クロスアンジュ〜天使と竜と怪盗の円舞曲〜   作:かもめカメ

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1ー3 腐敗と奪い

俺の名は蓮。又の名をジョーカー。

先に行われた「エアリア選手権」の会場を後にした俺はモルガナとソフィアと共に街を外遊していた。

 

 

「それにしても凄かったな!エアリアって言う競技」ニャ〜

 

「あんな風に空を飛べる機械があるなんて知らなかった。飛行機やヘリコプターだけかと思ったぞ」

 

「空を飛べる機械がそもそも珍しいからね」

 

俺達はそんな風にして会話を進めていた。

もっとも周りから見てみれば俺1人が猫と会話している様にしか見えないけれど。

 

かつては抵抗感があったけど、今はそこまで気にはしない。

 

それにしても…

 

▶︎アンジュリーゼ一色だね

凄い盛り上がりだね

 

「そう言われるとそうだな」ニャ〜

 

「明日のセレモニーと洗礼の儀?と言うものが開かれるからその影響だぞ」

 

「そうか」

 

周りの景色はアンジュリーゼが所狭しと色々な場面で見受けられていた。

殿下とは言えやはり一介の女の子。時には美しく、時には可愛くなりたいものなのだろう。

 

そうしてセレモニーなどが開催される場所から離れた俺達はしばらく談笑を繰り出す。

 

 

「離して!離してください!」

 

「?」

 

すると突然聞こえた声に反応して、俺は角から視界に映す。

 

そこには1人の赤ん坊がマナのバリアによって封じ込められていた。

 

「まさか…ノーマか?」ニャ〜

 

そう呟くモルガナ。

 

「ノーマ」

 

前にも言ったが、この世界にとって必要な「マナ」。

その力を使えないと言われただけで迫害を受ける女の子達の事。

 

俺や怪盗団はそんな世界がある事を知って、去年この皇国に足を運んでいた。

まさかその現場に立ち合わせるとは思いがけなかった。

 

「モルガナ。近くまで行ってきてもらってもいいか?」

 

「任せろ。お前も準備しといた方が良いぜ。()()()()()」ニャ〜

 

その名を言われた俺はすぐに人目を避け、裏路地へ。

そしてすかさず取り出したカプセルを押してすぐに地面に叩きつけた。

すると煙と共に俺の怪盗服が目の前に現れた。

 

その服装を手にするとすぐに着替える。

 

そして最後はやはり白のドミノマスクを被り…

 

俺はジョーカーへと姿を変えた。

 

そして俺はすぐに怪盗セットに潜ませていたワイヤーを使って建物の屋根に登る。

 

登ったと同時にモルガナも猫の跳躍力を活かして屋根にやってきた。

 

「間違いねぇ。あれはノーマだ」ニャ〜

 

「あの子、どうなるんだ?」

 

「特殊な施設…「アルゼナル」って言う場所に搬送されるらしい。

…一生、親とは離れ離れだ」ニャ〜

 

「そんな…⁉︎」

 

「悔しいがそれがこの皇国の現状だ」

 

そう言いながら俺は手袋を嵌めた手を拳に変えて、握り締める。

こんな世の中は間違っているんだ。

年端もいかない女の子が両親から離されるのは見ていられなかった。

 

するとそんな光景を見ていると護衛車と共に見かけない形のマナで動かす車が止まった。

あれは確か…

 

「お、おい。あれはミスルギ皇家の専用車じゃねぇーか⁈」ニャ〜

 

そう言っていると、その車からアンジュリーゼが侍女のモモカと共に車から降りて、ノーマの元へと足を運んでいた。

 

何か言っている…

だが、此処からだと聞こえない…!

 

 

「まずいぞ。あのままだと赤ん坊が連れて行かれる…!」ニャ〜

 

「!」

 

そう言われた俺はすぐに行動に移した。

 

ーーーSIDEtoアンジュリーゼ

私は今、ノーマと呼ばれた赤ん坊の元へと赴いていた。

ノーマは隔離し、管理しなくてはならない野蛮な存在だと。

以前、授業で習っていましたが実物を見るのはこれが初めてでした。

 

淡々と仕事を熟す警察官。

 

「この者をノーマ120376号に認定…

「セイラを…娘を返して‼︎」

 

こ、こいつ⁉︎」

 

「どうかお目溢しを…!

この子は…マナを使うのが少し下手なだけなんです!どうか…」

 

 

「それこそがノーマであると言う証。

断じて見過ごすわけには参りません!」

 

私はモモカを従え、この現場に立ち合わせました。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「え?」「ホントだ…⁉︎」

 

「人類が進化の果てに手にした「マナの光」。

それを否定するノーマは本能のままに生きる暴力的で反社会的な化け物。

今すぐこの世界から隔離しなければなりません!

 

「‼︎

…お願いしますアンジュリーゼ様!

私がこの子をきちんと育てますから!」

 

「不可能です…ノーマは人間では無いのです。」

 

「‼︎」

 

「早く忘れる事です。そして次の子を産むのです。

今度はノーマでは無く…正しい子として」

 

その事を聞いた母親は私に向けて哺乳瓶を投げつけてきました。

それを見た私の侍女・モモカがすかさず私の前に飛び出しました。

 

「お怪我は⁈」

 

「もう…過保護なんだから」

 

そう言っていると赤ん坊はカゴに入れられて搬送される…その時でした。

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハハハハッ‼︎」

 

 

『⁉︎』

 

 

突然聞こえてきた笑い声。

それを聞いた国民,ノーマの母親,そしてこの私も。

何処から聞こえた声に対して周りを見渡します。

 

すると突然、ワイヤーの様な物が赤ん坊のカゴに引っかかると、そのままカゴごとノーマの赤ん坊を引っ張られたのです!

 

そしてカゴの先を見ると1人の存在がカゴから赤ん坊を取り出すや、そのカゴを落とし、赤ん坊をあやしていました。見事な手捌きです…!

 

「あ、貴方は一体⁈」

 

「俺は怪盗…ありとあらゆるお宝を盗む義賊。

名はジョーカー!

此度はこの赤ん坊を頂いていく!」

 

すると彼の手から手紙…いや、この場合は予告状が手元に現れ、それをノーマの母親の足元に向けて投げつけました!

そしてその紙は道路に見事に刺さりました!

 

「俺はこの国の行いに異を唱える者!

例え、ノーマだろうが人間だろうが関係ない‼︎

生きとし生きる生命。それも…」

 

そう言いながら彼は手にしたノーマの赤ん坊を見つめる。

その瞳から悲しみの表情を見せていました。

仮面をつけていながら表情が分かると言うのは…

 

「まだ年端もいかない子供を親から引き離されるのは苦痛で仕方ない。

よって、この子供はこの俺が頂いていく!」

 

「⁉︎む、娘を返して‼︎」

 

 

「逃すか!マナの光を!」

 

そう言うと警察の1人がマナで構成させたネットを怪盗に向けて放ちました。しかし、彼は右手で左腕を一回払った後、そのネットに向かって右手を払いました。

 

 

パリンッ‼︎

 

『⁉︎』

 

「⁉︎ま、まさか貴方も…ノーマ⁈」

 

「だと思うか?」

 

そう言うとまた左腕を一回払うと今度も右手を前に出しました。

 

「マナの光よ!」

 

すると今度はマナを生み出し、剣の形にしてそれを投擲しました!

彼はノーマなのですか⁈それとも人間⁈

 

「ど、どう言う事だ⁈」

「マナを使えるのに、此方のマナは壊される⁈」

「人間なの⁈ノーマなの⁈」

「彼奴…よく見たら男だぞ‼︎」

「男なのにノーマ⁈それとも人間⁈」

 

 

このままでは人々が混乱してしまいます!

 

「?…そこにいるのはこの皇国の姫…アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ第1皇姫ではないか?

…1つ言っておこう。

生命を軽く見ているお前では民の心など誰も聞きはしない!

故に俺はお前のその歪んだ心を明日、頂戴する」

 

そう言うと彼は私に向けて予告状を投げ飛ばしてきました。

予告状は私の足元に刺さりました。

 

「ひゃっ⁉︎」

 

「アンジュリーゼ様⁉︎」

 

「姫をお守りしろ!」

 

「お姉様‼︎」

 

「では諸君。明日の洗礼の儀にまたお会いしましょう…さらば!」

 

そう言うとジョーカーと名乗った男はワイヤーを使って信号から信号へと優雅かつ華麗に去って行きます。

それを見ていた警察官達も後を追ってこの場を去って行きました。

そしてノーマの娘を怪盗にさらわれた母親は絶望感に浸っていました。

 

 

「お姉様!ご無事ですか⁈」

 

そう言いながら車から降りてきた私の妹・シルヴィア。

私が不甲斐ないばかりに足を麻痺してしまい、車椅子生活を余儀なくされてしまった大切な家族。

 

「無事か?」

 

そう言うのは私の兄・ジュリオ。

近いうちにお父様の後を継ぐ人物として、国の運命を背負う存在です。

 

「お怪我は⁈」

 

そう言いながら私を支えるのは私の筆頭侍女・モモカ。

私の身の回りをお世話するかけがえのない大切な人。

 

「ええ。私は無事です」

 

そう言いながら私は足元にある予告状を取り、その中身を見ました。

 

『予告状

民に愛されし、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ第1妃。

汝は明日の洗礼の儀で不吉な事が起こるだろう。

故に俺は怪盗として貴方の心を頂戴に参上します。

心の怪盗団《ザ・ファントム》リーダー ジョーカーより』

 

明日の洗礼の儀で不吉な事が起こる?

何を馬鹿な事を…

 

そう思いながら私は頭がぐるぐると駆け巡りました。

 

ーーーSIDEto蓮(ジョーカー)

さて、予告状を出してこの赤ん坊を救出した俺は今、警察に追われていた。

尚、俺のコートの中にはモルガナもすっぽり収まる為の内ポケットがある。

 

「おー…おー、おー!これはまずいぞ!益々増えてやがる⁈」ニャー⁉︎

 

「大丈夫なのか?」

 

大丈夫

ちょっと微妙

▶︎大ピンチ

 

「おいー⁉︎ワガハイ達、此処でお終いなのか⁈」ニャ〜⁉︎

 

「ピンチはチャンス。傲慢でいる方が足元を掬われる」

 

「まぁ…確かにそうだが…いくらなんでもピンチ過ぎるだろ⁉︎」ニャ〜

 

だが、これこそ俺の目的だ。この郊外には空港が近くにある。

それに1枚目に飛ばした予告状にはこの子の母親にこの場所に来てもらいたいと言う書き記しがある。

気づいてくれると嬉しいんだが。

すると上空からマナで動かしたヘリが俺を捉える。

 

上空のは厄介だ!だから俺は使う…!

 

アルセーヌ‼︎

 

すると俺の背後から赤い身体と腰から生える両翼。悪魔の角に黒いシルクハットを被った化け物の顔を持つ者…ペルソナ「アルセーヌ」が出現した。

このリストバンドはマナ使用形態にすれば、現実世界でも「アルセーヌ」が出てくる様になっている。

本来、ペルソナは認知訶学にある所でしか使用できないが、「マナ」を使えると言う認知があれば俺のペルソナが出現すると言う事だ。

 

『⁈背後に悪魔⁈』

『構わん!撃て!』

 

「無駄だ…"テトラカーン"」

 

そう言うと俺の周りをバリアが覆う。そして相手が銃を撃ち放つ。

だが、この"テトラカーン"は相手の物理攻撃を無効いや、反射する性質を持つ。

例え、相手が剣で斬りかかろうが、銃を乱射しようが関係ない。

 

「ふんっ!」

 

バリアは効果を発揮するとそのまま銃は撃ち放った方向にUターンする。

 

『な、なんだと⁈』『弾がこっちに反射してきた⁉︎』

 

そしてその弾の一部がヘリの重要部位にヒットし、ヘリコプターはそのまま何処かへと消え去った。

 

だが、まだ下には車などがうじゃうじゃいる。

 

そこで俺はワイヤーを全て出し切ると、次のワイヤーが入ったケースをモルガナから受け取るとそれを装填し、ケースについてるスイッチを押す。

 

「目を瞑っててね」

 

「あう?」

 

そう言うと俺はその子の目を閉じさせ、

そして背後にて追いかけている車に向けてケースを投げた。

 

そして前に向いた刹那。

 

ピカーン‼︎

 

「うわっ!」

「何だ⁈」

「まさか、閃光弾⁈」

 

「っ!止まれーーー!」

 

そう言うが既に遅し。そこには無数の車が玉突きを起こして事故の様になっていった。

そして俺はその隙に空港近くの裏路地に身を潜めた。

 

そして数分後。その場所には荷物の整備を終えたこの子の母親がやってきた。

 

 

「!あう!」「!セイラ‼︎」

 

俺はその子を母親の元へと送り返した。

 

「あ、あ、ありがとうございます!セイラ…!」

 

「お母さん。まだ安心するのは早いです」

 

「…え?」

 

「まだ警察がうろうろと徘徊しています。

今はまだ空港にまで警備が薄い。その隙に日本へ逃げて下さい」

 

「え⁉︎日本へ⁈」

 

「そこはノーマや人間を分け隔てなく生活している国です。

俺もその国からやってきました。

貴方がこの国に居るのは構いませんが、この子がノーマだと言う事実があるだけでこの子は貴方とまた離れ離れになります」

 

「そ、それだけは⁉︎」

 

「そこで、貴方に選択を与えます。

この国で過ごす代わりにこの子と離れ離れになる運命を受け入れるか。

この国を捨てる代わりに、この子と一緒に幸せに暮らしていくか」

 

俺の出した問いに対して母親は即答した。

 

「この国を捨てます!この子を愛し続けると産まれた時から決めていたんです!それなのに、アンジュリーゼ様はまるで悪魔の様に囁いたのです!あんなのが化け物なんです!」

 

「因みに何と言われたんですか?」

 

「『早く忘れる事です。そして次の子を産むのです。

今度はノーマでは無く…正しい子として』って…」

 

「酷い話です。子供は親が持つ一生の宝物。それを取り上げるのは例え、神だろうと悪魔だろうとやってはいけない禁忌です。

それに次なんて無い。この子の代わりは居ないんです。

俺が出来る限り此処から離れます。貴方はその隙に次にくる日本発の飛行機に乗って下さい。

そしてもし不安になったら、この場所へ…」

 

そう言うと俺は密かに惣治郎さんが営んでいる喫茶店ルブランの名刺を母親に渡した。

突然、渡された名刺に首を傾げる母親。

 

「此処は俺の仲間の潜伏先です。彼等に力を借りても構わないです」

 

「!…この子の為に至れり尽せり…頭が上がりません!

貴方と出会えた運命に感謝を」

 

「さぁ、行って!」

 

そう言われた母親は最後に俺にお辞儀をして、此処から駆け足で去っていく。その際に赤ん坊が「バイバイ」とジェスチャーした。

 

俺達はその姿を見た後はすかさず彼女達とは真反対に移動を開始した。

その間に、飛行機が離陸して行った。

ソフィア曰く「日本行きの飛行機だったぞ」との事。

あの飛行機に親子がいれば大丈夫だと思いたい。

 

「今は、この状況を打開して、ズラかろうぜ」ニャ〜

 

モルガナの問いに俺は頷く。

俺はそのまま派手に行動した。

…結果的に言えば呆気なく捕まる事も無く、無事にホテルに着いた。

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