(いつも読んで頂きありがとうございます。感想、評価、誤字修正報告、どれも作者の励みとなっており、どんなに筆が進まなくても、皆さんの応援があるからこそ、ここまで続ける事が出来ました。これからも拙い所が目立つと思いますが、何卒温かい目で見守ってくれると嬉しいです)
オレはあくタイプが大好きだ。
何故あくタイプが好きなのかと問われれば、軽く半日は語ってしまう程、オレはあくタイプを愛している。
あくタイプと聞けば、人によって顔を顰める人もいるだろう。
が、少し待って欲しい。『あくタイプ』という五文字だけで、あくタイプの全てを判断するのは、あくタイプ使いとして許せないものがある。
そんな、今日も今日とてジムチャレンジを済ませ、シザリガーと共にバイトに来たオレ。
「誕生日ィ〜?」
「そう、誕生日。サイトウくんのね」
振り上げたピッケルを岩壁に叩きつけながら、間抜け声を辺りに晒す。
ここは、焦げた岩の匂い、肺に直接殴りかかってくる熱気にリズミカルな打撃音が響き渡る、ガラル産業の基盤が一つ、第二炭鉱。
オレは今、にっくき宿敵であるサイトウの誕生日を祝ってくれないかと、絶賛カブさんに声をかけられている所である。
「第一回!チキチキ、サイトウの欲しい物なーんだ!誕プレ選手権〜!」
「ちょっと待ちんしゃい」
晴天、という言葉がぴったりな程に青い空へと声を張り上げる。地元では馴染みのあるこの導入は、どうやらガラルでは伝わらないようだ。
集まった四人の内三人は首を傾け、一人は待ったを掛けてきた。
ックショオ、ノリの悪い奴らだぜ。イッシュだったら絶対に乗ってくれるのに。
「イカれたメンバーを紹介するぜ!〝だぞだぞJr.〟!なんでも褒めてくれるチャンピオンの弟!」
「流石だぞ!」
「いやなにが?ちょっと待ちんしゃいって」
「次に〝ゴースト仮面〟!ミステリアスなじゃりんこジムリーダー!」
「が、頑張ります…」
「ねぇ、やけんしゃ話聞いとー?」
「最後に〝ニット帽〟!全く喋らん!意思疎通不可!以上!」
「マリィん番はなかとかよッ!!」
「プゲラッ!?」
めげずにノリを続けたオレの頬を、マリィの腰の入った右ストレートが穿つ。パァンという小気味良い音ともにきりもみ回転。地面へダイブ。めっちゃイテェ!?
「な、なにすんだマリィテメェ!?ガキが出しちゃいけないレベルのパンチ飛んできやがったぞ!?」
「しゃあしか馬鹿!アクサキがデートって言うたけん来たとに訳わからん事言い始めて、挙げ句ん果てマリィん事無視したけんやろ!」
「デデデデデデデートなんて言ってねぇよ一言も!?買い物付き合ってくれってちゃんと伝えただろうが!」
「アクサキにしゃっちが電話かけられて『暇あるか?付き合って欲しい』なんて言われたら否が応でもそげなもんだっちゃ思うてしまうやろうが!しかも、よりによってなんでアイツんことで…!しぇっかくおめかしして来たとに!」
フンッ!と言ってそっぽを向いてしまうマリィ。なにをそんなに気に食わないのか、やっぱ女ってぇのは良く分からん。
「……」
「イテテテ…あぁサンクス、ニット帽。洗って返すぜ」
「……」
腫れた頬をさすりさすり、土を払いながら立ち上がると、見かねたニット帽がハンカチを渡してくる。気の利くやつだなと感謝しながら顔を拭き、後日洗って返すとポッケへと。
「……」
「…ニット帽?」
突っ込もうとしたら手を掴まれた。
「ぇっと…その手はなんだ?」
「……」
「え、いや、だから洗って…」
「……」
「あの、おい、ちょっと、おい
ずっと無言で微笑んでくるですけど!?怖いんですけど!?なに、これどうすれば良いんだ!?
「…もしかして、ユウリん通訳係っていうことだけで、マリィん事呼んだん…?」
「いや、それだけって訳でもないけどよぉ…やっぱコミュニケーションって円滑に進めなきゃダメじゃねぇか、な?」
「…はぁぁぁぁ…!!」
すっごい大きなため息を吐き、マリィがにらみつけてくる。怖い。ぼうぎょ一段階ダウン。
てかガキ二人にビビり散らかしてるとか情けないなオレ。今更だけどよ。
「貸して」
「はい」
「ほら、ユウリ。後で使わしぇてね」
「……!」
オレからひったくるようにハンカチを取り、ユウリに渡す。
受け取ったユウリはニッコリ満面の笑み。分からん。自分で洗うからいいって事か?律儀な奴だぜ。
「まぁいいか。そろそろ本題に入るぜ。今日の午後…そうだな、6時くらいか?それぐらいにサイトウの誕生日会をやるそうだ。で、誕生日といえばプレゼント。日頃の感謝を込めて、今日はそのプレゼントを皆に買ってもらおうと思ってな、集まって貰った。何か質問ある奴いるか?」
「はい」
「なんだマリィ」
「マリィはオニオンのジムに行ったけんアイツにお世話なんかなっとらん」
「これを機会に仲良くなれ。他にはないな。じゃ、行くぞ。なんかあったらオレにいえ。逸れるなよ。今日は暑いからな。水分補給はしっかりしとけ。ないなら買ってやるから遠慮すんな。ほら、アメやるよ」
「まるで保護者だぞ!」
「お、お父さん…?」
「誰がお父さんだ」
保護者ってのはあながち間違ってはねぇが。こんなかで最年長はオレだからな。なんかあったら責任とんのはオレだ。問題が起きねぇようにしっかりと引率しなければ。
屯ってたシュートシティの広場から移動し、ガラルの中で一、二を争う大型デパートへと辿り着く。
ここはよくサイトウの野郎に強制連行される所だ。服屋に装飾品売り場、食事処もある。ここならプレゼントっぽいもん何かしらあんだろ。
取り敢えず、昼飯兼ねてカフェで一服するか。
「ーーーてな訳で、先ずは作戦会議だ。誰か、アイツが欲しがってるものとか知ってる奴いるか?もしくはこれいいんじゃないかってヤツ」
音を立てないようにコーヒーを傾けつつ、四人にそう持ちかける。
プレゼントを買うにしても、どんなジャンルを買うかによって変わってくるからな。候補絞っていかなきゃ間に合わん。
うーんと首を捻り考える四人…いや三人。おいマリィ、興味なさげにあくびすんなよ。一緒に考えてくれや。ほら、このサンドイッチあげるから。
「サイトウさんの欲しいもの…欲しいもの…なんでしょうか…」
彼女、結構物欲が乏しいですから…
そう言ってストローでオレンジジュースを器用に飲みながら、苦笑いするゴースト仮面。
物ではなく
「全然思いつかないんだぞ!」
「……」
「…強いていうならケーキやドーナツなどのスイーツじゃないかって、ユウリがいっとーばい」
次いで三人もこれと言った意見が浮かばず、疑問符が辺りに漂うばかり。唯一ユウリがいい線ついてるが…
「甘いものかぁ…それもいいが、料理とかはルリナパイセンにヤローの兄貴が作るからな。オレも手伝うし、食べ物以外が良いと思う」
「そうなんですか…それじゃあ買っても被っちゃいますね…」
「ちゅうか薄々気づいとったばってん、やっぱりアクサキって料理しきるんやなあ」
「ん、まぁな。忘れられがちだが、オレは三地方を周りきった旅人、自炊ぐらい出来なきゃ話になんねぇよ。味も保証するぜ?この前サイトウの野郎に一食分作ってやったら、『毎日私に貴方の手料理を食べさせて下さい』って言われたからな」
ふふっ、あん時のアイツは傑作だったぜ。
食い終わって、悔しさからかプルプル震えた後、跪いて手を取ってきやがんの。女の癖に男に家事勝負で負ける屈辱を味合わせる事が出来て、オレァ大満足。
また今度、魚フライ定食でも作ってやるか。
「えーいいなぁ!俺もジョウトの料理たべたいんだぞ!」
「ぼ、僕も興味…あります…」
「台所貸してくれりゃあ作ってやる。なんなら今日すぐに味わえるぜ。あまりの美味さに、お前ら、度肝抜かすなよ?…って話が逸れたな。これ以上いても進まなそうだし、時間もねぇし。そろそろ無難に小物売り場辺りでも行ってみっか」
関係ない話題で時間を浪費して、集合時間に間に合わなくなったらしょうもない。手元に置いてあるレシートをとり、先に出るよう伝えてレジに向かう。
「…………」
「ユウリもそう思う?本当、アクサキには困ったけんだっちゃん…アイツばっかよか思いしゃしぇとったまるかって話ばいね…アクサキが鈍うて助かったばってん、こすかよな…うん、うん…そしたら、マリィによか考えがあってしゃ…」
ふと、財布をいじってる時にさっきから静かだったマリィとニット帽の小声(ニット帽は喋ってないが)が聞こえてきたが、アイツらなんの話してんだろうか。
少し気になったが、ガキとはいえ女の会話を聞き出すのも野暮ってもんだ。大したことじゃないだろう。大したことじゃないと思う事にする。別に二人の目やらオーラが怖かったからとか、そんなんじゃない。断じてない。
「……」
「ふふふ…」
どうしよう、すっげぇ嫌な予感がする。
そんな、ねっとりとした歳不相応な二人の笑顔を振り切るように、急ぎ足で小物売り場に向かった。
小綺麗な置物に、ちょっとした化粧用品や美容品、よくテレビで紹介されている便利な道具など色々な商品が立ち並んでいる、ヨロズショップ『かるわざ』
店番をしているサワムラーとアギルダーの横を通り抜け、だぞだぞJr.とゴースト仮面は道具売り場、マリィとニット帽は化粧品売り場へと、それぞれ店を出ない事を条件にプレゼントを探す。
オレは別に買う必要はないので、店主を冷やかしながらサワムラー達と戯れていた。
「全く、だぞだぞJr.達もマリィ達も、子供してやがんなぁ。アイツら、真っ先に自分の興味ある場所へと向かいやがって。可愛げのある奴らだぜ。そう思わないか?」
「へいニイチャン、変な所で感傷に浸ってんじゃないよ。冷やかしか?」
「オレはな。大丈夫だよそんなに睨むなって、連れどもがちゃんと買うからよ。多分な。あ、プレゼント用の包装紙扱ってるかこの店?」
「多分て…あるよ、無料でな。千円以上お買い上げ頂いたお客様にはメッセージカードとかもつけさせて頂いてるぜ。なんだ?先公の誕生日かなんかか?」
「オレは学生じゃねえよ。そんなに幼く見えるか?」
「あの子らとタメか一、二個上ぐらいに見える」
「目ぇ節穴かよ、全然年上だわ」
こっちにきてからやたらガキ扱いされる。ルリナパイセンやヤローの兄貴には、歳の離れた弟みたいに接せられるし…確かにガラルやイッシュの人達はみんな大人びて見えるけど。
サイトウの野郎も最初年上かと思ったからな。
「老けてんなぁっていったら殴られたっけ」
「なんの話だ?てかニイチャンもなんか買えよ。ちょうどアザとかに効く軟膏を仕入れた所だぜ?サワムラーもアギルダーもまだ仕事残ってんだから、あんまし邪魔してやんな」
「断る」
「断んな。営業妨害だ」
しっしっと手を払って見せた店主は、そのままアギルダーとサワムラーに品物の確認に行くよう指示する。てきぱきと働く彼らの姿を見て、よく育てられていると感じた。
戯れてて分かったが、店主、結構な腕前してやがんぜ。アザなんて、服で隠れて見えない筈なんだが。
「さ、そろそろ様子見てくっかな…」
このまま店主と駄弁りながらポケモンを眺めて皆を待つのも良いが、誘ったやつがなんもしねぇってのも失礼だろう。先ずはだぞだぞJr.達がいる道具売り場へと向かう。
幾つかのレーンを過ぎて着いた売り場には他にもトレーナーがちらほらと見えたが、二人の格好は目立つので直ぐに分かった。
近づいて見てみれば、どうやら買う道具をあらかじめ絞ったみたいで、どちらにしようか二人で話し合ってるようだ。来て正解だったな。
「よぉお前ら、どんな感じだ?何にするか決まったか?」
「あ、アクサキ!いい所に来たんだぞ!」
「サイトウさん、かくとうタイプの使い手なので、近接戦闘に役立つものにしようかって、ホップさんと話してて…アクサキさんはちからのハチマキか、きあいのタスキ、どちらが良いと思いますか…?」
声を掛ければ、オレに気付いた二人が難しい表情を一転、ワンパチの如く駆け寄ってくる。かわいい。弟どもを彷彿させやがる。元気にしてるかな、アイツら…帰ったら手紙送ろう。
「中々イカしたチョイスじゃねぇか二人とも。確かにこの二択は迷いどころだ」
「だろだろ!?自分でもビビっときちゃったんだぞ!でも…」
「でも…?」
「高いんですよね…二つとも…」
俯く二人から物を受け取って、値札を巻くってみる。
おぉ…タスキ12000のちかハチ18000かぁ…当たり前だが、結構するなぁ…!
特にタスキは一回限りの使い捨てだから、財布出し渋る気持ちも分かるぜ。
ま、そういう時の為に今日オレが来てんだけどな。
「二人とも、今日は何円ぐらい持ってきた?」
「俺は…6000円だぞ」
「僕4500円…です」
ふむふむ…ガキの割には結構持ってんな二人とも。流石、上位トレーナーにジムリーダー。バトルでそこそこ金はあるんだな。
「んじゃ、オレが10000円出すからタスキにして、二人は1000円ずつ払ってくれよ。そしたらお前らの
「え…いいのか?」
「そしたら随分と、アクサキさんの負担になってしまいますが…」
オレが出した提案に、申し訳なさそうな顔をしてこちらを見てくるだぞだぞJr.とゴースト仮面。
次には自分がもっと出すとか言いそうな雰囲気を漂わせてきたので、それを遮るように二人の頭を掻き回す。
おいおい、あまり大人のオレ様を舐めて貰っちゃあ困るぜ。
「馬鹿野郎、プレゼントといえ、ガキにこんな大金払わせる奴がいるかよ。ガキはガキらしく、1000円ぐらい握り締めときゃいいのさ」
「俺らもそこそこ持ってるし、気にしなくても…」
「お前らが気にしなくても、オレが気にするし、なによりサイトウの野郎がいっちゃん気にするぜ?プレゼントってのはな、高けりゃ良いってもんじゃねぇの。要は気持ちよ気持ち。やっすい物買ったって、それに気持ちが篭ってれば立派なプレゼントだ。そもそも、あの野郎は誰が一番出したお金が少ないとか、気にするタマじゃねぇだろ」
オレも、
そういって二人の頭を撫で続けていたら、何やらキラキラとした目線を二人から送られる。
どうした?オレの今の名言に感動しちまったか?
フッ、どうやら今日もオレァクールにあくタイプらしく、純粋無垢なガキどもを此方側の世界へと引きこんぢまったぜ…なんて罪深い男なんだオレは…!
「アクサキが珍しく、珍しくッ、とても良い事言ってるんだぞ…!」
「おいテメェ珍しくってどういう事だ。普段からオレは良い事しか言わねぇよほっぺちぎり倒したろか」
「アクサキさん、いつもと違って純粋にカッコいいです…!」
「お前もかよゴースト仮面…一言余計なんだお前らぁ…!」
いつもどんな風にオレのこと見てやがんだコイツら。そこんところちょいと問いただしたい所だが、まぁ良い。時間も時間だし、マリィ達の方に行くか。
「じゃ、お前ら。10000渡しとくから先買っといてくれ。ラッピングしてくれるらしいから、それもしっかり頼んどくように。オレは一回マリィ達の方見てくるわ」
「分かったぞ!」
「では、入り口のベンチで待ってます」
札を握りしめてレジへと走るだぞだぞJr.と、律儀にお辞儀して後を追いかけるゴースト仮面を見送り、レーンを移動する。
幾つかのレーンを過ぎるたびに客層が変わっていき、化粧品特有の甘ったるい匂い。周りの視線が痛い中、一つのレーンを覗き込めば、顎に手を当て、思案顔のニット帽が。
あれ、アイツ一人か?マリィのやつは何処行きやがった?
「…!………」
「よぉニット帽、どんな感じだ?相方はどうした?」
「……!」
六感が優れているのか、すぐ様こちらに気付いたニット帽がパタパタと駆け寄ってくる。丁度良い位置にきた頭を帽子越しに掻き回しながら、マリィの行方を聞いたんだが…
うん、相変わらず何て言ってるか分からん。
「他の所に行ったのか?」
「……」
「あぁー違う?なら菓子売り場だ」
「……」
「これも違うか。じゃ、便所だなイッデェ!?」
「……!……!」
思いっきり爪先にかかと落としされた。
「な、何すんだニット帽…まぁいい、マリィのやつ、変な所には行ってないんだよな?」
「……」
「そっか、なら安心だ」
「……」
「……」
「……」
「……」
あかべこかってくらいに首を縦に振るニット帽。取り敢えず、ちょっとした不安は消えた。そして会話も消えた。静寂が訪れる。
「…あー、その、ニット帽?プレゼントはどれにしたんだ?」
静けさと気不味さに耐えきれなくなった口から、捻り出すように話題を提示。側から見たら事案案件のこの光景を、少しでも和らげようと試みる。
「……」
「お、おぉ、それにしたのか。確かにこれ、いい匂いだな、あはは…」
「……」
「はは…は……」
「……」
「……」
やばい!めっちゃ気不味い!会話がツヅカネェ!?
どうしよう。今までに無いパターンだ。これがマリィやサイトウの野郎だったら、終着点何処?っていうほど馬鹿みたいにトークが続くのに。
今のだって、保湿クリームらしき物を指差ししただけだぜ?
なんでこいつ一言も喋んねぇんだろう。首振るか、表情変えるか、指差しかの三択しかないじゃん今んところ。
ニコニコ微笑んでこっち見てくれるのはありがテェが、オレが欲しいのは笑顔じゃねぇ、声なんだよ。
あぁぁぁ
「……」
「…あ?どうしたニット帽。手ェ突き出してきて」
そんな事を心の中で叫んでいると、俯いていた視線の先に白い掌が映し出される。顔を上げれば、物欲しそうな顔でオレに腕を突き出してくるニット帽。
意図が分からない。なんだってんだ?
「……、……」
「…?そこの試供品クリームがどうしたよ?」
「…ッ、………」
「…あ、…ぁぁ?なんだ、手につけたのか?良かったじゃねぇか、タダでケア出来たな」
「……!……!」
「えぇなんだよ怒るなよ、なんだってんだ…?」
送られてくるジェスチャーを辿々しく読み取ると、どうやらニット帽は試供品のクリームを使ったらしく。
しかしいまひとつで何かが伝わらないようで、膨れっ面を向けてくる。それがなんだかホシガリスに似てて、ついついほっぺを両手で挟み込んでしまった。
フニャッとした顔になるニット帽。磁器のように綺麗で、柔らかい肌はいつまでも触っていたくなる。可愛いな。ロトフォンに撮ってもらおうかな。
「〜〜〜……!!……!」
「あっはっは!すまねぇすまねぇ、ワザとじゃねんだ。本当だぜ?」
「……ッ!」
「わぷっ!?」
ポカポカ殴ってくるニット帽の頭を笑いながら押さえていたら、しびれを切らした彼女の不意を突いた一撃が鼻に優しく直撃する。
同時に鼻腔を殴りつけるフローラルの香り。試供品クリームか。とてもいい匂いだが…あぁそういう事。
「匂いを嗅げってか」
「……!」
ブンブンと首を振っている。正解かよ。随分と長い戦いだったぜ…
「……!」
「左手は違うの付けてんのな。はいはい、どれどれ…」
こっちもこっちもと強請るように左手を突き出してくるニット帽の手を柔らかく掴む。
そのまま彼女の背に合わせて少し屈み、顔へと近づけて…うん、甘い香りがする。
「いいんじゃないか?オレァさっきのやつの方が好きだけど、どっちもニット帽にゃぴったりだ」
「…!…!」
「おぉ、そんなに喜ばんでも…あくまで嗅覚の鈍い野郎の意見だぜ?こういうのはマリィとかに聞いた方がーーー」
「呼んだ?」
「ーーーちょうどな」
あまりにもニット帽が嬉しそうにしているので、謎の申し訳なさが首筋を垂れてくる。
こうなってくると保険を掛けたくなるのが極東人。自分なんかより、〇〇に聞いた方が良い、という決まり文句を吐こうと。
した所で、トンッ、という衝撃と共にやってくるガキ特有の柔い温もり、背中にマリィが飛び乗ってくる。
めっちゃびっくりした。いつの間に後ろにいたんだ…?気配全く感じなかったんだが。ガキも中々侮れねぇぜ。
「で、なんの話ばしとったと?」
「あぁ、ちょっとニット帽のことでな。試供品のクリームを塗ったらしいんだが、お前はどっちが良いと思う?」
「アクサキはどっちが好いとーと?」
「またオレかよ…オレァ右手についてるやつが好きだな」
「ふーん…ま、マリィも右ん方が好いとーな。こっちん方が匂いが自然でしつこうなかし。よう分かってんばいアクサキ、流石やなあ。マリィもついでに買うとこう」
なんか褒められた。悪りぃ気はしねぇが、ホントかよ。からかってるだけじゃねぇのか?
「因みにお前は何処行ってたんだ?お陰でこっちゃあ弾まないトークでキャッチボールしないといけなかったんだが」
「ユウリがもうちょっとみたいっていうけん、先にレジ行っとったんや。もうみんな待っとーばい。早う行こう」
「マジかよオレたちが最後か。そりゃすまなかった」
なんだ、マリィ先に買ってたのかよ。ちょうど入れ替わった感じか?ニット帽にはもう少し早く伝えて欲しかったが、まぁしゃーなし。待たせるのも悪いし、さっさと行くか。
「……」
「うん、バッチリ撮れたばい。もうそげん風にしか見えんぐらいに。御伽噺んワンシーン、お姫様ん手ばとる王子様やった。うん、ちゃんと送るね。どうしぇ今晩使うやろ?何度も保存と保護掛けときんしゃい。いじゃとなったら、これで…ふふふ…近か未来、使う事になりそうやけど。うん、うん、こげんラインギリギリん事してしまうんも、全部アクサキが悪かっちゃもんね。ふふっ、アイツには、覚悟しといてもらわな。子供やけんってねぶっとーと、足元掬わるーって事ば」
……なんだろう。凄い取り返しのつかない失敗をした気分だ。悪寒が…!
「ふぅ…今日も疲れました…」
強い西日が制服を照らし、朱色に染めていく。ダラダラと汗がワイシャツに染み込む感触を不快に思いながらも帰路につき、ついついそんな弱音が漏れた。
いけないいけない、こんなことで根を上げるなんて、修行が足りていない証拠だ。
私はジムリーダーを務めさせて貰っているが、一応学生の身分だ。
単位制の学校であり、私は全て単位を修得済みなので、普段は行かなくても良いのだが、今日は学校の創立記念日。
我が校きっての才女として、何か一言話してくれないかと校長先生に頼まれてしまっては、断るに断れない。
今日は一日オフだったので、アクサキさんとスイーツバイキングでも行きたかった。
残念でならない。
それに…
「今日、私の誕生日ですし…」
別に、本格的に祝われるとは思っていない。もうそんな年齢じゃないと、私が一番分かっている。
まぁそもそも、本格的に祝われた記憶も、ケーキのローソクを消した記憶も、私には微塵もないのだが。
でも…でも、まさか誰もおめでとうと声を掛けてこないとは。
学校に行っても、ジムリーダーはどんな感じだ、誰々とは会うのか、など職務に関しての話題しか話されない。
下駄箱を開けてみればいくつか紙が入れてあり、机の中にも同様だったのだが、内容は大体察する事ができた。
案の定確認してみれば、熱く甘い言葉で綴られたものから鋭利で冷たいものまで。今日は後者のほうが多かった。
ロトムフォンを確認しても、事務的な連絡か迷惑メールの二択しかない。母も父も、一週間前に話した事だけが記録されている。
「……入ってる訳、ないですよね…」
スクロールして、上の方にやってくる項目を眺める。一番使用回数が多いチャット欄、アクサキさんの連絡先だ。
そこにも新しい情報は特になく、少し期待していた自分の浅ましさと情けなさに気分が沈む。くる訳がないと分かっている筈なのに。
だって、彼は私の誕生日なんて知らないのだから。
「ケーキでも、買っていきますか…」
ふと目についた売店のショートケーキを包んでもらう。自分で自分の分の誕生日ケーキを買うなんて、途方もない虚無感が足を掴んでくる。
が何もないよりは精神衛生的に良い。日頃の修行のご褒美という事にして、付き纏う負の感情を振り払う。
今日はこの後、確認しなければいけない書類がある。
それにチャレンジャー情報の整理に、コート整備と…とにかく、ジムリーダーとしての業務、しっかりと気を引き締めなければ。
「失礼します。只今戻りました。今日の業務はどのくらい進んでいますでしょうか」
そんな事を考えていれば、あっという間にジムの前だ。いつものサイトウの仮面を貼り付けよう。疲れている身体に鞭を打ち、背筋を伸ばして中へと足を進め。
『ジムリーダーサイトウ、お誕生日おめでとう!」
「ーーーぁ、へ?」
思わず、間が抜けた声が漏れた。
視界に映るのは、クラッカーと思わしきテープと紙吹雪、そして笑顔で私を迎えてくれる前半ジムリーダー組と、いつも共に働いているジムトレーナーにスタッフ達。
紙と音のカーテンが晴れた先には、誕生日おめでとうと書かれている横断幕に、折り紙やリースで彩られた待合室が広がる。
元々備えられていた机の上には飲み物と料理が所狭しと並んでおり、真ん中にはワンホールのチョコレートケーキが。追加でパイプ型の机が組み立てられているほどの豪華さだ。
小さい頃、密かに夢見ていた光景が、そこにはあった。
「あの、これは…一体…?」
「決まってるじゃない、貴方の誕生日会よ。サプライズでね」
「ほら、以前サイトウくん、誕生日会を経験した事がないと言っていただろう?君は今年でジムリーダー就任3周年だからね、何処かで祝おうとは思っていたんだ。ちょうど良かったよ」
「さぁさぁ、僕んとこの野菜と、ルリナさんとこの幸でたんまりと料理を作ったからなぁ。主役さま、いっぱいお食べぇ」
「ぼ、僕も、その、手伝いました…!飾り付けとか…」
脳が処理出来ずに固まる私に、ルリナさんが、カブさんが、ヤローさんが、オニオンさんが。
それぞれ思い思いのことを話して、私を労ってくれる。
「俺達もいるんだぞ!」
「……!」
「ふん…」
「貴方達は…あの時のチャレンジャー…に、妹さん…」
「なに、きちゃ悪か訳?別にアクサキに言われてきただけやけん。アクサキん料理食べたかけん残っとーだけ。勘違いしぇんで」
「いえ、別にそんなことは…その…貴方が私の誕生日などに来るなんて、予想外でして…あ、ありがとうございます…」
「…勘違いしぇんでって言いよーんに、アンタんことなんてなんとも思うとらんけん!そげん急にしおらしゅうなられたっちゃ、違和感しかなかけん!フンッ!」
更には、かつて戦ったチャレンジャーの二人に
言い様も表せない感情が胸を満たしていく。目頭が熱い。気を緩めれば決壊しそうだ。目を擦り、意地でも止める。
先ずは、お礼を言わなくては。煌びやかに飾られたこの空間を、所狭しと置かれた料理の数々を、私の為に作ってくれた皆さんに。
情けない姿を見せる訳にはいかない。
「皆さん、今日はーーーぁむ!?」
それらの感謝を伝えようと背筋を正して、口を開ーーーいたところに、何かを投げ入れられる。
一口大のそれはしょっぱい味付けで、カリカリと、尚且つ噛めば噛むほど肉汁が溢れ出してきて…これは、から揚げ、というやつでしょうか…?
「凄く美味しいです…が、ルリナさん。話そうとしてる人の口に突っ込まないで下さいよ…」
「貴方が堅っ苦しい事言おうとしたからよ。あと、アクサキから伝言。『後は適当に確認してハンコ押すだけだ。飯は熱いうちに食えぶっ飛ばすぞ』だって。アイツってば誕生日会で主役が来る前に帰ったりとか、馬鹿みたいに空気読めない癖に、変な所で気が回るんだから。この料理だって、アイツが作ったのよ?中々憎めない男よね」
「いやぁまさかアクサキさんがジムの書類仕事できるとは思いませんでしたよ。てっきり今日は八時九時辺りまで残業かなと思ってましたが、すっかりと終わってしまいました。思い出しただけで笑えますよ。『アイツのことだから空気読まず仕事しようとするに決まってる。貸してください、オレも手伝います』なんて。まじアクサキさんツンザキさんだわぁ」
「アクサキさんが、そんな事を…」
素直じゃない彼らしい言葉。素直じゃない彼らしい行動。
素直じゃない。けど、とても優しい、彼らしい全て。
嬉しい。嬉しい。彼が、私の誕生日を祝ってくれた、喜びが、それだけが胸を渦巻く。
ただ、欲を言わせて貰うなら…今この場で、彼と会いたかった。
「なに残念そうな顔してるんですかリーダー、そういうのはもうちょっと隠してくださいよ!さ、早いとこ始めちゃいましょう!私、お昼からなんも食べてないんです!彼の言う通り、熱いうちに堪能しちまいましょうよ!はい、コップ持って!」
「…はい…ありがとうございます…!」
だが、これ以上を望むのはワガママに他ならない。足るを知れ、サイトウ。今はこの幸せを享受しよう。
オレンジュースが並々と注がれたグラスを持つ。目線を上げれば、微笑みながら私を待つ皆んなの姿。その光景に今度こそ姿勢を正し、辿々しく喉を震わせる。
「か、乾杯…!」
『乾杯〜!!』
文字通り、夢のような時間が始まった。
美味しい料理、心を擽られる喧騒、温かな光り輝く空間。
今まで修行や職務に半生以上を費やした私にとって、ちょっぴり刺激の強い時間を過ごした。
ジュースを飲むほど、ケーキを食べる程…この空気に包まれれば包まれるほど、母や父の顔、修行やジムリーダーの責務が脳裏に過ったが、それでも…
それでも、楽しかった。人生で、経験した何よりも。
失礼ながら、ジムリーダーに就任した時よりも、歓喜が私を包み込んだ。押さえ込んでいた、幼い私が両手を振り上げている。
なにせ、こんなにも素晴らしい宴に加え、プレゼントまで用意してくれていたんだから。
「ラテラルタウンは日差しが強いでしょお。道着姿のサイトウさんも素敵じゃが、やっぱり女の子だもん。きっとこれが似合うと思うんだなぁ」
「女は髪が命よ!私も潮風に晒されるから、ケアはしっかりしてるの。ここは空気が乾燥してるし、貴方はそういうの気にしないから、ほら。いい匂いでしょ、これでアクサキを墜しちゃいなさい!」
「二人に比べて華のない品になってしまうけど、僕からはこれを。このメーカーのタオルとリストバンドは肌触りがよくて、質が良いんだ。この町は暑いからね、沢山汗をかくだろう?サイトウくんも、気に入ってくれると嬉しいな」
「ぼ、僕からは…これを…その、ホップさんと、一緒に買ったんです。最終的に選んだ、のはアクサキさんだし、殆ど払って、くれたのもアクサキさん…なんですけど…や、役立ててくれると嬉しいです」
「ちからのハチマキと迷ったけど、アクサキがこっちがいいっていったんだぞ!サイトウさんは被弾覚悟のバトルスタイルが多いからって!アクサキってば、流石だぞ!よくサイトウさんの事を見ているんだな!」
「………!」
「『私からは保湿クリームを、ここら辺は乾燥していますから。あと負けません』って言うとーばい。良かったじゃん
ヤローさんからは麦わら帽子を。
ルリナさんからは美容シャンプーを。
カブさんからはハハコモリ印のスポーツタオルとリストバンド。
オニオンさんとホップさんからはきあいのタスキ。
ユウリさんと妹さんからは保湿クリームを。
それぞれの有難いお話と共に(妹さんはちょうはつを打ってきたが デートとか聞いてない)それらを胸に抱く。
私には十分すぎる代物の数々、満ち足りているとは、正にこの事だ。これで満足しない人がいたら、それはただの強欲。忌避すべきもの。
忌避すべき…ものなのに。
まだ、物足りないと思っている自分がいる。
「ふぅ…少々、熱くなりすぎました…」
重くなった身体に昂った気持ちを引き摺りながら、家へと続く夜道を歩く。先程お開きになった宴会に後ろ髪を引かれ、多幸感に酔っている感覚がむず痒くも心地よい。
それと同時に、夜風が私の心底を掬い上げる。
あんなにも素晴らしい時間を提供して貰ったのに、なにがまだ物足りないのだろうか。ボンヤリと光る街灯を潜り、自問自答。愚問だ。答えなんて、とっくに分かっている。
アクサキさんに会いたかった。
たったそれだけ。たったそれだけのワガママが、あの素晴らしい時間にしこりを残してしまう。
それがどれだけ未熟で、浅ましく、馬鹿げた事か、理解はしている。しているが、だからといってこの溢れ出てくる欲の対処方を私が知っている訳がない。
膨らませ続けた風船はやがて割れ、二度と戻す事が出来ない。
私は欲の味を知ってしまった。今まで押さえつけられてきた反動が、うまくガス抜きが出来なかったツケが、ここで回ってきた。はやる気持ちを抑えられない。
彼の胸に飛び込みたい。
彼の頬を触りたい。
彼の温もりを、全てを感じーーー私のモノにしたい。
今からでも会いに行ってしまおうか。
そして、そのまま欲望の獣に身を任せてしまおうか。
そんな考えが浮かんできた自分が情けない。パシリと自分の両頬を叩く。鋭く伝わってくる痺れが私の思考を晴らしてくれる。
落ち着くんだ、サイトウ。足るを知ろう。アクサキさんに教えて貰った言葉だ。実に良い語録だと、感心したじゃないか。
満足を知れば、心が豊かになる。豊かになれば、心に余裕が生まれ、心身を鍛え上げる力となる。
なに、明日からはジムチャレンジがあるんだ。その時に、彼の事を堪能すれば良い。
そう結論付け、絡まった胸の内にクリアスモッグをぶつけたところで、マンションへと辿り着く。考え事をしていたから、あっという間についてしまった。
番号を押し、管理人さんにロックを解除してもらう。そのまま見慣れた通路を通って、自分の部屋へとーーー
「あ、ちょっと待っておくれジムリーダーさん。渡すものがあるんだ」
「…?私に、ですか?」
向かおうとした所で、管理人さんに声を掛けられる。管理人さんはゴソゴソとフロントの棚を漁って目当てのもの、小洒落た紙袋を取り出すと、カウンターに置いた。
…まさか管理人さんまで私にプレゼントを用意してくれたのだろうか。そんな訳ないか。
「あったあった、はいこれ。さっき黒い帽子を被った傷だらけ男の子が来てね、ジムリーダーさんが帰ってきたら渡して欲しいって頼まれたんだ。確か…アク、アク…なんだっけかな…」
「黒い帽子に傷だらけ…あ、アクサキさん…?」
「あーそうそうアクサキだアクサキ!その子がこれを。立場上中身は少し見させて貰ったけど、危険物は確認されなかったからね、安心して。じゃ、後はごゆっくり」
そう言って肩を回しながら控室へと入っていく管理人さん。紙袋を持つ私だけが取り残される。
アクサキさんが…プレゼントを…?
彼からのプレゼントは料理だと皆が言っていたのだが…どういう事だろうか。中身が気になるが、取り敢えず部屋に戻る。
部屋に入ってすぐ、リビングの机へと紙袋を置く。中には包装された箱が入っている。あまり大きくはない。重くもなかったから、食べ物や小物類でもないだろう。
考えてても仕方がない。さっそく開けようと、箱を取り出し包装の切れ目に手をかけて
カチリ、と。
聴き慣れた開閉音が部屋に響いた。
「ーーーッ」
箱の蓋が吹き飛ぶと共に、青白い光が辺りを照らす。
やがてそれは形を取り始めーーー1匹のポケモンが現れる。
『ーーー?ーーー!』
「ーーーぁ」
思わず、声にならない声が漏れた。
だって、現れたポケモンは、白いハチマキを巻いたような額に、ふと眉がチャームポイントの拳法子熊。
ーーーダクマだったのだから。
『最近鎧の孤島で確認されたかくとうタイプのポケモンでして、型によって進化が変わる珍しいポケモンなんですよ』
『ほーん…興味のねぇ話だが、なんだ、欲しいのか?』
『それは勿論。私もジムリーダー以前に一トレーナーの端くれ。かくとうタイプの事は気になりますしーーーなによりいちげきの型はあくタイプになりますから』
『…あっそ…だからって、別に興味なんてワカネェが、ちょっと詳しく聞いてやっても良いぜ?』
先日に話した、彼とのたわいもない会話が思い返される。
日常の一コマに組み込まれた、大して重要でもない与太話だった。常人なら気にも留めず、すぐに忘れられる様な話だったのに。
「覚えてて…くれたんだ…!」
容易ではなかっただろう。わざわざ鎧の孤島まで行って、苦手なかくとうタイプの事を調べて。
彼が先に帰った理由を聞いてみれば、「眠いし疲れた」と言っていたそうだ。カブさんが誕生日会を計画していたのが一週間前、つまりマスタード師匠の試練をたった七日の内に、クリアした事となる。
きっと無理をしたに違いない。私の為に。寝る時間まで削って。
身体中を駆け巡る激情に耐え切れず、膝をついた私にダクマが駆け寄ってくる。ニコニコと笑いながら差し出されたその手には、カジッチュ型のメッセージカード。
『大切にしなかったらぶっ飛ばす。いちげきの型にしなくてもぶっ飛ばす』
そう、男の人の字で、ぶっきらぼうに。
「あぁ…あの人は…」
あの人は、本当に…一体私をどこまで酔わせてくれるのか。
こんなにも未熟者な私を、どうしてここまで優しくしてくれるのか。
あぁ、誰かこの感情を抑える術をーーーいや、教えてくれなくていい。この感情だけは、いつまでも溢れ出しておきたい。
「アクサキさんーーー大好きですッ!!」
だって、この体を焦がす甘い熱を覚ましたくはないのだから。
こぼれ落ち、水気を含んだ想いを、目の前のダクマを力いっぱい抱きしめて、高らかに叫んだ。
「…ふぅ…落ち着きました…ありがとうございます、ダクマ。さて、箱を片付けますか。ダクマのボールも、彼らしい、ダークボールにしたんですね。それにこれは…髪飾りですか。そういえば、最近今のが古くなってしまったと彼に話したんでしたっけ…ふふっ、アクサキさんったら、明日からはどうしてくれましょうか…ん?」
なんでしょうか、底に、まだ何か…ーーー
【極薄!シルクカンパニー製0.001ミリ〇〇ドーム!】
「ーーーシィッ」
ーーー走った。
「しめしめ…サイトウのやつ、今頃飛んで喜んでんだろうな。頑張った甲斐があったもんよ。しかし…髪飾り買った時に店員から渡されたアレ、なんだったんだ?よくわかんねぇから一緒に入れておいたが…ーーーん?こんな時間に誰だろ。はーい今出るゼェ」
アクサキ
ジョウト地方出身。
今度同期と会う約束があり、ウキウキしている。
カブさんから誕生日会の話を受け、真っ先に行動したツンデレ系主人公。
サイトウが欲しがっていたダクマを捕まえるべくわざわざ鎧の孤島行きチケットを買い、マスタード師匠に土下座してまで試験を受け、三日三晩ろくに寝ないでギリギリ誕生日に間に合わせた。
皆んなと買い物する一時間ぐらい前に本島へと戻ってきている。朝帰りじゃねこれ。
本編でもあるように料理が得意。
ジョウトを回っていた時は料理担当だった。時折料理を振舞われる同期の二人からはオカンと崇められている。本人も別に料理をするのは嫌いではないらしい。
得意料理はお味噌汁だそうだ。幸せそうに飲んでる姿が好きだかららしい。私に毎日お味噌汁を作ってくだーーー
アクサキ's好感度表
サイトウ→宿敵、だけど嫌いではない。少し気にならない事も…
マリィ→妹のように見てるが、たまに見せる妖艶な雰囲気にはドギマギ
ユウリ→妹
ホップ→大きい弟
オニオン→小さい弟
ルリナ→頼りになる大人。こんな姉貴が欲しかった
ヤロー→頼りになる大人。こんな兄貴が欲しかった
カブ→頼りになる大人。こんな叔父さんが欲しかった。
店主→強いなコイツ。いつか手合わせしたい
ジムトレーナー→有難い時もあるけど、ウゼェ…
手持ち達→世界で一番愛している
サイトウ
ラテラルタウンジムリーダー。
特に今日が誕生日とかそういう訳でもないのに、作者のネタが尽きた為誕生日にさせられた。
生まれて初めてと言える誕生日会を開催してもらい、感動。元々高かったアクサキ好感度も天元突破した。
アクサキの料理を食べて、本気でお婿さんへ迎え、専業主夫として毎日新婚三択してほしいと考えている。
マジで養うつもりらしい。
最早アクサキが精神的支柱となっている。
料理の腕前はイマイチだが、本人曰く「カレーは美味しいと評判」
料理も作り、誕生日プレゼントも仕掛け終わって、さぁもう寝ようとしたアクサキのところに例のブツを持って突撃。
ブツを口に加えながら迫ったが、当の本人は何してんだか全く理解していなかった。
なんなら食べ物だったのかと勘違いし、オレも食べてみよと口に加える始末。
これには流石のサイトウもがっくし、泣く泣く押し倒した。しかし既にアクサキの膝で丸まっていたブラッキーを起こしてしまい、お冠の彼女に性誕祭は阻止され、アクサキの貞操は守られた。
サイトウ's好感度 以下アクサキだけとする
アクサキ→全てを私のモノにしたい。今すぐにでも喰べていいですか?
マリィ
あくタイプジムリーダー、ネズの妹。
最近サイトウのモノより大きくなった。アクサキの前だとよく胸を張る。しかし効果はない。
ユウリの通訳係。
どうやって読み取っているのかは永遠の謎である。
子供の特権というものをよく理解していて、買い物中もアクサキの飲みかけに口つけたり、後ろから抱きついておんぶを要求したりとやりたい放題やった。
ユウリとアクサキのやり取りを写真に収めている。
理由は…言えないが、ヒントだけ言わせてもらうと、立ち位置的な角度、周囲からの見え方、それだけ。
社会的立場を崩す準備は整ってきてるって訳だ。
よくアクサキの部屋を訪ねており、遊ぶ隙をついてコレクションを増やしている。今夜も捗ったそうだ。
アクサキ→メチャクチャにしたい。子供に組み伏せられて歪む顔を見たい。もうヤッちゃっていいかな?いいよね?
ユウリ
チャンピオン推薦トレーナー。
ゲーム主人公。無口だが、無感情という訳ではない。
アクサキの前では遠慮などせず感情をあらわにさせる。
大人しそうにみえて今んところ屈指の危険人物。
マリィ曰く、バトルが神がかって強いので、誰も止められないとのこと。
本人もそれを分かっており、いつでもアクサキを組み伏せる準備が整っている。
アクサキとバトルをしている彼女をみれば、時折嗜虐的な笑顔を浮かべる姿が拝めるだろう。
マリィと同盟を組んでおり、愛してもらえれば、アクサキを手に入れることさえ出来れば、愛人的な立ち位置でもよいと考えている。
ぶっちゃけアクサキを回す気満々。ただし誰でも許せるという訳ではない。
見た目からは想像できないほどに嫉妬深く、アクサキに色目を使ったモブたちにはお礼参りバトルを仕掛けている。
が、普通に優しくて良い子なので実害が出るような事はしていない。
それ以上に甘える、ただただ愛が重いタイプ。
サイトウの事も恋敵だとは思っているが、完璧に排除したいとは思っておらず、なんなら友達になりたいとも思っている。
マリィに協力して撮ってもらった写真は待ち受けに使い、額縁にも飾っていつでも使えるようにしている。
ジワジワと浸食していってる彼女に、アクサキはいつ気付くのだろうか。
今もベンチで必要以上にくっついてるの咎めないどころか膝枕して頭撫でてやがるからアイツ、終わったな。
アクサキ→好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです
ホップ
チャンピオンの弟。
ユウリの恋路を応援している良い奴だが、彼女の本性まで気付いていない。ピュッアピュア。
アクサキと同様キスで子供が出来るとおもっている。
アクサキの事を親戚のお兄さん感覚で慕っている。
アクサキよりバトルは強いが、彼もユウリには勝ったことがない。
アクサキが飯に連れて行く第一候補に入っており、彼自身も良くアクサキを誘ってカレーキャンプなど行う。
それをユウリやらなんやらに妬まれ、立ち位置を狙われるが、アクサキからの信用もあるこのポジションを彼から取る事は至難の業だろう。
頑張れ、ホップ。俺は応援してるよ。
アクサキ→頼りになるお兄さんだぞ!
オニオン
ラテラルタウンジムリーダー。
ゴーストボーイ。アクサキと出かけられてご満悦。
すっかりとアクサキ沼へとハマってしまった哀れな子であり、抵抗感がなくなってきた自分に戦慄しているらしい。
ようこそ、こちら側の世界へ。我々は貴方を歓迎しよう。
アクサキ→優しいお兄ちゃん。もっと一緒にいたいな…なんて…
カブ
エンジンシティジムリーダー。
優しいおじいちゃん。ガラル一のアクサキ理解者であり、アクサキの事を息子ないし孫のように思っている。
アクサキの相談にも良く乗っており、アクサキが心の底から尊敬している、最も信頼の厚い大人。
アクサキ→とても優しくて、見た目以上に崩れやすい子だよ。大人として、僕たちがしっかりと見守ってあげよう
ルリナ
バウタウンジムリーダー。
モデルをやっている。
アクサキの事を可愛い弟の様に思っている。
アクサキの見た目が見た目なので、プライベートの護衛を頼む時もあるとかなんとか。
ただし、稀に見せるアクサキのカッコいいムーブにキュンとする事もあり、複雑な心境になるようだ。
私にはヤローが…とかいってたし。
サイトウら辺の大体の事情は知っている。
アクサキ→可愛い弟分。いじめた奴は流し去る。
ヤロー
ターフタウンジムリーダー。
マッシブ農家。
アクサキの事を可愛い弟分の様に思っている。
アクサキが尊敬する男性の一人。
彼とは良く一緒に仕事をしており、とても頼りにしているとのこと。
アクサキも実家が大農家だからね、話が合うんでしょう。
最近は彼を正規で雇おうか悩んでいる。
アクサキ→可愛い弟分。いじめた奴は一緒に農業だぁ
店主
ヨロズショップ『かるわざ』の店長。
サワムラー、アギルダー、フワライド、ペロリーム、ルチャブルと、特性『かるわざ』を持つポケモンを使っており、セミファイナルまで進んだ事がある実力者。
彼女の好感度表は絶対にいらない。
アクサキ→ものを買えものを。話はそれからだ
ジムトレーナー
アクサキのファン。もう書くの疲れた。
アクサキ→何この人めちゃくちゃおもろいな