博打少女まどか☆マギカ【確率の物語】   作:カピバラ@番長

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 どうもこんにちは。Twitterで告知した通り、三話目になります。
本日の主役は我らが先輩巴マミ。
それでは、どうぞ。


第三話 もう確率なんて怖くない

 早朝。

澄み渡る空を見上げる、檸檬色の艶髪をした少女ーーマミ。

両サイドで緩やかに髪を巻いた彼女は若干肌寒い中、数人の後ろに立っていた。

 

 「(ふぅ、流石にまだ寒いわね)」

 

思わずこぼされた言葉に反応する者はいない。

 ここは乙女の社交場パチンコ⭐︎スロットの入口よりほんの少しだけ離れた場所。

前方にはまだ閉鎖されている自動ドアと五人程の人が立ち、後方には十人強の人々が、ちらほらと人を増やしながら並んでいる。

 

 (まさか、ほむらまで来れないなんてね)

 

白に近いグレーの肩掛けポーチから取り出したスマートフォンを覗きつつため息を漏らす。

映し出されているのはSNSのグループだ。

最新のログには、見滝原市が誇る魔法少女達五人のチャットが一言ずつ残されている。

だが、それら全てはマミにとって良い返事ではなく、見返している彼女の心に再び影が射し込んでしまった。

 

 (さやかと京子は御家族でお出掛け。まどかとほむらは、前に約束した春服を買いに行く予定があってダメ…か)

 

ログを見直しながら僅かな寂しさを感じるマミ。

彼女はここ最近、大学の課題や研究室の最終的な引き継ぎに追われ、休日らしい休日を過ごせていなかった。

先輩にあたる四年生が作った資料の紛失もあり、実際の予定を大幅に超えたおおよそ二週間。彼女は、友人達と遊ぶどころか、アルバイトのシフトを変更してまで大学へ足を運んでいた。

同時にこなしていた課題こそ量は少なかったものの、簡単にできるものでもなく、不本意ながらも徹夜を余儀無くされた日さえあった。

 

 (私も、お買い物とかにすれば良かったのかしら)

 

そうして、とうとうやってきた丸一日の休日。

異様な忙しさの後に訪れた休息は、彼女の思考から選択肢を奪い取っていた。

 

 (……まぁ、今更そんなこと考えても仕方ないか)

 

微かに感じた後悔に決着をつけスマフォをポーチへとしまい入れる。

それと同時。前方から大きな声が上がった。

 

 (ん、もう開店ね。良い番号が獲れるといいけど)

 

緩やかだが確実に進んでいく列。

彼女が再びスマフォに触れるよりも早く、抽選の時が来た。

 

 (この瞬間、ドキドキよねぇ)

 

女性の店員が二人、PCとキューブ型の機械がのせられている台の側に立っている。

PC画面に映し出される、三面のリール。四角の中に黒色のモヤらしきものが激しく入れ替わり………。

 

 (……えっ)

 

[005]と、映し出された。

 

 (ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット!)

 

キューブ型から出て来た番号の書かれている紙を女性の店員から受け取り、マミは流れのまま中へと入っていく。

 

 (番号が一桁ってだけじゃなくて、私達と同じ数だなんて、今日は運がいいのかも)

 

小さく微笑み、彼女は喧騒のまだ薄い自動ドアの側に立って店員の指示を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約三十分後。

マミは憂う事なく望んだ台に腰を落ち着けていた。

打っているのはスロット[Holly Magic 2]。

現在は放送が終了してしまっているアニメーションを題材とした台だ。

六号機へと機種が移行してしまった現在ではあるが、これはそれよりも前に設置されている。機種は五号機。純増が一.五枚と少々控えめだが、ゲーム数毎の上乗せがあり、場合によっては万枚を目指せる、俗に言う爆発台の一つだ。

………が、それはあくまでも上振れた場合の話。

確かに、低設定でも出る時は出るが、それは稀な話。

彼女が打っている台では、現在、奇数設定の挙動ばかりが確認できている。

つまり、一・三・五、のどれかの確率が高い。

二度ボーナスを引いてはいるが、そこからラッシュに繋がっていないことからも低設定の可能性が高いだろう。

 

 (台選び、失敗しちゃったわね)

 

小さく息を漏らし、マミは音の弾けている隣を覗き見る。

そちらでは、同様に早番を引いた女性が、同じ台で上乗せゾーンに入っていた。

ちらりと確認できるゲーム数は既に三桁。かなり美味しい状態だ。設定的にも上の方だろう。

 

 (あーあ、あやかりたいわ)

 

もう一度ため息を溢しそうになったその時。

 

  《おめでとうっ!》

 

 (あら)

 

リールがレア役を示し、映像の右下部分に[Win]の文字が現れていた。

 

 (ふふ、どんな事でも、考えてみるものね)

 

僅かに頬を綻ばせて、ビッグボーナスへと移行した画面の指示通りにリールを止めていく。

アニメキャラが戦場を駆けながら魔法を放って敵を倒している映像が繰り返し流れている。

そんな中、リール止めの指示なしの状態で主人公の親友がカットインで現れてきた。

 

 (ん、珍しいわね)

 

一瞬、マミは気持ちを引き締め、リールの動きを目で追う。

この映像は、Holy Magic2のボーナス中に稀に現れる前兆の一つだ。

スイカ、もしくは強チェリーで止めることができれば、ボーナス後のラッシュ抽選で、当たる確率が五十%よりも上の抽選が一回分約束される。

抽選に挑戦できる回数のストックは全部で三回で、うち一度でも達成できればラッシュに入れるため、この演出はかなりアツい。

 

 (まぁ、リール自体は全然見えるのだけど……)

 

回転するリールの絵柄を七、八割方目で追いつつため息が溢れてしまう。

と言うのも、リールの役がどれで止まるのかはレバーを入力した段階で決まってしまっている、と聞いた事があったからだ。

彼女自身、どこまで本当かは分かっていないが、ほぼ確実に目押しが出来る動体視力を持ってしてもリールがスベって止まった事があるため、その噂の信憑性は高い。

勿論、ボーナスに移行するためにスリーセブンを揃える際などは目押しで確実に出来るため、何もかもがというわけではないだろう。

問題なのは、今現在行われている抽選が、目押しで確実に止められるものなのか、だ。

この台を打ってまだ数度目の彼女には初めての演出であり、ネットの情報でもちらりと確認しただけのため、一確がどのリールなのかすら分かっていない。

 

 (……うん。スイカもチェリーもちゃんと見えるわね。図柄の順番も、一緒に収まるようになってるし、止まる確率は高そう)

 

リールをよく観察し、押すタイミングを図る。

ここで役を決められればラッシュ入りは濃厚だ。そのため、ボタンを押すための指にも微かな躊躇いが出てしまう。

 

 (ちょっと、怖いかも。……けど)

 

心を落ち着かせ、マミは、気をてらうことなく右から順に押していった。

 

一つ目のリールは真ん中にスイカが止まる。

ーーアニメ映像のキャラはステッキを構えた。

 

二つ目のリールは、残念ながらスベり、一番下にスイカが止まる。

ーー映像ではステッキを大きく振り、先端から魔力砲のようなものを放射。敵の一つに轟音を立てながら迫りゆく。

 

三つ目のリール。

結局は低設定か、と、心の中でマミは一度諦めてしまい、適当に押そうとした。

だが、親指が一瞬止まる。

その理由は、例えダメな可能性が高かったとしても、スロットで遊んでいる以上、存分に楽しみたい、と考え直したからだ。

レバーインの時点で決まっていようが、低設定で当たらなかろうが関係ない。自分の意思でリールを止めそれが幸運をもたらすのだと、思いながら押したい。

そう、気を持ち直し、彼女はタイミングを合わせてリールを押した。

狙ったのは強チェリー。

止まった位置はーー

 

 (………ふふ。適当にしなくて良かった)

 

リールの最上部。つまりは、強チェリーだ。

僅かに点滅するリールの枠と、敵に命中した魔力砲。

強チェを止められた際に流れる演出だ。

 

 (さてと。これで少しは期待できるわね)

 

再び始まった指示に従い、マミは滞りなくリールを止めていく。

特にミスも無く終了したボーナスは、ラッシュチャレンジへと移行した。

 

 (……紫ね。確率は確か、七十%くらいだったかしら。当たるといいけど…)

 

映像右端に縦列で並ぶ、小さくデフォルメされた三つのステッキ。

色は上から順に黄、青、紫。

期待値が青→黄→赤→紫→桃の順なため、期待してもいい状態ではある。

だが、桃色以外の当たる確率は全て七割以下。紫はまだしも、五十%の赤は勿論、それ以下の青と黄も外す可能性はかなり高い。

今の場合だと、紫以外は期待するだけ無駄だろう。

 

 (ま、赤じゃなかっただけ良しとしましょ。大丈夫大丈夫。当たるわ)

 

どこか楽観的に自身を納得させ、普段通りにレア役を補助する図柄の右バーを一番下で止め、他二つを適当押しするマミ。

役は特に揃っておらず、アニメキャラが「pushボタンを押して!」と呼びかけた。

 

 (おながいねっと)

 

それとなく気分の盛り上がったタイミングでpushボタンを押したマミ。

その瞬間、映像が煌びやかに流れ……

 

 《その調子だわ!》

 

 (えっ?)

 

チャレンジが成功したことを知らせる演出が流れた。

 

 (へぇ〜。珍しい事もあるものね)

 

確率で言えばおよそ二十%の抽選は見事成功する。

これにより、紫を待つ事なくラッシュが確定した。

 

 (こうやって安心して打てるのって良いわよねー)

 

緩んでしまった頬を特に引き締めたりせず、二度目の抽選を始める。

一度目と同様、右下にバーを止め、他二つは適当押し。今度は、レア役である横ベルが揃った。

同時に流れるキャラセリフにあわせ、pushボタンを押す。

……と。

 

 (う、ウソ!)

 

 《……悪く、ないよ》

 

成功率が一桁しかない青ステッキで、抽選が成功した。

 

 (す、凄いわね。低設定だと思ったけど、もしかして違かったのかしら?)

 

若干の動揺のまま訪れた三度目の抽選。

最後は、確率が七十%ほどの紫ステッキ。

結果は勿論。

 

 《ははっ!誇っていいぜ!》

 

成功だ。

 

 (……夢、じゃないわよね)

 

周りに人がいなければ頬をつねってしまいそうにマミが鳴るのも当然だろう。

何故なら、この抽選が三回とも全て成功した場合に入るラッシュは通常のものとは違うからだ。

 

 《Holy Magic!!》

 

マミの耳元に届くアニメキャラ四人全員の声。

通常とは別のラッシュ、それは、直接上乗せゾーンへと移行する、特殊なラッシュだ。

本来、ラッシュ中に行われる数回の抽選によって移行するかが分かれる上乗せゾーンへの抽選だが、先程のチャレンジーー通称、ステッキチャレンジで三回とも成功すると、直接上乗せゾーンへと移行するのだ。

Holy Magic2最大の上乗せゾーンである[Holy Magic]では、敵討伐の最低継続率七十五%が失敗するまで上乗せを行うことになっている。

最低が二十枚、最大で五百枚が狙えるため、このゾーンを引けてしまえば勝ったも同然と言える。

 

 (ふ、ふふふ。諦めずに打ってた良かったわ!)

 

指示通りにリールを止め、一戦目を難なく勝利で納める。上乗せ分は五十枚。悪くはない。

続いて始まる二戦目。

こちらも討伐が成功し、百枚上乗せされた。

 

 (ま、まずいわね。笑い声が出ちゃいそう。今日は焼肉かしら!)

 

仮にもし、液晶がブラックアウトでもしようものなら身悶えものの緩み顔のままリールを止めていくマミ。

まだ四戦目が終了したばかりだというのに、獲得枚数は既に四百枚を超えていた。

 

 (ふ、ふふふ!もう確率なんて怖くない!)

 

リールを止め、上乗せを確認し、またリールを止める。

なんて事のない、なんなら飽きてしまうような単純作業を一つの苦も感じずこなしていく。

………その結果、この上乗せゾーンは十二戦目まで続き、彼女は念願だったエンディングを見ることとなった。

その日の最終的な獲得枚数は約四千五百枚。

万枚までは流石に届きはしなかったが、それでも、投資約五千円でこの額であれば充分以上の勝ちだろう。

 

なお、彼女の座っていた台の設定は二。

これほどの当たりが出たのは、かなりの幸運だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be next story.

 

 




 本編ではほんのちょっとだけかわいそうな目にあいやすいマミさんですが、今回は作者特権でとてもいい目を見てもらいました。
このあと、彼女はショッピングに向かい買いたくても買えなかった服などを数点買った後、少なくなってしまった来月分のバイト代を補うため、残った分の半額を預金通帳に納めました。堅実です。

ちなみに、一話の頃から気になってる方もいらっしゃるかと思いますが、今作の中でマミさんはほかの四人のことを下の名前で呼び捨てにしています。
と言うのも、まどかが円環の理になる必要がなく、また、マミさんもさやかも杏子も死なない、ほむらの望んだ完璧な世界だった場合、それぞれと仲良くなったマミさんはみんなを呼び捨てにするんじゃないかなと思ったからです。

と言う感じで、三話目は終わりになります。
次回四話目はどうするかまだ決めてないので、スロットでもしながら考えようかと思います。

それではまた次回。
さよーならー



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