≪side 黒羽≫
……行ったか。
俺は犬走椛が飛び込んだ巨大な穴を覗き込んだ。
俺もこれから入るが……どうやって地底の住人を焚き付けようか。
≪side out≫
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<旧地獄の入り口、縦穴内にて>
≪side 椛≫
……すげぇ深いな。
空を見上げたがもう太陽の光が見えなくなっていた。
やはり旧地獄という名は伊達では無いな。
……………ん?
下の方に白い何かが見える。
底に着いたのか?
千里眼でよく見てみると………
あれは……糸か?
それは地面ではなく縦穴の途中に張り巡らされていた蜘蛛の意図だったようだ。
「よっと。」
いざ着地してみると、あまり粘つく感じはない。
弾力のある丈夫な糸だな。
「おやおや?珍しいお客さんだねぇ。」
………下の方に感じていた強い霊力はこいつか。
「妖怪の山の天狗かい?何しにこんな辛気臭い所へ?」
辛気臭いって………住人であるあんたが言い出したらおしまいだろうが……
私は呆れながらも彼女のことをよく見る。
金髪で髪型はお団子、それに茶色いリボン、あとは茶色いスカートを履いている。
身長は私よりほんの僅かに低いくらいかな?
「はじめまして。犬走椛と申します。あなたは?」
私がそう聞くと彼女はニカッと笑いこう応えた。
「私は黒谷ヤマメ。か弱い一匹の蜘蛛だよ。」
…………か弱いねぇ。
霊力で見ると……普通の並の天狗じゃあ太刀打ちできないレベルだな。
「今日は本当に珍しい日だよ。まさか天狗、それも白狼天狗が来るなんてね!お前さん、何しにこんな場所へ?」
「観光です。」
私の答えに彼女は一瞬唖然とした顔をしたかと思うと、大爆笑した。
「ハハハハハ!!!!ヒーーお腹痛い!!!まさかの観光だって?!?!」
すっごく陽気な人だなぁ。
「あーおかしかった。旧地獄は辛気臭い場所だが、地底にあるからいい温泉が出てるよ。他は...地霊殿って言う大きな屋敷があるよ。」
彼女は涙を指で拭き取りながら親切にも教えてくれた。
いい人だな。
「おーい!キスメ!いるか?面白い奴がいるぜ!」
彼女が上に向かってそう叫ぶと.........
「んー?」
少し上にある洞窟から桶が飛び出してきた。
中に妖怪が入っているらしい。
「こいつはキスメって言うんだ!」
「......よろしく。天狗さん。」
「はじめまして...」
桶の中から白装束をきた少女がこちらを覗きこんだ。
「なぁキスメ!こいつは犬走椛って言うんだ!今日は観光に来たらしいぜ!」
「へぇ...じゃあ下にある名前のない橋に行ってみてよ。面白い奴がいるよ。」
そう彼女が私に紹介してくれたが......
「面白い奴.........?」
私は詳しく聞こうとしたが......
「それは言ってからのお楽しみ。」
このキスメって子、内気そうに見えて案外そうでも無いらしい。
「じゃあ、私はそろそろ行きますね。また会いましょう。」
私はそう言って飛び降りた。
≪side out≫
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≪side ヤマメ≫
「さてと......アンタの方も観光......って訳じゃなさそうだね。さっきの椛って奴の監視かい?」
私は背後に隠れているもう1人の天狗に話しかけた。
「貴様には関係ない事だ。」
そう言ったかと思うと彼は椛の後を追った。
「なあ、キスメ。」
「なに?」
「妖怪の山も一枚岩じゃ無さそうだね。」
「............。」
キスメはなにか考え事をしている風な顔だった。
「どしたの?」
「あの椛って子......白狼天狗だよね?」
「ん?まあね。それがどうしたの?」
「確か白狼天狗って妖怪の山でも地位が低くて、さっきの男みたいな烏天狗の方が地位が高いんだよね?」
確かにそうだ......あれ?
「じゃあ、烏天狗がわざわざ白狼天狗1人の為に尾行しているのかい?」
それは不自然だねぇ。
そんな事を考えていると......
「おい!霊夢!底が見えたぜ!」
「.........何か違和感を感じない?あの地面に......」
おや?
今日は本当に珍しい客が多い日だねぇ。
「妖怪?!」
今度は博麗の巫女と来たか!
他には人間が2人と魔女が1人、烏天狗と鬼もいるじゃないか!!
「おやおや、今度は団体様かい?」
私が話しかけると......
「あなた達が異変の犯人?」
ん?異変?
「なにかあったのかい?」
「地上に温泉が吹き出してるの。何か知らない?」
魔女が説明してくれた。
「んー......。心当たりないなあ。キスメはどうだい?」
「......私も無いけど......。地霊殿に言って見たら?」
「地霊殿?」
「おっきな屋敷で、旧地獄を管理している悟妖怪が住んでるんだ。」
少し気難しいやつだけどな。
「情報感謝するわ。ところで聞きたいことがあるんだけど......。」
「何だい?」
「白狼天狗がここを通らなかった?」
ちょうどその話をしてたところさ。
「つい少し前にここを通って行ったよ。何か烏天狗につけられてたけど。」
「えええ?!」
おや?烏天狗が何か驚いているみたいだ。
「一体誰が......いえ...誰の命令で?」
そう彼女は訳の分からないことをブツブツ言い出した。
「......そろそろ私達は行くね。」
そう言って彼女達は飛び込んで行った。
「なあ、キスメ。」
「何?」
「今度は誰が来ると思う?」
「......誰が来ようともう驚かないと思う。」
「だよね。」
≪side out≫