撃ちになりますが…」
「大丈夫でしょ。僕らなら勝てますよ。嘘、負けたらごめん」
「何を言ってるんだお前は」
自分の発言をすぐに取り下げたエクスに対し、剣持が思わずツッコミを入れる。それを見ながら、加賀美はツッコミが増えたことに安堵する。
「んじゃ、乗り込みますか〜」
「ボコボコにしましょう!」
士気を上げながら葛葉達の騎馬は氷壁の中へと足を踏み入れ――
「《
影と氷刃が葛葉達の騎馬に襲いかかってきた。
「葛葉さん!」
迫り来る氷刃をかかと落としの要領で地面に叩きつけながらエクスが叫ぶ。
「やべぇ、3本取られた」
葛葉の首から下げられたハチマキが明らかに減っている。そして、緑谷が新たなハチマキを巻いていた。
「距離を保ったまま移動しましょう。今、誰かに後ろから来られるのは痛いです」
加賀美の一声で視線は逸らさないまま、開けた穴から遠ざかる。緑谷チームと轟チーム、そして葛葉チーム。3チームの間に肌を刺すような緊張感が流れる。
「(ここで下手に動けば挟み撃ちだ…。轟君たちと葛葉君たちがぶつかってくれればいいんだけど…)」
「(あいつらが入ってきたせいで下手に動けねぇ。緑谷に攻撃を仕掛けて不意をつかれるのは避けたいな…)」
それぞれが周りを注視して相手の出方を伺う状況。『下手に動けばハチマキを奪われる』、その危機感が全員の足を止めさせて
「っしゃ1000万寄越せやぁぁぁぁ!!!」
いなかった。
「えっ!?」 「嘘だろ…!?」
突如として走り出した葛葉達に緑谷と轟の体が僅かに硬直する。その一瞬で葛葉達の騎馬は一気に緑谷チームへと迫っていた。
先程までとは段違いの速さを出した葛葉チームだが、その原理は単純明快。
騎馬の後ろを支える加賀美と剣持が全力でジャンプしている間にエクスが加速、3人を引きずる形で走り出す。
それと並行して剣持が個性を発動して騎馬3人の靴底と地面を磨いて滑りやすくし、後ろ2人の着地と同時にエクスも急ブレーキをかけて滑って移動したのだ。
更に葛葉が左手を蝙蝠にしてバラけさせ、コケないように騎馬全体のバランスを整えることで僅かな時間で驚異的な加速をみせたのだ。
「…っ!常闇君、防御!」
「《黒影》!」
葛葉と緑谷を遮断するように現れたダークシャドウが腕を振るって葛葉のハチマキを奪おうとする。
だが、それを無視して葛葉は緑谷のハチマキへと手を伸ばして、
「レシプロバースト!!」
一陣の風と共に、轟が緑谷のハチマキを奪い去った。
「ウッソだろぉ!?」
1000万を失った緑谷から距離を取ろうと葛葉が咄嗟に体を引っ込めるが、ダークシャドウにハチマキを全て奪われてしまう。
「やっべ、俺ら今ポイント0だわ」
「葛葉さん何やってんすか!」
「いやあれは仕方なくねぇ!?」
葛葉たちと距離をとる緑谷チームに先程の加速で同じくらい離れた位置にいる轟チーム。
幸いにも出入口に1番近いのは葛葉チームの為逃げられることは無いが、何とかしてポイントを取らなければここで敗退だ。
『残り時間1分〜!』
葛葉チームの焦りを加速させるようにアナウンスが入る。
「社長、どうします?このままだと僕ら負けちゃいますよ」
緊迫した様子の剣持。
「…1000万を狙います。緑谷さん達はハチマキがバラけているのでポイントを奪い辛いです」
そこで1度加賀美は言葉を切る。そして、薄く笑いを浮かべた。
「
狙いを轟チームに定めた葛葉チームが動き出す。轟とアルスがそれぞれ氷と雷で攻撃を行うが、どちらもエクスと葛葉に防がれてしまう。
「凍らせても力づくで氷を割られる…!」
「こっちもだめ。葛葉さん再生するからあんまり効いてないよ」
足元を凍らせてもエクスは無理やり突き進み、雷を放っても葛葉が受けて再生する。
右側の力は次第に限界に近づいてきている為あまり高い出力で使う訳にはいかないし、アルスが下手に出力を上げれば発生する熱でより氷壁が溶けかねない。
周りを遮断するための壁が、かえって自分達を追い詰めるとは考えもしなかった。
「(壁を無視してでも止めるべきか…!?)」
「アルス、もっと強いやつ撃てるか!」
「りょう……かいぃっ!」
まずは目の前の障害を何とかする、そう結論づけて瞬時に指示をだす。
アルスの右手から放たれた轟雷が葛葉の騎馬を捉える。
『残り10秒!』
視線の端で何かが動いた。そちらを見れば、葛葉達と同様にこちらへ進んでくる緑谷達の騎馬。
「八百万!」
「わかりましたわ!」
八百万が腰に付けていた球体を取り外して投げる。投げられたそれは空中で破裂し、煙幕を生み出した。
序盤に葛葉達が使っていたのを見て、念の為にと八百万に作らせておいたものだ。
『残り5秒!』
雷が生んだ砂埃が晴れる。そこには倒壊した葛葉達の騎馬の姿――
「轟さん!上を!」
違和感を感じた瞬間、八百万が叫ぶ。上を見れば、倒れた騎馬の中に居るはずの葛葉がほんの3メートル先まで迫っていた。
背中に付けている機械で空を飛んでいるのだろう。
『4!』
「頂きぃ!」
限界まで伸ばされた右腕に対し、おもわず左手を構える。発生した炎に葛葉が驚いたような顔で腕をひきもどす。
「(緑谷に続いてこいつにまで左を使っちまった…)」
無意識とはいえ、また左を使ったことで少なからず動揺してしまう。
『3!』
煙幕を突き破り、緑谷達の騎馬が再び姿を現す。
「うああぁぁぁ!!」
雄叫びを上げながら突き出された腕を受け止め、捻り上げる。そこに第2の拳が放たれた。
「…っ!」
『2!』
防いだとはいえ、全力の拳を受けて僅かによろめく。その隙をついて1番上のハチマキを奪われた。
なんとか奪い返そうと手を伸ばしたが、躱されて距離を取られた。
少し離れた位置の緑谷が奪ったハチマキを見て絶望に染まった声を出す。
「これじゃない…!」
『1!』
予めすり替えておいたハチマキを取ったのだろう。再び向かってくるが、時すでに遅し。
『終〜〜了〜〜〜!』
伸ばされた緑谷の手が顔の横をすり抜ける。僅かに起きた風がかみをゆらす。そして、気づいた。
「…!?ハチマキがねぇ!」
首に巻いていた奪ったハチマキではなく、元から持っていた分のハチマキが無くなっていた。
当たりを見回せば、緑谷を支える常闇の個性『黒影』がハチマキを咥えていた。
「(最後の最後で不意打ちされたか…)」
黒影が奪ったハチマキに緑谷も驚いている事から常闇の独断なのだろう。
「終わったな…」
飯田の声ではっと我にかえる。
「悪い、ぼーっとしてた」
騎馬から降りると、足元が少しぐらついた。わずかな時間ではあったが、中々の密度があったから歩くのが久しぶりの様な気がする。
『それじゃ早速、結果発表行くぜぇ!!』
プレゼント・マイクのアナウンスと共にモニターに順位が表示される。
「……あ?」
それを見て、体が固まった。
『まずは1位!ぴったり1000万ポイント!葛葉チーーーームっ!』
「「イェエエエエ!!!」」 「おおおお!」 「やったぁ!」
全員で雄叫びを上げる。結局、今回の戦いは全て社長の思い通りに進んだわけだ。
わざとポイントを全て奪わせ、焦ったような演技と共に突撃する。抑えるだけでは効果が出ない僕達に対して敵は必ず強力な技を撃ってくるから、そこでジェットパックを起動。
互いに視界が遮られた一瞬で飛び上がった葛葉さんが再び突撃。
ここで相手は必ず迎撃してくるので避けるふりをして葛葉が左手首を蝙蝠にして切り離しつつ、それがバレないように敵の視界から消える。
切り離された左手首はこっそり1000万ポイントを奪い、空中の葛葉さんへハチマキを運ぶ。
これで、気づかれることなく1000万ポイントを奪ったのだ。
この作戦は本番前に互いの個性把握を行ったからこそ生み出されたものだ。
「いやぁ、良かったですね!運良く緑谷さん達も出てきてくれたので助かりました!」
体育服はボロボロで体は傷だらけ。それでも、僕達は全力で笑っていた。
「もう社長も葛葉さんも剣持さんも大好きですわ。俺。もうマジで嬉しい!」
「ほんと、社長の作戦とかもちさんの瞬時の判断とかエクスの守りとかまじ最強だわ。俺ら最強」
「いやもう僕らのチームなら誰が相手でも勝てますよ、と。ここで声高に宣言したいですね!」
「この結果に辿り着けたのは皆さんが居たからですよ…。本っ当にありがとうございました!」
互いに背中を叩いたり口笛を吹いたりしてわいわい騒ぐ。この瞬間がひたすらに楽しい。
「じゃあ私たちも一旦退場しましょう」
社長に言われて周りを見れば、ほかのチームも続々と退場していた。
「出ましょうか」
4人で談笑しながら退場口に向かう。途中でふと後ろを振り返ると、さっきまで戦っていた轟さんが暗い顔で俯いているのが見えた。
第3種目が始まる前に挟まれた昼休憩。コンビニ弁当を持って葛葉さんと一緒に控え室を出る。
「あと、ラストの葛葉さんの演技。あれめちゃめちゃ迫真でしたね」
「あ〜、あれな。あれ向こうが火ぃ出てきたからまじでビビってたわ」
「あっははは!それであんなマジだったんですか!」
社長と剣持さんと待ち合わせ場所のベンチに座る。2人はまだ来てないみたいだ。
「どうします、先に食べちゃってます?」
「俺はどっちでもいいけど、待っといた方が良いっしょ」
「じゃあ待っときますか」
弁当を脇に置き、スマホを取り出す。2人でPUBGを遊ぼうとした時、僕達の手元に影が差した。
顔を上げると、轟さんが立っていた。
「…えと、なんですか?」
確かに口に出したはずなのだが、轟さんは微動だにしない。なんなんこの人。めちゃくちゃ怖いんだけど。
隣を見れば、葛葉さんも困惑した顔をしている。
「…俺は」
突然話し始めた轟さんにおもわずびっくりしてしまう。そんな僕を他所に、轟さんはもう一度口を開いた。
「俺は、勝たなくちゃいけない。だからお前たちにも必ず勝つぞ。右だけの力でな」
………?
「なるほど…?まぁ僕も負けないんで。頑張ってください」
「ていうかさっき左手使ってたくね?どゆこと?」
いまいち意味がわからなかったから励ましてみた。だが、僕達の言葉を聞いて轟さんは歯を噛み締めた。というか絶対これ葛葉さん地雷踏んだくない?
「あの時みたいな失敗はしねぇ。次は勝つ」
それだけ言って轟さんは去っていった。意味がわからないまま取り残された僕と葛葉さんは顔を見合わせる。
「なんだったんですか、今の」
「俺にもよくわからん」
「まぁ…、とりあえず始めましょうか」
持っていたスマホを掲げると、葛葉さんも乗ってきた。
「っしゃあ、勝つか」
12位だった。
エビオが轟さんって言うとロキにしか聞こえない…轟君はロキだった?
LvEx1周年おめでたいですね。エビオに出会えてよかったです。
にじさんじにハマったきっかけでもある詩子お姉さんには感謝しか無いです。
お気に入り1000件ありがとうございます。