戦術人形は迷宮都市を満喫する   作:abelu

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 この作品を読んでくださり本当にありがとうございます。
 下手ではありますが、頑張っていきたいと思います。


C96冒険者始めます

 迷宮都市に立った。うん、立ったはいいんですよ。

 ベル兄いにくっついて、【ファミリア】ってのを探し始めるわけですよ。

 どうも、冒険者になるにはその、【ファミリア】ってのに入団しないといけないようなので。

 まぁ、それはわかった。問題は……

 

『いや、やめておけ。死ぬぞ?』

 

『はっ!ウチはお前らのような貧弱なガキの遊び場じゃねえんだ。家に帰りな!』

 

『……商業系に行くことをお勧めするよ。』

 

 こう、尽く子ども扱いされて門前払いを受けることですよ。

 

「そりゃまぁ、私達って外見貧弱ですし、実際貧弱ですし?」

 

「自覚しているけどさ~……」

 

 このままでは、アルバイター直行ですね……

 ぐぅ~。

 そんな音が、二人のお腹から鳴ってしまいました。

 

「そういえば昼ご飯まだだったね。」

 

「あ、もうお昼ちょっと過ぎてるんだ……ベル兄い、どこかで食べ物買いましょう。」

 

 メインストリートを歩いていると、ちょうどいいところにじゃが丸のお店があったので、そこで昼食としゃれこむことにした。

 

 ……microuziがいた。正確には、戦術人形microuziの背を小さくし、胸部装甲はそのまま、いやそれ以上?で、髪を黒くしたような幼女がいた。

 いやいや、お祖父ちゃんといい、この店員といい、現実の職場(になるはずだった)にいるそっくりさんに会う確率大きくないですかね!?

 偶然。そう偶然だ。きっとそうだ。いや、もしかしたらこの世界の住民を作るときに参考にされた可能性もあるかもしれない。

 ……結論、どうでもいいや(投げやり)

 そんなくだらないことを考えながら、注文をする。

 

「じゃが丸くん4つ、塩味で。」

 

「はいよ!じゃが丸くん4つ120ヴァリスだ!しかし、君たち見ない顔だね?この街に来たばかりかい?」

 

「えぇ、先ほど到着したばかりです。」

 

「僕たち冒険者になりたくて来たんですけど、なかなか入団させてくれる【ファミリア】がなくって……店員さん、どこかこんな僕たちを入れてくれそうな【ファミリア】知りませんか?」

 

 そうベル兄いが質問を放つと、突如小さな店員さんが高笑いし始めました。気でも触れたか!?

 

「あーッはッははハハハハハ!!我が世の春が来た!店長!ボクに入団希望者が来たぞぅ!早上がりさせてもらうよ!」

 

 そういって、店の奥に引っ込む店員さん。

 

「あらあら、ようやくヘスティアちゃんに入団希望者が来たのねぇ。よかったわぁ。お祝いとして、いつもより多めに持ち帰ってもらいましょうか。」

 

そういって、売り物としてキープしてあるはずのじゃが丸くんを袋にどんどん詰めていく女性。

 

「ドウユコト……?」

 

「さ、さぁ?」

 

二人で呆然としていると、ヘスティア?さんが、ドタドタと慌しく出てきました。

 

「ヘスティアちゃん!これ今日の分ね。いつもより多めに入れておいたから!」

 

「店長大好き!ありがとうね。さ、二人とも、行こうか!」

 

 ベル兄いと顔があって、二人で思わず苦笑してしまいました。

 どうやら、私たちの【ファミリア】は決まったようです。

 

 

 

 

 ついて来いと言わたので付いていったら、薄暗い路地裏に入り、廃墟に案内されました。

 

「……は?」

 

「怖い!妹くんの表情が怖い!お、落ち着いてくれ!?その……見た目はあれだけど、これがボクのホームなんだ。」

 

「マジ?」

 

「大いにマジだよ!」

 

 だそうです。そっかー、第二の自宅は廃墟かー。

 

「ちなみに、僕の眷属は君たちが最初だよ!やったね!」

 

「あはは……」

 

 ベル兄いよ……もはや言葉が出ないか……

 こんな私たちを受け入れてくれるだけましです。そう現実逃避した。するしかなかった。

 

 崩れた教会の階段を下り、扉を開けると……

 案外まともな居住スペースだった。

 家具一式がそろって、人が何人か暮らせるスペースも確保されていて、上のひどさと比べれば十二分といえるほどに環境が整っていました。

 

「ほら、まともだろ?」

 

 そういって、ベッドの上に座り込む神様。

 なんとなく、どや顔するのもわからないでもない。

 まぁ、この際四の五の言ってられない。

 

「というわけで、自己紹介がまだだったね。ボクはヘスティア。神ヘスティアさ。」

 

「べ、ベル・クラネルです!よ、よろしくお願いします!」

 

 はは、お兄様はあがり症だからね。顔真っ赤になってる。我が兄ながら可愛いよなベル兄い。

 

「おいおい、これから一緒に暮らすのに、堅苦しいのはなしだぜ?まぁ、よろしくだぜ!ベルくん!」

 

「は、はい!」

 

「あはは……そっちの妹くんは?」

 

「グレイ・クラネルです。よろしく。」

 

「うんうん、なんだかお兄ちゃんよりしっかりしてるなぁ」

 

「あはは……よく言われます」

 

 そういってがっくりと肩を落とすベル兄い。

 この人ここに来てから、苦笑いと肩を落とすくらいしかしてないですね。

 兄の威厳はどこへやったんですか…

 

「それで、君たちは【ヘスティア・ファミリア】に入ってくれるんだよね?ね?」

 

「は、はいそうです!」

 

「よし、わかった。歓迎するよ盛大にね!……といってもじゃが丸君しかないけどさ。」

 

 

崩壊した教会の隠し扉。【ヘスティア・ファミリア】のホームであるこの部屋で、ヘスティア様がニコニコとした笑顔でベッドの上に腰掛ける。

 

「ささ、グレイくん、上着脱いでここにうつ伏せになってくれ」

 

 ベッドをポンポンと示しながら言う言葉に従い、腰掛けるヘスティア様の隣でうつ伏せになる。

 ベル兄いは先にファルナを授けられ、「僕は上で待ってますから、終わったら声をかけてください。」と言って外へ出て行ってしまった。

 

「別に、妹の体ぐらい見たってかまわないと思うんですけどね。」

 

「いやぁ、あれ位の男の子は、誰であろうが女性の体を見るのは恥ずかしいものなんだよ。というかだね、女性がそんな軽々しく裸体を見せてはいけないと思うんだよ。ボクは。」

 

 そう少し怒ったようなヘスティア様はうつ伏せに寝た私のお尻辺りにそっと跨った。

 

「それじゃ、ファルナを授けるよ。」

 

 ポタリと背中にほんのり温かいものが垂らされる。

 すると、淡い不思議な光が背中で弾ける。

 

 私の背中、今どうなっているんでしょう?めちゃくちゃ気になる。

 

 とか思ってたら、神様が優しく声をかけてきた。

 

「心配する必要はないよ。見た目が派手なだけさ。やってることは大した事では無いから。」

 

 どうも、この光は神々が面白半分でやってる演出で、実際こんな光を出さずにファルナは付与できるそうだ。

 ヘスティア様曰く、この地上に降りてきた神々は、娯楽に飢えているとかで、こういう些細なところでも工夫を凝らし、人々を驚かせて面白がってるとか。

 その努力の方向性おかしい……おかしくない?

 

「……よし。付与完了っと。はい、これがグレイくんののステイタスだ。」

 

 

 

 

__________________________________

 

グレイ・クラネル

 

Lv1

 

力:I 0

 

耐久:I 0

 

器用:I 0

 

敏捷:I 0

 

魔力:I 0

 

 

《魔法》

 

【パウダーマガジン】

・生成魔法

 

・生成は知識依存

 

・基礎詠唱式【ウェポンズフリー】

 

 

《スキル》

 

戦術人形(T-DOLL)

 

・『魔力』以外の基礎アビリティに補正

 

・知識に補正

 

・照準に大きな補正

 

・常時発動

 

__________________________________

 

 

 

「すごいや。いきなり魔法とスキルが発現しているよ!でも、生成魔法って聞いたことないかも。しかし、知識に補正ってどいうことなんだろう……」

 

 神様が背中から退いたのを確認してから起き上がって服を着る。ついでにベル兄いも呼び戻す。

、しかし、あれですね。魔法ってお祖父ちゃんに聞いてはいたけど、戦術人形の私にはこれっぽちも関係ないと思っていました。

 パウダーマガジン。直訳すると火薬庫ですか……

 しかも、詠唱式にウェポン……これは、そういうことかな?

 

「魔法!?グレイすごいね!!いいなぁ」

 

 お、おう……今日一番テンション高くないですか?お兄様や。

 

「とりあえず、攻撃的な魔法じゃないので、一度使ってみていいですか?一応、魔力暴発を考慮して、上で試しますが……」

 

「じゃあグレイ、僕にも見せてよ!」

 

「ベル兄いが憧れてるような、すごいやつじゃないと思うけど?」

 

「それでも見てみたいよ!だって、魔法だよ!?魔法!!」

 

「まぁまぁ、いいじゃないか。ボクもその生成魔法とやらに興味がある。ぜひ見せてくれ!」

 

 

 

 

 

 と、いうわけで早速魔法を使ってみることになった。

 

「行きますよ。ベル兄い、大丈夫?」

 

「うん。ボクも神様も大丈夫だよ。」

 

「じゃあ、遠慮なく。『ウェポンズフリー』」

 

 詠唱と同時に世界が闇に沈んだ。

 

 

 ……あれ?ここって……

 いつか見た真っ暗な世界。あの日、解体された日に見た世界。

 

「魔法獲得おめでとうございます!と、いうかそれがないと実験が始まらないんですけどね」

 

 そういって現れたのは、体感5年前のあの時と同じように、カリーナさんのホログラム。

 あぁ、そういえばこれ実験でしたね。あまりにもエゴール爺とベル兄いとの暮らしが楽しすぎて、忘れていました。

 

「戦場では、部隊内の仲間が倒れた時と、自分の銃の弾が切れた時というシチュエーションが重なることが度々あります。そこで、I.O.P社製の戦術人形は社内製品で扱う銃の知識を一通り入れるのが鉄則なのはご存じですか?」

 

 ほぇ~、私の銃以外の銃のデータや扱い方があるのはそういうことだったのですか……

 

「ごめんなさい。それは知らなかったです。」

 

「あぁ~……その説明を受ける前に解体されてたんですね。これから覚えておいて下さい。作れるようになってるので。」

 

「はぁ……?でも、作っても意味なくないですか?」

 

「確かにそうなんですよね」

 

 だって、こんな便利な機能あったら、無限に自分の銃を使えばいい。

 

「まぁ、そこはあれです!ゲーム会社側の面白半分で作った機能ってことで!」

 

「えぇ……(困惑)」

 

「はい、じゃあ使い方はわかると思うので、チュートリアルはここまでです。あとは頑張ってください!でわでわ~」

 

 使い方、教えてもらってないんですけど、ホログラムが消えました。カリーナさんはすごく自由人ですねぇ……(遠い目)

 ただ、追加ファイルをダウンロードしたときのように、ひょっこり使い方がわかってるんですよね。実際そうなんでしょうし。

 

 えっと、なになに?詠唱時、記憶領域から生成対象のデータを参照するだけ……簡単ですね。

 では、サクッとやっちゃいましょう!

 

 参照するのは、私の名前の元となったかつての半身。ASSTで紐付けられた、私が生まれた理由。

 

 記憶データの森から、意識を戻して目を開ける。

 

「おぉ……C96!マイソウル!」

 

 そこにしっかりと、あの日からの相棒になるはずだった(C96初期型)とその弾薬が存在していた。

 ちなみに、弾薬はしっかりとクリップにまとめられていた。

 

 

「どうやら成功したみたいだね。ところでそれは何だい?」

 

 ヘスティア様はそういって、私が持つC96初期型を指さす。

 

「そうですね……見てもらった方がいいと思います。」

 

 銃と弾薬を拾い、コッキングピースを引いて手で仮固定し、排莢口にクリップを挿しこみ、指で弾丸を上から押しこんで、クリップを外す。

 特に異常が見られないので、セーフティを外す。

 どこか適当な瓦礫に狙いをつけて……

 パンッという破裂音が閑静な路地に響き、瓦礫に小さな穴が開く。

 

「「!?」」

 

「とまぁ、こんな見た目で武器なんです。」

 

 呆然とする兄と神。

 数瞬後に二人とも再起動し、ヘスティア様が私の腕を引いて隠し部屋に戻る。

 

 

「つまり、この小さな金属を、燃える粉を使って弾くための道具か……グレイくん。悪いことは言わないから、これは杖ということにした方がいい。こんな誰も知らない道具を他の神が放っておくとは思えない。しかも作った本人は可愛いときた。露呈した場合、必ずと言っていいほどに神々が群がるに違いない。」

 

 えぇ……神というものを、ヘスティア様から聞けば聞くほど、人でなしに思えてきますね……印象操作か、本当にひどいのか……もし本当なら、門前払いされてよかったまであるんですよねぇ~。

 

「それじゃあ、神様、グレイはこの道具と魔法を使えないんですか?」

 

「いや、大丈夫。さっき言った通り、これを杖として、あたかもただの攻撃魔法を放っているように見せかければいいだけさ。」

 

「一体それはどういう……?」

 

「ざっくり言うと、これを撃つときに何か言えばいいわけさ。こう、『ファイア!』ってね。そうすれば、ベルくんはグレイくんの援護のタイミングがわかるし、遠目から見れば魔法を撃っているだけのように見える。」

 

 まさか、たかが銃一つでここまで面倒なことになるとは……まぁ、そもそも機械のきの字もない世界ではあるから当然ですね。

 と、ギャップというか、カルチャーショックに困惑していると、空気を切り替えるように、ヘスティア様が手を叩いて立ち上がる。

 

「まぁ、この話はこれでいいだろう。さて、歓迎会には早いし、少し散歩としゃれこもうぜ!」

 

 

 

 というわけで、『ギルド』と呼ばれる施設まで来た。『冒険者ギルド』という組織の『万神殿(パンテノン)』という施設というのが正しいらしいけれども。

 

『じゃあ、僕はファミリアの申請をしてくるから、君たちはその間に冒険者登録をしてくるといい。終わったら、好きにしてもいいけど、日が暮れる前には帰ってきてくれよ?』

 

 と、言ってヘスティア様とは別行動になった。

 

 しかし、あれですね。お祖父ちゃんの話を聞く限り、冒険者ってごつい人や荒くれ者ばっかりだと思ってたけど、そんなことはなかった。

 

 まぁ、I.O.Pの戦術人形のスキンと呼ばれるものや、標準の衣服がとても個性的なものばかりだから慣れましたけど、傍から見れば、人形もここにいる冒険者たちも変なコスプレ集団なんですよね。

 

 田舎暮らしでは到底体験できない人の多さに圧倒されているベル兄いを引っ張り、空いていた受付カウンターっぽいところに向かいます。

 そして、そこにいたセミロングでブラウンの髪に眼鏡をかけているエルフらしい女性に声をかけました。

 

「すみません。」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 女性は綺麗な笑みを浮かべて私に答える。

 受付窓口の担当は、あの世界では見た目麗しい人や人形が選ばれるものだったけど、こっちでもそれは変わらないらしい。

 ……ベル兄いは、相変わらず女性に耐性がないのか、顔を赤らめて緊張している。

 

「ぼ、僕たち冒険者登録をしたいのですが……」

 

「冒険者?あなた達が?」

 

 そう言うと、彼女は私たちをじろじろと眺めてきた。

 

 まぁ、商業系を進められる程度には見た目が弱そうだしね。私達。

 

 当然、彼女は本当に心配そうな声で、控えめにやめるよう促してくる。

 

「冒険者っていうのは、きっとあなた達が考えているよりすっと危険な職業なんだよ?魔物(モンスター)と戦うわけだから当然、命の危険だってある。ずっとLvが上がらなくて苦しむ可能性だってあるの。それでも本当になるの?」

 

「命の危険があることはわかっています。魔物(モンスター)に襲われたことがあるので、死の恐怖も知っています。」

 

「それでも……僕らは、冒険者になりたいんです。」

 

 死んだお祖父ちゃんに誓ったしね。

 

「そこまで言うなら止めはしないけれど……」

 

 そう言いながら、彼女は用紙を取り出し、カウンターの上に置く。

 

「じゃあ、この用紙にそれぞれ名前と種族、年齢。そしてLvと所属【ファミリア】を記入してちょうだい。」

 

 言われた通り、用紙の各項目に記入していく。

 種族はは……まぁ、ヒューマンでいいでしょう。ここで馬鹿正直に『戦術人形』なんて書いても余計な混乱を生むだけですし。

 

 書き終えた用紙を差し出して、受付嬢さんはその内容を確認するようにつぶやいた。

 

「名前はベル・クラネルとグレイ・クラネル。種族は共にヒューマンで、年齢はこれも共に14。双子?」

 

「えぇ、そうです。」

 

「ふーん。で、どっちもLv.1の【ヘスティア・ファミリア】?新規の【ファミリア】かな?」

 

「は、はい。僕らが初めての【眷属】だそうです。」

 

「成る程成る程。」

 

 そう頷いてから、彼女は再度記入に誤りがないかをチェックし、用紙にサラサラとサインしていく。

 

「では、只今をもちまして、ヒューマンのベル・クラネル及び、グレイ・クラネルをオラリオの冒険者として登録します。よろしいですね?」

 

「問題ないです。」

 

「では、これからあなた達のアドバイザーを担当することになります。エイナ・チュールと申します。以後お見知りおきを。」

 

「あっ、は、はい!よろしくお願いします!エイナさん!」

 

「よろしくお願いします。エイナさん。」

 

「ふふっ!はい!お願いされました。改めてよろしくね。ベル君、グレイちゃん。」

 

 私達が頭を下げると、受付嬢……もといエイナさんは言葉を崩し、親しげに話しかけてくれた。

 

「じゃあ早速、冒険者やダンジョンの注意事項を”しっかりと”教えてあげるね!」

 

 やけに”しっかり”を強調されましたけど何だったんでしょうか?

 ちょっと不思議に思いながら、案内された別室で講習を受けることになりました。

 

 

 エイナさん、物事を教えるのが上手ですね。かなり理解しやすい。というか、すんなり頭に入ってきます。

 ……ひょっとしてひょっとしなくても、ギルドの職員の要求レベルってすごく高いんじゃ……

 

 まぁ、それはいいんですよ。

 

 ……ねぇ、ベル兄い。えっと……中身5歳の私より話に集中できてないってどういうことなんですか……

 兄としての威厳はないんですか!?私恥ずかしい!

 

 いや、わかるんですよ?きっと強いモンスターの情報とか欲しいんですよね?

 ダンジョンの安全な探索の仕方とか、とっても、とっっっっっても大事だと思うんですけれど、地味だもんね。英雄になるのにあまり関係なさそうというか、つながりが見えないもんね。

 

 ひょっとしてこの兄は自殺願望でも持っているんですかね?お願いだから夢ばかりじゃなくちゃんと現実も見てほしいんだけどなぁ……

 

 仕方ないので、飽きてうずうずしている兄の頭を叩きましょう。

 

「痛い!?グレイ、何を!?」

 

「いやちょっとエイナさんのお手伝いをしようかなって思ってね?今、エイナさんからダンジョンの危険性についての話聞いていて『ヤバイ』って感想しかないわけだどね?その話をうわの空で聞いてるベル兄いは、ちょっと危機感がないというか、回り回って自殺願望でも持ってるの?って思うわけですよ。」

 

「えっと、その……」

 

 一度にたくさん言えば、ベル兄いは困惑した顔で視線が泳ぎ始めます。

 

「あの時よりひどいことになると思うけど。いいの?後、話を聞くのが上手いのも、モテるポイントだと思うけど?」

 

 次の瞬間、ベル兄いはジャンピング土下座をしだしました。

 昔から、”モテる”とかの類の単語にすこぶる弱いんですよねこの兄は。

 それともう一つ。

 

「顔を上げて。ベル兄いは昔から英雄になりたいっていうけど、今自分自身が英雄だって胸を張って言える?」

 

「え?……ううん、僕は英雄じゃない。」

 

「なんで?」

 

「えっと……力が足りないから……?」

 

「じゃあ、どうすれば足りるようになるの?」

 

「ど、努力……?」

 

「今やってるこれって、その努力のうちに入ると私は思うけど……どう?」

 

「……そうかもしれない。ごめん。僕が悪かったよ。」

 

 ほら、やる気が出た。この兄単純すぎません?

 

「……いきなりグレイちゃんがベル君の頭を叩いたときはびっくりしたけど……ベル君、いい妹さんじゃない。」

 

 微笑ましそうにそう言うエイナさん。

 

「はい、自慢の妹です!」

 

 ちょっと、そんなこと言われちゃ照れますよ!

 

「……ほら、続きやりましょう?」

 

「ふふっ!そうね。じゃあベル君、妹さんに言われた通り、頑張ろうね!」

 

 

 

 

 その後、ベル兄いはめちゃくちゃ頑張って、おさらいの試験で満点取りました。

 エイナさんに『偉い偉い!』って頭をなでられて、げっそりした顔をトマトみたいに真っ赤にしてました。

 可愛いもんね。撫でたくなるよね。




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