『逢魔の略奪者』顕現せん。
ジョーカーは素早くコクピットに搭乗し直すと、ジューダス…いや、自らのペルソナが機体化したアルセーヌを用いて戦闘に介入した!
しかし、持っている武器が無かった…!
「あいつ、武器は⁉︎」
「死に行くつもり⁉︎」
「早まるんじゃねぇ‼︎」
そう言いながらヒルダが取引相手であるジョーカーに向かう…が、ジョーカーがコクピット内で指を鳴らすとそれに反応して、アルセーヌが足元に手を振り落とすと、前方にいたドラゴンが真っ黒になったのだ。
しかもよく見るとまるでムンクの叫びの様な恐怖に刈られた憎悪の様なものが浮かんだ!
突然の現象に驚く一同。
だが、その技を見たヴァイオレットは呟いた。
「今のは…"エイハ"…⁉︎」
それはペルソナ使いがよく使う魔法の一種にして、闇の力"呪怨"属性の代表的な技であった。
するとそこからジョーカーは機体を優雅に且つ華麗に操作してアルセーヌを動かし敵を翻弄する。その動きはまるで怪盗そのものであった。
ジョーカーの攻撃を見て驚きを隠せない一行。
すると敵との数が分かったのか、本部から伝達が入ってきた。
『敵反応捕捉。ガレオン級1,スクーナー級44』
「44⁈」
「ったく…うじゃうじゃ湧いてきやがって!」
その数の差にロザリーは怯みつつ驚愕し、ヒルダがうんざりする。
そんな中、ゾーラが全機に伝達を伝える。
『ゾーラだ。総員聞け。
新兵教育は中止。先ずは蚊トンボ共を殲滅し、航空優先を確保する!
全機駆逐形態に移行。陣形 空間防陣!』
『イエス、マム!』
そう言うとゾーラは今度はナオミにだけ回線を繋ぎ、通信を行い始めた。
『ナオミ』
「は、はい!」
『ヴァイオレットと一緒なら、新兵を纏めて、この死線を乗り切れ。
新兵限定だが隊長に任命する』
「そ、そんな無茶振りな…⁉︎」
『ナオミ。お前の事を信頼しているんだ。だから、生き残れ!』
「隊長…!
…イエス、マム!」
『良い返事だ。
それと、ジョーカーの方がどうなっているのかを逐一報告してくれ』
「了解!」
そう言うとナオミはヴァイオレットを連れ、ココを回収し、この死線を乗り切る事にした。
その頃、ジョーカーは数多のスクーナー級のドラゴンを相手に無手で挑んでいた。
「『夢見針』!」
そう言うと何処から仕込んでいたのか、針を投擲するとその内の数体がヒットと同時に昏睡し、この空から落ちていく。
すると一体がアルセーヌに向かってくる。それをジョーカーは見逃さなかった。
「『タルンダ』」
そう呟くと同時に自身とアルセーヌが指を鳴らすと突撃してきたスクーナー級から気迫が薄れ、そのまま攻撃を受ける。しかし、その迫力とは裏腹にダメージはそこまで無い様だ。
『タルンダ』とは相手の攻撃を低下する
そうするとアルセーヌは突撃してきた相手を掴み、そのまま投げ飛ばす。そして投げ飛ばされた方向には別のスクーナー級が居て、そのまま衝突し、二体が激突したのを確認するとアルセーヌが前方に手を出し、そのまま円を描く。まるで魔法陣を描く様に…
そしてコクピット内ではジョーカーが自身の仮面へと変貌したバイザーを剥ぐ。
「"ジャックフロスト"!『マハブフ』!」
ジョーカーが言い放つと同時に魔法陣の先から青いフードを被った白い身体の小人 "ジャックフロスト"が現れた!
と同時に、その小人の口から冷気が放たれ、その冷気と共にスクーナー級が凍て付き、そのまま落下と同時に現在地点場所である海上へと落ちていった。
すると再びアルセーヌが魔法陣を形成する。
「"ピクシー"!『ジオ』!」
今度は背中から羽が生えた妖精 "ピクシー"が現れ、指を指すと同時にスクーナー級の一体の上空から電撃を落とし、そのままスクーナー級は海上へと落ちていく。
その後もジョーカーの快進撃は続く!
「"バイコーン"!『ガル』!
"ジャックランタン"!『アギ』!
"ケットシー"!『スラッシュ』!」
そう言いながら、双角の馬,カボチャお化け,長靴を履いた猫を連想させるペルソナ達を順に呼び出して周りのスクーナー級を倒していく。
そして終いとばかりに最後は自身の機体にもなったアルセーヌを繰り出す。
「これで終わりだ。『エイガオン』!」
そう言うと前方にいたスクーナー級の大群を呪怨属性の大ダメージ魔法『エイガオン』で前方にいた大量のスクーナー級を一網打尽にして撃ち落とす。
なんとか自身の周りを片付け終えたジョーカーは機体を動かし、戦場を見渡す。
ゾーラ率いる部隊の方はスクーナー級並びに大物であるガレオン級を相手にしていた。
ナオミ達はそんな戦場の最中を掻い潜りながら死線を乗り越えていた。
だが、ジョーカーは不審を抱く。
「?…アンジュは?
『いやぁぁぁぁ‼︎』
っ⁉︎」
すると通信越しから聞こえてきたアンジュの悲鳴。
そこにはアンジュが無茶苦茶な動きでスクーナー級から逃亡していた。
しかし、その視線の先には戦場真っ只中のゾーラであった。
「!まずい!」
そう思ったジョーカーはすぐにアルセーヌをフライトモードにするとアンジュの元へと急行する。だが、思った様にスピードが出ない!
「くっ!」
歯痒い気持ちのジョーカー。だが、それでも急がせる。
最悪の被害を止める為に。
その頃、ゾーラ隊の周りのスクーナー級を殲滅し、残すはガレオン級一体だけになった。
「後はお前だけだよ、デカブツ!
総員、凍結バレット装填!
総員…突撃‼︎」
そう言うとパラメイル全機の左腕から緑色の光が後方に伸び、そしてゾーラの合図と共に全員がガレオン級に向かって突撃しかける。
ガレオン級もまた対抗するかの様に、身体全体に魔法陣を通過させると、自身の鱗をホーミングミサイルの様に飛ばし、撃墜を企てる。
そんな中で、ピンクのパラメイルに跨る少女 ヴィヴィアンがヒョイヒョイと華麗に躱す。
「滅びれ!」
そう言うと同時に左腕から凍結バレットを射出する。
射出され、撃たれた場所から凍結し始めるが、ガレオン級は体を動かす事でそれを阻止。
ヴィヴィアンの攻撃を筆頭に、ヒルダ,サリアも続けて射出する。
しかし、ガレオン級もこれに激しく抵抗する。
そしてゾーラが止めをする時だ。
「止めだ!『いやぁぁぁぁ!』⁉︎」
なんとアンジュが戦場に介入し、なんとそのままゾーラのパラメイルにしがみ付いてしまったのだ!
「助けて!」
「何してやがる⁉︎離れろ‼︎」
するとガレオン級が2人の前に姿を見せる。
それに気がついたヒルダは叫ぶ。
「ゾーラーーー‼︎」
「「⁉︎」」
そしてガレオン級が2人に向けて翼で攻撃…寸前だった。
「うぉぉぉ!」
なんとその中にジョーカーがフライトモードで突撃し、アルセーヌへと変形させ、2人を翼で守り、そしてガレオン級の翼がアルセーヌに向けてぶつけた!
「「「うわぁぁぁぁ‼︎」」」
「ゾーラ‼︎」
「ジョーカー‼︎」
「先輩ーーー‼︎」
ーーーーーーSIDEtoゾーラ
っくそ!あのお姫様が!
あんだけの被害を受けて、軽傷とはいい度胸じゃねえか!
しかも、命乞いだなんて…腐ってる…
甘美な味がすると思っていたら、中身がこれだと食えないじゃないか!
まるで渋柿を食わされた気分だ。
…と言っても、私の方も左腕を完全にやられたか。
奇跡的に繋がってるけど、左腕が全然びくともしねぇ。
こりゃ使い物にならなくなったか。
幸い、残った右腕はなんとか動けそうだな。
ピチョリ…!
ん?…これは…血?
だが、私の血じゃ無い。
けど、あの姫様の血でもねぇ。姫様は私の下にいるからな。
んじゃあ…これは一体…
「良かった…無事で」
「⁉︎」
そこには頭から血が流れている新入りのジョーカーが!
まさか、あの時…ガレオン級の攻撃から私らを庇ったのか⁉︎
「ジョーカー!お前…!」
「ちょっと…疲れた…」
そう言って眠りに就こうとする。
するとジョーカーの近くから声がする。
『寝ちゃ駄目だ!ジョーカー‼︎
此処で寝ちゃたら、皆んなが!
ヴァイオレットが悲しむ‼︎だから寝ちゃダメだ‼︎』
女の子の声がした。だが、コクピット内にはジョーカーだけ。
但し、その代わりにあったのはジョーカーのポケットの中にある光り輝く物があった。
私はハッとなり、残った右腕だけで救援要請を発信させる。
姫様はどうなろうと構わないが、この男だけは助けなければならないと思った。
こいつだけでも…!
そして救援要請を送って数分後、彼の血が伝っていき、アンジュの機体の方にまで流れ着いた頃、私の意識が限界を迎えた…
ーーーーーNO SIDE
ゾーラ,アンジュ,ジョーカーを回収したアルゼナルは3人を医療室へと運び、手術を行った。
重症だったゾーラを最優先にし、ジョーカーそしてアンジュの順に手術を終えた。
ゾーラの左腕は完全に使い物にならなくなった為、完全に取り払った。
以降はジルと同様に義手を用いることになると言う。
今回の実践では傷者が出たとは言え、死亡者はジョーカーのおかげで0だった。
だが、もしもう一歩遅ければ被害は甚大だったかもしれない。
ココとゾーラが死んでいたかも知れなかったからだ。
そして共通する事は…どちらもアンジュと関わってしまった事だ。
「パラメイル二機の大破。ジューダスの方も改修が済むまで使用不可。
ゾーラが重症だったが命に別状無し。現在は回復中か。だが、現場にはもう出れないか…
代わりにゾーラとアンジュを庇った、
ジョーカーが頭部からの出血により昏倒。
だが、肝心のドラゴンは撃ち漏らし…
…お前の敵前逃亡がもたらした戦果だ。
どんな気分だ?皇女殿下」
「……」
「なんとか言えよ‼︎おい!」
「手を出すなよ。一応は負傷者だからな」
医療室では明らかに淀んだ空気が漂っていた。
そしてその元凶はやはり…我が儘姫様だろう。
するとアンジュがポツリポツリと言い始める。
「私は国に帰ろうとしただけです…
何も…悪い事はしていません」
「あんたが、お姉さまの人生を殺したんだ!」
「人殺し!人殺し‼︎」
「人殺し?…
『‼︎』
その一言で此処にいる皆は理解した。
性根が腐ってしまっていると。
それを言われたヒルダが身体を動かそうとする…が。
ガシッ!
「⁈離…せ…」
「」
「⁉︎」
自らを取り押さえた者に対して吠えるヒルダ。だが、その者の顔を見て怯んでしまう。
ヒルダを止めたのはジョーカーと共にやってきたヴァイオレットだった。
するとヴァイオレットはヒルダとサリアの間を通るとアンジュが拘束されているベットに乗り、アンジュに跨る。
するとヴァイオレットはアンジュに顔を向けた瞬間、殺気を放った…!
「っ‼︎」
パシィンッ‼︎
「‼︎私に対…っ⁉︎」
突然のビンタを食らったアンジュ。何か言おうとしたのだが、顔の両端を見て青ざめた。
そこには残り数ミリで顔に傷を与えても構わないのか、ナイフが突き刺さっていた。
持ち手の先にはヴァイオレットが。
ナイフを持っていた事に驚く面々。だが、それに気付いたのか、サリアとヒルダは自身のナイフケースを調べるが、そこに肝心のナイフが無かった。
「『私に対して』何ですか?
先輩をこんな風にしておきながら、よくものうのうと頭の中がお花畑みたいな事を言いますね。
はっきり言って、私は先輩から聞かされた時は憤慨しましたよ。
何で、こんな性根が腐ったお姫様を奪う必要があるのか。
正直、貴方の事は最初『お姫様』だなって、思っていました。
けど、先輩が貴方がノーマを隔離している場面を聞かされて正直嫌になりました。
だってそれ…
「⁉︎」
「私だけでは有りませんよ」
そう言うとヴァイオレットは懐からジョーカーのスマホを取り出した。
すると画面から赤毛の女の子が現れた。
「ソフィア。私は先輩をあんな目に合わせて、能天気なこの姫様の事が嫌いです」
『奇遇だな。私もだ』
「!」「あの子は一体…」
『私はソフィア。AIにして、人の良き友人だ。
お前はノーマを差別している。
でも、私はノーマであっても、共に助け合える良い友人になれる。
寧ろ、ノーマの方が人間的で私は好きだぞ。
けど、お前は人じゃない。人間では無いナニカだ』
「だそうです」
そう言うとナイフを抜き、ベットから降りたヴァイオレット。
悲痛なる現実を突きつけられたアンジュが泣き叫ぼうとすると今度は未曾打ちをし、静かにさせた。
この時の一部始終を見た一同は思った…
この子の前でジョーカーを失わせてはならないと。
するとヴァイオレットの視線はココに向けた。
「ココさん」
「は、はい⁉︎」
「アンジュさんと行動した結果、貴方は一歩手前で死ぬ所になったんです。あの時、先輩が覚醒したから助かったものの、そうで無かったらまず死んでいたと考えて下さい」
「は、はい…」
「それに魔法の国なんて存在しません。あんなの人を退化させているだけのもの。マナを使うよりも、自分の手足でやり遂げる方がよっぽど気分が良いです。
…ソフィア。後はお願いしますね」
『任せろ』
そう言うとヴァイオレットは皆に頭を下げ、ジョーカーの近くに彼のスマホを横向きに立て掛けて置き、そのまま医療室を後にした。
ヴァイオレットの言動でますます気まずさを見せる雰囲気の中、ピンク髪のお姉さん気質のノーマ エルシャが発言する。
「これからどうなるんでしょうね。私達」
するとジルがサリアとヒルダ、そしてナオミに伝達する。
「サリア。お前がゾーラの後釜だが隊長に任命する。
副隊長はヒルダ。ナオミには、新兵長…要するにこれまで通り、新兵共を纏めて貰う。良いな?」
「「はい」」
「は、はい」
「ドラゴンが見つかり次第、再出撃。総員、掛かれ」
『イエス、マム』
そう言うと皆はアンジュ,ゾーラ,ジョーカーを医療室に残し後にする。
そんな中、ナオミだけは此処に留まった。
「…ヴァイオレットの事か」
「は、はい」
「ジョーカーと取引した手前だ。今回は再出撃を要請しない。
ナオミにはココとミランダを連れてサリア達と共に行動しろ」
「イエス、マム」
そう言うとナオミはジョーカーのベットに近づき、彼の頭を撫でた後、部屋を後にした。
そしてサリア達が撃ち漏らしたドラゴンを倒そうと廊下を移動中にヴィヴィアンが話をする。
「サリア!クイズの答え!
全員、最後まで生き残ったね!」
「静かにして」
「はーい。…それにしても、ジョーカー凄いね!あんなカッコイイ機体初めて見たよ!」
「それに関しては私もよ…(私やヒルダですら扱えなかったもう一つの機体。
それをあいつが扱いこなせるなんて。
でも、私にはまだアレがある…)」