シンフォとギアスに飽きてベルセルクを打つようになったカピバラ 番長です。
スロットは滅多に手を出さなくなりました。やっぱり右手の運動は腱鞘炎にも繋がって良くないですからね!
ではどうぞ。
ーーおかしくねぇか、これ。
長い赤髪をひとふさに束ねたポニーテールの少女・佐倉 杏子は自分の打っている台のデータを片手間に見ながら訝しんだ。
ーー千ハマり以上してる台は当たりやすいはずなのに、何で保留変の一つも起きねぇ?もう五百は回してるんだぞ。
彼女は思わず口に出してしまいそうな感情を押し殺しつつ、ハンドルを固定し過ぎて痛みを若干覚え始めた右手首にイラつきを覚え始める。
ここは乙女の社交場パチンコ⭐︎スロット。
昼夜問わず人の悦と恐が混在する混沌の場。
その中でも比較的勝ちを得られている彼女は台の挙動に驚きを隠せなかった。
ーー貯めてた分の球だ。投資はそんなに怖くねぇけど、いくらなんでも異常だろ。
追加で十ほど回された彼女の打っている台は[昨日食べたご飯の名前をワシはまだ知らない]というアニメを題材にしたパチンコ。
バラエティ機にも関わらず根強い人気を誇り、現在は四代目となっている。
ーー確かに昨ワシは小当たりで吸い取られるかハマって爆発するかのどっちかみたいな台だ。ハマり自体は悪いことじゃねぇ。けど、ハマってる時に期待の一つもさせないような色気の無い台でも無いはずだ。なのに今回は点滅する保留すら来ないなんてどーいう了見だ??
募っていた苛立ちは更に積み重なり,ハンドルの位置を僅かにずらしてしまう。
途端,比較的安定して電チューに入っていた球がバラけて底に吸い込まれていく。
「(ヤッベ)」
思わず小声を出してしまった杏子は急いでハンドルを定位置に戻し,元の挙動に戻りつつある球の流れを見守った。
が。
ーーあーくそ!一回ミスるとすぐこれだ!
先程と同じはずの強さで打っているにも関わらず球は電チューに殆ど入らなくなってしまった。
「ぬかったわね。佐倉さん」
「あん?……って、ほむらじゃねーか。随分遅い出勤で」
「ええ。たまにはね」
するりと流れるように隣の台へと腰を下ろしながら彼女に話しかけたのは打ち友でもあり、同じ魔法少女として手を取り合った相手・暁美 ほむら。
綺麗に整えられた黒髪を靡かせながらサンドに万札を入れる姿は同じ女性である杏子にすら妙な美しさを覚えさせる。
「何かあったのか?今日一応入れ替えの日だったのに」
「まどかの家に泊まっててね。さっきまでご飯を一緒に食べてたの」
ほむらは貸し玉ボタンを押し、銀玉を排出させるとハンドルを捻る。
パチンコはテーマ台毎にハンドルの硬さがちがうため、最初は何発か無駄玉を打ってしまうものなのだが彼女は一発で適度な強さに捻ると,釘の癖を見つつハンドルを調整し始める。
「の、割にはそいつはいねーみてーだけど」
「ご家族と用事ができてしまったみたいで帰ったわ。私もそのまま…とも思ったのだけれど、新台入れ替えの日なのを思い出してね」
微かに悲しげな表情を見せ、それでも台の液晶からは視線を外さないほむら。
彼女としては今日一日をまどかとの時間に使う予定だったのだろう。しかし、家族からの呼び出しとなれば口は出せない。
それ故ほむらは渋々ーー実のところはいつの間にかーー乙女の社交場へと足を運び,台選び中に見つけた杏子の隣に腰を落ち着けたようだ。
「っは!流石にパチンカスだな!我慢できなかったか」
「お互い様。……それより、かなりハマってるみたいだけど」
話をしながらちらりと杏子の打つ台のデータに目を向けたほむらはそのあまりのハマりっぷりに若干息を呑む。
と言うのも,ここ最近で似たような目にあって結果負けたので他人事とは思えないからだ。
「ん?ああ、って言ってもアタシが打った分は千から先だからなぁ。実はそーでもねぇぜ?」
「昨ワシだものね。それが正解よ」
「……の、はずなんだけどよー。どーにも駄目なんだよな。色変どころか点滅すらこなくてさー」
「保留が?」
「そー。流石に気味悪くって」
粗野に足を組み直しつつこれまで感じていた苛立ちの一端を不安へと形作りほむらに漏らす杏子。
ほむらとてパチンカーだ。大なり小なりあるにしろハマり自体が珍しいもので無いのは心得ている。心得ではいるが、その間に保留変等の挙動を一切見せないというのは流石に聞いたことがない。
先の千回転分は別の人であるためどうだったか確認の取りようは無いが、少なくとも五百から先……彼女が回した中ではそういった動きが見られなかった。
となれば、台の設定ーー引いては店側の思惑が少なからず絡んでいると見て間違いない。
「……なら、あの噂は本当なのかしらね」
人一倍データを取り、実践しているほむらにしてみればそのような推測を超えた憶測を思うのは当然だった。
そしてそれは同時にこれまで懸念していたもう一つの不安を彼女に思い起こさせる。
「噂?」
「ええ。……この店が意図的に【当たらない台を置いている】って話がね、結構前からあるのよ。それも結構耳にするわ。…ここの休憩所とかで」
ほむらが打つ手は止めずに口にした噂の内容。
始め、杏子はキョトンとした顔でそれを聞いていると、次第に両口の端が引き攣り始め、気がつけば目尻が緩んでいき……。
「アッハッハッハ!お前、それ本気で言ってんのか!?」
気が付けば打つのをやめて腹を抱えて笑っていた。
「ちょ、ちょっと。うるさいとは言っても公共施設よ?静かにしなさい。恥ずかしい」
今日は平日。とは言え大学生が主なターゲット層であるため客自体はそれなりにいる。
ほむらの不安通り、台のBGMよりも大きな声で突然笑い出した杏子に小首を傾げた人の視線がいくつも集まっている。
当然一緒に話していた隣のほむらにも視線は向けられており、そもそも他の三人含む彼女達五人は【いつ行っても誰かしらいるグループ】として少なからず注目を浴びている状態だ。
そのせいかほむらには集まってくる視線が少しだけ痛かった。
「あ、あー。悪い悪い。……けどよぉ、あのクールビューティー気取ってる暁美ほむらがまさか負け犬の陰謀論を間に受けてるとはねぇ……。アハハハ、お腹痛い」
「…貴女、そういうところあるわよね」
「お前こそ、案外可愛げあるよ。まぁ、まどかじゃ天然過ぎて気が付かねーだろうけど」
「どうしてそこでまどかが出てくるのよ!」
「っと、声だぜ、声」
「ぐっ…」
突如話題に登った名に対して柄にもなく感情的になるほむら。
その姿が余程おかしいのか、杏子は声こそ出さないもののお腹を抑えて笑い出し、更にほむらの羞恥心を煽った。
「とっ、とにかく。そういう話があるにはあるの。貴女も食い物にされたく無いならちゃんと見切りを付けるのね」
「ああ。わかったわかった。他でもねぇお前の忠告だ。今日はここまでにしとくよ。……丁度、頃合いみてーだし」
「……頃合い?」
未だ治らない笑みを手元で隠しながら会員カードを抜き取り手帳型スマフォカバーのカードポケットにしまう杏子。
すっかり帰り支度としたらしい彼女は残っていた十数球を適当に打つと椅子から立ち上がり後ろを振り向く。
「……なんて、久々にカッコつけてみるもんだな。ホントに頃合いが来やがった」
「???」
不可解な彼女の言動に釣られ同じ方を向くほむら。するとそこには辺りの台を見回しながら島を進んでいく桃色の髪の一人の少女……
「……まどか?」
鹿目 まどかがいた。
「その台、お前にやるよ。もう五百くらい回してからでも噂の真偽を決めるには遅くねぇだろ?あ、でも当たったらなんか奢ってくれよ。最近お菓子買ってくとさやかの奴が怒るからさ。どっか二人で。他のがいるとチクられそーだからな」
「え、ええ。それはまぁ、友人のハイエナしてるようなものだし、構わないけれど……」
「ん。じゃあ取引成立。代わりにアタシはアタシで噂のこと調べといてやるよ。んじゃーな」
「さ、佐倉さ…」
「あ、ほむらちゃん!」
まどかの声が上がると同時、杏子はほむらの席を後にする。
入れ違う形で彼女と合流したまどかは立ち去っていった杏子の背を見つけるとほむらへと向き直ると俯きつつ上目でほむらを見た。
「もしかして、タイミング悪かった?」
「ううん。ほら」
「……あ、あー」
どこか萎縮気味に口を開いたまどかに杏子の座っていた台のデータをほむらは指差す。
それだけで全てをなんとなく察したまどかはもう何も言わず、昨ワシの台に腰を下ろすと意を決した顔をして薄桃色の財布を取り出し。
「きょ、今日は私が仇を取る!」
殆どいつも一緒に行動しているほむらですら滅多に見れないやる気を満ち溢れさせて千円札をサンドに入れた。
「で、でもまどか。その台は……」
「う、うん。多分当たらないんだよね?でも大丈夫!こういう時のためにほむらちゃんに色んなこと教えてもらったんだもん。少しくらい頑張らないと!」
「……ふふ。そうね、その意気。パチンコとスロットに勝つのに必要なのは勝つっていう強い意志だもん。まどかなら大丈夫」
「うん!」
別れ際に杏子が口にした約束は兎も角、これからまどかが打とうとしている台は不穏な噂となっている可能性がある台の一つ。
ほむらとしてはできれば打ってもらいたくは無いのだが、やる気に溢れているまどかをなんとしてでも止めるというのは気が進まない。
杏子の言っていたように追加で五百……とまではいかずとも、適度な回数を回したらそれとなく帰宅を促して反省会をしよう。
…と、そう考えて隣から聞こえる貸玉の落ちてくる音を聞きながらほむらは自分の台のハンドルを握った。
「…………あれ?ほむらちゃん。これ、魚群かな?」
「え」
無駄玉をいくつか出してようやく電チューに入ったまどかの一発目。
その途端液晶にはかなりアツい演出・魚群を模したキャラの大群が右から左に流れていき。
「あ、当たっちゃった」
もはや耳障りとも言える音を立てて七のゾロ目が揃った。
「……お、おめでとうまどか。その台はハマってから当たると一万発くらいは確定してるから、安心していいわよ」
「ほ、ホント!?じゃあ、今度は私がほむらちゃんにアクセサリー…を?」
「……大丈夫…大丈夫だから」
「……?」
パチンコに於いては師匠とも言えるほむらからの太鼓判を貰い喜びを露わにし視線を向けるまどか。
しかし、そこにはほむらの顔はなく、何故か反対の席側に顔を向けて俯いていた。
耳を真っ赤にして。
ーーお願いよ佐倉さん。私が陰謀論者じゃ無いことを証明して見せて……。お菓子くらいいくらでも買うから……!
「あ、繋がった!しかも最大ラウンド数だよ!ほむらちゃん!」
「え、ええ、そうね」
「夜ご飯、どうしようかな〜」
途端に景気良く鳴り始めた出玉の音に混じりながら聞こえるまどかの感嘆の声。
だが、ほむらの羞恥心からくる慟哭はそこに決して混ざらない。
なお、付き合う形でまどかの当たりが終わるまで打っていたほむらは財布を軽くして、半ば止められる形で帰っていった。
to be next story.
こんなふざけたお話のくせに実は起承転結の承と転を担ってるってマジ?
ほむらが可哀想だろ…
と、久し振りに描いてみました。どうでしたでしょうか。
超個人的見解ですが、ほむらはなんかやっても空回ってるってイメージが強いんですよね。なんらかのアンソロジーの影響と思われます。
そうそう。お菓子を買ってくるとさやかが怒るのは、杏子の裸を見た時にあまりのスレンダーさにダイエットを決意したからです。
……ホントにたまたまなんですかね?不思議ですね。
ちなみに二人は映画基準の同じ屋根の下で暮らしてたところから発展して、同じ大学に通うため現在は二人きりで借家でルームシェアしてます。
五人で集まる時は大体マミさんの家かこの二人の家になってます。そんな話も書ければいいですね。
また、まどかが家族に呼ばれたのは目を離した隙に迷子になったタツヤを一緒に探してもらうためです。場所的にそれほど遠く無い所で遊ぶのを知っていたパッパが焦って連絡したのです。
幸いまどかが駆けつけた頃には見つかっていたのですが、タツヤの手には何故か一口チーズが。
きっと迷子だと察してくれた大人の人が、疑われるのは嫌だが放ってはおねなかったので取り敢えずチーズを渡して落ち着かせてくれたのだろうとパッパは言ったのですがまどかはどこか思うところがありながらもほむらのところへ戻っていった。
そんな感じです。(別れた場所にいなかったから社交場に向かったのは仕方ないとは言え天然サディスト感ある)
パッパはしっかりまどかに叱られました。罰はマスターデュエル一週間禁止らしいです。
ではまた気が向いたら書きます。
さよーならー