クロスアンジュ〜天使と竜と怪盗の円舞曲〜   作:かもめカメ

20 / 26
遅くなりました。
今回はこの2人です


TAKE 2 旅立ちの準備〜美醜真実&鉄拳参謀〜

此処はアルゼナルから離された土地。

日本は渋谷 四軒茶屋に佇む憩いの場。喫茶店「ルブラン」

かつて雨宮蓮が屋根裏部屋を寝所にしていた場所にして、『心の怪盗団《ザ・ファントム》』のアジトである。

 

今日もマスターである惣治郎が話し相手と相談する。

 

「マスターのコーヒーはやはり美味しいわね」

 

「そりゃどうも」

 

そう言いながら惣治郎はカウンター側にいる女性と談話する。

女性の名は「新島冴」こう見えて検事だったのだが、3年前の11月19日を境に怪盗団の理解者になり、公安である善吉をも認める一流弁護士として現在は活躍している。ジョーカー=蓮を弁護士見習いとして雇っている関係でもある。

そんな中で、今日もお店のドアが開き、ベルが鳴る。

 

「いらっしゃい…ん?なんだ…今度はお前達か」

 

「こんにちは。って、お姉ちゃん?」

 

「真?…珍しい組み合わせで来たわね」

 

「ついそこで出会ったもので」

 

そういうのは警察官に就職し、現在は善吉の部下として活躍する様になった少女。此処にいる冴の妹「新島真」と、

独特の芸術で現在多くの評論家に賛否両論が飛び交っている芸術家になった「喜多川祐介」の2名がルブランに来店してきた。

勿論、2人も竜司や杏と同じ『心の怪盗団《ザ・ファントム》』のメンバーである。

 

祐介は怪盗団にとっては無くてはならない存在で、予告状を書くのは希望者が居ない限りは、専ら彼だったりする。

そして怪盗としても活躍しており、狐の仮面と装いをしている事から「フォックス」として活躍している。尤も誰かさんがその見た目を連想したのか、「おイナリ」とも呼ばれている。

 

一方、真は生真面目な性格でどこか疎いことがあったのだが、蓮達と出会ってから自分との葛藤を乗り越えた経歴がある。

そして生徒会長としてのリーダーシップを発揮しており、怪盗団の参謀役として活躍している。鉄仮面の様な見た目と世紀末衣装(竜司談)の見た目。更にその指揮系統の高さから「クイーン」として怪盗団と共に活躍している。ただ心霊が苦手なのが玉に瑕だったりする。

 

そんな2人をカウンターに座らせた後、2人にコーヒーを提供する惣治郎。

 

「真。善吉さんから聞いたけれど…」

 

「?」「?」

 

「行くのね…ミスルギ皇国に」

 

「…うん」

 

「熱苦しいかもしれませんが、俺達は蓮を…彼奴を連れて帰る義務があるので」

 

「私も…彼がいたから此処まで来れたの。彼がいたからお姉ちゃんを救えたから」

 

「そうね。私も彼のおかげで今を生きている感じになっているわ。だからこそ言わせて…必ず生きて帰って来なさい。全員が無言の帰宅だけは絶対にしないで頂戴」

 

「約束する…!必ず「ただいま」って言って帰って来るから」

 

「俺も約束しよう。彼奴を連れて必ず此処に帰って来ると。

そして皆と共に此処での平穏な生活をする事を」

 

「なら、その前準備としてこれでも食っておけ」

 

そういうと惣治郎は真と祐介にルブランのカレーを提供したのだ。

真のルウの色より祐介の色の方が若干黒みが増していた。

 

「え?良いんですか⁉︎」

 

「どうせ、あっちに着いたら熾烈を極めるだろうよ」

 

「すみません。お代の方は私が…」

 

「サービスでやってるんだ。タダにしといてやる。

その代わり、彼奴を連れて帰って来い。

彼奴が居ないとこの店を継ぐ奴が居なくなるからな」

 

そう言い切ると祐介と真はカレーを頂いた。

 

そしてご馳走になった2人はそれぞれの準備の為、ルブランを後にした。

そして2人を見届けた後、冴と惣治郎は軽く談笑すると冴が立ち上がる。

 

「それでは、私もこれで」

 

「…なぁ。少し頼みたい事があるんだが」

 

「?…なんでしょうか?」

 

「今のミスルギ皇国の現状とかを調査できたり出来ないか?」

 

「…後から更新されていたら元も子もないですね」

 

「済まないな。いくらかかるのかはしれないが…」

 

「タダにしておきます。カレーの分の代金で+ー0でやらせて下さい」

 

「…こりゃ頭が上がらないな」

 

「…それでは」

 

そう言いながらニコリとした笑顔で店を後にする冴。

勿論、ちゃっかりとコーヒー代を支払って。

 

「さて、今日も色々とありそうだな」

 

そう言いながら惣治郎は営業を再開する。

 

ーーーーー

祐介はボート乗り場で有名な井の頭公園に来ていた。

此処での風景を描く事にし、すらすらと絵筆をまるで自身の手の様に繊細に描いていた。

そして完成した作品を見て、祐介は感心していた。

 

「この絵は蓮に必ず見せてやらないとな。

…少しは声を掛けたらどうなんだ?」

 

そう言って祐介は後ろを振り返るとそこには多くのSP達が居た。

何をされるのかと思い警戒する祐介。

するとSPの1人が近寄る。

 

「喜多川祐介様で間違いありませんか?」

 

「…そうだと言ったら如何する?」

 

「済まないな。喜多川君」

 

「貴方は…」

 

そこに現れたのは1人の老齢者だった。

だが、祐介はこの人物を知っていた。

 

「川鍋様。彼が…」

 

「間違いないよ」

 

そういうと川鍋と呼ばれた男は祐介に近寄った。

本名「川鍋暁生」。

「日本芸術支援財団」と言う所に於いて理事を務めている男であった。

そして3年前に祐介はこの人の事を蓮と一緒に対面していたのであった。

 

「何故、川鍋氏が此処に?」

 

「うむ…立ち話をしたい所だが、そうも言ってられない状況なのだ」

 

「?」

 

そういうと川鍋氏は衝撃の発言をした。

 

「斑目が危篤状態だ」

 

「⁉︎」

 

 

ーーーーー

此処は病院。そこでは祐介が早歩きでとある病室へと駆け抜けていた。

何故、彼がいるのかは先の川鍋氏との会話である。

 

〜回想〜

 

「斑目が危篤状態だ」

 

「⁉︎」

 

「彼奴はこの3年もの間、フェーズ4のガンを患っていた。だが、それでも懸命に生きている」

 

「何故、それを俺に話すんです。

…俺はもう斑目の弟子では無いと言うのに」

 

「斑目は私に連絡をして来た。

そしてこう言った。

『喜多川を…祐介を此処へ』と。

君に言いたい事があるそうだ。

医師からは今日ないし明日の明け方が山場になると言われた。

…お別れの一つぐらい言ってあげたら如何だい?」

 

「………」

 

「…君達。彼を斑目が入院している病院にまで至急送って行ってくれないか」

 

「仰せのままに」

 

「…(そうだよな。蓮)

…行かせて下さい。斑目の…先生の所へ」

 

〜〜

その様な会話をし、祐介は斑目の病室へとやって来て、ドアを開けた。

そこには医療器具を多く取り付けられた斑目と言われた男。

 

本名「斑目一流斎」

日本芸術の大物だった男だが、その中身はとてもじゃ無い程、虚飾に塗れた者だった。

それ故に3年前…怪盗団によって改心された存在でもある。

弟子達による虐待や盗作、代表作であり、祐介の母親が描いた自画像画『サユリ』にも手を出した罪人である。

だが、その時の高齢故に警察病院に運ばれ、責任能力があると言われて身柄を送検されていたのだが…

この当時に既にガンが患っていた事が後に判明し、現在は警察の範囲内の病院に入院されていたのであった。

 

すると祐介は斑目の元に歩み寄る。

すると祐介の存在に気づいたのか、斑目が重そうに目蓋を開けた。

 

「…ゆ…う…す……け…?」

 

「…お久しぶりです。先生」

 

「…まだ…私…のこ…とを…」

 

「例えどんな事があろうとも俺をこの道へと育ててくれたのは紛れもなく先生なのです。

自白して、先生との道とは違う道を歩み続けていますが、志は決して離してはいません」

 

「…そう…か…」

 

そう言いながら斑目は窓の向こう側の夕陽を細目で眺める。

 

「先生…何故、ガンであると言わなかったのですか…」

 

「…川鍋…の…バカ者が…」

 

「貴方はまだ弟子達に対する贖罪はまだ終わっていないのですよ。

それなのに…」

 

「…そうだ。だから…言わな…かった。

祐介にも…他の…弟子達…にも」

 

「⁉︎」

 

「こんな…老いぼれ…の為に…来るもの…では無い。

弟子達…の道を…邪魔する…のなら…

私は潔く…その道を…退かさないと…行けないのだ」

 

 

「貴方は…本当に大馬鹿者だ」

 

そう言いながら涙を堪える祐介。

かつての敵といえども、祐介にとっては今の自分を作り上げて来た存在なのだ。涙を流さない道理は無い。

そして祐介に言われた斑目は祐介を見やる。

 

「お前も…大馬鹿者だ…祐介。

…祐介。私の言葉を…聞いてくれ」

 

「…はい」

 

そういうと斑目の近くにまで寄る祐介。

そして斑目は話しかける。

 

「今まで…済まなかった…

これからは…私と言う柵から…抜け出して…

新たな道を開け。

…こんな私を爺として見ていてくれて…ありがとう…」

 

その言葉が告げ終わったと同時に…

 

ピーーーーーーー…

 

「先生‼︎先せえい!せんせぇぇぇ‼︎」

 

祐介が病室にも関わらず大声が木霊した…

そしてすぐに駆けつけた医師がすぐに診るも…時既に遅かった…

 

完全撤去するよう命じると医師は腕時計を見る。

 

「17時59分 御臨終です」

 

そう言いながら合掌する医師達。

祐介はまた1人…大切な人を失った瞬間でもあった。

 

ーーーーー

斑目がこの世から去り、病室の一角の席に座り込む祐介。

そんな祐介の元に川鍋がやってきた。

 

「…先程、聞いたよ。

…斑目の奴、先に逝ってしまったか」

 

「…俺は結局…あの人に何も出来なかった」

 

「何も出来なかったのでは無い。

彼奴が自ら何もするなと言われたんだ」

 

「…え?」

 

「本当に…大馬鹿者だよ。自分の落とし前は自分でつけると言ったからな」

 

「……」

 

「…だからこそ今、君がやらないといけない事をしないといけない」

 

「え?」

 

そう言われて、祐介は川鍋氏の方に向く。そこには川鍋氏がいるのだが、何故かそこには自分が描いていた風景画が描かれていた。

 

「それは…」

 

「そう。君が描きあげていた風景画だ。

そして君は知らない内にその風景画の中に()を入れていた」

 

「え?」

 

そう言われながら川鍋氏から風景画を手戻される。

そして祐介はその中に描いていた人を見て一目でわかった。

 

「これは…蓮…」

 

「人と言うのは、無意識の内にしないものを書き足すことがある。

私もこれを見た際に気づいたよ。これは君にとってはかけがえの無い存在だと言う事も。

…彼は確か、ミスルギ皇国に囚われているんだろ」

 

「‼︎」

 

「必ず連れて帰りなさい。前に見せて貰った『欲望と希望』の時の事を憶えているかい?」

 

「忘れる筈ありません…」

 

「その時、君はこう言った…

『俺は欲望には染まらない。だって希望が見えているから…

迷えば手を差し伸べ、間違えばいさめてくれる。そんな希望の光が…

…彼らがいれば、俺は大丈夫です』と」

 

「ええ。今でも俺の心の中にあります」

 

「…なら、その希望を必ず取り返しに行きなさい。

斑目もそんな君の事を理解してくれる筈だよ」

 

「…御心遣い感謝します。

ですが、ご心配なく」

 

「?」

 

そういうと祐介は風景画を持ち、立ち上がる。

そして川鍋氏に宣言した。

 

「俺は彼を必ず連れて帰ります。どんな事になろうとも」

 

そう言いながら祐介は前を向く。

そこにあったのは決意と如何様にも動じない強い意志がその瞳に宿っていた。

 

 

ーーーーー

その頃、真は早上がりで家に帰宅していた。

そして仕込みを済ませておいた料理を仕上げていた。

そんな時だった。居間のドアが開いた。

 

「ただいま」

 

「お帰り。お姉ちゃん」

 

どうやら冴が帰ってきた様だ。

 

「お風呂にする?ご飯にする?」

 

「そうね…先に風呂にするわ」

 

「着替えはもう準備してあるから」

 

「いつも有り難う。真」

 

そういうと、冴は風呂へと入浴しに行って、真はその間に料理を済ませておく事にした。

そして風呂から上がった冴と共に夕飯を食べ、そして真も入浴を済ませた。後片付けは冴がやってくれたらしい。

 

「有り難う、お姉ちゃん」

 

「このくらいどうと言うことは無いわ。

…行く準備は順調そうね」

 

「うん。彼を迎えに行かないといけないしね」

 

そういうと真は冴の隣に座り、話し合う。

 

「思えば、蓮君と出会ってもう3年が経っちゃったな」

 

「そうね。あの時の私達は本当に空気が悪かったわね。

私は検事としてどんな手を使っても勝訴とかにとにかく執着していたわ」

 

「私なんか、生徒会長という立場で板挟みになってたよ。でも、そんな柵を彼が解き放ってくれたんだ…」

 

「そうね。私も彼の瞳の中にある強い意志に対してとても強く感じて、今では被告を守る弁護士として活躍する様になったわね。

彼と出会わなかったら、あのまま泥沼に嵌っていたのかもしれないわね」

 

「うん。それに、お父さんの想いを踏み捨ててしまいそうにもなったかな」

 

「そうね。でも、彼はそれらを全て拾ってくれた。だからこそ…助けに行かないといけないとね」

 

そういうと冴は近くに置いていた仕事用のカバンを漁り、そしてそこに挟んでいた資料を真に手渡す。

 

「これは?」

 

「今のミスルギ皇国の現状よ。内密者とコンタクトが取れてね。そこからパソコン経由で届いた資料を印刷して書類化したものよ」

 

「!仕事の合間にやっていたの?」

 

「そうね。でも…やっぱり彼が居るから色々とやり易く感じたのもあるわ。

だから、真…必ず蓮君を連れて帰って来なさい。"無言の帰宅"なんて許さないから」

 

「うん。約束する!必ず蓮を…私達のリーダーを連れて帰ってくるから!」

 

そう言うふうに強い意志を見せていた時だった。

 

『ここで訃報が入りました。

今日午後17時59分 斑目一流斎がガンにより死亡が確認されました。享年85歳でした…』

 

「!斑目一流斎って…」

 

「…喜多川君の師匠だった男。

怪盗団が世に出回り始めた存在の人ね。ここ最近体調が良くなかったのは聞いていたけど…そう…ガンで…」

 

そう話し込んでいると真はスマホを取り出して誰かに連絡をとっていた。それを横から見る冴。

相手は…祐介だった。

 

〜祐介〜

{祐介君。今、大丈夫?}

 

祐介{真か。如何した?}

 

{斑目さんの事で少し…}

{…亡くなったって。

さっきニュースを見て…}

 

祐介{そうか。

実は竜司や杏達にも連絡が来た}

{心配してくれてありがとう。

先程まで涙を流していたからな。

だが、俺にはそれと同等に大事なものが出来た}

 

{大事なもの?}

 

祐介{怪盗団の皆だ。

そのおかげで今は決意に満ち溢れている。

皆のおかげだ}

{そして必ず…

俺達のリーダーを…

蓮を救って生きて帰ろう}

 

{ええ。

お互い頑張って蓮を助けましょう!}

 

{そしてこれからも宜しく頼むぞ}

 

{任せて}

 

 

そう言うと真はスマホを切る。

その様子を見ていた冴は真に話しかける為、彼女の横に座った。

 

「…祐介君はなんて?」

 

「…涙を流していたけれど、それをやめて今の目の前の出来事と真剣に向き合っていた。

…ねぇ、お姉ちゃん」

 

「なに?」

 

そう冴が返事すると真は昔の話をしだす。

真の中では真や冴のお父さんの心像風景が映し出されていた。

 

「…お父さんを亡くしちゃった頃の私は凄く泣いてたよね」

 

「そうね。お父さんに憧れていたもの…

大切な人が亡くなるのはやっぱり悲しくなるわ。

だけど、その頃の私は、『父親のように死んでたまるか』と思って、勝ちに拘りを持ち始めていたのかもしれないわね。

今は貴方達の弁護人として清々しく生きているけどね」

 

「…皆はやっぱり強いよ」

 

「?」

 

「皆みたいに私は次に切り替えていく自信が無いよ」

 

「…そうね。だけど…」

 

「!」

 

そう言って冴は真を抱き寄せた。冴の行動に驚く真。だけど、その抱擁は暖かった。

 

「大切なものがあるからこそ、人は悲しんだり、怒ったり、楽しんだり、喜びあったりするわ…」

 

「大切なものがあるからこそ…」

 

「大切なものなら、必ずやり遂げて見せなさい。

何も出来ないけど、無事に帰って来てくれる事を願っているわ」

 

「!…有り難う。お姉ちゃん」

 

そう言うと真は抱擁されながらも、決意を胸に意志をその目に灯した。

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