お元気ですか?私はボチボチです。ようやく待ちに待ったDL C第二弾『冠の雪原』がリリースされましたね。作者は忙しくて多分四割も進められていません。本当です。決して地平線で宙に浮いたり、生活線で味方を蘇生したりなんかしていません。なんなら鎧の孤島も完クリしていません。早く進めて、厨ポケ禁止シーズンを満喫したいものです。
続けてご報告致します。
徒佗顕示様から素晴らしいイラストを頂きました。
https://img.syosetu.org/img/user/307050/70337.jpg
このイラストを貰ったのは9月です。そろそろ作者は恥を知った方が良いですね。活動報告に徒佗顕示様のTwitter URLがありますので、是非とも。素晴らしい作品がたくさんあり、作者の目は幸福に満たされました。徒佗顕示様、本当に申し訳ありませんでした。
そろそろ本気で怒られそうなので、ここらで筆を置こうと思います。今回は作者が新たな挑戦をしようとして燃え尽きた話です。お目汚しの御準備を。では。
「まったく…あの人は本当に時間を守らない。一体なにをしているのやら」
ぺたりぺたりと質感の良い音を響かせながら、仄暗い廊下を歩いていく。向かう先はチャレンジャーの控え室。予定時間になっても出てこないアクサキさんの様子を確認するためだ。
足の裏から伝わってくる冷気に、ジムトレーナーにお願いすれば良かったですと僅かながら後悔。
しかし折角の密室で二人きりになれるチャンス。ただでさえ彼に擦り寄ってくる泥棒猫が多くなってきた昨今、機会を無駄にしたくなかった。
灯りが漏れ出す扉が見えてくる。微かながら人とポケモンの気配も感じられた。
一応、病かなにかで倒れていないか心配だったが、これなら杞憂に終わりそうだ。彼の優秀なポケモンなら、彼の異常に気付かない訳があるまい。
きっと彼のことだ。作戦を練るのに熱中しすぎて時間を忘れたのだろう。
私のことを考えながら頭を捻っている彼を想像すると、中々にクるものがある。可愛い人だ。今日も存分に愛し合うとしよう。
「アクサキさん、何をしているのですか。開始予定時間はとっくに過ぎてますよ。早く準備をしてくだ…アクサキさん?」
緩みそうになる表情を元に戻し、勢いよく扉を開ける。
果たしてアクサキさんはそこにいた。傍らにはブラッキーが座っていて、特に変わったことはない。
バトル前の、作戦を手持ちのポケモンと話し合うトレーナーの姿。
しかし、何やら紙…いや、写真のようなものをジッと見つめていた。此方に気づいた様子はない。それほどにそれへと意識が入り込んでいた。
そっと近づいて、後ろからそれを覗き込む。はしたないが好奇心が抑えられなかった。
それは、相当昔に撮られた写真であった。
古ぼけたフィルムに写っていたのは、三人組の幼いトレーナーと、その相棒らしきポケモン達。
真ん中で笑っているのは恐らくアクサキさんだろう。頬の傷はないが、それとなく今のアクサキさんの面影を感じられた。彼の足元で座っているブラッキーも少し若く見える。
彼の両隣にいる二人は、アクサキさんの…同期…だろうか?
一人は少年で、もう一人は少女。
男の子は落ち着いた表情で、女の子は元気溌剌な笑顔で写っている。ポッポやミルタンクを従えた彼らは幸せそうな顔をしていた。
「可愛い顔してるだろ。タンバでシジマさんに勝った時の記念写真だ」
「…気付いていたのですか」
「ブラッキーが教えてくれた。それまではわかんなかったけど、よ」
不意にアクサキさんが言葉を発した。此方に一瞥もくれず、淡々としたそれらを写真と共に投げてくる。
慌てて受け止めた写真はやはり色褪せていた。雨粒が落ちたような跡が付いていて、シワが目立つ。
片時も離さなかった、そんな年季が感じられた。なんとなくそれが気に食わない。
「随分とこの写真に思い入れがあるようですね。少なくとも、私とのバトルの時間を忘れるぐらいには、価値のあるものなのでしょうか」
「意地悪な質問すんなよ、悪かったって」
そう言って彼はブラッキーをボールに戻す。よっこらせと腰に手を当てながら立ち上がり、そして漸く此方を見た。普段と変わらない。
不敵な笑みを浮かべ、その頬には鋭い裂創が走っている、いつものアクサキさん。
「今日こそはテメェに勝つぜ、筋肉ダルマ。オレの考えてきたスペシャルな作戦で、ボッコボコのボコにしてやらぁ」
そう言って、親指を下に向けて首を掻っ切るジェスチャーをする。
そんな彼の顔を見て、何故か動悸がした。
なにか、決定的なものを見逃している気がする。
ここで動かなければ、もう届かなくなる。そんな気が。
自分でも処理が出来ないような不安に襲われた。
「ーーーあぁ?」
だから、アクサキさんの手を取ってしまった。
理由はない。ただ、グラウンドに向かおうとしたアクサキさんの手首をワシボンの如く、逃さないように、縋るように、掴んでしまう。
怪訝そうな顔で振り返るアクサキさん。俯いている私を心配そうに覗き込んでくるその姿に、喉が詰まる。言葉が出ない。思考に渦が生まれる。握る手に力が入る。
何を言えば良いのだろうか。何をすれば良いのだろうか。そもそも何かをする必要はないのではないか。
ただの私の考えすぎで、実際アクサキさんにはなんにもないんじゃないか。
分からない。分からない。悔しい程に分からない、が。
部屋に入った時に一瞬だけ見えた、頬の傷をなぞる動作。
何かを噛み締めるかのように、ゆっくりとなぞっていくあの動作が。
アクサキさんにとってどんな意味を持つのか。
いくら修行一辺倒の無能な私でも、それぐらいは分かっていた。
「ーーーなぁ、サイトウ」
顔を上げる。眼前に、優しい目をしたアクサキさんが広がる。
彼は真っ直ぐと私を見つめながら、穏やかに声をかけた。
「テメェはさ、ポケモンバトルは好きか?」
唐突な質問。場違いにも程があるそれに、意味を図りかねる。
「それは、どういう」
「答えてくれ」
だが、アクサキさんの目は本気だった。いつもみたいにふざけて
黒いのに、純白な瞳で私を射抜いてくる。引き込まれそうだった。
「それは勿論、大好きですが。私の存在価値の一つですし、私をより高みへと連れて行ってくれる。そして何より…ポケモン達と一体になれる気がしますから」
腰にかけたボールが揺れた。それを見たアクサキさんは目を細める。
そしてそのまま、出口へと歩いていく。
「オレもだ、サイトウ。オレもポケモンバトルが大好きだよ」
扉の取手を握る前に、振り返る。不敵な笑みを浮かべながら、犬歯を光らせて。それがとても蠱惑的に映った。
「それだけでいい。それだけでいいさ。今は、ただただ戦おう。遅れた分際で何を言ってやがると思うかもしれねぇがな」
オレ達は、ポケモントレーナーなんだから。
「目と目以外で語る必要はねぇ。テメェみたいな生意気な小娘に心配される程、このアクサキ様は弱くはねぇのさ」
そう言って、今度こそ部屋を出て行ってしまった。
発破を掛けられたのだろうか。確かにジムリーダーとして、バトル前に雑念に囚われてしまうことは良くないことだ。気を引き締める。
引き締めようとするが…やはりダメだ。脳裏からあの姿が離れない。
アクサキさんは強い人だ。バトルも心も強い。
他人やポケモンを思いやれる。落ち込むことはあれど、決して根底にある弱さを人に見せない。人間が出来ている人だ。
だが、それでも心配だった。寧ろ、それが心配だった。
廊下に出る。遠くにアクサキさんが歩いている。その背中を見て、思ってしまう。
ーーーどうして、そんなに寂しそうなのか
苦しくて、悔しい。が、私には、何も出来なかった。
「また負けた…」
一体、いつになったら勝てるのだろうか。
時刻は八つ時を優に回り、黄昏が世界を覆う、そんな中。
寒風に背中を押されながら、とぼとぼと暗いオレンジの道を歩く影法師がひとつ。アーマーガアの鳴き声が空に響き渡る。
皆んな大好き、あくタイプ使いことオレ。アクサキだ。
今日も今日とて、あくタイプの貴公子たるオレ様はサイトウの野郎に勝負を挑み、フルボッコにされちまった。今はその帰りである。
「今日も負け。昨日も負け。一昨日なんて、半分もサイトウのポケモンを倒せなかった。どうなってんだチクショウ…」
先のバトルを思い出す。
こうそくいどうを捕らえられ、ほのおのパンチで吹き飛ばされるニューラ。
リーフブレードとからてチョップの激しい打ち合いの末、壁に叩きつけられるダーテング。
ビルドアップをつんだ攻撃に、サイコカッター諸共ねじ伏せられたコマタナ。
手数にいなされ、狂わされて、単調になったクラブハンマーにカウンターを合わせられたシザリガー。
サイコキネシスで三体も撃破してくれたが、蓄積ダメージに耐えきれず、インファイトに沈んだブラッキー。
決して成長を実感しない訳じゃない。出会った当初に比べれば、変化技への理解も深まったし、的確な技の指示も出来るようになって来た。
確かに負け続けてはいるが、無価値な敗北ではない。昨日のオレより弱くなっていることだけはないと、あの野郎からも折り紙付きだ。
奴にそんなフォローをされるのは気に食わないが。
澄まし顔で、オレのポケモンを薙ぎ倒すサイトウが脳裏に過ぎる。
「そう思うと、サイトウの野郎もしっかりジムリーダーやってんだなぁ…」
なんて、街灯に居座るランプラーを眺めながら感傷にふけってみたり。
昨日のオレより弱くなっていることだけはない。
それはアイツがオレに掛けてくれた言葉。ジムリーダーとして、チャレンジャーに贈る、激励の花束。
チャレンジャーの壁となるように。糧となるように。ルリナパイセンが言っていたこと通りに、ジムリーダーの職務を全うしている。
でももし、それらを投げ打って、純粋な感想を述べるとしたならば。
きっとその後にこう続くのだろう。
頭打ち。キャパシティオーバー。
詰まるところ、オレのやっていることは現状維持。
なんとも優しい野郎だ。そこはかとなく実力の限界を伝えてくれるなんて、身に滲み過ぎて心が痛くなって来やがるぜ。
何度目かもわからないため息が零れ落ちる。
もう、奴を倒さずに何ヶ月経っただろうか。オレもすっかりこの街の顔馴染みだ。
今も、ガキどもがバイバイと手を振り、おっちゃんが辛気臭い顔すんなとオレンのみを投げつけて来やがる。
最早、目を瞑ってでも、この乾いた橙の景気を思い浮かべる事が出来る程には。
少し、長くここに居座り過ぎちまった。
「何がいけねぇんだろうなぁ…いやまぁタイプ相性が悪いってのは百も承知なんだが…」
オレンのみをかじりながら、はぁ…と、ため息が零れ落ちる。思考を元に戻す。
そうだ、そんなことは百も承知なんだ。あくタイプがかくとうタイプに不利な事ぐらい。何年トレーナーやってると思っていやがる。
問題は、そんな事がわかり切った上で負け続けているという事だ。
オレたちみたいな、一つのタイプないし類似タイプしか使わないっつートレーナーは、タイプ相性不利を言い訳にする事はできない。
そりゃそうだ。一つしか使わないのなら、自ずと一貫した弱点というものが現れるのは道理である。
タイプ複合型パーティーが強いと言われる理由は、一重に弱点一貫性を排除できるという点に他ならない。
しかし、では何故昨今までタイプエキスパートは衰退せず、本格的な複合型パーティーはあまり盛り上がりを見せないのか。
単純な話、それが一番効率的で、比較的誰にでも手を付けられる難易度だからだ。
やる前からわかり切った、一貫した弱点があるのなら、対策を重ねて徹底的に対処すればいい話である。
あくタイプしか使わないのなら、かくとう、むし、フェアリーに気をつけて、対策を立て特訓すれば良い。
言うは易く行うは難し。そんな一筋縄でいくものでもないが、少なくとも複合型パーティーよりかはマシだ。
あれは弱点をカバーし合える反面、対策すべき弱点そのものが増える。まず育成が大変だし、金もかかっちまう。
あんなものを上手く扱えるのは上位トレーナーのほんの一握り程度。それこそチャンピオンそこらの実力者だけ。
タイプエキスパートが弱くない事はジムリーダーや四天王、それこそサイトウ自身が証明してる。
長々と話してしまったが、詰まるところ、何が言いたいかというと…
「オレが弱いだけなんだよな…とほほ…」
それに尽きる。ただそれだけの話だ。
オレが弱い。ポケモンは悪くない。ポケモンの力を十二分に発揮させる事が出来ないオレが悪い。
オレには、決定的な何かが足りない。
「挙句の果てには、『もう一度、ヨロイ島で特訓をしましょう。貴方はあともう少しで貴方を超えられます』とか言われてチケット渡されるし…なんでこれペアチケットなんだよ。あの野郎も行く気か?そういやダクマの進化がどうたらこうたら言ってたな…」
暗くなってきた空に貰ったチケットをかざす。紛う事なき、ヨロイ島行きのチケット。
期限は明日から一週間ほど。つまり今日中に荷物を準備しなければならない。
急すぎる。もしこれが初めてのヨロイ島だったら突っぱねてた。まぁ、もう用意出来てるんだが。
ニット帽やマリィも誘ってやろうか。
ゴースト仮面やルリナパイセン達のお土産はどうしようか。
兄弟子や姉弟子、師匠の皆は元気だろうか。
サイトウの野郎はきっと修行で手一杯になるだろう。何か差し入れるものも準備してやるか。
「…なんて」
ホイホイ言われるままに行こうとするオレは、相当毒されてしまってるんだろうな。このガラル地方に。
軽くなった足取りを見て、思わず
何ヶ月経っただろうか。勝てない勝てないと、それをいい事に建前を掲げて、理由を作って。
居心地の良さを覚えたここに滞在する様になってから、一体何ヶ月経っただろうか。
いつからだ。早く次の街に行ってやると、さっさと奢った分返せと言わなくなったのは。
条件付きのバトルを快諾し、楽しむようになったのは、いつからだ。
見切りが付いたなら、感情が重石となる前に、友情も義理も何もかも捨てて、次の場所へと行く。
そうやって、ジョウトもカントーもホウエンも、制止の声を振り払って飛び出してきた筈なのに。
「…そろそろ、潮時…か…」
くさ。みず。ほのお。
一向に埋まらないバッヂリング。いくつも重なった
どちらにしろ、もう長くはない。この時間は、やがて終わりを告げる。
忘れられがちだが、オレは旅人だ。旅人が、別れを惜しむ事はあれど、悲しむ事はない。
だから、だからせめて、せめて、今だけは。
ポケットから、もう何年も使い古されているポケギアと、
「ハハッ…情けねぇ…」
諦める、という言葉が大嫌いだった。
自分にはもう無理だという奴に反吐が出た。
お前には出来やしないという奴に虫唾が走った。
どんなに命中率が低い技だって、撃ち続ければいつか当たるのに。走り出すことさえしない人生に何を見出せるのか。
なんとまぁ、要領の悪い人生だった。
思えば、笑ってしまうような考えを掲げた青いガキの頃のオレ。母さんみたいにいじっぱりで気持ちの良い子だなと、呆れ顔の親父によく頭を撫でられた事を思い出す。
光に這い寄らない闇など、価値はない。
勝とう。どんな無様を晒そうとも。諦めない。
出来ない事なんて、何もないんだ。この世は可能性に満ち溢れている。
そんな信念を胸に刻んで、この道を走り続けた。
走り続けたんだ。
幾日も幾日も。
走って…走って…走って、走って、走って、走って、走って、走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って。
やがて靴が擦り切れ、爪が割れ、足の皮が破れて。
歩くことも叶わず、身体を支える事も出来ず、膝から崩れ落ちてしまった時。
気付いてしまった。
オレというものの運命に。オレというものの
最初は抗った。そんなものに呑まれてなるものかと、みっともなく足掻いた。見て見ぬふりを続けたよ。
振り向けば確実に、現実は嘲笑わらって此方を見ているのに、前だけを見ていた。耳を塞いだ。
気付けば己には無数の傷痕が刻まれている。
今更止まり方なんて知らない。引き返すなんて選択肢取れない。
だから、いつかゴールに辿り着けると信じて。
でも…でも。
やっぱり。いっくら歩いた所で、景色が一つも変わらないんだ。
周りの奴らが頂きへと続く道を進んで行く、その背中を。
ただ眺めてることしか出来ないんだ。
心の底から沸沸と湧き出てくる、くろいヘドロ。
それが徐々に身体を蝕み始めた時、あぁあぁ気付いたよ。気付いてしまったよ。
気づいちまったからこそ。
『ーーー全身ッ全霊!!もう、全て壊しましょうッ!!』
滾る熱気。唸る闘志。痺れる空気。
そんな様々なエネルギーが飛び交う、泥臭く愛らしいこの戦場で。
悠々と、力強く咲き誇る菜豆の花に。
ーーー魅せられちまったオレがいた。
認めよう。これ以上長く居れば、テメェに絆されちまう自分がいることに。
さぁさぁ、英雄様。正義のヒーロー様。
戦おう。闘おう。骨の髄まで。全てが壊れるまで。
オレが対価として懸けるのは
ダラダラと伸びる展開は好みじゃない。何話までも引き伸ばしにされるシナリオなんてクソ食らえだ。
ヤルなら一瞬。ランターンに翳された夜道の如く、潔く。
その覚悟が、他でもねぇ。テメェのお陰で決まったんだ。
「ちょうど良いのか悪いのか…まったく、無駄金叩いちまったぜ。オレも明日が楽しみで楽しみで仕方がねぇよ、バーカ…はぁぁ…キャンセル代いくらかな…」
沸々と煮えたぎるこの想いのせいだろうか。
零れ落ちたため息は白くたゆたい、虚空へと霧散した。
オレはあくタイプが大好きだ。
何故あくタイプが好きなのかと問われれば、軽く半日は語ってしまう程、オレはあくタイプを愛している。
あくタイプと聞けば、人によって顔を顰める人もいるだろう。
が、少し待って欲しい。『あくタイプ』という五文字だけで、あくタイプの全てを判断するのは、あくタイプ使いとして許せないものがある。
そんな、最近サイトウに旅の話をしてやったら何故か不機嫌になられたあくタイプの代名詞ことオレ。
「おかしいな?聞いとった話と全然ちゃうんだけど」
「きっちりと説明して貰いましょうか?」
「アクサキ…お前って奴は…」
「あの…その…」
何 故 こ う な っ た。
睨み合う三人の言葉に、ある種の悪寒が背筋を掛ける。武道場の空気は冷えに冷え、心なしか、潮の香りが強くなった気がした。喉が渇く。
ここは、ガラル地方の東に位置する、自然豊かな修行の孤島、ヨロイ島。
修行の為にこの島に訪れたオレは今、今世紀最大のピンチを迎えているところである。
誰か助けて。
『……』
「……」
沈黙が辛い。目線が痛い。
何故こんなことになったのか。どうしてこんなに空気が重くなるのか。
状況を整理する。
ジムチャレンジから帰り、すぐ様チケット返金の手続きをした次の日。
ヨロイ島へと出発したオレたちは、現地で兄弟子姉弟子の洗礼を受けつつも、なんの問題もなく道場へと辿り着いた。
そこでオレたちを迎えてくれたのは師匠に女将さん、門下生達。
そして、サイトウに誘われる前から元々ココで会う予定だったーーー同期の二人。
本当に、久しぶりの再会である。
最後にちゃんと会えた日はいつだろう。あまり情けない所を見せないようにしようと気張るも、元気そうな二人を見ると、やはり胸にこみ上げてくるものがある。はやる気持ちを抑えるのが難しい。
そうして、笑顔で駆け寄ってきた二人を素直に受け止めようと腕を広げた。
そこまではよかった。
二人が、サイトウが、それぞれを認識するまでは良かった。
オレにタックルかます勢いで抱きついてきた同期の一人と、サイトウの目がバッチリとあった。
空気が凍った音がした。
そして冒頭へと戻る。出会った途端バチバチだった。
確かに同期の二人にも、サイトウが来ることを知らせなかったし、サイトウにも知らせなかった。
いや、だって…せっかくだしお互いを紹介するのに丁度良いと思ったんだもん。
地方は違えど、同じジムリーダー。仲良く出来ると思ったんだもん…こんな喧嘩腰になるとは思わないじゃん。
因みに伝えなかった理由はサプライズにしようと思ったから。
ホウレンソウって大事なんだよ…と引きつった顔で言ってきた兄弟子と姉弟子を思い出す。
なんで急に野菜の話してきたんだろ…言われなくてもガキじゃあるめぇし、栄養は摂ってるわ。
遠くに座ってこちらを見てる二人を見る。せめて助けてとアイコンタクト。師匠は爆笑中であてにならない。
あ、目を逸らされた。
「… まぁええか、このままじゃ埒が明かへんしね。一旦、お互いの自己紹介といこうやんけ。ウチはアカネ。一応ジョウトでノーマルタイプのジムリーダーを務めさせて貰うてる。
それに比べてあんたは…フッ、あんまりアクサキを満足させられそうにあらへんね。顔埋めたら鼻が折れるとちゃう?まな板ちゃん?」
冷や汗垂らして黙っているオレを見兼ねてか、同期の一人ーーーアカネがサイトウにそう切り出す。満面の笑顔で、サイトウに手を差し出した。
いやテメなに暴露してやがんだ恥ずかしいから内緒にしろっつったのに。よりにもよってなんでサイトウの野郎に言っちまうかな。
まぁそもそも抱き付き癖のあるオレが悪いんだけどよ。抱き心地はスゲェ良かった。ミルクの匂いがした。なんでか知らんけど。
サイトウ?寝相を攻撃だと勘違いされて殺されそうだから一緒に寝たくねぇな。
ピキリ、と音がした。
何の音だと辺りを見回すも、そんな音が出るものは見当たらない。サイトウの野郎が何故か小刻みに震えてるだけだ。寒いのだろうか?年中裸足の癖に珍しい。
「同じくひこうタイプジムリーダー、ハヤト。
さらにもう一人の同期ーーーハヤトも後に続き、クールな微笑を携えながら手を差し出す。
協定?何を言ってんだコイツは。コイツはコイツで思考回路がよく分からん時があるからな。
前も空を眺めながら「風になりたい…」とか言って笑い泣きしてたし。大抵そういう時ってオレが悪いらしいんだけど。なんでや。
またピキリ、と音がする。
再度辺りを見回す。サイトウが珍しく笑みを浮かべている以外、やはり何もない。疲れているのだろうか。
「…これはこれは、
今日は来たるべき時の予行演習も兼ねていて…おっと、失礼。惚気を聞かされても楽しくありませんよね。配慮が足らず、申し訳ありませんでした」
最後に、差し出された二人の手をしっかりと握って、ハッキリとサイトウが自己紹介をする。改めて聞くと、オレ、パシリみてえだな。
でもなぁ、コイツ生活力ゼロのだらしねぇ女だからなぁ。オレが世話してやんないといけないっていう謎の使命感が出てくんだよなぁ、そんな事してる余裕ないのに。
作った料理は美味しそうに食ってくれるから別に良いんだけどさ。
「中々やるやんけ。退屈はしなさそうやな」
「こちらのセリフです。あなた方の傲慢、全て壊してあげましょう」
「ぬかせ。吠え面かかせたるわ」
「あぁ…胃が痛い…」
相変わらずオレを置いてけぼりにしている気がするが、まぁ良い。
何はともあれ、自己紹介もすんだんだ。さっきまで地獄みたいな空気だったが、これで少しは仲良くなってくれるだろう。
実際、出会った当初よりかは穏やかな空気が流れている気が…
「取り敢えず、マスタードさんにしっかりと稽古をつけて貰わないとな。これ以上いがみ合うと、企画したアクサキが悲しむ」
「む… そうやな、それだけは避けな。命拾いしたね、まな板ちゃん」
「…まぁいいでしょう。
…仲良くなるよね?
「頼むぜ兄弟子姉弟子。この道場にいる限り、あんたらの方が上なんだから仲良くするよう言ってくれよ」
「嫌に決まっているでしょう、貴方の自業自得ですこの人たらしが」
「完全に勝てっこない奴ら連れてきやがってェ…せっかく上玉見つけたと思ったのに、これじゃ無理だなァ。サラバうちの春…いや、こっそりコイツの食事に盛ればワンチャン…?」
だからオレが何したっていうんだよ、チクショウ。
えー、真面目な話をしますと、最近というかここ半年ぐらいマジで忙しくなってきて、尚且つモチベも上がらないという最悪の状態でした。言い訳言っていいわけって感じですが、事実なのですいませんというしかありません。笑うところですよ。
この忙しい日々がいつ終わるか分かりません。今回並みに間が空いてしまうかもしれません。皆様にはご迷惑をお掛け致しますが、何卒、温かい目で見守ってくださいまし。
え?人物紹介はどうしたって?
…感の良いガキは(ry
アクサキ
ジョウト地方出身。友達大好きっ子。アカネ、ハヤトと共にジョウト地方を旅した。二人の事は大親友だと思っている。
最近はサイトウの家に行き、朝食を作ってからバトルするという一連の流れが出来上がっている。
食事以外にも掃除、洗濯、買い物に、おやすみ前のマッサージまでこなしており、周りから通い妻と認識され始めた。 本人の前で言うとグーパンが飛んでくるので注意。ニット帽とマリィに聞かれてもバッドエンド。
疲れてベットに倒れ込んだサイトウをマッサージしている時(特に下半身辺り)、凄く変な気持ちになったそうだ。おや?アクサキの様子が…
サイトウ
ラテラルタウンジムリーダー。最近忙しくてアクサキと遊びに行けない上に、ライバルの追加でストレスがやばい。
アクサキが通うようになってなかったら大変なことになっている。アクサキが。
少しでも彼と触れ合うとマッサージを頼んだ時、ダメ元で際どい所を押すよう誘導したら「こここるのか」とか言って躊躇なくいかれ、ビクビク震えるのを痛気持ちいいと勘違いしたアクサキが日頃の恨みを思う存分晴らした為、生き地獄を垣間見た。
コイツマジで押し倒してやろうかと思ったが、腰が抜けて実行に移せなかったらしい。
次こそはと狙うも、何故だかアクサキが誘導に引っ掛からなくなり、泣く泣く枕と下着を濡らした。
次の日洗濯ものが多くなってアクサキに怒られた。
アカネ
コガネシティジムリーダー。アクサキの同期であり旅の仲間。
アクサキ大好きっ子その1。
協定は彼女とミカンで作った。ジョウトの有力者でアクサキを全力で囲もうとしている。
アクサキの親への挨拶も済んでいる為、現時点で一番可能性が高い(成功するとは言っていない)。
ご自慢のダイナマイトでプリティなモノでアクサキを誘惑するが、効果があった試しがなく、海に行った際に水着で抱きついたが暑いと言って相手にされなかった時は、ショックと共に謂れのない暴力がハヤトを襲った。
ハヤト
キキョウシティジムリーダー。アクサキの同期であり旅の仲間。ファザコン。
アクサキ大好きっ子その2。
アクサキの1番の親友兼ライバルとして、常に彼のことを大切に思っている。
作中で見せたサイトウに見せた牽制は、貴重なポジションを他の人に取られまいという気持ち故に起こした可愛らしい抵抗である。よく勘違いされるが、恋愛感情はない。残念。
苦労人であり、苦労人である。アカネの暴走を抑え、人たらしなアクサキが起こしたあれそれの仲介に入り、対処している超重要人枠。
それでも次々と降りかかってくる問題に一時期胃薬とアクサキが離せなくなった。
セイボリー
今回の被害者その1。可愛い弟弟子が厄介事背負って突っ込んできた。
アクサキがヨロイ島に来た時に勝負を仕掛けたが、コテンパンにされた。エスパータイプなのにアクサキに挑んだのが間違い。
その後色々と燻ったが、アクサキと修行を続けていくうちにアクサキ持ち前の気持ちの良さと過去を知り、また自分の超能力を認めてくれた為、和解していった。
今はエスパータイプのジムリーダーになる為、猛勉強&修行をしている。
クララ
今回の被害者その2。春がきたと思ったら一瞬で過ぎて行った。
アクサキがヨロイ島に来た時に勝負を仕掛けたが、普通に負けた。普段サイトウにボコられている分弱く見えるが、ジムリーダー見習いに負けるほどアクサキは甘い男ではない。
その後色々と燻ったが、アクサキと修行を続けていくうちに、アクサキ持ち前の気持ちの良さと過去を知り、またアクサキが自分の歌を嘲笑わずに聴いてくれた為、和解していった。
今はどくタイプジムリーダー兼アイドルになる為、猛勉強&修行をしている。