ーーーーーSIDEtoジョーカー
「時空を超えて侵攻してくる巨大適正生物。それが"ドラゴン"です。
このドラゴンを迎撃・殲滅し、人類の半途を守るのが此処アルゼナルと私達ノーマの任務です」
俺の名はジョーカー。現在、絶賛講習中である。
俺の前にはアンジュリーゼがぶつぶつと何か言っており、俺の隣にはすみれもといヴァイオレットが真剣に話を聞いていた。
ヴァイオレットもあの後、ファミリーネームを取られるくらいならと自分の名前も捨てたそうだ。
その後、アンジュリーゼは俺の姿を見て、驚愕の顔をしていた。
当然だろう。捕まった筈の怪盗の正体が自分と対話した存在だと知ると。
アンジュリーゼは「どうして…」とおもえる顔を俺に見せつけた。
貴方がどうしてこんな目にと言う悲しみと、
何故母親を救ってくれなかったのかと言う憎しみと、
何故、自分を助けてくれなかったのかと言う怒りを混ぜ込んだ顔を。
そして俺達は一夜を明かし、今朝方、授業を受けていた。
そして機材である画面では…
Dimensional
Rift
Attuned
Gargantuan
Organic
Neototypes
"DRAGON"と言う名称が描かれていた。
此処の施設で分かった事は3つ。
1.ノーマの収容施設である事。
2.島外には出られない。
そして3つ目は…
「ノーマはドラゴンを殺す『兵器』としてのみ生きる事を許されています。その事を忘れずに戦いに励みましょう」
『イエス、マム!』
「イエス、マム」
「い、イエス、マム!」
そう、それが3つ目の分かった事。
3.ノーマはドラゴンと戦わせられると言う事。
まるで此処は軍隊の様だ。
しかも此処にいるのは俺以外全員女の子。
しかもこの講習を受けているのは俺達3人以外は全員小学4年生ぐらいの女の子達だ。
まさに生と死の狭間にいる様な感覚だ。
「分かったか?アンジュ。
残りの2人は真面に聞いていたぞ」
「もうすぐミスルギ皇国から解放命令が届く…筈…」
「(あんな事言っているけど、それは無理なんじゃ無えのか?)」ニャ〜
そう言いながら、小声で聞こえて来る。
俺の机の中にはモルガナが普通に入っている。
学生時代もこんな風にモルガナも入っていたな。
何故モルガナが此処にいるのかと言うと、輸送機の外にへばりついて俺達の元までやって来たのだ。
そして俺達の尋問後に颯爽と現れたのだ。流石、怪盗猫。
そんな中で俺達はアンジュリーゼ…もといアンジュが言った言葉に談話する。
「…
「(それは無いんじゃ無いのか?)」ニャ〜
「?」
「(今の総理はお前が取引した男…トラノスケって言う奴だろ?しかも、お前が怪盗だと見抜いていやがる。
もしかしたら、何かするのかもしれないぞ)」ニャ〜
トラノスケ…本名 吉田寅之助。
3年前まで「ダメ寅」と言う名で呼ばれていた政治家だ。
俺と取引と言う名の関わり合い後は当選し、議員になった。
その際に怪盗だとバレてしまったが、それでも俺との関わりを断つ事はしなかった。
そして政治にて、その覚悟に感銘を受け、多くの国民が支持して、
今では足掛け3年と言う月日を経て、総理大臣に就任になった。
それでも俺との交流は絶えずやってくれていた。
あの人にとっても俺との出会いが一種の転機だったのかもしれない。
そう感慨をしていると、此処の総司令であるジルがエマ・ブロンソン監察官と話し出す。
「監察官殿。アンジュ,ジョーカー,ヴァイオレットの3人の教育課程は修了。本日付けで第1中隊に配属させる」
「第1中隊⁉︎正気ですか⁈」
第1中隊?まるで軍隊の様だ。
…あ、そうか。此処は軍事施設だった。
「ゾーラには通達済みだ。お前達も着いて来い」
「イエス、マム」
「い、イエスマム!…先輩、適応力高すぎます…」
適応力を高めておかないと、いつやられるか分からないからな。
パレスやジェイル,メメントスに居たら嫌でも自然と憶えさせられる。
そう言うとジルはアンジュの腕を取り、そのまま強引に行く。
その後を俺達も付いて行く。
「…あの〜ワガハイは?」ニャ〜
「あ、猫さん‼︎」
「⁉︎ワガハイは猫じゃねぇ〜‼︎って、しまった‼︎大声出してしまった⁉︎」ニャ〜⁉︎
「えっと…」
「その猫、自分の飼い猫です。一緒に付いて来たので、暫くお願いしても良いですか?」
「あ、はい。わかりました。
皆んな〜。猫さんと戯れるのは良いけど、授業はちゃんと聞いてね〜」
『はぁ〜い!』
「ちょっ⁉︎助けろよ〜蓮〜」ニャー⁉︎
「後は頼んだ!」
「そう言いながらグッジョブして去るなーーー‼︎」ニャー‼︎
ーーーーー
俺が教室を閉めると、他の面々が待っていてくれた。
「…まさか猫が侵入して来るとは思わなかったぞ」
「あの猫は俺が面倒を見ますので…」
「別に何処かへ捨てて来いとは言ってはいない。
此処には犬もいるぐらいだ。
猫がいるくらいでどうと言う事は無い。
面倒はきちんとしておけとだけ言っておく。良いな?」
「イエス、マム」
「…ですから、先輩…適応力高すぎます…」
ーーーーーNO SIDE
その頃、先程まで教室内を遠くから観察していた者がいた。
「ふーん…あれが噂の皇女殿下と泥棒2人ね〜。やんごとなきお方の穢れなき身体…。
対して赤髪の方は無垢にして純粋…芳醇な香りを漂わせている…
何方も甘くて美味しそうじゃないか」
そう言いながら舌舐めずりをする金髪の女。左の胸にタトゥーを入れた女…ゾーラはそう言う。そして彼女は…
「新しく来た子なら誰でも良いんでしょ?」
そう言うのはゾーラの寵愛を受けている赤髪の女の子…ヒルダ。
そしてその近くには茶髪の子・ロザリーと、水髪の子・クリス。
その2人もヒルダと同じなのか、首を縦に振って肯定する。
「なんだ?妬いているのか?
可愛いなお前達は〜
「ッ!隊長」」
そう言いながらゾーラの元にやって来るツインテールの女の子…サリア。
彼女はこの部隊…第1中隊の副隊長である。
ただ、彼女…如何せん。堅物である。何処かの生徒会長と同じである。
「スキンシップは程々に。新兵達からも『揉み方が痛い』と苦情が…」
「はいはい。気をつけるよ…副長」
そう言いながら手をモミモミとした動作を見せるゾーラ。
どうも懲りて無いようだ。
その動作を見たサリアは身構える。
すると彼女が持っていた調査書を桃髪の女性・エルシャが取り上げる。
「3人とも年上の新兵さんですが…仲良くしてあげて下さいね」
「「は、はい!」」
そう言いながら新兵の2人…ココとミランダは返事をする。
すると、そこから1人の女の子がやってきた。エルシャと同じ桃色の髪だが、エルシャよりももっと幼い少女だった。
「ナオミちゃんも宜しくね。貴方が新兵の中でキャリアがあるから」
「あ、はい!」
「期待しているわ。けど、無理は禁物よ」
2人からの激励にナオミは頷く。
そんな中でエルシャが持っていた調査書を取り上げるゾーラ。
そして調査書を捲るとそこにはジョーカーの姿があった。
「問題はあの男か。
あの男…見た目は不格好と言うよりだらしないが、司令の話では、対処力に長けて、司令の条件を条件付きで逆に縛られたと言うからな…」
その一言で驚愕の顔を示す面々。
「対応力・語学力・適応力・俊察力。
しかも話を聞く限りだと私のような一個中隊をも指揮する能力まで持ってると聞いた。
…正直に言うと、私は…あの男は、私の立場を危ぶませる存在だ」
「隊長がそんな発言、言わないで下さい⁉︎
士気が低下する要因にもなり兼ねません!」
「おや?心配してくれるのかい?副長」
「隊長が弱気になれば全隊の士気が低下する。
それを阻止するのが今の私の立場であり、貴方の心配なんてしてません!」
「はいはい。それぐらいにしときますか」
そう言うとゾーラは調査書をエルシャに返すとヒルダ達を連れ添い、去っていった。
そして調査書を見た赤毛のおさげ髪のキャンディを舐めている女の子…
ヴィヴィアンが話しかける。
「ねぇねえ!サリア」
「?」
「此処でクイズです!
…誰が最初に死ねるでしょう?」
『⁉︎』
「死なない様に訓練するのが私達の役目でしょう‼︎」
ヴィヴィアンの突拍子も無い発言を聞いた皆は驚いた。心臓に悪い。そしてサリアはヴィヴィアンに拳骨ぐりぐりの刑を執行した。
その際にヴィヴィアンが「痛い痛い〜!死ねる死ねる⁉︎」と大袈裟な発言をしていたのはこの部隊にとっては日常茶飯事だった。
「うふふ。今日も仲良しね〜」
そう言いながら、エルシャはこの場を和ませた。
そんな部隊の元に問題児が不服そうな顔をしながら一歩一歩近づきつつあった。
その背後から真剣な面持ちの切り札も仲間と共に歩んでいた。
しかし、そんな彼の頭の中は…
「(自己紹介…どうやって名乗ろうかな)」
…本当にしょうもない事だった。