英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。 作:聖剣エクスカリ棒
にじさんじにArkが流行りだしてますね。葛葉のArk面白いのでオススメです。
エクスの拳がヴィランを撃ち抜き、アルスの雷撃がヴィランを吹き飛ばす。
背中合わせの形で戦うエクスとアルスの前に、ヴィランの山が出来上がっていく。
「…えびせんぱい」
「なんすか師匠、トイレでも行きたくなりました?」
「ちっげーよ!お前デリカシーとか考えろぉ!?」
エクスの脇腹を肘で殴打する。しかし、エクスは痛がる素振りも見せない。
その事にイラッとしながら、アルスが言う。
「このヴィラン、弱くない?最初のモヤモヤとかに比べたら全然戦えるよ」
アルスの言葉に、エクスは馬鹿にしたような声を出した。
「師匠、特に戦ってなかったじゃないですか」
だが、エクスの予想とは裏腹にアルスは何も言い返すことは無かった。
「…師匠?」
「せんぱい、あとちょっとだよ!」
「あ、はい」
気合いを入れ直し、ヴィランと格闘する。大振りの拳を体を僅かに横にずらすことで避け、腹部に右の拳を叩き込む。怯んだヴィランにトドメとばかりに回し蹴りを食らわせれば、ヴィランは気絶して動かなくなった。
「えびせんぱい、飛んで!」
「ぅええ!?なんっ…と、危ねぇ!」
アルスに言われた通りにジャンプした瞬間、地面に電流が走った。電気に当てられたヴィランは一人残らず倒れた。
「ししょおおおお!!そんなんできるならもっと早くやってくださいよぉ!」
「最初から撃ってたら魔力切れで倒れてたっつーの」
そう言うアルスの額には汗が浮かび、少し辛そうな表情だ。
「大丈夫です?なんなら俺が運びましょうか?」
「大丈夫だよ。ちょっと休めば回復するから」
その場に座り込むアルス。エクスも隣に座る。
「………」
「え、なんすか師匠」
あぐらをかいて欠伸をするエクスを、アルスが不思議そうに見つめる。
「えびせんぱいって、ナチュラルに隣に座るよね」
「え、遠回しに近づくなって言ってます?」
「ちげーよ、なんでそうなるかなぁ」
あーもーと少し顔を赤くしながら頭を掻くアルスにエクスは困惑しながら頬杖をついた。
「…あ、そうだ。師匠、他の人の様子を魔法で探ったりできます?」
「ん?あー…どうだろう。やってみる」
魔導書を開き、少しだけ魔力を込めた指で複雑な模様を描く。描き終わった後に軽く魔力を流せば使い切りの『千里眼』の魔法陣が完成だ。
「出来た。ちょっと待ってて」
魔法陣に手を当て、目を閉じる。なにかに引き込まれるような感覚が訪れたあと、次の瞬間には様々な景色が目の前に広がった。
突然体を強ばらせたアルスに、エクスは半ば反射とも言える速度でアルスを揺さぶり、声をかけた。
幸いアルスはすぐに目を覚ました。だが、顔色が明らかに悪い。
「師匠、何を見たんですか?」
エクスの問いかけに、アルスは薄らと涙を浮かべて答えた。
「えびせんぱい…、先生が…」
「ピンクの子と角の子、黄色タイツはここに残って私と13号の援護。残り3人は避難して増援呼びなさい」
『花畑先生!』
「チャイカ先生だっつってんだろ!ボケが」
砂埃をはらいながら、鈴原と対峙するチャイカ。
「貴方、プロヒーローですよね?楽しみだなぁ」
ナイフを胸元に抱いて、うっとりした表情でチャイカを見つめる鈴原。チャイカはそれを鼻で笑う。
「サイコパスが。けちょんけちょんにしてやるよ。って言うか、早く避難しろよ!」
「は、はい!麗日君!瀬呂君!行こう!」
「うん!」 「おう!」
飯田を先頭に、出口へ走る3人。鈴原はそれを追いかけることもせず、チャイカの前に立っていた。
「…追わないの?」
「えぇ。あくまでも、私は強い人と戦いたいだけですから」
にこやかな鈴原に、チャイカは気味が悪いというような目を向ける。
「そろそろいいですか?いい加減お喋りも飽きてきたので」
「…来なさい」
チャイカの答えを聞くやいなや鈴原はナイフを構えて走り出した。
「ふっ!」
鈴原のナイフを躱し、パンチを繰り出す。拳からは確かに鈴原の肋骨をへし折った感触が伝わってきた。
そのまま壁に向かって殴り飛ばす。壁にぶつかった鈴原は、そのまま重力に従って地面に伏した。
「随分と呆気ないわね。…黄色タイツとピンクちゃんはクラスメイトの救助に行きなさい。角の子は一応こっちに残って」
「ウッス」 「了解しました!」 「ハイ!」
砂藤と芦戸が2人で暴風・大雨ゾーンに向かう。その姿を見届けたチャイカが再び前を向けば、鈴原はまた立ち上がっていた。
「はぁ…。また立ち上がるとか、どんなからくりよ。致命傷じゃないとはいえ骨は確かに砕いたでしょ?」
「はい…!すっごく痛かったです」
折れたはずの場所を擦りながら、にこやかに答える鈴原。チャイカは小さく舌打ちをする。
「回復系の個性ね…。面倒くさい」
「私を倒したいなら、一撃で私を気絶させるか個性を無効化しないとダメですよ?」
自慢げに語る鈴原。鈴原の個性は傷だけでなく洋服すらも直しているようだ。
「叩き潰してやる!」
チャイカが鈴原に向かって走る。拳を振り上げ鈴原を殴ろうとするも、ひらりとかわされる。
ナイフで切りつけようとする鈴原の胴体に蹴りを入れれば、鈴原は数歩後ずさった。
「ヤァ!」
そこへレヴィが追撃する。レヴィの飛び蹴りは鈴原を捉えた。
「あー、凄い…力が強いんですね。お二人共。何回か骨折られちゃいました」
蹴られた部位を擦りながら鈴原が起き上がる。
「…あんたを捕まえるプロヒーローが来るまでは足止めさせてもらうわ。角ちゃん、手伝って」
「分かりましタ!」
「葛葉君!」
「っしゃおらあぁ!」
13号がモヤ引き寄せ、現れた本体を葛葉が攻撃する。単純なコンビだが、黒霧相手にはとても効果的だった。
「ぐぅ…、まさかこれ程とは…っ!」
逃げようにも、13号が常に引き寄せを発動している上に葛葉が隙をついてくるため逃げることが出来なかった。
黒霧はあきらかに追い詰められていた。
「(いや、ヤツを出せば…)」
葛葉の攻撃を防ぎながらふと思案する。あの方に貰ったヤツを使えばこの状況はどうにかなるかもしれない。
だが、ヤツは元ヒーロー志望。裏切る可能性がある。
「(いや、あの方はきっちり調教したと言っていた。ならば…)」
黒霧の体から溢れるモヤを吸い込みながら、葛葉が攻撃できるように隙を作る13号。
突然、吸い込んでいたモヤの中から人間の腕が飛び出してきた。
「なっ…!?」
「先生!」
突き出された腕の持つ拳銃の引き金が引かれる。
「うぐ…」
銃弾が13号の頬を掠める。その一瞬の隙をついて黒霧は2人から距離をとった。
「大丈夫っすか、先生!」
「えぇ、大丈夫です…。だが距離を取られてしまった」
肩を並べて黒霧と対峙する葛葉と13号。その視線の先で、黒霧がモヤを広げた。
「貴方を信用します。あの生徒の相手を頼みました」
黒霧の言葉に答えるようにモヤの中から1人の青年が出てくる。
「了解でーす。殺しちゃっても文句ないですよね?」
ありとあらゆる銃を身体中に携えているが、どこか柔らかな雰囲気の青年。
その青年を見た葛葉の目が大きく見開かれる。
「…叶」
「……あ、葛葉か。久しぶり。元気だった?」
にこやかに葛葉に語りかける青年、叶。
「雄英に合格したんだ。良かったね」
「叶…なんでそっち側に…」
「え?決まってるじゃん」
泣きそうな、苦しそうな、そんな表情の葛葉に叶はさも当然かのように答えた。
「僕が
刹那、叶の持つハンドガンから稲妻が走り葛葉の体を貫いた。
数メートル吹き飛ばされる葛葉。傷口は既に治りはじめている。
「あはは、やっぱ葛葉の個性えげつないわ」
「けほ、かはっ。いってぇ…。ガチでやる気かよ」
「それが僕の仕事だからね」
叶が銃をアサルトライフルに持ち替えたと同時に、葛葉が翼を広げて飛び上がる。
ライフルから次々と発射される稲妻を回避しながら徐々に叶へと迫っていく。
「だったら、こっちも遠慮なくいかせてもらいましょうかねぇ!」
稲妻に体を削られながらも突き進む。
その勢いのまま、葛葉は叶に向かって拳を叩きつけた。
「…え、あ?」
「ごめんね葛葉」
柔らかい感触を拳に感じた直後、上から大量の稲妻が降り注いで葛葉の体を撃ち抜いていく。
拳の先を見れば、いつの間にか叶は消えてネコのぬいぐるみがあるだけだった。
「確かに葛葉は強いけどさ、やっぱりこういうのは経験がものを言うからね」
ボロボロの葛葉の頭に銃が突きつけられる。
「じゃ、ばいばい」
銃の引き金が引かれ…
「させるかぁ!」
BOOOOOM!!
「っと…」
「大丈夫か葛葉!」
爆破を躱して後ろへ下がった叶。その叶から葛葉を庇うように爆豪と切島が立ちはだかった。
「ヴィラン如きに好き勝手やらせてたまるか」
「今度は俺達が相手だ!」
広場の中心。そこで、相澤消太は地に伏していた。血が溢れ、骨も折れているだろう。
その背に、明らかに人間ではない化け物が乗っていた。
「(ダメか…。ヴィランも1人戻ってきていない。13号と花畑が戻ってこないのを考えれば、まだ交戦中か)」
ぼんやりとした頭で考える。
生徒達は無事に逃げれただろうか。あいつらには本当に悪い事をした。入学してから常に厳しくあたっていた。中には俺をきらっているものもいるだろう。
まぁ…それならそれでもいい。将来あいつらが立派なヒーローになってくれるなら教師冥利に尽きるというものだ。
「やれ、脳無」
主犯格らしき男が告げる。
「(13号…花畑…頼んだ)」
怪物が拳を振り上げる。
「やっちゃええびせんぱい!」
「おらあぁぁぁ!!」
怪物の腕が宙を舞った。
時は少し遡る。
アルスの言葉を聞いたエクスは、即座に広場へ向かって動き出そうとしていた。
「せんぱい、どこ行くの!?」
アルスの声にエクスが振り返る。
「助けに行くに決まってるじゃないですか!」
「行っても勝てるわけないよ!先生が勝てなかったんだよ!?」
悲鳴のようなアルスの声に、エクスは声をふるわせる。
「分かってる…分かってますよ。当たり前じゃないですか」
でも、と言葉を繋げる。
「僕は先生の事、先生としてめちゃくちゃ好きです。ヴィランが襲撃してきて、真っ先に突っ込んで僕たちには避難しろって言う先生ですよ?いつもは何かと厳しくて、すぐに退学って言うのに。こういう時は俺らの命を真っ先に考えてるんですよ」
そして、エクスはフッと薄く笑みを浮かべた。
「そんなかっこいい先生見たら、俺もヒーローになりたくなるじゃないですか」
アルスの目が見開かれる。
いつもの姿からは考えられないエクスにだけでは無く、エクスがそこまで考えていたことにも、エクスがヒーローになりたいと言ったことにも驚いているのだ。
「僕は先生に死んで欲しくない。だから助けに行きます。ヴィランに勝てないなら逃げればいい。僕は絶対に助けます」
決意を込めたエクスの眼差しにアルスは唾を飲む。そして、少し俯いて言った。
「ボクも行く」
今度はエクスが驚く番だった。
「師匠、正気ですか?死ぬほど危ないですよ?」
エクスの言葉に、アルスは目に薄ら涙を浮かべながらもしっかりとエクスを見据えて答えた。
「ボクだって先生に、えびせんぱいに死んでほしくない!」
アルスの叫びを聞いたエクスは、笑顔で手を差し伸べた。
「僕が死ぬとか、師匠って実は頭悪いんですね」
「えびせんぱい、空気読もうよ…」
エクスの手を取り立ち上がるアルス。エクスはその前にかがみ込む。
「…なにやってんの?」
「師匠、死ぬほど足遅いじゃないですか。乗ってください」
「んなっ!?」
平然と言ったエクスにアルスは顔を赤くする。おんぶされるのは単純に恥ずかしい上に、どことは言わないが当たったり、触られるからだ。
「い、いいよ。ボクは魔法使うから」
「何言ってるんですか。師匠は少しでも魔力を回復させるべきでしょ」
「うっ…」
抵抗するが正論でねじ伏せられ、渋々エクスの背中に乗る。
エクスが立ち上がるが、何故か止まったままだ。
「師匠」
突然呼ばれ、硬直するアルス。再び羞恥心が押し寄せてきて顔が赤くなる。
セクハラだったら、たとえ意味がなくてもボコボコにしてやると決意した。
「な、なんだよぅ…」
決意はするが、声は小さかった。
「いや、師匠って思ったより軽いですね。顔デカイのに」
アルスの中で、何かが切れる音がした。
「死ね!」
「ちょ、痛い痛い!髪の毛はなしでしょ!禿げたらどうするんですか!」
「うるせー!頭ん中足りてねぇやつよりはいいだろうがよぉ!頭でかい方がよぉ!」
痛みに耐えかねて走り出したエクス。アルスも髪を引っ張るのはやめて頭をポコポコと叩き出した。
「…到着したら、俺が時間を稼ぐんで師匠が先生を回収してください。その後逃げましょう」
「え?あ、分かった。…いきなり真面目になんなよ、びっくりするだろ」
「はぁ?僕はいつも真面目ですぅ〜」
わいわい騒ぎながら広場に向かって進む2人。
やがて、遠くに人影が見えてきた。
「えびせんぱい、やばくない?」
見る限り、相澤先生が敵に組み伏せられてトドメをさされそうになっている。
相澤先生が動かないのは、恐らく怪我をしているからだろう。
「やばい、間に合わないかも…」
エクスがぽつりと呟く。
「…間に合えば、せんぱいはなんとか出来ますか?」
「腕切り飛ばしたりすれば大丈夫ですけど…え、なんでですか!?」
エクスの問いかけを無視して、アルスは魔法陣を展開する。
「えびせんぱいをぶっ飛ばします。準備いい?」
「はっ!?え、ちょっと待って!」
エクスの背中に手が添えられる。
「あーもう、もうなんでも来い!」
エクスがやけくそに叫ぶ。それを聞いたアルスが魔法を発動させれば、エクスは高速で飛んでいった。
エクスの背中から引き剥がされ、落下しながらアルスが叫ぶ。
「やっちゃええびせんぱい!」
「おらあぁぁぁ!!」
振り抜かれたエクスの剣が、脳無の腕を切り飛ばした。
鈴原るる
個性:《修復》
武器や服を直すだけでなく、怪我やダメージも治すことが出来る。流石に欠損した部位は治らない。一撃で沈めなければすぐに傷を治されてしまう。
ナイフスキルは独学で、その戦闘力などは素の力である。
花畑チャイカ
個性:《戦闘系エルフ》
周りに自然があればあるほど、治癒力と直感が鍛えられる。
体は鍛え抜いた末の結果なので個性が発動しなくとも十二分に強い。
叶
個性:《ライトニングゲイボルグ》
自身の体と持っているものに帯電させることが出来る。また、帯電したものは雷の速さで動かすこともできる。
個性:《ロト》
ネコのぬいぐるみ。自分と場所を入れ替えての緊急脱出だったり、カメラをつけて偵察したりなど様々なことに使える。
ちなみに、この個性は感想欄のとある感想からアイデアを頂いたもの。