英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。 作:聖剣エクスカリ棒
前の2話より数百文字程度短いですが、許し亭許して。
個性把握テストが波乱を呼んだ初日を越えた、入学2日目。エクスはギリギリ間に合わず2分の遅刻をしていた。
「遅れました!すいません!」
「お前、入学して2日連続で遅刻とかふざけてるのか?」
教室に飛び込んだ瞬間相澤先生に睨みつけられる。
「で、今日はなんで遅刻した?」
「今日は普通に寝坊しました」
「ふざけてるのか?」
相澤先生にもう一度聞き返され、エクスは瞬時に土下座した。
「すいませんでした」
エクスをしばらく睨みつけた後、相澤先生は小さいため息をつき、髪を掻きながら言った。
「明日も遅刻したら反省文だからな」
「ありがとうございます!」
相澤先生に許され、エクスは意気揚々と席に着いた。
「えー、今日から授業が始まる。ウチの学校の教師は全員実力者のプロヒーローだ。きちんと授業を聞き、学べるところは全部学ぶように。以上」
こうして、雄英高校の2日目が始まるのだった。
午前の授業は必修科目で、様々な授業が行われる予定だ。
そして、記念すべき最初の授業は体育である。
生徒達は、体育服に着替えてグラウンドに集合した。そして、一人残らず固まった。
だが、それも仕方がないだろう。グラウンドに居たのは、化粧をした上半身裸の大男だったのだ。
「お、きたきた。待ってたよ~ん」
固まったままの生徒達に大男はにこやかな笑顔で近づいてくる。
「私、花畑チャイカ。保険体育の顧問やってまーす。よろしくね」
未だに硬直したままの生徒達。そんな中、メガネの青年一一飯田天哉が歩み出た。
「雄英高校ヒーロー科1年A組、飯田天哉です!質問よろしいですか!」
「なんだ、言ってみろ」
「何故、先生は上半身の服を脱いでいるのですか!」
「こっちの方がいいからに決まってんだろうが!!」
突然声を荒らげるチャイカ。訳が分からない。
「ちなみに、顔は化粧じゃなくて自前よ。他に質問は?」
チャイカが生徒達を見渡すと、1人が手を挙げた。エクスである。
「お前金髪じゃん。地毛?名前は?」
「あ、エクス・アルビオです。地毛です。質問いいですか?」
「なんだね」
「先生ってどのくらい強いんですか?」
エクスらしい質問だ。その質問にチャイカは即答した。
「いいエロ本があったら1週間くらいは誰にも負ける気がしないね」
生徒達は絶句した。こいつ、ただのオネエじゃない。もっとやばい存在だ。
「それと、私はオネエじゃなくてオカマです。間違えないように。今日はとりあえず今後の授業方針について説明するから聞いとけよ」
そう言って、さっさと授業の準備をしだすチャイカ。そのうち、硬直が解けた生徒達が続々と手伝いをしだした。
「私の授業は楽しむのがモットーだからね。たまに授業じゃなくて雑談するけど許してね。で、早速聞いて欲しいんだけどさ、一昨日地上波でアイアンマンあったじゃん。めちゃくちゃ面白かったよね。見たやつ居る?」
数人が手を挙げる。
「あー、思ったより少ないね。あ、エクスも見た?」
「あ、はい。見ました。死ぬほどかっこよかったです。プロトタイプとボコボコに殴り合うところがめちゃくちゃかっこよかったですね」
「あーー、あそこねぇ。赤髪ツンツン、お前は?」
「え、俺っすか?俺はやっぱ…バトルシーンですね」
「おー、お前もか。やっぱりMARVELは戦闘大事よね。あ、そうだ、この中にMTGやってる奴いる?」
今度は更に少ない人数が手を挙げた。
「またエクスじゃん。好みが合うね。今度勝負しようよ。ボコボコにしてやっからさ。…うんちって面白いよね」
最早、チャイカのトークに誰もついていく事は出来ない。
結局その日、体育の授業は行われなかった。
「あー、疲れた」
エクスは、切島と瀬呂と共に食堂に来ていた。
「あの体育の先生、めちゃくちゃキャラ濃かったよな…」
「あれがプロヒーローとか信じ難いよなー」
「もっとマトモな人いなかったんですかね」
食堂で買った昼ごはんを食べながら3人で喋る。
「そういやエクス、昨日の話聞かせてくれよ」
トンカツを頬張りながら瀬呂が言う。
「え、昨日なんかありましたっけ」
「とぼけんなって。アルスさんといい感じだったじゃねーかよ」
エクスは考える。確かに昨日、師匠と会話はした。だが、いついい感じになっただろうか。
「実を言うと、俺も気になってんだよな。お前、アルスさんの事を師匠って呼んでたろ?」
「あー、まぁ」
「あれってなんでなんだ?」
エクスは手短に、2人に試験会場での事と昨日の会話を伝えた。
「それで、なんか勝手にエビオって呼ばれるのが決まったんですよね。納得いかねぇ」
「いや、いいと思うぞ。エクスより呼びやすいし」
「だな。これからもよろしくな、エビオ!」
「うわぁ、最悪だ…。言わなきゃ良かった」
楽しげに話す3人。そこに、影が差す。
「ネェ、ここ座ってもいイ?」
「あ、いいですよ」
焼き魚定食の盆を持ったレヴィが、エクスの隣に座る。
「助かっタ~。どこも席が空いてなくてサ。いただきま~ス」
さも当たり前かの様に食べ始めるレヴィと、こちらも当たり前の様に食事を続けるエクス。
そんな2人に、切島と瀬呂は理解が追いつかない。
「エクス、お前…いつの間にレヴィさんと仲良くなったんだ?」
「ん?…あー、元からですね。幼馴染なんで」
「途中でエクスくん引っ越しちゃったけどネ」
「え、はぁ!?幼馴染と高校で再開とかどんなラブコメだよ!」
瀬呂が悲鳴のようなツッコミを入れるが、エクスとレヴィは顔を見わせて肩をすくめるだけだ。
「そんなこと言われても…」
「ホントのことだから困るヨ」
「息もぴったりじゃねーか!」
荒ぶる瀬呂を切島が抑える。
「マジで仲良いんだな、お前ら」
「親友ですから」「親友ですかラ!」
完全にハモる2人の返事に、切島も苦笑いを浮かべて食事を再開することしか出来なかった。
午後になり皆が待ちに待った授業、ヒーロー基礎学の始まりである。担任教師がオールマイトであり、ヒーローとしての様々な事を学ぶ授業である。
「わーたーしーがー!普通にドアから来た!」
扉を勢いよく開けてオールマイトが教室に入る。それだけで教室は大騒ぎだ。
「オールマイトだ…!すげぇや、本当に先生やっているんだな!」
「
「画風違いすぎて鳥肌が…」
クラスメイトがざわつく中、オールマイトは教壇に立つ。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ!」
オールマイトが直々に教えるヒーロー基礎学は人気の科目で、雄英生の殆どが取っている科目だ。
「早速だが今日はこれ!戦闘訓練!そしてこれに伴って…、こちら!入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた
「おおおお!!」
生徒全員から歓声が上がる。
「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」
更衣室で、それぞれが自分のコスチュームに着替えてグラウンドにやってくる。
「師匠のコスチュームって思ったよりしょぼいですね」
「はぁ~?そういうえび先輩こそ、そんなおっきい剣扱えるんですか?」
エクスのコスチュームは、黒のインナーに鎧を着込んだガチガチのフル装備で、なおかつ背中に大剣を背負っている。
それに対して、アルスのコスチュームは左手に持つ魔道書に私服の様な服と金の縁どりがされた黒いフードを被っただけというさっぱりしたものだった。
「使えない剣を背負うわけないじゃないですか。師匠馬鹿ですか?」
「馬鹿じゃねーし!ボクのコスチュームは、全部ボクの魔法を補助するものだからこれでいいんだよ!ガチガチに固めすぎても動けないだけだからね」
「あー、師匠へなちょこでしたもんね」
「ぶっ飛ばすぞ!?」
相も変わらず罵り合う2人に、クラスメイトはもうなんの反応も示さない。ただの日常風景として見ているようだ。
「始めようか!有精卵ども!戦闘訓練のお時間だ!!」
全員が集まったのを確認してオールマイトが授業を開始した。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」
メカメカしいコスチュームに身を包んだ飯田が手を挙げて質問する。
「いいや、もう二歩先に踏み込む!屋内での対人訓練さ!君らにはこれから敵側とヒーロー側に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」
2対2の屋内対人訓練、つまり実際に起こりうるシチュエーションでの限りなくリアルに近い訓練ということである。
僅かばかりの緊張が生徒の間に走る。
「それじゃあクジで対戦相手、そして2人1組のコンビを決めてもらうぞ!」
オールマイトが差し出した箱からそれぞれクジを取っていく。エクスのクジに書かれた文字は『F』。
「師匠ー。師匠のはなんて書いてありました?」
「ボク?ボクは『K』だよ。えび先輩は?」
「俺はFですね」
「そっかぁ。お互い、頑張ろう!」
「まぁ、俺は頑張らなくても最強ですけどね」
そんな事を言いながら、仲良く肩を並べてモニターを見る2人。
対人訓練は順調に進み、これまでで3組の戦闘が終了した。
「さて、それでは次のペアは一一」
オールマイトがボールを2つ取り出す。そこに書かれていたのは…
「ヒーローチーム、エクス少年、葛葉少年。ヴィランチーム、アルス少女、レヴィ少女だ!」
相手が、決まった。
戦闘開始の前の作戦時間、エクスは例の白髪の青年…葛葉と2人でビルの入口前に立っていた。
「……」
「…ッスゥーー」
そこにはただ、沈黙があるだけだった。お互いがお互いの顔色を伺い、相手が話し出すのを待っている、まさに地獄のような状況。
そんな状況を最初に破ったのは、葛葉だった。
「えーーっと……。なんと、お呼びすればよろしいでしょうか」
「あ、はい、え、ーっと…。クラスメイトなんで、普通にエクスって呼んで貰えれば…。いいと、思います…」
「……エクス」
「…はい。……あとは、エビオとも呼ばれてますね」
「あー…、そっちの方が呼びやすそうなんで、そっちにしますね」
「あ、了解です」
「俺の事は…まぁ、好きに呼んでください」
「あ…、わかりました」
「……」
「……」
再び気まずい空気が蔓延しようとした時、戦闘開始の合図がなった。
「…どうします?」
「あー…、正面突破で」
「ですね」
2人でビルに足を踏み入れる。その瞬間、目にも留まらぬ速さで蹴りが放たれた。
「一一ッ!」
咄嗟にエクスが受け止める。そこへ、今度は火球が飛んできた。
「甘ぇ!」
葛葉がこれを素早い蹴りでかき消す。
「やっぱり、正面突破してくると思ったよ」
「よっト…」
僅かな気配と共に暗がりから聞こえたその言葉。
それとほぼ同じタイミングで瞬時にエクスに蹴りを入れていた影が後退した。
「核はボクが守ってるよ。ここまで来れるかな?」
そう言葉を残し、暗がりの影が消える。残されたのはエクスと葛葉、それに2人の行く手を遮るレヴィだけだった。
「葛葉さん、レヴィさんは俺がやります」
「了解、じゃあ俺はもう1人の魔法使いやるわ」
エクスがレヴィの前に立つ。
既に人の気配が消えた暗がりに葛葉が走ろうとしたところで、
「行かせると思ウ?」
レヴィが葛葉に向かって襲いかかった。
だが、その一撃は再びエクスによって阻まれる。
「やらせると思いますか?」
「ABO、頼んだ!」
対人訓練の幕が上がる。
レヴィ・エリファ
個性:《亜人》
常人の3倍の身体能力を持ち、なおかつ自身の声でバフ、デバフを操る。めちゃくちゃ強い。
葛葉
個性:《吸血鬼》
こちらも身体能力が高い(最大で常人の5倍)。また、かなり強い自己回復能力と眷属を作る力、肉体変化能力を持つ。太陽が高いほど弱体化し、月が高いほど強くなる。