東方魔天狼   作:タバスコ星

61 / 65
58.銀色の狼の旧地獄巡り⑥

<旧地獄市街地にて>

 

«side 霊夢»

 

私達はパルスィを倒した後、地霊殿へと向かっていたが………

 

 

 

 

おえっ!!酒くさっ?!?

 

 

道を歩いているだけでも漂ってくる酒の匂い。

 

「おおっ!!これこれ!!地底っていうのはこうでなくちゃ!!」

 

萃香が嬉しそうに言う。

 

私や魔理沙はともかくシャーロットがやばい。

 

さっきから顔が真っ青だ。

 

そんな時、前から集団がこちらに向かってきた。

 

「お?こりゃあ珍しい客人じゃないか…。」

 

その集団には皆、共通点があった。

 

全員頭の何処かに角が生えている。

 

地底で最も出会いたくない集団だ。

 

そしてその鬼たちの先頭にいるのが……

 

「博麗の巫女、それに天狗…萃香もいるのか?!」

 

身長が私の倍は有る一本角の女。

 

「まぁ、とりあえず……」

 

大江山の四天王

 

「ツラ貸せや。」

 

星熊勇儀。

 

«side out»

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

«side 椛»

 

………ここか。

 

私は目の前にある「湯」と書かれた建物に来ていた。

 

誰もいないようだ。

 

中に入ってみると、外見に反してとても広かった。

 

「店の従業員はいないのか?」

 

「……三文になります。」

 

?!?!?

 

私は思わず飛び退いた。

 

建物の入口、すぐ左に老婆が座っていたのだ。

 

「ああ…はい。これを……。」

 

私は老婆の言われた通りに三文渡した。

 

そして気づいた。

 

この老婆………角がある。

 

鬼だ。

 

「私みたいな白狼天狗が来ても驚かないんですね……。」

 

私が聞くと、

 

「……誰だろうと客は客さね。……それに、」

 

「それに?」

 

「それは本当の白狼天狗が言うべきさね……。」

 

な?!この老婆……。

 

まあいいか、変に詮索はしない方がいいか。

 

私もされたら嬉しくないしな。

 

「何かおすすめの湯はありますか?」

 

私が聞くと……

 

「それは客であるお前が決めることさね。私に聞くんじゃないよ。」

 

ピシャリと叱られてしまった。

 

それもそうだな。

 

「それじゃあ、楽しんできます。」

 

「………………。」

 

彼女はそんな私の言葉を無視して再び本を読み始めた。

 

«side out»

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「で?お前は客か?」

 

「いえ、俺は奴を監視するために伺いました。」

 

「……客じゃないなら出ていけ。」

 

彼はそんな言葉を無視して温泉に繋がる扉を開けようとした。

 

ガシッ!!!

 

(曲がりなりにも鬼か……なんて力だ!だがこんな老婆の鬼俺一人で……)

 

彼が振り返ったそこには老婆ではなく若く美しい鬼が彼の肩を掴み、屈みながら彼の顔をジッと見つめていた。

 

 

男にはその鬼の目を見ても心の内は分からなかった。

 

ただ琥珀色の鬼の目の中にどんな獣よりも、いや、まるで獣の長の様な獰猛な本能が垣間見えた。

 

まるで男に警告をするかのように………

 

(まずい!)

 

本能的に危機を感じたのか彼は音速を超える速さでその場を去った。

 

女は天狗の男が居なくなるのを見ると床に落ちている本を拾い、先程老婆がいた座布団に座り込んだ。

 

辺りには静けさが戻り、()()が放つ本をめくる音以外は聞こえなくなった。

 

この事は中にいる魔王が気づかないほど刹那の出来事であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

«side 椛»

 

………いい湯だ。ホッとする。

 

落ち着いた私の頭にいくつもの思考が巡る。

 

一つ一つ解決していこう。

 

まずは、文様や天星先輩の部下になるけんだが………

 

もうなってしまおう。 少し目立つ上に文様に危険がお呼びやすいかもしれないが……

 

いや、私が文様の近くで彼女を護ろう。

 

あの女神のことだ。私の交友関係全てを調べ上げ最も容易な人から人質にするかもしれない。

 

そうなる前に彼女の側につこう。

 

………また色んな奴に反感を買うかもな…。

 

まあ仕方ないと言ったらそれまでだが……。

 

「私の正体を知って匿ってくれるやつなんか居ないよなぁ………。」

 

この時一瞬、私の脳裏に家族の顔が過ぎった。

 

「っ?!ダメに決まってんだろ……!」

 

私はそう自分に言い聞かせ湯船に顔を半分沈めた。

 

少し落ち着いた私は別の事を考えた。

 

地底に来た時感じた配下の気配。

 

そして残る違和感。

 

「……こればかりは会ってみないと分からないな……。」

 

そう呟きながら私は湯船をでた。

 

「お?体が軽い……。」

 

«side out»

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

«side 霊夢»

 

「おい、お前も呑めよ!」

 

私は呆れた目で萃香と勇儀を見ていた。

 

「呑まないわよ!!」

 

「じゃあ天狗お前が呑めよ!」

 

「ええ?!私はその……。」

 

勇儀が文お酒を渡す。

 

「あん?文句あんならはっきり言え!」

 

「頂戴だしますぅ!!」

 

流石の文も天狗の性なのかビビりまくっている。

 

「私達は、異変を解決しなきゃいけないの!!私の家が温泉で水浸しなの!貴方も家がびしょびしょなら困るでしょ?!」

 

「私は酒がありゃ家が吹き飛ぼうとも関係ないね!」

 

全く話になんない!!

 

まだ魔神達と話している方が数百倍楽だわ!!

 

「そうだ!勇儀!面白い土産話があるんだ!」

 

「ん?なんだ?」

 

そう萃香が勇儀に言う。

 

ま、まずい!!

 

「ちょ、萃香!ぐえっ!!」

「霊夢姉さん!!」

 

酔っ払ったシャーロットに潰されてしまった。

 

力強!!

 

「ちょ、」

 

「地上に魔神って言う超強い種族が出てきたぜ!」

 

魔理沙やアリスが止める甲斐もなくとうとう彼女に知られてしまった。

 

「ほお……!詳しく教えてくれ!」

 

こ、これ以上は……

 

「中でも銀色の狼ってのが兎に角やばいらしい。」

 

あ……終わった。

 

「へぇ!お前らは知ってんのか?」

 

勇儀は私達に聞いてくる。

 

「知ってても教える訳には行かないわよ!」

 

私や魔理沙、アリスは同意見だった。

 

ただ文は天狗だ。逆らえない可能性がある。

 

「天狗は?」

 

「教えませんよ。」

 

え?

 

「なんで?」

 

周りが突然静かになり、嫌な空気が漂う。

 

「彼女はあまり人と関わりたがらないので。それに友人を裏切る真似はしません。」

 

いつもヘラヘラしている文から考えられないほど真っ直ぐな目だった。少し恐怖心を感じるほど鋭かった。

 

「天狗の分際で……鬼に逆らうか!?」

 

側にいた鬼が文に襲いかかろうとする。

 

私は咄嗟に文を庇おうとするが……

 

その鬼は吹き飛ばされてしまった。

 

吹き飛ばしたのはなんと……

 

「小せぇ事すんじゃねえよ!」

 

勇儀だったのだ。

 

「天狗……いい目だ!友を護るその心意気は気に入った!」

 

「それは何よりです!」

 

あ、空気が戻った。

 

「まぁ友を裏切る腑抜けならここでお前をぶっ飛ばしてたがな!ハッハッハ!!」

 

それを聞いて文は少し青ざめているようだった。

 

可哀想に。

 

「私達はそろそろ行かなくちゃならないわ。」

 

「そうか……帰りにまた来いよ!」

 

「……シャーロットと文を少し預けてもいい?」

 

「あややややや??!?!」

 

「シャーロットの世話よ。」

 

「そ、そんなぁ!」

 

「なんだ?天狗?嫌なんか?」

 

「いえ!滅相もない!」

 

「そんじゃ私も残るわ!」

 

そう切り出したのは萃香だった。

 

何しに来たんだこいつは………

 

「じゃあ、また来るわ!」

 

宴会は直接ここで開こう。掃除しなくて済むしね。

 

«side out»

 

「いい事を聞いたぞ。これで奴にけしかけてやろう」

 

鬼たちを眺める者が一人いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。