英雄がヒーローになります!給料次第ですけど。   作:聖剣エクスカリ棒

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今回のタイトルは葛葉風。特に理由はないです。
次回から、また更新が空くと思います。


【ヒロアカUSJ編】アルティメット対あり【僕のヒーローアカデミア】

脳無の体が袈裟斬りにされて地面に転がる。エクスはいつの間にか剣を振り下ろした体制で立っていた。

 

「死柄木…!“あれ”は危険です。私達もいきますよ!」

 

「チッ…次から次へとイレギュラー…!雄英は化け物の巣窟なのか…?」

 

脳無の体が再生し、エクスに向かって足を突きだす。エクスはそれをいとも簡単に片手で受け止めた。

その背後から黒霧と死柄木が迫る。

 

「…は?なんだこいつ」

 

死柄木の手が確かにエクスの右肩に触れる。エクスの右肩は死柄木の個性によってボロボロと崩れていく。だが、エクスは何の反応も示さない。

 

「こいつ、痛覚が無いのか…?」

 

そこでようやくエクスは脳無を蹴り飛ばして左手で死柄木に拳を叩き込んだ。

死柄木は手を突き出してエクスの拳を防御しつつ、エクスの左手を崩壊させる。

 

「死ね」

 

右肩を負傷しているにも関わらず、全力で剣を振るエクス。傷口からは血が吹き出す。

 

「死柄木!」

 

黒霧がワープゲートを広げる。エクスの剣はワープゲートに飲み込まれ、エクス自身の脇腹にに突き刺さる。

エクスは剣を投げ捨て、黒霧の首元を蹴りつけた。脇腹からブシュッと血が飛んだ。

 

「くっ、プロヒーローにも引けを取らない戦闘力…!奴は本当に生徒なのですか!?」

 

「知るかよ…っ。脳無!」

 

脳無が剣を拾ったエクスに向かって何度も拳をぶつける。それを剣で防いだり躱したりしながらエクスは隙をついて何度も脳無を斬り裂いていく。

 

「キリがないな」

 

ぽつりと呟き、エクスが脳無の身体を蹴り倒す。後ろ向きに倒れた脳無の心臓へ、エクスは剣を突き刺した。

 

「刺したままなら再生出来ませんよね?」

 

剣を足で押し込む。剣は地面にめり込み、脳無の身体をピッタリとそこに固定した。

 

「…あ?」

 

エクスの体がぐらつく。気づけば左腕が無くなっていた。少し離れたところに無くなった左腕が落ちている。

 

「痛みを感じないならば奇襲にも弱いということ。片手で私達に勝てますか?」

 

振り返りざまに放たれた回し蹴りを避けつつ黒霧が言った。

人間は足の小指だろうと、1つパーツが無くなるだけでも立つのが難しくなるものだ。それが腕1本ともなれば、立っているだけで精一杯のはずだ。

エクス顔めがけて死柄木の腕が伸びる。

 

「づっ…!?くそ、痛てぇ…!」

 

全てを崩す手のひらに対して、エクスは右手で殴りかかった。

右手の拳にびきりとヒビが入り、血が流れ出す。だが、その拳は死柄木の腕の骨を砕いた。

 

「まじでイカレてるぜ、お前」

 

折れた腕を庇いながら死柄木がイライラとした声で言う。

 

「ヴィランに生きてる価値は無いです。死んでください」

 

エクスが空中に飛び上がる。走ったりすることが出来ないなら空中を動くという考えだろう。

空中で器用に体を動かし、死柄木に向かって横薙ぎに足を振る。

 

「貴方の攻撃は最早、通用しません」

 

再びモヤが攻撃を包み、エクスが攻撃を受ける。

骨が折れた感覚と共にエクスが着地すると、その後ろでバキンという金属音とともに脳無が起き上がった。

胸に刺さった剣を抜き、エクスに向かって剛腕を振るう。

それを飛ぶことで回避しつつ、蹴りで脳無の頭を攻撃する。

 

「無駄だ。脳無には『ショック吸収』の個性がある。剣がないお前に勝ち目はない」

 

目を笑いに歪ませ、死柄木が自慢げに発した言葉にエクスは小さく舌打ちをする。

 

「ならねじ切りますよ…!」

 

再び飛び上がろうとするエクス。だが曲げた膝が伸びることはなく、エクスはただその場に倒れ込むだけだった。

 

「そこまで傷を負えば、たとえ痛みが無くても出血とダメージで動くことは出来ないでしょう」

 

黒霧の言葉にエクスは絶望する。復讐をする力を手に入れた。にも関わらず、敵の1人も殺すことが出来ずに後はただ死を待つのみ。

 

「やれ、脳無。バラバラにしてやれ」

 

エクスに脳無が迫る一一!

 

「死ねぇ!」 「エクスくン!」 「凍れ!」

 

 


 

 

確かに脳無と呼ばれたヴィランに蹴りは届いた。だが、手応えがない。

足の筋肉を使って、脳無を遠くに押し出す。

 

「あいつ1人でここまでやったんだ。次は俺たちの番だ」

 

「くそデクは金髪についてろ!」

 

「う、うん!」

 

凍ったからだを砕き、火傷と共に治していく脳無。それに、爆豪と轟、レヴィが対峙した。

その後ろで、緑谷がエクスを担いで運んでいく。

 

「ボスを倒したと思いきやまた戦闘か…。いい加減飽き飽きしてきたよ」

 

「やつ1人に時間を取られすぎましたね…」

 

死柄木と黒霧は脳無に戦いを任せ、後ろに下がる。

 

「…っ、来るぞ!」

 

轟の声とともに、脳無が走り出す。身構える轟とレヴィの前に爆豪が飛び出した。

 

「死にたくなけりゃ下がってろ!」

 

手を前に突き出し、篭手から伸びるピンに指をかける。そして、脳無が接近したタイミングでピンを引いた。

 

BOOOOM!!

 

爆炎が脳無を包み込み、辺りに煙が充満する。

 

「半分野郎!」

 

「あぁ!」

 

轟が右足で地面を踏みしめると、そこから次々と氷が飛び出して煙に包まれた範囲を氷漬けにしていく。

 

「やったか?」

 

徐々に薄くなる煙を見つめながら轟が言うが、その言葉とは裏腹に3人は警戒を辞めていない。

次の瞬間、氷の割れる音とともに脳無が煙の中から飛び出してきた。

 

「チィ!」

 

爆豪が爆発で迎撃しようとするが、繰り出された拳をなんとか躱すので精一杯だった。

続けて轟が足元から凍らせにかかるも、ジャンプすることで難なく回避され、逆に接近されてしまう。

 

「(不味い…!)」

 

「2人とも、耳塞いデ!」

 

レヴィの声に耳を塞ぐ轟と爆豪。

 

「Aaaaa!!!」

 

レヴィの喉から発せられた音が衝撃波となり、脳無を轟のそばから吹き飛ばした。

 

「悪い、助かった」

 

「どういたしましテ。でも、喉がやられちゃうから次は撃てないヨ?」

 

「心配すんな。もうヘマはしねぇ」

 

「テメェら、ぼさっとしてないで手伝えや!」

 

爆豪の声に2人とも脳無の元へ向かう。既に爆豪が戦闘を始めており、回避を主体に隙を見て攻撃を繰り出していた。

 

「凍らすぞ。離れろ、爆豪!」

 

「命令すんじゃねぇ!」

 

轟の声を聞いて、噛みつきつつもその場を離れる爆豪。それを確認した轟が右手を掬い上げるように振ると、地面から巨大な氷柱が次々と現れて脳無の半身をあっという間に氷で閉じ込めた。

 

「ヤアッ!」

 

残った半身にレヴィが飛び蹴りを叩き込む。ゴキリという音を響かせて、脳無が体が有り得ないくらい後ろに曲がる。

しかし、案の定脳無はすぐに氷を破壊しつつ元の体勢に戻った。

 

「おい、どーすんだ…!このままじゃジリ貧だぞ」

 

「わあってるよ!だからってどうにも出来ねぇだろ!」

 

「とにかく、ヒーローが来るまで耐えよウ!」

 

気合いを入れ直す3人。

だが、そんな3人を嘲笑うように脳無の横に黒いモヤが出現する。

 

「そろそろ私も参加しましょう。脳無を長いこと足止めする訳にもいかないですからね」

 

ニヤリと目だけで嗤う黒霧。3人の間に緊迫した空気が流れる。

 

「いきますよ…!」

 

モヤが一瞬にして消え、脳無が動く。

轟が氷で脳無に応戦しつつ、レヴィが空中から脳無の首にかかとで回し蹴りを入れる。

その後ろで、黒霧のモヤを爆風でかき消しながら爆豪が本体らしき部分を攻撃しようとしていた。

 

「ふむ、やはりいい連携ですね。しかし…」

 

黒霧のモヤから脳無の腕が飛び出す。爆豪は躱そうとするが、左肩に脳無の拳が僅かに当たってしまう。

それだけで体勢を崩し、地面に落ちる。

 

「爆豪!」 「爆豪くン!」

 

「よそ見をしていて良いのですか?」

 

爆豪に気を取られた一瞬の隙をつき、脳無が2人に向かって腕を横に振る。

轟は氷で、レヴィは腕を交差させてガードするが数メートルは後ろに倒れ込んだ。

 

「なんてパワーだ…っ」

 

「嘘でショ…」

 

ゆっくりと3人に歩み寄る脳無。

その時、一陣の風が吹き抜けた。

脳無が吹っ飛び、3人がいつの間にか離れたところに移動していた。

 

「…ようやく、ラスボスのお出ましか」

 

死柄木が憎々しげに呟く。

3人とヴィラン達の間に立つのは、誰もが知る最強のヒーロー。

 

「すまない、随分と待たせてしまったね。私が来るまで良くぞ持ちこたえてくれた」

 

「俺たちだけじゃないです。相澤先生とエクスがあいつらを1人で相手してました」

 

「…そうか。だが、もう安心していい」

 

 

 

「私が来た」

 

 


 

 

突き出されたチャイカの腕に無数の切り傷が走る。切り傷を付けた張本人の鈴原は既にチャイカの背後に回り、ナイフを構えていた。

それに対し、踵を振り上げて新体操のように体を一回転させることで鈴原を足に引っ掛け、地面に叩きつけた。

 

「ったく、めちゃくちゃ痛いじゃない。こっちは全然回復しないって言うのに…」

 

「凄いですね、あの体勢から攻撃されるとはおもいませんでした。貴重な体験をありがとうございます…!」

 

「キモっ」

 

ペッと血反吐を吐きながらチャイカが言った言葉に、鈴原は首を傾げる。

 

「なんでですか?誰だって、好きな物の中の新しい事を知るのは楽しいですよね?」

 

「その『好きな物』が、アンタは歪んでんの、よっ!」

 

チャイカの蹴りをバックステップで避け、低い姿勢から突撃する鈴原。チャイカは突き出した足を振り上げて鈴原に叩きつけた。

 

「そのまま埋まってなさい」

 

鈴原の頭を踏んだままチャイカが言い放つ。鈴原はナイフを順手に持ち替えてチャイカの足を切ろうとナイフを振る。

 

「っと、まじで危ないわね。叩き潰すぞ?たわけが」

 

「あはは、今のは痛かったです」

 

楽しそうにナイフを弄ぶ鈴原と、腕を組んで仁王立ちをするチャイカ。

再び2人が激突しようとした時、突撃2人の足元に花が咲き乱れた。

 

「花畑さま、遅くなりました!」

 

ゲートの方向から、チャイカとは違うメイド服を着た女性が歩いてくる。一見すると少女のような姿で、普通の耳ともう1組、鹿の耳が生えている。

 

「エリーじゃん。なんで居んの?」

 

チャイカの言葉に、エリーと呼ばれた彼女一一エリー・コニファーは頬を膨らませた。

 

「麗日さんに、急いで助けに行ってと言われたので急いで来ましたのに…。そんな言い方だと傷ついちゃいますよ!?」

 

「あー、ごめんね。助かったわ」

 

チャイカが深呼吸をすると、足元の花から何やら光の粒が現れてチャイカの傷を癒していく。

 

「それで?私は全快して、なおかつ2対1だけど。まだやる気?」

 

「当たり前じゃないですか。ここからが楽しく…あれ?」

 

鈴原が下を向く。釣られてそちらを見れば、鈴原の体が何やら黒い液体になって消えていっていた。

 

「あああ…、ごめんなさい…。もう終わりみたいです…。ということで、続きはまた今度!おつるる〜」

 

笑顔で消えていく鈴原に、チャイカは大きくため息をついた。

 

「100億もらったって、アンタとは二度とやらないわよ」

 

その横で、全く話についていけていない人物が1人。

 

「あれ?私が来た意味って…?」

 

 


 

 

エクスが目を覚ますと、つい最近見たばかりの天井が目に入る。

 

「…起きたか」

 

声のした方を振り向けば、全身を包帯でぐるぐる巻きにしてベッドに寝ている相澤先生の姿。

 

「ばあさんが、お前の怪我が酷いって愚痴ってたぞ。最終的には普通科の生徒1人とアルスも手伝ってようやくそれだ」

 

改めて自分の体を確認する。全身には傷跡が残り、未だに包帯が巻かれていたりガーゼが貼られていたりしている。

 

「あれ?先生、ししょ……あ、アルスさんって大丈夫なんですか?」

 

「一時的に意識を失っていたようだがな。他の先生方がついた時には目を覚ましていたらしい」

 

相澤先生の話を聞いて、エクスの体から力が抜ける。

 

「ただ、めちゃめちゃ怒ってたぞ。2、3発は覚悟した方がいいだろうな」

 

「まじですか…」

 

相澤先生の付け足した一言に、エクスは軽く絶望する。間違いなくあの師匠はエクスに向かって魔法をぶっ放すだろう。

 

「それより…だ、エクス」

 

「え、はい」

 

「お前の怪我の話だ」

 

エクスが息を飲む。

 

「単刀直入に聞く。なんであんな怪我を負った。ばあさんが言うには、正常な人間なら痛みを感じた瞬間に本能的にその部位を相手から引き離そうとするそうだ。だが、お前の怪我の幾つかからはそれが感じられなかったらしい。エクス、何があった」

 

ただ問いかけるだけの、威圧感もない言葉。だが、その言葉がエクスに脳無達と戦った時のことを思い出させた。

 

「…師匠を殺されたと思った時、ただひたすらに殺意が湧いたんです。そうしたら、なんか凄い体が軽くなって、痛みも感じなくなりました」

 

「それで?」

 

「敵を殺さなきゃって思って、とにかく攻撃しました。自分が怪我しても痛くないから無視して、なんとか殺してやろうとしました。…出来なかったですけど」

 

「…そうか」

 

エクスの答えを聞いた相澤先生は暫く沈黙する。そして、口を開いた。

 

「お前の行動は、殆どが模範的な動きだった。だが、2つだけ明らかなミスがある。分かるか」

 

相澤先生に聞かれてエクスは考えるが、全てが間違っているようにしか感じられず、答えることが出来なかった。

 

「1つは焦りすぎたことだ。俺の姿を見て準備や作戦も立てずに突っ込んだ事や、アルスが意識を失った時、呼吸や心音の確認をしなかったこと。これがなければもっと良い結果になっただろう」

 

そして、と相澤先生は言葉を続ける。

 

「2つ目は、自分の命を大切にしなかった事だ」

 

相澤先生の口から発せられた予想外の言葉に、エクスは驚く。

 

「お前が殺意を持ったのも分かる。それは理屈じゃない。だが、もしもお前がヒーロー志望ならば、お前はアルスをつれて逃げるべきだった。

お前が友人を失って悲しむように、お前の友人もまた、お前を失ったら悲しむことを忘れるな。

ヒーローが死んだら、誰がヴィランから市民を守るんだ」

 

相澤先生の一言一言がエクスの胸に突き刺さる。悔しさがエクスの胸を支配する。

 

「ここまでが、教師としての俺の意見だ」

 

「…ぇ?」

 

相澤先生の方を見る。相変わらず相澤先生は天井を見つめているだけだった。

 

「俺個人としては、お前が他人の為にここまでしたのを誇りに思う。…言っておくが、お前の行動を肯定しているわけじゃないからな」

 

1度息を吐き出し、相澤先生は言葉を繋げた。

 

「最初の時点でお前が葛葉を突き飛ばした結果、3人の生徒がUSJから脱出し、助けを呼ぶことが出来た。

また、お前達が来たから俺の命が助かったと言ってもいい。

そして、お前が1人で戦ったからヒーローが来るまでの時間稼ぎを多少なりとも出来た。

確かにお前の行動は最善じゃなかった。だが、お前のおかげで被害が減った面もあった事も忘れるな。…お前のおかげで助かった命があることもな」

 

気づけば、エクスの目から涙が溢れていた。

 

「…先生」

 

「なんだ」

 

「俺、先生みたいなヒーローになりたいです」

 

エクスの言葉に、相澤先生は少し笑って答える。

 

「辞めておけ。俺みたいな日陰者より、どうせならオールマイトを目指せ。そっちの方が稼げるぞ」

 

「……そうします」

 

「あぁ、それがいい。そうして、有名になったら恩師として俺の事を宣伝してくれ」

 

「…遅刻を許してくれたら考えときます」

 

「あんまり調子に乗るな」

 

「…すみません」




エクス・アルビオ

個性:《英雄》
肉体がかなり強化される。
求めた時、あらゆる武器がエクスに力を貸すようになる。
本気で殺意を感じた時、痛覚が麻痺して身体能力が上がる。

エリー・コニファー

個性:《妖精》
花を咲かせたり、花を操ることが出来る。バラのツルを伸ばしてトゲで攻撃したり、巨大な花の葉で攻撃を防いだりと様々なことが出来る。


ランキング見てたらこの小説が載ってて死ぬほどビビりました。いつも評価付与、感想、お気に入り登録をありがとうございます。まさか妄想の書きなぐりがここまでいくとは思ってもみませんでした。
そして、エビオやその他にじさんじライバーの方々のTwitterフォロー、チャンネル登録、動画を見た場合は高評価をよろしくお願いします。
にじさんじを初めて見る方は詩子お姉さんや郡道先生、月ノ委員長などがオススメです。

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