八葉の呼吸   作:ホクホク

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鍛錬、旅立ち

ーー"水の呼吸" 捌ノ型 滝壺

 

ーー"閃の呼吸" 参ノ型 業炎

 

上段の打ち下ろしから放たれる水の奔流に対し、同じく上段に構え、刀身に焔を纏わせて振り下ろす。焔を纏った渾身の炎撃は、滝の如き奔流を燃やし尽くし、干上がらせる。しかし、干上がらせる程度では治まらず、残火は尚も対峙する少年に迫る。

 

「…!」

 

ーー"水の呼吸" 参ノ型 流流舞い

 

少年は、流れる水流の如き足捌きで距離を取り、炎を容易く回避する。

 

ーー"閃の呼吸" 弍ノ型 疾風

 

それを読んでいた俺は脚力を極限まで高め、一直線に少年へ迫り、剣撃を放つ。

 

「ッ!」

 

対して少年は、体勢が悪い状態では刀で受けきれないと判断したのか、回避に徹する。

 

ーー"閃の呼吸" 壱ノ型 螺旋

 

そして、少年の背後へ抜けた俺は、反転する勢いを利用し、今度は炎渦巻く一撃を打ち放つ。

 

「義勇ッ!!」

 

ーー"水の呼吸" 陸ノ型 ねじれ渦

 

少年の危機を感知し、入れ替わるように俺の前に飛び込んできた人影が、"螺旋"と同じく回転の勢いを伴った剣撃を放つ。渦を巻いた水刃は、俺の放った炎撃とぶつかり合い拮抗する。

 

「ハァァッッ!!」

 

「甘いッ!!」

 

それでも数秒も持たず、人影だった者ーー仮面持ちの少年は剣を弾き飛ばされた。

 

ーー"閃の呼吸" 播ノ型 破甲

 

そこに間髪おかず、刀を左手に持ち替え、空になった右手で掌底を叩き込んだ。

 

「ガッ!?」

 

瞬間、腹部にその一撃を喰らった仮面持ちの少年は、彼方へと弾き飛ばされる。

しかし、その間に庇われたもう1人の少年は体勢を立て直し、今度は剣先をこちらに定め、俺へ向けて走り出していた。

迂闊に動くよりも、ここで迎撃する方が良いと判断した俺は、抜刀していた刀を鞘に戻し、居合の構えを整える。

 

ーー"水の呼吸" 陸ノ型 雫波紋突き

 

ーー"閃の呼吸" 伍ノ型 残月

 

水の呼吸のうち最速と言われる突きに対し、相手の刃先に合わせて放つ打ち払いーー双方の一撃は拮抗するものの、少年の放った突きを弾き返すことに成功する。

弾かれて体勢を崩している今、動きを止めた少年に、追い討ちを掛ける。

 

ーー"閃の呼吸 肆ノ型 紅葉

 

俺はもう一度刀を素早く納刀し、少年の首目掛けて一気に抜き放つ。

 

そして、首寸前で止めた。

 

「終わり、だな」

 

「……ああ」

 

首筋に刀を突き付けたまま一声かけた俺に対し、基本感情を表に出さないが、今は悔しさを隠しきれないのか、表情を硬くして一度頷くと振り上げようとしていた刀を下げた。

それを見た俺も、少年から刀を下げ、鞘に戻すのだった。

 

そこに、先ほど弾き飛ばされた仮面持ちの少年が遅れて、俺たち2人のもとに駆け寄ってきた。

 

「最終選抜を経てますます強さが増したな、凛」

 

「お前たちこそ、良い連携だったよ。また力を付けたな」

 

「……2人かがり相手に戦えるお前に言われても、実感が持てない」

 

「生意気良いやがって。前は今ほど持たなかっただろうが。それに、俺はお前たちの兄弟子なんだ。そうそう負けてやるつもりもないさ」

 

そう言って、俺は2人の少年ーー"富岡義勇"、"鱗滝錆兎"に笑いかける。

3人で仕合の反省点を洗い出していると、2人の間からぴょこっと少女が顔を出した。

 

「盛り上がるのは良いけど、"凛兄"、今度は私の番だよ?」

 

「分かってるよ。だけど、もう昼時だし、昼飯にしよう。鍛錬はその後にな」

 

「分かった。約束だからね?」

 

「ああ。お前との約束を破るわけないだろ、"真狐"」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

愛らしい妹弟子ーー"鱗滝真狐"の頭を優しく撫でると、彼女も嬉しそうに目を細めた。そして、先に帰っている2人を追いかけるように、山小屋へ戻っていくのだった。

 

 

 

最終選抜に合格して2日が経った。

すぐに鬼狩りに向かうものだと思っていたが、鬼狩りの要となる、肝心の日輪刀が出来るまで1週間は掛かるとの事で、刀鍛冶師から刀が贈られるまでは、待機ということになった。

それはこっちにとっても好都合だった。

これで、実戦で思い浮かんだイメージを極める時間に当てることが出来た。

 

また、弟・妹弟子が八葉の動きに着目し、自らの呼吸に取り入れようとしているようで、錆兎は壱ノ型、義勇は伍ノ型、真狐は弐ノ型を軸に考えているらしい。各々の型には、"その先"が存在するので、その型を起点に指南を開始した。

今はまだ模索段階だが、3人とも吸収が早く、次回の最終選抜には参加する頃には、完成している事だろう。

 

 

瞬く間に1週間は過ぎ、ひょっとこの仮面を被った男から日輪刀を持ってやってきた。

刀を持った際に刀身が暁色に変化し、この色は初めてだっ!!などと言って騒ぎ回ったりと一悶着あったが、それ以外は特に何事もなく受け渡しは終わった。

その後、どこに行ったか行方不明だった鎹烏が突然現れ、俺に伝令を告げてきた。

告げられたのは、山を下りた近くの集落に鬼が現れたこと。現場で先遣隊と合流し、迅速に鬼を討伐しろ、の2つだった。

いつ伝令が来ても良いように荷物は用意していたので、すぐに出発準備は整った。

3人の弟子たちには再会を約束し、爺さんからは餞別として、灰色と黒柄を基調とした市原模様の羽織と、錆兎や真狐が付けているような仮面を貰った。

 

そして、4人に別れを告げ、集落へ向けて走り出した。

 

それにしても、前にあった刀鍛冶であったり、爺さんや錆兎、真狐であったりと、仮面を付けてる人が多いような気がする。

餞別に仮面もらったし、鬼殺隊では仮面を付けるのが流行しているのだろうか?受かったのは良いものの、やっていけるかどうか不安な気持ちになってしまった。

 

 




日輪刀の刀身色についてご指摘を頂き、不備を発見したため修正しております。
灰色→暁色

暁色は、明け方の空の色ということで、今もなお蠢く闇を討ち払う光をコンセプトに採用しました。
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