英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。 作:聖剣エクスカリ棒
対人訓練の次の日。ギリギリ遅刻を免れたエクスはドヤ顔で机に座っていた。
「さて、ホームルームを始める。…なんだエクス、その顔は」
「いえ?なんでもないですよ?」
偉そうな態度のエクスに対し、相澤先生が小さなため息をついて言った。
「言っておくが、遅刻しないというのは最低限の常識だ。それが出来たくらいで調子に乗るな」
容赦なく浴びせられた正論に、エクスの中のイキリエビはあえなく撃沈したらしい。エクスは二度と遅刻をしないと心に誓った。
「話を戻すが、今日は君らにこのクラスの学級委員を決めてもらおうと思う」
『学校っぽいのきたーーー!!』
クラスの全員が我先にと手を挙げる。もちろんエクスも最前線で手を挙げている。
エクスが必死にアピールをしていると、後ろから押される感覚があった。
手を挙げたまま振り返ると、前に来ようとして詰まったアルスがそこにいた。
エクスの背中と後ろの人の体で顔を挟まれた姿に、エクスは思わず吹き出してしまう。
「え、えいへんぱい!あいわあってんあよ!」
「し、師匠…やめて……。お腹痛い…」
ゲラゲラと笑うエクスの足を蹴りたいが、他の人に当たった時の迷惑を考えて足を出せないアルス。
「静粛にしたまえ!」
どんちゃん騒ぎだったクラスが、その一言で静かになった。
声の発生源を辿れば、飯田の姿。
「多を牽引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるがやれるものでは無いだろう!」
声を張り上げ、手を挙げていた生徒達を叱責する。
「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!」
飯田の言い分は確かに正論だ。誰も反論出来ない。だが、全員が飯田に突っ込む事は出来た。
「そびえ立ってんじゃねーか!何故発案した!」
最終的に、委員長は緑谷、副委員長は八百万となった。
ホームルームが終った後の、5分間の休憩時間。エクスはアルスの机で不貞腐れていた。
「絶対俺だと思ったんだけどなー。俺ほどの適任は絶対この世には居ない。言い過ぎた。50人くらいは居るわ」
頬杖を着いてブツブツと文句を言うエクスを見て、アルスは額に青筋を浮かべた。
「えび先輩、なんでわざわざボクの席まで来るの?」
だが、エクスは全く聞いていない。アルスの机に顔を伏せ、うんうん唸っているだけだ。
この頭を思い切り叩いてやるか。そう思って教科書を高く掲げたところで、突然エクスが顔を上げた。
「師匠はなんで俺に入れなかったんですか?舎弟の俺に施しとか与えるのが師匠ってもんじゃないんですか?」
いかにも、それが普通のようにそんな事をのたまわるエクスに、アルスは思わず言い返した。
「いやいやいや、普通は弟子が師匠に入れるものでしょ。尊敬してるならさ?」
やれやれと首を振るアルスに、エクスは意味がわからないとでも言うような顔をした。
「師匠って面白いこと言いますね。師匠の尊敬出来るところなんて、せいぜい顔が大きいところくらいでしょ」
「そんなこという奴に入れるわけないだろぉ!」
アルスは改めて、教科書を振りかぶってエクスの頭に叩きつけた。
だが、エクスの個性は肉体強化だ。エクスの頭に叩きつけた教科書の方が折れ曲がり、シワになってしまった。
「教科書ごときで俺が痛がるわけないじゃないですか。師匠ってほんとに馬鹿ですね」
口元に手を当て、小馬鹿にしたような表情のエクス。アルスは個性を使用した。
「うげえぇぇ!」
個性で起こした風に吹き飛ばされて自分の席に激突するエクス。アルスはしてやったりという風に笑う。
「これに懲りたら、あんまりボクの席に近づかないようにしろよぉ?」
プププと笑うアルスを見て、エクスはぽつりと呟いた。
「あの人、最悪だ…」
2時限目を終えた休み時間、エクスは雄英高校サポート科の校舎に来ていた。
なんでも、対人訓練でボロボロになったコスチュームをサポート科の生徒3名が修理してくれているとのこと。
「失礼しまーす」
指定された部屋の扉を少しずつ開ける。
部屋を見渡せば、部屋の右端の方で2人の女生徒と1人の男子生徒がエクスのコスチュームを前に作業がてら話し合っていた。
「いや、やっぱりこの剣は絶対ライトセーバーみたいなレーザーソードにした方が持ち運びやすくてロマンがありますよ。改造しましょう」
「いや、勝手に剣の形変えたらだめでしょ。怒られちゃうじゃん」
「社長、言われたとおりの修理しましょ?」
「えぇー、じゃあ剣が変形して他の武器になるのは…」
「「社長?」」
「あ、はい、すみませんでした」
両手に花とも呼べる雰囲気に、エクスはやる気を失っていた。このまま気づかれないように帰ってしまおうと振り返る。
「すみませーん。私達に何か用事ありましたか?」
扉に向かって歩き出していたエクスの背中に例の男子生徒の声がかかった。
エクスは振り返り、答える。
「いや、なんでもないです。間違えました」
白々しい嘘だ。
だが、そんな嘘も一瞬で見破られてしまった。
「あれ?エクスさんですよね?このコスチュームの…」
「「あ」」
銀髪と黒髪が半々になっている女生徒の問いかけで残り2人も思い出してしまったらしい。
「私、雄英高校サポート科所属加賀美ハヤトと申します。えっ…と、エクスさん…で宜しいでしょうか。ウチになんの御用でしょうか」
咳払いをして、姿勢を正す男子生徒一一加賀美ハヤト。
端正な顔立ちに綺麗な茶色の髪の彼は薄く笑みを浮かべてエクスを見つめている。
「いや、その…コスチュームの修理をしてくださっているときいたので、お礼をしに…来ました……」
相手が初対面故に陰キャを発揮するエクスに、加賀美は笑顔を浮かべる。
「わざわざすみません。見てのとおり少しずつ改良を加えながら修理をしているので、明日の朝まで待って頂けると幸いなのですが…」
「あ、大丈夫です。それでお願いします」
ぺこぺこと頭を下げあう2人。後ろにいた女生徒2人は、いつの間にか作業に戻っていた。
女生徒の方をチラリと振り返り、少し緊張した様子で加賀美がエクスの耳元に顔を寄せる。
「すみません、少しご相談があるのですが…」
加賀美から、「次の休み時間に屋上まで来て欲しい」と頼まれたエクスは首をかしげながら階段を登っていた。
屋上の扉を開けると、屋上の段差に腰掛ける加賀美の姿。
「あ、エクスさん!来てくださったんですね!」
「はい…、来ましたけど。話ってなんですか?」
首の後ろに手をやりながらエクスが質問する。それを待っていたかのように加賀美はポケットから出したプリントを広げた。その顔は冒険に心を踊らせる少年のようだ。
「これ、エクスさんのコスチュームの改造案なんですけど見てみてくれませんか!?」
加賀美の言う通り、確かにプリントには細かくエクスのコスチュームの改造案が載っていた。
よりごつくなった鎧に変形する剣。果てにはロボットもどきまで様々な改造案が描かれている。
エクスはそれを見て一一
「うわ、めちゃくちゃ厳ついじゃないですか!こんなん絶対負けませんよ!うわー、やべぇ…めちゃくちゃ、もう死ぬほど強そうじゃん」
同じく少年のような瞳で加賀美の改造案を眺めていた。
「ですよね!エクスさん的にはどれが気に入りました?」
加賀美がワクワクとしたオーラを放ちながらエクスに聞くと、エクスは即答で6メートルほどのロボットを指さす。
「俺はこの、超絶いかしたロボットですね。ただ火力でゴリ押すだけで勝てそうじゃないですか」
エクスの答えを聞いて、加賀美は拍手をしながら頷いた。
「流石エクスさん。エクスさんは分かってらっしゃる。やっぱりこういうロボットは男のロマンがありますよね!」
加賀美の言葉にうんうんと頷きながら、エクスが喋る。
「めちゃめちゃわかります。俺も昔はロボット作ってたんですよ。材料にこだわって、死ぬほど緻密な作業とかして。でも、最後の最後で設計にミスがあるのが分かって泣く泣く溶かしたんですよね」
「えっ…」
エクスの言ったことに加賀美が目を見開く。まさか、エクスにそんな過去があったなんて。
慰めの言葉をかけようとした時、エクスがサラリと言った。
「ロボットなんて作ったことないですけど」
場に微妙な空気が流れた。
「……とりあえず、エクスさんはコスチュームの改造に賛成ということで宜しいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では早速制作室に向かいましょう!」
「駄目です」
制作室に戻り、改造案を2人の女生徒に見せつつエクスの承諾を得たことを説明する加賀美。
だが、帰ってきたのは2人が予想だにしない言葉だった。
「え…夜見さん、どうして…」
腕を組んで仁王立ちをする女生徒、夜見れなに加賀美は子犬のような目を向ける。
「理由はいくつかあります。まず、1つ目は時間がかかることです。コスチュームを改造している間にコスチュームを使う授業があったらどうするんですか」
「そ、それは…一時的に補強するなどして壊れにくくしてから」
加賀美が答えようとするが、いい答えは見つからない。そこへ、さらに追い打ちをかけるように声がかけられる。
「社長ー、材料も全然たりまっせーん」
「葉加瀬さんまで…」
教室の奥からパーツを持って現れた2人目の女生徒、葉加瀬冬雪が夜見に加勢する。
「学校の材料もなるべく使わないようにしないといけないし、逆にこれだけの材料を自分で買うとコストがかなりかかりますよ?」
社長と言えど、使えるお金は有限ですよね?と葉加瀬に言われ、加賀美はぐうの音も出ない。
「社長、確かに社長の気持ちはわかりますけど、出来ないことは出来ないんです。社長なら、諦めることも出来ますよね?」
優しく諭す夜見に加賀美は何かを言おうとして、大きくため息をついた。
「わかりました…。すみません、エクスさん。コスチュームの改造はまた今度ということで…」
「あ、わかりました。えっと、それじゃ失礼します」
エクスが制作室を出る時、ガックリと項垂れる加賀美とそんな加賀美を慰める2人の姿が見えた。
昼休憩に入って、食堂を歩くエクス。今日のメニューは生姜焼き定食だ。
どこに座ろうかと席を探していると、見覚えのある白髪が目に入る。
「葛葉さん、ここ座っていいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
葛葉の対面に座るエクス。
「あー…、その、大丈夫?体調とか…」
「あ、大丈夫です。怪我とかも全部治りましたし」
時々どもりながらも会話をするエクスと葛葉。
「あん時はまじで助かったわ。もう少し遅かったら負けてたかんなー」
「いや、思ってた3倍くらいレヴィさんが強くてですね。相打ちになったんですよ」
「あー、だから終わった後にABOがぶっ倒れてたのか」
「ぶっ倒れては…無いです。ちょっと寝てただけですね」
「いやいやいや、あれは倒れてたって」
昼食を取りながら談笑する2人。話題は次々に変わり、好きなゲームや好きな漫画のことで盛り上がっていた。
「ABOさぁ、今度一緒になんかゲームしようぜ」
「いいですね、それ。何します?」
「えー、なんかPUBGみたいなゲームでも」
突然、校舎中に大音量の警報が鳴り響いた。
「ぅえ!?なんだこれ、めちゃくちゃうるさいんだけど!」
「フハハハ、葛葉さんめっちゃビビるやん」
耳を押さえて慌てふためく葛葉をエクスが笑う。
「いや、こんなん絶対ビビるって。逆になんでABOはビビんないわけ?」
「いや、これでも死ぬほどビビってますけどね?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは、すみやかに屋外へと避難して下さい。繰り返します一一』
その場にいた全員が戸惑う中、そんな放送が流れた。エクスと葛葉は顔を見合わせる。
「これ、なんかやばそうじゃないですか?」
「絶対やばいな」
意見が一致するやいなや、2人は全速力で出入口に向かって走り出した。辺りにはおなじく逃げようとする大量の人。
「やばい、人多すぎて前に進めねぇー!」
「葛葉さんが前を押し退けて進んでください。僕がその後ろをついてくんで」
「他力本願じゃねーか!」
少しでも前に進もうとしながら押し合い圧し合いしていると、葛葉の頭上を何かが飛んで行った。
「うわ、ずりぃ!上から行くとか反則だろ!」
上を飛んでいく飯田に葛葉が怒声を上げるが、葛葉の予想と違い、飯田は扉上に張り付いた。
「皆さん…大丈ーーー夫!ただのマスコミです‼︎なにもパニックになることはありません!大丈ー夫!」
飯田の声がパニック状態の食堂の隅々まで響き渡る。これによって、生徒達は冷静さを取り戻した。
その後、学級委員長が緑谷から飯田に移るのだがそれは別の話。
「んぉ、どした?ABO」
「いや、なんかめちゃくちゃ嫌な予感がするんですよねぇ。もしかしたら、パズドラに50000くらい課金して爆死するかもしれないですね」
「うわ、それはきついわ。ドンマイ」
「いや、まだ!まだ決まったわけじゃないですから!」
RUSTコラボ良かった…。馬鹿コンビ良き…。
加賀美ハヤト
個性:《カリスマ》
人に信頼されやすくなる。元々の性格もあり、みんなから愛される人物に。ちなみに、加賀美インダストリアルという大企業の次期社長である。
夜見れな
個性:《器用》
尋常じゃないほど器用であり、正確さを求められる作業では特に輝く。本人はこの個性を利用してマジックなども行っている。
葉加瀬冬雪
個性:《合成》
違うもの同士を掛け合わせて新しいものを作れる。合金などもお手の物。この個性で色々な薬品を作るのが趣味。