<はるか昔、とある草原にて>
「ねぇ、アトラスさん。あなたは魔王が憎いですか?」
金髪の青年が星の巨人に話しかける。
「えぇ……憎い。」
それを聴き青年は笑う。
「やっぱり!そうじゃないかと思ってましたよ。」
「……あなたは違うの?」
巨人が聞き返す。
「……最初はね。いや……今でも憎いかもしれない。ただ…。」
「ただ?」
彼は続けてこう言う。
「今の彼女はまともじゃない。」
「あれだけ殺戮をする奴はまともじゃないわ。」
「……そういう事じゃなくて…。」
青年は困ったように頬をかく。
「…………ここだけの話彼女は操られている。」
「な?!誰に?!」
「そこまでは分からない。だけどいるのは確かです。」
「そんな事が……。」
青年は続けて言った。
「例えそうだとしても我々の目的はただ1つ彼女を殺す事だ。それが例え彼女が操られていようが。やることは変わらない。」
「……そうね。」
「さて!そろそろ戻りましょう!バアルさんがまた怒りますね。」
青年はいつもの柔らかな表情へと戻っていた。
≪side out≫
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
≪side 霊夢≫
今、私の目にはとんでもないものが写っていた。
シャーロットがあの巨人の剣を受け止めているのだ。
「貴様!!それは!!」
どうやら相手は何か知っているようだ。
「………ほんとズルみたいな能力だな。」
そう言ったのは椛だった。
「どんな状況相手がどんな種族でも剣1本さえあれば同じ土俵で戦える。……」
「
「それがあの子の能力なの?」
私は彼女に聞く。
「ん?もう立てるのか?…ああ、そうだよ。そして英雄アーサー・ペンドラゴンの能力でもある。…………さてと。圧されてるな。」
私はシャーロットに目線を向けた。
どうやら反撃に出れないらしい。
「バアル。後は私がやるわ。」
「?!でも姉さん!」
「私にしか出来ないだろ?」
そう言って彼女は戦っているシャーロットの方へと飛んで行った。
≪side out≫
≪side シャーロット≫
うぅ………
負けそう!
「アーサーの子孫よ貴様まで邪魔をするのか?」
「そうだね!」
私は巨大な剣を受け止めながらそう返した。
腕が痛い。
確かに私の能力だと相手のパワーを大幅に減らすことが出来るけど…。
ゼロに出来るわけじゃない。
「貴様も魔王を許せと言うのか?」
……決まってるじゃん。
「どうでもいいわ!そんな事!」
「なに?!」
「私は私の非日常の為に剣を振るう。その他の事はどうでもいい!」
「あんたも私の代わり映えのない日常をぶっ壊してよね!!!」
「貴様!俗物が!!!」
巨大な剣を降ってくる。
さあ!こい!
「……なるほどな。お前かなりイカれてるわ。」
ふとそんな声がしたかと思うと私は何者かに投げられた。
「白い狼人間?誰……あなたも魔神?」
「私はな………元魔王だ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<アトラスの真相意識内にて>
「貴方が?!」
私は驚いていた。
「怖いか?」
「髭の生えたおっさんかと思った。」
「どんなイメージ?!」
まさか女の子だったなんて。でも……
「あまり強くなさそうだね。」
私の発言に魔王は首を傾げた。
「あれ?まあいいか、余計な戦闘は避けたいし。」
そんな事を彼女が言う。
「ところで何処なのここ?」
「ここはアトラスの心の中。何処かに彼女がいるはずだが……いたいた。ほら、あそこ。」
彼女の指さす先には大きな鳥かごがあった。
中には鎖で吊るされたアトラスがいた。
「……気分はどうだ?」
魔王が彼女に聞く。
「貴様の顔を見たせいで吐き気を催す程最悪だ。」
「そこまで?!……それもそうか……はぁ……。」
?!魔王が残念そうにしょんぼりしてる?!
「だが……アーサーの言っていた事は間違いでは無いのか……」
ご先祖さまの言っていたこと?
「貴様!なぜ操られていた事を公表しなかった!!」
操られていた?!魔王が?!
私はすぐさま魔王の顔を見る。
「言ったら私のやってきた事は帳消しになるのか?」
「なんだと?」
「出来れば責任から逃れたいさ、でもな分かるか?逃れようとする度に私が殺してきた奴らの怯えきった顔が頭をチラつくんだぜ。操られていようが殺したのは私だしな。夢に出てくるんだ。そいつらはいつも言うんだよ命を返せ、家族を返せってな。」
魔王の顔がどんどん恐怖に歪んでいく。
彼女もまた1人の女の子なんだ……
「だから私は言わないことにした。半端に罪から逃れようとするくらいなら覚悟して正面から罪を受け止めるってな。………結局これが私にとって1番楽だったんだよ。つくづく思うよ。私は自己中心なやつだってな。」
「貴様も今の私のように意識がありなが強制的にやりたくもない行いをしていたのか?」
「結局私が最初に望んだことだよ。」
「………そそのかされたんだろ?」
「……全く同じやり口だな。」
何の話なんだろう。
「操る前にまず対象を悪の道に引きずり込む。まるで自身の行いを見せつけるようにな。必要だからこんな悪趣味なことをやっているのか?」
アトラスが聞く。
「いや。奴は楽しんでいるだけだ。自身で誤った道を選ばせその道を進む過程をじっくりと本人に見せつけて絶望を味わせる。やられた本人は後戻りが出来ない上後悔しても強制的に体が動く。それが奴のやり口だ。」
「そうか………。いいか魔王!私は貴様を許せない!」
「それで結構!だがこれから私とお前は同士だ。共に奴を殺すためのな。」
ピキピキと檻にヒビが入る。
「この剣に誓おう。」
アトラスがそう言った瞬間檻が砕け散った。
「?!なに?!あれだけ硬かった檻が?!」
「単純だよ深層意識の中に入って語りかければ解ける。最も深層意識の中に入れるのは1度奴の能力に曝露された奴に限るがな。」
「そうなのか……。シャーロット。再び聞こうお前は何が為に剣を振るう。」
「だーかーらー!私の非日常の為だって。」
「なんだと?!」
「ちょっと待てよ。」
怒ろうとするアトラスを止めたのは魔王だった。
「彼女が何のために剣を振ろうが私らには関係ないだろ?」
「関係ないわけないだろ?だって彼女は……」
「アーサーの子孫だからか?だからアーサーのように自身の身を削ってまで知らない奴を守り抜かなきゃいけないのか?なぁアトラス。大戦は私らの代に私が始めた戦争だ。アーサーもお前も他の英雄も十分に働いた。悪の権化である私を倒したじゃないか。もう解放してやれよ。アーサーも彼女もそしてお前自身も。」
「………だが…。嬉々として他人に斬り掛かるのは如何なものか…。」
ギクッ……
「それは……言えてるな。」
「そ、そんな事……してないよ。」
「嘘をつけ、操られていても遠目から見えていたぞ。お前がバアルに斬り掛かる所を。」
そ、それは……
ウグ?!
突然頭に衝撃を受けた。
「何するの?!」
魔王が拳骨を振り下ろしたのだ。
「私の妹を傷つけたぶん。」
うー痛い。
「分かりましたー。もうしませんー。」
「戻ったらバアルに謝れよ。いいな?」
そう彼女が行ったかと思うとあたり一面が白い光で眩しくなった。
≪side out≫