博打少女まどか☆マギカ【確率の物語】   作:カピバラ@番長

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 書いた私は偉い。
どぞ。


第八話 そんなの、私が絶対許さない。

 結論から言って、彼女は負けていた。

 

 ーーこれが、噂の台……ね。

 

顔はクールに心は穏やかに。

装って装って、その上でハンドルを握る手は震えている。

投資は八万、残玉は五十。財布の中は今週分の生活費のみ。

辛うじて銀行にお金はあるが、結局のところは大負け。それでもまだ挽回のチャンスはなくはない。

 

 ーーこのくらいの圧力で私が屈するとでも?

 

美しい長い黒髪を持つその少女の名はほむら。

見滝原を守っていた五人の魔法少女の一人であり,その中では最も度し難いパチンコ愛好者。

これまで熱意の全てを注いでいた鹿目 まどかの魔法少女化阻止とワルプルギスの夜討伐を達成し、とうとう意中のまどかと同じ大学に通える世界を手繰り寄せ、行く末はルームシェアさえをも約束した今の彼女は、しかしこれまで永遠とも言える長い時間を繰り返し続けながら保っていた熱意の吐口を失ってしまった。

そんな、まどかと過ごす時間以外はまるで心ここに在らずといった様相を呈していたほむらが見つけたのが乙女の社交場パチンコ⭐︎スロットだった。

規制が緩かったかつてはプロと呼ばれる存在がいた以上、勝つための法則はある。そしてそれは長きに渡り身についてしまった情報収集能力と傾向判断能力を遺憾無く発揮出来るジャンルでもあった。

故に,ハマった。

とことんまでハマり、日々の生活に鹿目 まどかという存在以外の潤いが生まれた。

 

 ーー……どれだけ徹底的に調べても結局は運なのはこんなところでも変わらないのね。皮肉なものだわ。

 

が。

悲しい事に暁美 ほむらには恐ろしいまでに運が欠けていた。

例えば,彼女が現在打っている[マンハンタートライ2ndG]という、有名ゲームを題材にした台。

根強い人気を誇るこの台は乙女の社交場に六台ほど設置されており、週毎に当たりの出る台が順繰りに変わる。

設定が無いとされているはずなので単なる偶然とも言えるのだが、実装されてから約一ヶ月間この法則が外れたことは無い。

前々週は六番機、前週では一番機で万発を超える当たりが出ているのはデータを見て確認している。そして現在ほむらが座っているのは二番機。セオリー通りであれば必ず当たる台。

にも関わらず、万発を超える連チャンはおろか単発当たりすら一度たりとも姿を見せない状態でここまで至ってしまっていた。

 

 ーー玉は理想値以上に入っているのに、どうして?

 

千円分で回る回数で表される『このくらい回れば当たりを期待できる台だよ』とされる理想値は二十回転より上。そのところをばらつきはあるもののおおよそ四十回転もしているガバクギ状態。

だからこそ計算上は残り五十あれば八発前後は入り、抽選が行われるはずだ。

 

 ーー大丈夫、大丈夫よ。これだけつぎ込んだんだもの。あと一、二回も回れば当たるに決まってるわ。

 

長らく握るだけだったハンドルをゆっくりと傾けるほむら。

今更打つのを辞めたところで帰ってくるのはせいぜい飴玉。だったら残り五十発にお祈りして爆発を期待するしか無い。

そうわかっているのに、ほむらの打つ手は傾けようとする半歩手前で止まっていた。

溢れ出るのは後悔と恐怖の念。

八万円もあれば出来た事。

残りの玉を使い切れば何も出来なる事。

その二つがほむらの頭の中でひたすらに渦を作り,まるでかつての強敵・ワルプルギスの夜を彷彿とさせる影を幻視させる。

 

 ーー……ふふ。私にもまだ、こんな人間らしい感情が残っていたなんてね。

 

そんな錯覚を前に、ほむらは一歩も引かずハンドルを固く握り締めた。

 

 ーー残念ね、私の中の私。打つのを辞めさせたかったんでしょうけど、ここでワルプルギスの夜を持ち出すのは失敗よ。

 

静かに瞳を閉じ、数秒の時が流れる。

そして。

 

 ーーアイツに屈するなんて、そんなの、私が絶対許さない。

 

財布を開き、生活費をサンドに捧げた。

貸玉の電子板に表示される五十という文字。それが示すは五千円。

追加投資、五千円。

今週を生きる為の、五千円。

 

 ーー負けないわ。本物のアイツに比べたら、こんなモノ怖くも恐ろしくも無い!

 

打ち出される元の残玉は当たりを呼ばず、次いで放たれる礎となった生活は激アツを呼び込んでも結果は伴わない。

それでもと、打ち続け、やがて残りの電子表記が五になった時。

 

 「あ、当たった……」

 

台のキャラクターが微笑んだ。

 

 ーーやったよ、まどか。私、諦めなかったんだよ……?

 

安らぎを体現したかのような微笑みを浮かべ、切なく小首を傾げるほむら。

瞳は僅かに潤み、心は広く満たされる。

だが所詮は初当たり。これだけでは失った金銭を取り返すには程遠い。

 

 ーーううん。ダメよね。これだけで満足したら。ここからが本番だもの。

 

決して忘れてはならないパチンコのシステム。連続した当たりをーー連チャンを呼び寄せ続けなければ今の出玉など高が知れている。

故に諦められない。諦めてはならない。

勝ちを手に入れるその瞬間まで、運を呼び寄せ続けなければただの道化になってしまう。

その結果。

 

 ーー……えぇ、悲しくは無いわ。

 

投資額・八万と五千円を若干下回る量の玉を吐き出させ、連チャンは終わった。

 

 ーー千円ないくらいで一日遊べた。そう思えば、むしろお得よね。実質勝ちみたいなモノだわ。

 

換金し、自宅へ帰る道中。

ほむらは俯き気味に視線を落とし、頬を引き攣らせながら小さく笑う。

 

 「もしもし、まどか?今日、一緒に夕飯食べに行かない……?」

 

なんとか気持ちを持たせようと、精神安定剤としての役割さえ持っているまどかに電話を掛けた彼女の声はほんのり震えている。

 

 「(………見てられないのです………)」

 

そんなほむらの背中を見つめている少女がいた。

 

 

 

 

 

To be next story.




 連チャンって、元は麻雀用語なんですってね。知りませんでした。
親が続くーーつまり上がり続ける事を連荘(れんちゃん)といい、転じて同じ物事が続く事を言うようになったそうです。
私はずっと連続チャンスの略だと思ってました。だとしたら使われ方が若干おかしいのでようやっと納得できました。知識が広がるのは気持ちがいいです。


そうそう。実はこの世界線、まどかは魔法少女になってないです。
これまで五人の魔法少女と表記してきたこともあると思いますが、まどかは基本バックアップと、みんなの平穏を保つ為の均衡を担ってました。
つまりはほむらの望んだ完璧な世界です。
唯一問題があるとすれば当のほむらがパチンコにどハマりしてる事、くらいですかね。
制御役のまどかは大変です。ぶっちゃけルームシェアの目的の半分くらいはほむらの凶行を抑制する為でもあります。もう半分は人の感情の極みです。
なお、ほむらのルームシェアの目的はは感情の極みが全てです。
お酒にハマらない事を祈るばかりですね。


それではまた次回。
さよーならー
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