あくタイプはかくとうタイプに弱い   作:T-

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なんだろう…最早設定回…みたいな?


かみくだく

 オレはあくタイプが大好きだ。

 

 何故あくタイプが好きなのかと問われれば、軽く半日は語ってしまう程、オレはあくタイプを愛している。

 

 あくタイプと聞けば、人によって顔を顰める人もいるだろう。

 が、少し待って欲しい。『あくタイプ』という五文字だけで、あくタイプの全てを判断するのは、あくタイプ使いとして許せないものがある。

 

 そんな、最近あく使いの兄貴がいるらしいバッドガールと友達になった、あくタイプの達人ことオレ。

 

 今日も元気にラテラルタウンへレッツゴー…と言いたいところだが…多分、今日もジム戦はお休みだ。

 

 何故なら…

 

「材料はしんせんクリームにモモンのみにしましょう。甘くてとても美味しいんですよ」

 

「は!?何言ってんだテメェ甘いカレーなんて不味いに決まってんだろうがッ!漢は黙ってスパイスセットにマトマのみだろぉぉぉォォい!?ちょ、ま、勝手に入れんッ、テメェ!?話聞けやァ!?」

 

 ここは、ガラル名物、ワイルドエリア。

 

 オレは今、カレーを作るため、絶賛サイトウとキャンプ中である。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ甘い…ぐすっ…このカレー甘いよ…」

 

「何を言ってるんですか。この甘さが美味しいんですよ。ピリッとしたカレーに甘いホイップ、最高じゃないですか」

 

「オレは最近お前が怖いよ…」

 

 コイツの味覚、どうかしてるんじゃないか?

 

 涙目になりながら、クリームが染み込んだ米にカレーを混ぜて口に突っ込む。甘口カレーで舌が汚染された後、おいうちをかけるようにクリーム米が口内でだいばくはつを起こす。リバースしそうになる所を寸出で抑え、コップを煽り水で胃へと流し込んだ。

 

 やばい、胸焼けがすごい。吐き気がする。まだ二口しか食べてないけどお腹一杯になっちまった。

 

「なぁダーテング、オレもう腹が膨れたからこのカレーやんよ。お前カレー好きだろ?」

 

『……ッ』

 

「あ、テメェなに材料のきのみだけ食ってんだよ!羨ましすぎるだろオレにも寄越しやがれ!」

 

 流石に限界が近いのでダーテングにパスしようと思ったら、コイツ材料のモモンのみだけ食ってやがった…!羨まけしからん…!

 しかも…?あらびきヴルストを取り出して、扇を振りかぶり…ッ!?ね、ねっぷうで焼いた、だと…!?なにそれ羨ましい!?

 

 ダーテングのねっぷうにより程よく焼けたヴルストは、ジュワリと音を立てながら脂を溢れさせ、キラキラと輝いてる。 

 普段なら、あー美味しそうに焼けたなぁ、ぐらいにしか思わないが、今のオレからしたらそれは垂涎のご馳走、文字通り涎が垂れてきた。

 

「ダ、ダーテング?オレたち、ホウエン地方を一緒に旅した仲間だよな?そ、それ、ひとっ、一口くれよ…!」

 

『……ー…』

 

「ちょちょちょ!?ちょっと待ってくれよ!?分かったッ!今度買うポケモンフードは少しお高めにするから!な!?頼むよ!」

 

『……ー…』

 

「おいダーテングぅ…!頼むって…お願いしますって…オレこのままじゃお腹減って動けなくなっちまうから…!」

 

『…〜…ーーーッ』

 

「く、くれるのか!?ありがとうダーテング!やっぱお前は最高の相棒(パートナー)だぜ!大好き!」

 

 あくタイプ最高!カッコよくて優しさも兼ね揃えてるとか、やっぱ神タイプですわ。

 

 今にも泣きそうなオレに、ヴルストを突き出してくるダーテング。はい、アーン、とでも声が付きそうなこの状況、心からアルセウスに感謝する。

 おいおい、わざわざオレの手が汚れないように食べさせてくれるとか。やばい鼻血でそう。

 

 いかんいかん。せっかくダーテングがくれるというのに、待たせてしまっては気が変わる可能性がある。

 さぁ、ダーテング、お前のそのヴルスト(天使)を、オレの口に突っ込んでくれッ!

 

「ア〜…」

 

「はい、アーン」

 

「ンッ…ン?…ンブッ!?」

 

「美味しいですか?美味しいですよね。私の唾液と共に味わって食べて下さい。吐き出したらカレーを司る神様から天罰が下りますから」

 

 ホイップカレー(悪魔)を突っ込まれた。

 

「オェェ…なんで、オレはヴルストを…て、テメェサイトウ!なんてことしやがる!?危うくお茶の間に流せないレベルの、あられもない姿晒す所だったぞ!?」

 

「いや、なんとなくあのままにしとくのは、貴方が新しい扉を開くように見えてしまったので。ダーテングには負けられないかなと。あ、泣き顔もいいですね凄いそそります」

 

「いや訳わかんねぇよ!?なに新しい扉って!?って、そんなことはどうでもいい、ダーテング!?すまん、もう一回ーーー」

 

『…ムグムグ…』

 

「アァァァァァ…!?」(慟哭)

 

 ヴルストが、オレが咥える筈だったヴルストが…!クソ、こんなあたおかな奴にあたおかなカレー突っ込まれたせいで…!ダーテングも少し待ってくれたっていいじゃん…!

 

「はぁ…今日は実質お昼抜きかよ…この後動けるかなぁ…」

 

「何を言ってるんですか、お昼ならここにありますよ。はいアーン」

 

「うるせぇもう食うかそんなもんッ!それ食うぐらいだったらマトマのみ丸かじりした方がまだマシだ!だからな、サイトウ…頼むから皿を持ちながらにじり寄ってくるの、やめろ?あと一歩でも前に進んだら、戦争が起きるからな?」

 

「構いません。どうせ勝てますし」

 

「アァ!?なんだとテメェじゃあやっかあ、すいませんすいません嫌だな冗談だろ、あっ、あっ、腕掴むのヤメッ、このッ、相変わらず力強ッ!?なんで動かせないのやめてやめてごめんそれだけはやめてなんでもするから、なんでもするかーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

「いやはや、美味しかったですね。またやりましょうか」

 

「うぐっ…ぐすっ…もう胃が何も受け付けない…」

 

 かくとうタイプには勝てなかったよ…

 

 もうなんなんコイツ、力強過ぎない?腕掴まれたかと思ったらあっという間に組み伏せられたんだけど。皿持ちながら。おかしいよホントに。あぁ、口の中が糖分に侵されている…気持ち悪ぃ…!

 

『ーーー…ッ?』

 

「あぁダーテング、お前だけだよオレの天使は」

 

「成る程、なら私は貴方にとっての女神ですね。さぁ、抱擁してあげますよ、こっちにきなさい」

 

「黙れ閻魔大王」

 

 ツヤツヤしているサイトウの抱擁をあしらいながら、ダーテングの純白な後ろ髪に倒れ込む。

 あ゛ぁ゛〜…もっふもふ…!

 

 なんかもう、一日ワイルドエリアを回ったかのように疲れた。まだお昼ちょっと過ぎたくらいなんだけどな…この後やりたい事、てか目的があるんだが…

 

「そういえば、貴方は何故ワイルドエリアに?私とのジム戦をすっぽかしてまでやる事があるのですか?ないですよね?ねぇどうなんですか?」

 

 あぁ、そういえばコイツに言ってなかったな。

 

「今日はちょっと仲間にしたいポケモンがいてな。そいつを探しに来たんだ。テメェはなんでワイルドエリアに?」

 

「無視とは偉くなったものですね…私は修行です。あのチャレンジャーには、悔しながら完封されてしまいましたからね。いてもたってもいられなくなってしまって」

 

「それでカイリキーと殴り合うのかよやばいなお前」

 

 やっぱコイツと深く関わらない方がいいんじゃ…絶対に怒らせないようにしよ。別に怖くないけど。怖くないけど、一応ね?

 

「因みに何が欲しいのですか?タチフサグマとか?」

 

「タチフサグマなー…欲しいなぁ…欲しいけど、タチフサグマはまた今度にしようと思ってんだよな。今オレが欲しいのは…ホレッ、コイツ、シザリガーだ」

 

 ロトフォンに掲載された写真を見せる。

 

 そもそもオレの旅の目的は、各地方のあくタイプを捕まえる事。よってガラルにきた理由も、タチフサグマを捕まえる為だったりする。ジムチャレンジの存在はこっちにきて知った。

 

 だが、今回狙うポケモンはシザリガー。みず あくタイプ。高いこうげきに、低くないぼうぎょ、とくこう。

 特性てきおうりょくから繰り出されるタイプ一致アクアジェットで有名だ。

 

 またとても気性が荒いポケモンで、すぐに他ポケモンに乱暴をするなど、育てにくいとして話が多々あがる。

 ヘイガニを育てていた新米トレーナーが、シザリガーに進化した後手がつけられず、ポケモンレンジャーの御用となる、なんてケースは、年間を通して百件を超えるとかなんとか。

 

 そんな、あくタイプは新米トレーナーが手を出してはいけないと、一歩引かれる要因を作ったポケモンの一体、シザリガー。

 

 なんとしてもゲットしたい。ホウエン地方で捕まえられなかったリベンジを、ここで果たしてやる…!

 

「成る程、シザリガーですか。随分と大きく出ましたね」

 

「まぁな。いつまでも癖のある奴を扱えない訳にはいかねぇし、オレも成長してるってことよ」

 

 と、言ったものの…

 

「しっかし、中々見つからないもんだな。朝からこの辺りをぐるぐる回っているんだが、痕跡すら。なんだったら、もう今日は疲れたし、そろそろ帰ろうかって思ってる所だ」

 

 ワイルドエリアはコロコロと天候が変わるから、出現するポケモンもその気候に合わせてコロコロ変わる。きっと今日はシザリガーが出てくる天気じゃなかったのだろう。また日を改めて、万全の対策を整えて出直そうと思う。

 ダーテングも、バトルに負けたばっかりで疲れてるだろうし、ニューラとコマタナはポケジョブに行って貰ってるから今居ないし。

 

「じゃ、オレもう行くわ。またなサイトウ、首を長くして待っていやがれ。次会う時が、テメェの最後だ!」

 

 さ、帰って寝よ。

 

 ダーテングをボールに戻し、荷物を纏めてそばに置いていた自転車に跨る。近くに浮いていたソルロックの高さが下がっているのを見て、時計を確認したら一時半過ぎだった。

 意外にも長い時間コイツとキャンプしてる事実、少しシャクに思いながらも、楽しくなかったかと聞かれたら、直ぐに頷く事が出来ないのもまた事実。

 

 まぁ、丁度良い暇つぶしぐらいにはなった、それぐらいの気持ちだろう。

 

 心に残るザワザワに首を傾げながら、取り敢えずポケセンに向かうべく、ペダルを勢い良く踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「いやちょっと待って下さいよ」

 

「グエェェ!?」

 

 襟思っくそ掴まれた。

 思わずガマゲロゲが踏まれたかのような、潰れた汚い声が出る。自転車でバランス崩した時特有の冷や汗が止まらない。心臓バクバク言ってやがる。

 

 コ、コイツ…殺す気か…!?

 

「バッカヤロテメェ何しやがるサイトウ!?危ねぇだろうが!?お前自転車漕いでる人にチョッカイかけちゃいけませんってポケモンスクールで習わなかったのかよ!?オレァあくタイプ使いとして、砂糖と塩の位置逆にしたり、友達の水筒の中身をこっそりサイコソーダにしたり、色々な悪事に手を染めてきたが、自転車乗ってる奴の服掴んで引きずり落とそうとした事はねぇぞ!?」

 

「貴方にとっての悪事がその程度という事に衝撃が隠せないのですが。めちゃくちゃショボいじゃないですか貴方年上ですよね?背丈は変わりませんが、私より長く生きてますよね?」

 

「ぶっ飛ばすぞテメェ!?身長はカンケェねぇだろ!?」

 

 大体テメェのガタイに身長が異常なだけで、断じてオレは低身長じゃないわ!ちょっと平均より2、3センチ足りないだけだ!

 

「そんな事はどうでも良いんですよ。問題は、私というものがいながら、貴方が勝手に帰ろうとした事です。何帰ろうとしてるんですか」

 

「別にいいだろうがオレが帰ったって!なんでそんな事をテメェに決められなきゃなんねぇんだよ!?」

 

「何言ってるんですか?何故貴方が私とカレーを作っていたか…それは貴方がバトルに負けたからでしょう?勝った方がなんでも言う事を聞く、というルールのバトルで」

 

「ングッ…!」

 

 チクショウ、そうだった。今度こそ勝てると思って、いつも見たいに勝った方がなんでも言う事を聞くってルールをつけたんだった。有無を言わさずボコボコにされた事が衝撃的で、すっかり忘れてた。

 

「だ、だけどもうお前の、『一緒にキャンプをして下さい』っていうのは、さっきのカレー作りで終わった話だろ!?あれも立派なキャンプじゃねぇか!無効だ無効!ノーカンッ、ノーカンッ、ノーカ」

 

「は?」

 

「え、あ、その、や、やめろよ、急にそんな怖い声出すのウォ!?」

 

 底冷えするようなサイトウの声にビビっていると、掴まれてる襟に力が込められ、自転車から引きずり倒される。

 咄嗟に受け身は取ったは良いものの、突然の凶行と、まさかコイツが本当に危害を加えてくる筈がないという、一種の信用的なものが揺さぶられ、脳震盪を起こしたかのように身体が硬直する。

 

 上手く力が入らない。周りの気温が一気に下がったかのように思えた。心なしかサイトウの、常時ハイライトオフの瞳がさらに昏いような気がする。

 

「…」

 

「な、なにすんだよサイトウ!?おま、本当に怪我したらーーーッ!?」

 

 流石にチョッカイにしては度が過ぎてる。

 

 そう抗議しようと口を開いたら、人差し指で撫でるように塞がれた。黙っていて下さいと、またもや底冷えするような声に釘をさされ、完璧に萎縮するオレの心。

 

「何故貴方が勝手にキャンプの期間を決めているのですか?勝ったのは私です。そして貴方は負けた。これは揺るぎようがない事実。貴方の行動を含め、全ての決定権は私にあります。なんでも言う事を聞く、それの重みを少しは考えた方がいいのでは?いえ、今すぐ教えてあげましょうか」

 

 私、これでも結構我慢している方なんですよ?

 

 襟を掴みながらオレを無理矢理引き上げ、耳元でそう囁いてくるサイトウ。全身の毛が総毛立ち、経験した事のない冷や汗が滝のように出てきた。小刻みに震えてるのを必死に抑えるが、バレているだろうか。

 

 てか怖…!?え、怖ッ、え、すっごい怖い。かつて無いほどの恐怖を感じてる。首根っこ掴まれて怒られてるチョロネコの気持ちが凄い分かった。

 コイツ怒るとこんなに怖いんだ。最早喧嘩にもなってねぇ。

 確かに約束破ったのはオレだけど、なにもそんなに怖い顔しなくてもいいじゃん。

 

 それよりオレ一体なにされるんだ。流石に全財産寄越せとか言ってこないよな…?ちょっとストレス発散がてら殴らせろとか…!?

 い、嫌だ!カイリキーと殴り合える奴のパンチなんか喰らったら確実に死ぬ!

 

「あぁっ、その顔も凄くそそりますっ、あまり私を困らせないで下さいよ…!どうしましょう、メインディッシュは今日の夜にと思っていたのですが…もう、いただいてしまいましょうか。ここらでちょうど良い茂みは…」

 

 いやホントに何されるのオレ!?怖いよ怖いです怖すぎるって!?だ、だれか、助けッ…そうだ、だ、ダーテング!ダーテングに助けて貰おう!?

 

 何故か辺りをキョロキョロして、あそこはダメ、あそこも微妙だとかぶつぶつ言っているサイトウの隙をつき、ダークボールの開閉スイッチを押す。

 

……

 

 開閉スイッチを押す。

 

……

 

 押す、押す、押す。

 

……

 

 しかし たすけは あらわれなかった☆

 

 おいぃぃぃぃぃぃ!?ダーテング!?ダーテングさん!?

 おま、ふざけんッ、ボールから出てこいよ!ビビってんじゃねぇよ仮にも民家吹き飛ばせるぐらいの力持ってんだろ!?トレーナーのピンチに駆けつけてくれよ!このままじゃオレ…!?

 

「…何してるんですか?」

 

「ひゃいっ!?いや、いや何もしてねぇよ!?なーんにもしてないけど!?何もしてくれないって言った方が正しいかなあっはっはこんちくしょう!?てかもういい加減に襟離してくれませんかね!?服が伸びちまう!これけっこう気に入って」

 

「貴方に決定権は」

 

「…無いです…」

 

 どうしよう、取りつく島がない。オレもオレで情けねぇなコイツ年下の女だぞ。ビビってんじゃねぇよ。

 いや無理だよビビるわ。流石にカイリキーと殴り合える奴のことビビらないのは、人としてちょっとおかしいわ。ダーテング、お前が正しかった。

 

「…あそこで良いか…じゃ、行きますよ。講義の時間です。今回ばかりは私も経験がないので、痛くなってしまったらごめんなさい」

 

 いや寧ろ人を草込みに連れ込んだ経験があったら怖ぇよ。なくて当然だよ。

 てか、痛いって単語が出てくるという事は乱暴されるのねオレ。全力で回避させてもらうわ。オレまだ死にたくない。謝るには謝るから。謝るには謝るからオレにチャンスをくれ頼むッ!もう夜ご飯キャンプのカレーになっても良いからッ!

 

「サイトウ、サイトウ!オレが悪かった!そうだよな、約束だもんな!ちょっとオレどうかしてたよ!さぁその手を離してキャンプしようぜ?」

 

「…そんな取ってつけたように謝られても…」

 

「おいおい冷たい事言わないでくれよ!それにほら!講義ならキャンプの準備が出来た後、カレーでも食いながらゆっくりとやればいいじゃねぇか?な?」

 

「流石にものを食べながらやるのはレベルが高すぎる気がするんですが。しかし…そうですね…」

 

 なんでだよ飯食いながら勉強とかした事あるだろ。そのたまにくる良いとこのお嬢さん感なんなん?変なとこで真面目ちゃん発動しなくていいから。とにかく誘いに乗れ。乗ってくれ…!

 

 夜のワイルドエリアは危険だ。

 

 唯でさえ全地方屈指の危険地帯とされ、バッチの取得がなければ入っちゃいけないワイルドエリアは、夜になると危険度が大幅に上がる。

 強力な夜行性ポケモンの出現、足場が不安定な状態での視力低下、気候の変化も激しく、雪でも降ったら目も当てられない。

 

 その為、ワイルドエリアには常にリーグスタッフが警備に当たってくれている。

 

 あらゆるタイプに高い耐性を持つはがねタイプ使いを主軸に、人の危険などをいち早く察知出来るエスパータイプ使い。

 

 夜に強く、霊的なモノを感知して解呪などを手伝ってくれるゴーストタイプ使い。

 

 移動、運搬、上空からの警備を担ってくれているひこうタイプ使い。

 

 その他水難対策のみずタイプ使いなど、今オレ達が安全にワイルドエリアに利用できてるのは、彼らがいてくれるからだ。

 有名なところで言うと、ガラル地方で最初に貰える三体を連れているばぁさんかな。あの人バトルに勝ったらお小遣いくれるから、凄い有難いんだよなぁ。

 

 まぁ、ここまでワイルドエリア運用体制(取ってつけたような設定)を話してきたが、つまり何が言いたいかというと…

 

「ほらほら!カレーの材料になるきのみ取りに行こうぜ!こんなに天気が良いんだしよぉ、日中にしか出来ない事やらなきゃ!」

 

「……」

 

 夜になれば、リーグスタッフの数が増える。

 

 よって、あんまり『痛い』なんて単語が出てくるような行為を、大っぴらに出来なくなる…!

 

 さぁ釣られてくれ!『夜』という言葉に惑わされてくれ!ワイルドエリアでは、夜の方が悪い事出来なくなるという事実に気付かないでくれ!頼む!

 

…それに夜だったら、万が一そういう事になっても、オレがヤンチャしてたのを止めてくれたっていう、言い訳が効くだろう。写真も暗くて取りづらいだろうし。

 

 一応コイツ、ジムリーダーだから、ストレスとか溜まるもん溜まってんだろうけど、あんまり昼間っからネットに晒されるような事は、多分お互いの為にならないしな…

 

 まぁ、今度、今度な、ちょっとだけ相談に乗ってやっても良いかもしれん。ライバルが、よく分からんものに潰されて終わるなんて、ほら、なんか、嫌だし…コイツ年下だからな!

 オレってばなんて優しい男なんだろう!しっかりと年下に対しても気遣いが出来る!これはモテモテなのもしゃあなしっすわ…(彼女いない歴=年齢)(バレンタインチョコなし)

 

「…わかりました。やはり楽しみは後に取っておく方がいいですよね。キャンプの準備をしましょうか」

 

「そうだよそうだよ!やっぱ後の方が楽しさ二倍だって!」

 

 考え込んでいたサイトウが顔を上げ、吉報を報せてくる。

 

 よしッ、よしッ!なんからしくもない事を考えたが、そんな事はどうでも良い!ぬかったなサイトウ、このまま夜まで粘り、適当にリーグスタッフと合流してトンズラこかせて貰うぜッ!

 

 という事で、それまでは折角やるんだし楽しませてもらうか。

 

 さぁ、そうと決まれば早速準備だ。フフフ、遂に最近新調したオレのテントを見せる時が来たようだな…!

 

 とは言っても、大した事はない。キャンプセットを開けば既に完成されたテントが飛び出してきて、指定された場所に設置、固定される。

 後は付随されている料理道具を、焚き火にセットすればもう終わり、あっという間にキャンプ場が出来上がる。

 

 見てくれ、この太陽に映える漆黒と、あくタイプをモチーフにしたステッカーを!かぁー惚れ惚れするぜ…中古ショップだったが、中々良い買い物をした。

 わざわざ買い物に付き合ってくれたバッドガールには感謝だな。今度なんかお礼すっか。

 

…しかし、便利な時代になったもんだな、と。

 

 出来上がったキャンプ場を眺めながら、そう思う。

 

 オレがジョウトで野宿した時は、皆で一緒に汗を流しながら組み立てたもんだぜ。今のガキンチョどもがテントの組み立てる大変さと面白さを知らないのは、ちょっと寂しい気もするが、それが時代の流れってもんなんだろうなぁ…

 

「終わりましたか?…って、どうしたんですか、そんな哀愁染みた背中して。思った以上にテントがダサかったとか?」

 

「ちげぇよテメェブチコロがしてやろうか。ちょっと今ジェネレーションというものを実感しちまってな、オレも歳を取ったなって思っただけだ」

 

「歳を取ったって、貴方今何歳ですか。まだ未成年でしょう」

 

「ん?いやオレはもう成人してるぞ?タバコと酒はやってないけどな」

 

「え?成人…え?」

 

「ん?」

 

 何言ってんだコイツという顔をしながらこっちを見て固まるサイトウ、ハテナマークが頭に浮かぶ。

 珍しいなコイツの顔に感情が現れるなんて。結構レアだ。

 

 いやこっちこそ何言ってんだだよ。12を過ぎたら成人して、晴れてトレーナーなる資格を貰えるんじゃないか。酒とかは二十歳あたりからだけどさ。

 スクールでトレーナーとポケモン協会の構造、聞いたことあんだろ?博士やその街のジムリーダーに祝われたりしなかったのか?

 

 オレん時は、住んでた所が本当に田舎で何にもなかったから、わざわざ親父がタンバジムまで連れてってくれて、シジマさんに祝ってもらった。

 懐かしい、シジマさん、集まった皆を連れて欲しいポケモン捕まえてくれたんだよな。

 

 すっごいかくとうタイプ推されたけど。オレがデルビル欲しいっつってんのに、バルキー渡そうとしてきたけど。

 元気かな。元気だろうな。けどあの人修行してる時周りの声聞こえなくなるから、少し心配だ。

 そういや同期の奴らとも連絡とってねぇな。PWTとかで忙しいんだろうけど、ホテル戻ったら電話の一つでも掛けてやるか。

 

「まぁいいや。で、どうすっか。夜飯作るには少し早いしな。バトルでもするか?」

 

「そ、そうですね。どうしましょうか。バトルは先程やりましたけど、正直私はなんでも良いですよ。……夜まで時間を潰せれば良いので…あっ、そうだ」

 

「ん?どうした急に立ち上がって。やっぱバトルか?」

 

「そうですね、バトルです。ほら立って下さい」

 

 そう言ってオレの手を引き、強制的に立たせてくる。訳も分からずされるがままのオレに、バックを持たせ、何処かに連れて行こうとするサイトウ。彼女の手持ちのゴーリキーがいってらっしゃいとばかりに手を振っている。

 

 一体どこに行くんだ?

 

 そんな疑問を口に出そうとして、直ぐに封じられた。

 

「貴方の目標、達成しに行きましょうか」

 

 見たこともない。コイツの楽しそうな、したり顔によって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォォォ…!?」

 

「良かった、やはり居ましたか」

 

 サイトウに手を繋がれたまま連れて来られたここは、ミロカロ湖の南にある桟橋付近。

 

 オレたちは今、木の影からとあるポケモンを眺めていた。

 

「ヤベェ…!はぁ…はぁ…ルリナパイセンが見せてくれた奴よりも、す、少しデカいんじゃねえか…!?荒々しさが前面に出てて、フヒッ、めっちゃワイルドだぁ…!」

 

「落ち着いて下さい、目が逝ってしまってますよ。トリップしないでくだ、ちょっと待って下さい。え?ルリナさん?何故ルリナさんが出てくるのですか?その話、詳しく教えてくれますよね?」

 

 今回オレがワイルドエリアきた理由兼目標である、シザリガーを。

 

「しかし、こっちの方にいやがったのか。前来た時はキングラー辺りしか出なかったから、てっきりいないのかと思ったぜ」

 

「シザリガーを探しているのに、水辺付近を念入りに探索しない貴方の思考に疑問を覚えますが。そんな事よりも話を」

 

「しかもあいつの特性、てきおうりょくじゃねぇか!?見たか今の!喧嘩売ってきたキングラーのクラブハンマーを、かみくだくで迎撃しやがったぞ!ま、ますます仲間に加えたくなったぜ…!」

 

「…はぁ…」

 

…?どうしたため息なんかついちまって。幸せが逃げるぞ?

 

 何か呆れてるサイトウも気になるが、そんな事よりシザリガーだ。

 さて、どうしたものか。そのまま近付いてバトル、ってのもいいが、ダーテングはサイトウとのバトルで疲れている。あのシザリガーレベル高そうだし、幾らタイプ相性は良いといえ、余り無理をさせるのも酷だろう。

 

 よし…久しぶりにアレ、やるか。

 

「では、私はカレーの具材となるきのみを取りに、辺りを周っているので。くれぐれも怪我のないようにして下さい」

 

「おう、頼んだ。甘いきのみばっかとってくんなよ。テメェも一応気をつ…けなくて大丈夫だな。ポケモンなしでも大丈夫だろお前」

 

「あ、あそこにモモンの木がありますね。ちょっと行ってきます」

 

「土下座するからそれだけはやめろ。頼むから。ちょ、おい!」

 

 あの野郎…!真っ直ぐ甘いきのみしか成っていない木に向かいやがって…!

 

 まぁいい。人が居なくなったのは、此方としても好都合だ。

 

さて、ここで取り出したるはポケモンフードと高級缶ヅメ。

 

それらを皿に盛り付け、最後にオボンのみを添えれば完成だ。ダーテングは出さず、空のダークボールのみ腰に携える。

 上着は全て脱ぎ、タンクトップ姿、これで害は有りません、怖くありませんとアピール。

 そのままじりじりと、じりじりとゆっくり、シザリガーに近づいて行く。

 

 美味しいものを与え、極力身軽になる事で相手の危機感を煽らず、好感度を上げてから捕まえる、ジョウトで旅している時からやっている、オレの捕獲戦法だ。

 アイツらからは良く呆れられたが。

 

 しかしこれでヤミカラスとコノハナは捕まえられた。ノクタスもギリ捕まえられた。サメハダーは無理だった。

 あいつはヤベェ。開幕オレの手を噛みちぎろうとしてきやがったからな。拳で語りあったよ。一人だったら危なかった。

 あれ、そう思うとオレ、案外サイトウの事バカに出来ないのか?

 

『…!ーーーッ!』

 

「おーよしよし…怖くねぇぞ怖くねぇぞ…ほら、これ美味しそうだろ…?」

 

 此方に気付いたシザリガーが、両手のハサミを振り上げて威嚇してくる。ハサミに張られた薄い水のベール、あれはクラブハンマーの構えか。

 当たれば相当に痛いだろうが、ここでビビったまうのは不策だ。

 

 野生のポケモンにあからさまな恐怖心を見せると、刺激してしまい凶暴になる事が多々ある。

 野生のポケモンに襲われて怪我するケースは色々あるが、理解のない人が無闇矢鱈に敵対心や恐怖心を持ち、野生ポケモンの本能を煽る、というのが大半だ。

 

 つまりここで持つべきは、友達になりたいという、心からの愛だ。

 

『ーーー!ーーー!ー……?』

 

「お、偉いなお前は。賢いな〜そうだぞ、オレは仲間だ。それ、たーんと食べてくれ」

 

 敵意がない事が伝わったのか、威嚇行動を辞めてくれるシザリガー。差し出されたエサを確認し、静かに口に運ぶ。お気に召してくれたのか、そこからは早く、ガツガツと食べ始めた。

 

 よしよし、ここまで来ればほぼ作戦は最高だ。後は食べ終わるのを待って、目の前にボールを差し出せば良いだけ。凶暴なポケモンって言われてるが、案外大人しいやつじゃねぇか。

 

「なぁシザリガー、お前は強い。強い故に、もうここら辺のポケモンじゃ相手にならないだろ?もっと強い奴と戦って見ないか?」

 

『…?ーーー!』

 

「そうかそうか戦いたいか。なぁ、オレと一緒に来てくれよ。そしたら、お前に世界を見してやれるぜ?ほら、このボールに入ってさ」

 

 差し出されたダークボール、徐々に近づいていく。自分の捕獲道具が迫っているにも関わらず、全く逃げる素振りを見せないシザリガー。

 ふふ、完璧に決まったと見た。さぁシザリガー、一緒にあの銀髪褐色をボコボコにしようぜ!

 

「お前は本当に良い奴だな…さ、いくぞ。大丈夫、飯もちゃんと食べさせてやれるから。な?」

 

『ーーー…』

 

 目と鼻の先まで距離が縮まるオレとシザリガーの距離。他人が見たら狂人か自殺志願者かと思われるだろう。

 だが、そんな事はない。これは逢瀬だ。愛するあくタイプに送る、愛情だ。

 

 シザリガー、オレの愛を受け止めてくれッ!

 

 遂に距離はほぼゼロとなり、ダークボールの開閉スイッチが押される。

 

 

『ーーー』

 

 

 筈だった。

 

「え?」

 

 先程まで穏やかだったシザリガーの顔が、凶悪な笑顔へと変わる。

 

 口元に、かみくだくのエフェクトを発生させながら。

 

『ーーーッ!!』

 

 差し出したオレの腕に、凶牙を突き立てた。

 

「ーーーッテェ!?!?」

 

 瞬間、爆発。かみくだくに使用されたエネルギーが奔流となり、オレの体を吹き飛ばす。

 ゴロゴロとコミカルに転がっていった先には、先程隠れていた木があり、思いっきり背中から叩き付けられた。

 

 クッソイテェ!?あの野郎、大人しいフリして騙しやがったな!?

 

「テメェこの、なんて事しやがる!だましうちなんて卑怯だぞ!やられたのかみくだくだけどな!みろこの腕!血ィ出ちまったじゃねぇか!」

 

『ーーー!ーーー!』

 

チクショウ、ゲラゲラ笑いやがって…!

 

 かみくだくをされた腕を見る。あぁ、なんて痛々しい。

 肘から先が打撲やらなんやらで青黒くなっており、モロに食らった掌付近はダークボールの破片によるものなのか、所々裂傷が刻まれていた。

 

 別に命に関わる程の怪我でもないが、かと言って無視していいかって程浅い怪我でもない。血も中々な量が出た。後で包帯でも巻いておこう。そうすりゃ大体なんとかなんだろ。

 

 それよりも…

 

「久々にキレちまったよ…来いッ、ダーテングッ!!」

 

 取り敢えずコイツだけは泣かすッ!そして捕まえてやるッ!

 

「ダーテング!ちょっと辛いかもしれねぇが頑張ってくれ!リーフブレード!」

 

『ーーー!』

 

 ダーテングの扇が淡い緑の光を放つ。十分に力を貯め、自然の刃となったそれを、風神の如く肉薄、シザリガーに向かって叩き込む。

 みずタイプのシザリガーに、くさタイプの技、更にダーテングもくさタイプだからタイプ一致補正が掛かる。大体のみずタイプはこれでフィニッシュとなる。

 

「なッ……!?」

 

『ーーー!?』

 

 が、奴はその大体には当てはまらないらしい。

 シザリガーのハサミに薄い水のベールが張られたかと思うと、勢い良く振り上げられる。

 降り掛かる二刀に合わせて繰り出されたクラブハンマーは、リーフブレードと僅かに拮抗、打ち破り、ダーテングを跳ね上げた。なんとか空中で体勢を立て直し、着地するダーテング。

 息が荒い。かなりのダメージが入ったようだ。

 

「幾らシザリガーのこうげきが高くて、てきおうりょくが発動するとしても、こうかいまひとつで半減される筈なんだが…ダーテング、まだ行けるか?」

 

『…ッ…ッ…ーーー!』

 

「ナイス根性、あともう少し頑張ってくれ!」

 

 しかし参ったぞこれは。リーフブレードが入らないとなると、残る選択はあくのはどう、ぼうふう、ねっぷうしかない。

 あくのはどうとねっぷうは、こうかいまひとつだし、ぼうふうは後隙がデカすぎる。

 それに天気が雨じゃないから、あまり命中率にも期待が出来ない。あれ体力結構使うらしいし。

 

 やっぱリーフブレードが妥当か…?

 

「ただいま戻りました。見てください、こんなに美味しそうなモモンのみが…あれ、まだ捕まえてないんですか?貴方ならすぐだと思ったのですが」

 

「いちいち煽んなやこの野郎!てか本当にモモンのみしかねぇのかよ!嘘じゃん!」

 

 次の一手をどうするか、オレたちが攻めあぐねている所、きのみを取りに行ってたサイトウが帰ってきやがった。

 クソ、コイツが帰ってくるまでに決着をつけたかったんだが…割と時間が掛かっている。早いところ捕まえなくては…!

 

「あまり時間がかかる様だったら、助太刀いたしますよ。それとももう助けて欲し…って、どうしたんですかその腕!?」

 

「誰がテメェなんかの助けを借りるか!この腕?ちっと作戦が失敗しちまってな、それだけだ!お前はモモンのみ以外のきのみ探して来い!」

 

「そんな場合じゃないですよ!血も出てるじゃないですか!見せて下さい、今手当てしますから!」

 

「うるせぇな!ちょっとシザリガーのかみくだくが当たっただけだ。こんくらい後で適当に包帯でも巻いとけば治るんだよ!そんな事よりバトルに集中させやがれ!」

 

「……成る程、アイツがやったのですか。へぇ…成る程…」

 

 怪我なんか気にしてたら逃げられちまうかもしれない。致命傷じゃねぇんだ、そんな騒ぐ必要はない。

 さて、どうやってつかまえようか…ん?

 

『ッ…!?ッ…!?ーーー!?』

 

「ど、どうしたんだお前、急に震えだして?」

 

 なんかシザリガーがめちゃくちゃ震え始めたんだが。遠目から見ても分かるぐらい冷や汗を出していやがる。まるで滝のようだ。

 いや本当にどうした?腹でも下したのか?でもさっきのフードには悪いもん入ってない筈…マジでどうした?

 

『ーーー』

 

「だ、ダーテング!?おい、勝手にボールに戻るなよ!?そんなに疲れてるのか!?」

 

 しかもダーテングまで挙動がおかしくなったし。一目散にオレの腰に目掛けて突っ込んできて、ボールに戻りやがった。

 ちょっと待ってくれよ!お前がやってくれなきゃどうやって戦えばいいんだ!

 

「おやおや、ダーテングは随分と疲れているみたいですね?どうです?戦えるポケモンは居ない事ですし、私に任せてみては?何、悪い事はしませんよ。ね?」

 

「あ?いや、それは…でももうポケモンいねぇし、回復薬はキャンプに置いてきちまったからな…」

 

「まぁまぁ、ね?任せてくださいよ。直ぐに、弱らせてあげますから。その時に、貴方がボールを投げればいいんです。簡単なはなしでしょう?是非ともっ、私にやらせて下さい…お願いしますよ…?」

 

「お、おう、お前も急にどうした?スゲェやる気じゃねぇか」

 

 なんか少し怖いな…目がなんか怖い。怒ってんのか?

 

 しかしどうすっか。自分のパートナーを自分で捕まえないってのは、なんかアレだしな…でもシザリガー欲しいんだよな。

 特にあのシザリガー強いし、絶対に即戦力になる。コイツに助けてもらうってのは、少し癪だが…

 

「そうだな、せっかくの厚意を無碍にするのも悪いか。じゃ、サイトウ、頼むよ。おいシザリガーテメェ、今からコイツが相手してくれるから覚悟しろよぉぉぉぉい!?どうしたお前!?なんで土下座してんだ!?」

 

 すっごい勢いで地面に頭打ち付けてんだけど!?めっちゃ目に涙浮かべてるし!さっきまでのあくタイプらしい感じは何処行ったんだよ!?

 

「さ、許可も降りましたし、やりますか。シザリガーさん、楽しい楽しいバトルの時間ですよ?思いっきりやりましょうか」

 

 まぁ、許可とか関係なしにやりますが。

 

「唯では済まないと思って下さい」

 

「さ、サイトウ?あくまで少し弱らせてくれるだけで良いんだからな?あんまり張り切りすぎんなよ?」

 

「分かってますよ。カイリキー、ビルドアップ。直ぐ様インファイトを叩き込みなさい」

 

「ちょ、ダメダメダメ!?オーバーキル!!オーバーキルだからそれは!?」

 

 全然話聞いてねぇなこの野郎!?ひんしにさせちまったら捕まえる前にポケセン直行じゃねぇか!?

 それにちょっとシザリガーが可愛そうだから!ほら、もうビビるくらい頭下げてんぞコイツ!なんならもう捕まえられんじゃねぇか!?

 

「そこをどいて下さい。カイリキーが戸惑ってるじゃないですか。カイリキー、彼が退くまでビルドアップをし続けて下さい」

 

「ますます退けなくなったわ!?シザリガー!今のうちにオレのボール入れ!殺されるぞお前!?ほら、ダークボール!今度は壊すなよ!?」

 

『ーーー!!ーーー!!』

 

 オレがボールをシザリガーの前に転がすと、アクアジェット並みの勢いでボールに飛び込んでいった。三回ボールが揺れ、カチリと捕獲完了を知らせる音が鳴る。

 い、色々あったが、シザリガーゲットだ。なんか凄い疲れた。

 

「チッ…逃げましたか…おめでとうございますアクサキさん。目標達成ですね。どうです?早速バトルをしませんか?シザリガーもきっと力が有り余ってるでしょう。やりましょうやりましょう。さぁ、早く出して下さい。さぁ、さぁ!」

 

 落ち着けサイトウ。一体どうしたってんだ、いつもに増してわけわからん事になってんぞお前。

 

『……ッ…』

 

 お前もお前で、ボール越しにぶるってんじゃねぇよシザリガー。どうしちまったんだマジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イテテテテッ…!?おいサイトウ、もう少し優しくできねぇのか?」

 

「これぐらい我慢して下さい。男が情け無いですよ………よし、出来た。暫くは安静にしてくださいね。無理に動かすと悪化しますよ」

 

「くぅ〜滲みるなぁ…!こんなにしっかりしてなくても、適当にしてりゃ勝手に治んのに…」

 

「アクサキさん?」

 

「ひっ…!?分かった分かった!暫くは動かさないように気をつけるよ!危険な事もしねぇ!これでいいか!?」

 

「よろしい」

 

 煮えるカレーの匂い、パチパチと、薪の弾ける音が黄昏に響く。すっかりと暗くなってしまった空、オレたちはキャンプ場へと戻って来ていた。

 綺麗に巻かれた包帯に、熱い光が照らされより一層白く映える。

 

「しかし惜しかったなぁ…今まではこれで捕まえて来られたから大丈夫だと思ったんだが…何がいけなかったんだ?」

 

「何がいけないとしたらそれは貴方の思考回路です。馬鹿なのですか?捕獲されているポケモンならまだしも、野生のそれに生身で近づくとは…もう二度とやらないで下さいね」

 

「そいつは了承しかねるな、アレはオレが生み出した最高の作戦、数回失敗しただけでやめられ、嘘嘘冗談だよ!?もうやんないからその怖い顔やめろ!手ェ掴んでこなくていいから!」

 

 クッ…どいつもこいつも人の作戦にケチ付けやがって…!前もガミガミ煩かったんだ、別にオレが少し怪我しようと関係ねぇだろ…!

 

「…いや、でも…」

 

 もし逆の立場だったら…心配するか、オレも。

 

 オレの腕を見た時の、サイトウの顔を思い出す。

 

 普段の無表情が嘘の様に、感情が表に出ていた。隙を見せないように振る舞っているコイツが、あの時オレの前で感情を発露させた。

 それを見て、何も分からない程オレは鈍感野郎じゃない。少なくともオレは、コイツの中では知り合い以上のカテゴリに当てはまっているのだろう。

 

 それはなんだか…悪い気はしなかった。

 

「サイトウ…今度ナックルシティの駅前に、期間限定で他地方のスイーツが売られるそうだ。暇があったら、少し買っといてやるよ」

 

「…?それはとても嬉しいですし、有難いのですが…どういう風の吹き回しですか?」

 

「ちょっとした気紛れだ、気にすんな」

 

 だから、ちょっとぐらい感謝の気持ちを送ったって、バチは当たらないだろう。

 

 きっとこんなふうに思うのは…少し長く、一人旅が続いてしまっただけだから。

 

 こみ上げてきた、このよく分からない感情を、ゴーリキーが渡してきたカレーと一緒に飲み込む。

 

 サイトウを押し切ってマトマのみを入れた筈のそれは、何故だろう、少し甘さが残っているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 あれ…何か忘れているような…?

 

 

 

 

 




アクサキ
ジョウト地方出身。
旅した順番はジョウト→カントー→ホウエン→ガラル。
来る前の手持ちポケモンはヘルガー、ドンカラス、ノクタス、サメハダー、ブラッキー、コノハナ。

その内ノクタスやサメハダー、コノハナはホウエンで捕まえたポケモンであり、ブラッキーは実家のポケモン。大会などがあると手持ちに加わっていた。

ジョウトでは、三匹を除いたパーティーにゴルバットを加えた形で、同期の二人と一緒に旅に出ている。
現在は二人が忙しくて会えていないが、今でもわざわざポケギアを使って連絡を取るほどには仲が良いらしい。

因みにあの後、ランプラーを連れたスタッフが通りかかった所で目的を思い出し、接触を図る。
が、スタッフに

「いやサイトウさんがいるなら大丈夫だろ」

と言われ、絶望。
シザリガーによるアクアジェットでなんとか逃げ切った。その日はポケギアを離せなかったらしい。間抜け。

サイトウ
ララテルタウンジムリーダー。夜までタノシイ事するの待たないかというアクサキの思惑を、分かっていながらワザと受け入れた恐ろしい子。
アクサキの自己を顧みない行動に、心を痛めている。という気持ちも半々で、なら自分も少しぐらい良いのでは…?と、少し危ない扉を開きかけている。
シザリガーをシバき損ねた事を、帰ってから本気で後悔した。

最近は、古い携帯電話のような物をみて、嬉しそうに、けど寂しそうに笑っているアクサキを見て、二つの意味で夜も眠れないらしい。
作者はこの物語をRにするつもりはない、諦めr

シザリガー ♂

「相当な恐怖を感じた」



ワイルドエリアが安全に使えている理由って、リーグスタッフが常に警備に当たっているからだと思うの。ソルロックにルナトーン 連れながら、クチート 肩車してパトロールしたい。

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