オペレーターと煙草を吸う話   作:eka

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閑話:オペレーターとドクターが食事をする話 後編

【グムの懸念】

 

そろそろいいかな。

ヒーターを切って鍋の蓋を開けると予想通りの匂いが給湯室に広がる。

レードルを手に取ってかき混ぜた後、最終確認。

…うん、やっぱりこの最初の一口がお料理するときの特権だよね。

その後鍋ごと執務室に運んでいく。

 

「スープできたよー。」

 

「ありがとう、グム。そろそろ料理も出そろった頃だろう?ならこっちに来て座るといい。」

 

…うーん、デザートも残ってはいるんだけど…まぁ、後盛り付けだけって段階まで作ってきてたしいいや!

っていいつつ私もお腹空いてきちゃったからなんだけどね。

わ、ちゃんと私の分の取り分けてくれてる。 

 

「せや、グムって普段も厨房入ってるんやろ。」

 

「?そうだよ。」

 

ソーセージを口に入れながら返事をするとクロワッサンちゃんがどういう訳かため息を吐いた。

なんだろ、つまみ食いできるのが羨ましいとかかな?

 

「はー、羨ましいわ。ウチは料理そんな上手やないしなぁ。」

 

あ、そっちかぁ。

うん、わかってたけどね。

本当。

 

「でも私は昔から料理好きだったってだけで別に…そんな風に思ってもらえるようなことじゃないよ。」

 

「いや誇れるって。誇っていこうや。」

 

「何を必死になってるんだ。」

 

クロワッサンちゃんにドーベルマンさんが横槍を入れるけど、何故か更に興奮して椅子を倒す勢いで彼女は立ち上がったから半分寝かけていたプラチナちゃんがビクッてなった。

 

「いやいや!だって凄いやん!凄い事は褒めて行かんと!せやろ、教官!」

 

「落ち着け。それはそうだが…それを言えばお前だって」

 

「ケチってことやん!」

 

「そうはいってないだろう。…本当にどうした?」

 

「だって!ウチはそんなモテそうな特技持ってへんし!」

 

「え?」

 

モテそう…?そうかな…?ううん、たしかにそうかも。

意識したこと無かったけど、お嫁さんの必須スキルって聞いたことがある気がする。

今でも充分幸せだけど、もし好きになった人が私の料理を好きって言ってくれたら…もっと嬉しいんだろうなぁ。

ぽわぽわした気分になった私とは逆にクロワッサンちゃんはさっきとはうってかわって沈痛そうな雰囲気だった。

別に悪いことしてないんだけど悪い気がしてくるなぁ…。

 

「せめてグムの腕がプロ並みやったらウチもここまで敗北感感じんかった…。」

 

「クロワッサン、それは失礼じゃない?」

 

「いやちゃうんよ。正直めちゃくちゃ美味しい。やけど、上品すぎひんっていうか手が届かん感じやなくて…こう、毎日朝ごはん作ってくれって言いたくなるみたいな。」

 

「実際毎朝食ってるだろう…。言いたいことは解るが。」

 

「そうですね。グムさんの作る料理は優しくて家庭的な味ですから。」

 

「…まぁ、このご時世飽きのこない料理を作り続けるって実際凄いよね。」

 

「生半可な人間にロドスの料理番は務まらないからな。オペレーターの出身も様々だというのに本当によくやってくれている。」

 

褒めすぎじゃないかな!?顔が熱くなってきたよ!

こ、こんなに褒められることってないからどうしていいか解らないんだけど!?

多分顔真っ赤だよ、今。

 

「ちなみになんやけど、この中でグム以外に料理作れる奴おるん?」

 

「「「…。」」」

 

…すごい静かになったね。

さっきまでのわちゃわちゃした雰囲気が嘘みたい。

プラマニクスちゃんは作ったことが無い感じかなぁ…。ドーベルマンさんは何となく予想できてた。何だったらレーション普段から食べてそうだし。

プラチナちゃんなんて料理上手そうなんだけどなぁ。あ、目が死んでる。

っていうか皆目が死んでる。

 

「…今度料理教室開いてみようかな?」

 

あ、生気が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ最後にデザートがあるから持ってくるね。」

 

「なに?」

 

まだちょっと落ち込んでる空気を変えようと思った一言に、さっきとはまた違う張りつめたみたいな雰囲気になっちゃった。なんで?

 

「…勿論、オリジムシじゃない。そうだろ…?」

 

「えー?勿論だよ!」

 

おどおどしてるドーベルマン教官につい笑っちゃった。

的外れな答えに皆も気が緩んだのか、空気が柔らかなものに変わった、と思う、きっと。

なんであんなにピリピリしてたのかな?ドクターなんてトラウマに耐えるみたいな感じだったし。

まぁそれは置いておいて。皆気になってるみたいだからさくっと発表しちゃおう。

本当は新作だからびっくりさせたかったんだけど…。

 

いやぁ、たまたま昨日何となく覗いてみたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「今回はバクダンムシの」

 

「「「「やめろ!!」」」」」

 

「なんで!?」

 

「なんでもなにもあるか馬鹿!!!」

 

結局私の新作は食べられずに廃棄された。

でも諦めずにまた持ってこようって思うよ。

意外とそれが効果的だってわかっちゃったから。

 

 

 

 

ドクターは食堂に滅多に来ない。

 

色々とメニューを変えてみたり、今回みたいに突然食事を作りに来てみたり、食材を現地調達できる料理を考案した時にゲテモノが好きなのかと思いついて普段絶対食べないようなオリジムシを調理してみたり…うん、正直最後のは悪かったかなって思ってるんだけど…結果的に食堂によく来るようになったし結果オーライ、だよね?

 

アーミヤさんが言うには普段ドクターは栄養剤で済ますことが多いみたい。

一度それって大丈夫なのって聞いたらあいまいな笑顔ではぐらかされたことを良く覚えてる。

 

人の役にたつことも好きだったし、料理のことも昔から好きだった。

だから私はドクターを見てるとどうしても不安になっちゃうんだ。

私はドクターに必要とされてるのかなって。

 

ドクターがもし私を必要としていなくたって、私が望めばきっと何か理由をつけてロドスには置いてくれるだろうとは思う。

そんな優しい人だってわかってはいるんだ。

 

だけどチェルノボークで私は、本当にたくさん…人が変わるところを見てきた。

 

不安が拭いきれないのは、私が弱いからなのかな。

ごめんね。

きっと私はドクターにお節介を焼くことをやめられない。

必要とされたいなんて私のわがままにつき合わせることになってしまうけれど。

 

貴方が一人で無理をする姿を見てる限りはやめられないよ、ドクター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【クロワッサンの決意】

 

「そろそろお開きやろか。」

 

「そうだね…。デザートが無くなったからね…。」

 

「それは後ほどドクターに一人で食わせてやれ。」

 

「裏切るか、ドーベルマン!」

 

「そもそもお前一人が食う予定だったろう!」

 

「あの、お二人ともその辺で…。グムさんが…、その…。」

 

顔に暗い影を落として椅子の上に体育座りして目に見えて落ち込んどるなぁ、って感じのグムをプラマニクスが気遣う。

食べてから言われるならまだ…食べてもないのに…ってブツブツ言っとる声が二人にも聞こえたんやろか、流石に二人とも黙った。

睨みあったままではあったけども。

 

…。

 

…いや。

 

…なんも喋らんのかい。いつまで黙っとるんや。

食いたないんはわかるけどそれならそれで話変えるなり…あかんわ、そういうん二人とも苦手やったわ。

あぁもう脂汗かいてきてるし…いっつも思うんやけど二人ともそこそこ優秀やのになんでこういうフォロー下手なん?

…あー…優秀すぎるからか。逆に言えば、こういう自分に非がある時そんな経験してないから…。

 

…自分で言うてなんやけどドーベルマンはともかく旦那はんは無いな。結構責められてるん見るしシンプルにコミニュケーションが下手なだけや。

っていうか素直すぎるんよなぁ。

まぁそれが悪い事ばっかでもないんやけど、と思いながら愛弟子(とついでに鬼教官)に助け舟を出してやる。

 

「とりあえず片づけしよーや。紙コップとか普通にゴミ箱でええん?旦那はん。」

 

「あ、ああ。…いや待て、ゴミ袋を持ってくるからそっちにまとめてもらえるか?」

 

「あいあい。教官は台拭き持ってきてや。」

 

「…わかった。」

 

二人が給湯室に向かう途中通りすがりに謝るもんやから反射的にどんなお礼してもらおかな、って考えてたけど。

落ち込んだままのグムをどうにかするんが先やな。

プラマニクスも頑張って励ましよるしなぁ。カランドの巫女いうもんやからどんなもんかと思ってたし最初はこの子大丈夫かって不安やったけど馴染めたみたいでよかったわ。

どっちか言えば朱に交われば赤くなるいう感じやけど。

 

「私はその、いいと思いますよ?イェラグでも土地柄困窮することが多かったので食べられなそうなものもとりあえず食べてみて、それがいつの間にか伝統料理になることも」

 

「…じゃあ、デザート食べてくれる…?」

 

「…ちょっと宗教的に…。」

 

フォロー下手(そんなとこ)まで似んくてもよかったんやけどなぁ。

 

「ええ加減にしときや。あんたの腕も情熱も認めるけどなんで皆ここまで拒否するか解らんわけでもないやろ。」

 

「…うん…だけど…。」

 

「…そこまで執拗になる理由は知らんけど、度を越さんよう注意しとき。嫌われるんは本意とちゃうやろ。」

 

ウチがそこまで面倒見る理由もないしこれ位しかやらん。

うん、と消え入りそうな声でグムが返事をした後、プラマニクスが何を勘違いしとんのか生暖かい目で見てくるのがくすぐったかった。

 

そういえば一人静かな奴おるな、とプラマニクスの視線から逃げるよう目を向ければこの空気の中すやすやしとる。

…大物やな。一人だけ楽しとるん腹立つから起こすけど。

 

「ほら起きやープラチナ。」

 

「ん。」

 

「…起きてます?」

 

「あかんわ、微動だにせん。」

 

プラチナがここまで酒に弱いとは思ってへんかった。

今もグムにつつかれながら机に突っ伏したまま動かん。

飲むペース早いなとは思っとったけどカジミエーシュ出身やから油断しとったわ。

 

「…後でウチが運んどく。給湯室の方まだ片づけ残ってるやろ。」

 

「そうですね…。グムさん、プラチナさんの様子を見ておいてもらえますか?」

 

「え、でも」

 

「いいんですよ、せっかくご馳走になりましたから。せめて片づけは任せてゆっくりなさってください。」

 

「でも、バクダンムシの取り扱い間違えると爆発するよ?」

 

「やっぱ来てもらおかな、うん。」

 

テロやん。執務室で爆発騒ぎとかもうどう考えてもテロリズムやん。

ようそんなもん人に食わそうとか思ったな。

 

 

 

 

単純作業してる時ってなんか知らんけどめっちゃどうでもええこと考えてまうよな。

やから今回も例に漏れずグムのフライパンを洗いながら考え事してた。

 

 

レユニオンってオリジムシどっから持ってきてんねやろ。とかそういうことを。

 

いや考えたところでわかるわけないんやけど…。どうでもええこと考えるってそういうことやん。

あれって鉱石病で変化した生き物なんやろ。知らんけど。

レユニオンがおらんとこでもよく見ることはあったわ。にしてもあいつらホンマどっかで栽培してんのかってくらい持ってくるしなぁ。

そもそもあいつら操るとかできるんやな。ズルやん。ウチでも真似できんやろか。

 

そこまで考えていたところで無意識にロドスのことをウチと呼んでしまった事に気づく。

 

…所詮外部協力者でしかない事は前回の集金日でも改めて突きつけられてしまったのに。

 

あかんなぁと一人苦笑する。旦那はんがあんなんなせいかちょっとその辺りが緩いまんまや。

出過ぎた真似しすぎると旦那はんにまで迷惑かかるし大人しくしとかんと。

 

寂しい気がしないでもないけどこれは仕方ない。ペンギン辞めてロドスに入るっていうんはどっちの義理も通してないと思うし。

 

ロドスで働くんは楽しい。給料もええ。飯もうまい。人間関係で悩むこともない。

それは確かやけどウチはとどのつまり自分のためにしか働けん。

他のみんなみたいに使命感に燃えて動くのは性根の部分で向いてへん。

 

やけどまぁそれでもええんちゃうかなって最近思う。思えるようになった。

全員の足並み揃えたら躓く時も共倒れや。一歩引いたところで付き合うっていうんはもしもの時に役に立つ。

エクシアとソラはちょっと入れ込みすぎな気がせんでもないけど…テキサスはウチもようわからん。あれ、そう思っとんもしかしてウチだけか…?

 

ま、まぁ勿論もしもの時なんかこんのが一番やけど…なんか起きそうな気がするんよなぁ。

 

蛇口を閉めてフライパンを布で軽く拭く。

 

難しい事は知らん。ウチが理解できるとも思わん。やけど、矛盾するようやけどできるだけのことはしようと思った。

 

初めてできた愛弟子のためやと思えば、そんなに面倒くさいとも思わんかったから。

 

 

 

 

 

 

 

【ドクターの幸福】

 

「なんでこう喫煙者ってご飯の後絶対煙草吸うのかな。」

 

グムが鼻をつまみながら不満そうにそう言った。

この場で煙草を吸わないのはグムとプラマニクスだけだが、プラマニクスは煙草を忌避していなかったしグムは目的を果たしたためすぐ帰ると思ったのだが…。

 

「飯食ってる時は煙草吸えへんかったからやろ。」

 

「えぇ…病気だよもう…。」

 

「一緒にするな、私は…。

…ドクター、得意の頭脳労働の時間だ。言ってやれ。」

 

「思いつかなかったんですね、ドーベルマン教官…。」

 

ふむ。クロワッサンの言うこともあながち間違いではないが。

いつか禁煙について調べていた時の記憶を引っ張り出しながら口を開いたが、その前に今まで静かだった人物に遮られる。

 

「習慣でしょ。」

 

「プラチナ…あんたが寝よる間に片付け全部終わったで。」

 

「ごめん。」

 

彼女はそれほど悪く思ってなさそうな顔で煙草を咥えた。

 

「…まぁ、そういうことだな。もっと詳しく言えば脳がそういうものだ考えているからだ。喫煙に限らず人間は習慣に従うようにできている。」

 

「じゃあなんで習慣づいたの。」

 

「それは人それぞれだが。クロワッサンの言う理由が大半だと個人的に思う。」

 

「せやって。」

 

「明日クロワッサンは訓練の予定だったな。

最近新しい訓練法を耳にしたんだ、お前で試すことにしよう。」

 

「理不尽。」

 

わいわいと言い合う二人を笑いながら周りが見る。

こういう時間が私はどうしようもなく好きだった。

久しぶりという程ではないのにいつもこういう時は記念日のように得がたい気分になる。

腹の底から突然笑いたくなるような、それでいて泣きたくなるような。

それがどうしてかは解らない。だが本当に大切だと思っているのは間違いない。

 

もしかするとしばらくこんな風に過ごせないかもしれないのだ、たまにはこういうのもいいだろう。

おもむろに立ち上がって給湯室に向かう。

 

「パフューマーに茶葉をいくつか分けてもらったんだ。いる奴は?」

 

振り返って見てみれば全員が手を挙げていた。

喜ばしいことにもう少しこの突然の食事会は続きそうだ。

 

 

 

 

 

 

 




やっと今回の話書き終わった…長かった…。お待たせして申し訳ない…。

次から龍門編にします。
龍門編書き終わるのが先か5章終わるのが先か…(まだ4-10も未クリア)
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