おはようございやす。夜叉烏です。
久しぶりに本作を投稿です。
戦闘が終了し、一般兵が一息ついていたギムでは、韓国政府が提案したロウリア王国への逆侵攻計画が葛堅を通して、先ほど到着したノウ将軍やモイジらに伝えられていた。
「逆侵攻…ですか」
普通であれば考えつくこともない内容だが、こうして被害なしで敵を壊滅させ、自分たちにそれを成しえる力があることが判明した今、驚くようなことではなくなっていた。
「はい。我が国政府はこの戦争を早期に終結させるべく、敵首都ジン・ハークの占領および、国王ハーク・ロウリア34世の捕縛作戦を実施する、とのことです。その際、貴軍の助力を求めたいのですが…」
それを聞き、クワ・トイネ側は内心で韓国の態度を評価した。
韓国軍であれば、公国の手を借りずとも作戦は遂行できるだろうし、仮にノウらに知らせないまま実行もできるはずだ。
韓国は、クワ・トイネ側にも活躍の場を与えようとしていてくれているのだ。
「なお、この案件は貴国の上層部へは伝達済みです。カナタ首相は参加について、現場の判断に任せると仰っておりましたが…」
モイジはノウの顔をチラリと窺う。
彼はその視線に気づくと、やってやろうじゃないか、と言いたげに力強く頷いて見せた。
話の分かる上司に笑みで返すと、ノウがクワ・トイネ軍を代表して答える。
「是非、我が軍も参加させていただきたい」
力強い返答に葛堅は笑顔で頷くと、作戦の説明を始めた。
「まず、貴軍と我が軍がジン・ハークへ点在する各軍事拠点に長距離攻撃を実施し、後に市街地へ突入。敵軍の混乱を狙います。出撃してきたワイバーンは空軍が対処。制空権確保が完了次第、特殊部隊を乗せたヘリをハーク城へ飛ばし、降下した特殊部隊によって城を制圧。国王ハーク・ロウリア34世を捕縛します。貴軍には、我々とともに特殊部隊突入前の準備攻撃を行っていただきたい」
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ハーク城の寝室にあるベッドの上では、国王ハーク・ロウリア34世がシーツに包まったままガタガタと震えていた。
自信満々に戦勝報告を齎しにくるはずだったパタジンは、東方征伐軍が文字通り全滅した旨を伝えてきたのだ。
震える声で詳細を話すパタジンの言葉もショックのあまり耳に入らず、耐えられなくなったハークは民間人の疎開と残存全軍を首都防衛に回すように指示して彼を下がらせ、その後即座にベッドへ滑り込んだのだった。
彼の頭の中にあるのは、戦争を引き起こした自分を血眼になって探し回っているであろう敵に対する恐怖と、せめて無辜の民を守らなければという責任感だ。
民間人の疎開は始まってはいるが、まだ時間は掛かる。
攻撃を開始するのはせめて民の避難が終わってからにしてくれと、相手に聞こえないのもお構いなしに祈り続けた。
彼の願いは叶うことになる。
MQ-9"リーパー"の偵察によって民間人の避難を確認した韓国政府は、人道的見地から攻撃を待ったのだ。
完全にもぬけの殻となった民家は戦後の再建を約束して家主から徴用し、それらを最大限利用することで地の利を生かした市街戦を展開していくことになる。
無論、郊外にも多数の軍勢を配し、ワイバーンの哨戒飛行もローテーションで行っている。
来るなら来い、と虚勢を張り、再びシーツに包まって目を閉じたが、結局彼は朝まで一睡もできなかった。
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ジン・ハーク東方30キロの地点では、多数のテントによる陣地が形成され、そこに葛堅やノウ、モイジたちがディスプレイを見つめながら作戦開始の時宜を見計らっていた。
「葛堅殿、民間人はすべて疎開したようだ。攻撃を開始しても何ら問題はないと思うが…」
ノウが葛堅に催促する。
疎開が終わるまで3日がかかり、クワ・トイネ側の兵士は殺気立っている者も多い。
ディスプレイにはMQ-9"リーパー"の偵察活動によってジン・ハークの街並みが映し出されているが、鎧を着た兵士以外、民間人らしき者は見当たらない。
「…そうですね。仮にまだ残存していて戦火に呑まれたとしても、それは彼らの自己責任として片付けられます」
「では…」
そう言ったモイジに軽く頷くと、麾下の部隊に指示を出す。
「空軍に援護要請!戦闘機掃討を実施せよ!」
「目標、敵首都郊外の敵部隊!攻撃開始!」
「全部隊に告ぐ!手筈通りに攻撃開始!」
葛堅とノウの命令が無線を通して伝えられ、まず砲兵たちがK9A2 155ミリ自走榴弾砲"雷鳴Ⅱ"、K239 MLRS"天武"、K105A1 装輪105ミリ自走榴弾砲"天雷"、K136 MLRS"九龍"に乗り組んだ。
一拍置いて、耳に響く砲声が幹部たちに聞こえてきた。
後方に陣取る韓国陸軍のK9A2は日米と共同で開発された58口径の長砲身155ミリ榴弾砲を装備しており、65キロ先の敵を正確に砲撃できる性能を有する。
また、クワ・トイネ軍へ供与されたK105A1 装輪105ミリ自走榴弾砲は口径は小さいものの、砲身長は65口径と長いため、同口径の榴弾砲の中では最も射程が長く、最大32キロを誇る。
直径155ミリ、105ミリの榴弾が放物線を描いて敵の頭上から落下し、敵部隊の直上で信管が炸裂するや、着弾点に存在した兵士や魔物を吹き飛ばし、投げナイフのように破片を撒き散らし、肉体を切り刻んでいく。
ほぼ同時に、K239 MLRSからはKTSSMが発射されている。
これは米国製のATACMSミサイルを見習って開発されたMLRS発射用の大型戦術ミサイルだ。
基本的には高性能炸薬を搭載した簡易的な弾道ミサイルだが、小型誘導滑空爆弾を撒き散らすタイプの弾頭も搭載できる。
"玄武-1"の後継として、最新鋭巡行ミサイル"玄武-3C"、同じく最新鋭の"玄武-2C"、開発中の"玄武-4"弾道ミサイルよりも安価な戦略兵器として、北朝鮮軍の人海戦術に対する有効な攻撃手段だと太鼓判を押されていたが、その性能は異世界の戦場でも存分に発揮されていた。
ほぼATACMSの踏襲に等しいが、威力や射程はそれに劣らず、コスト面と命中精度では有利であり、シーカーを変更すれば対艦ミサイルとして使用することも可能だ。
一方、クワ・トイネへ輸出されたK136 MLRSも簡素な造りながら、130ミリロケット弾36発を18秒で撃ち尽くす性能を持っている。
MLRSの部隊はワイバーンの飛行場を目標に砲撃し、石畳の滑走路を余すところなく耕し尽くし、煉瓦で建てられた管制塔や竜舎を木端微塵に吹き飛ばしていく。
KTSSMは大型の通常弾頭(高性能炸薬350キロ)を搭載したバージョンを1両当たり2発づつ発射しており、着弾の炸裂音は葛堅たちのテントへも微かに届いていた(だが、絶え間なく鳴り響く砲声によって彼らが気付くことは無かった)。
『中将!空軍の来援です!』
通信兵が葛堅にそう報告した直後、ジェットエンジン特有の轟音が聞こえてきた。
韓国空軍のF-15Kだ。
圧倒的な爆弾搭載量でもって敵地上部隊を駆逐するのが主任務であるが、AIM-120"AMRAAM"20発も搭載できるため、同じくAIM-120"AMRAAM"を8発抱えるKF-16Eとともに制空戦闘へ参加していたのである。
ワイバーン部隊は中距離空対空ミサイルの前に次々と肉片に変わり、数分も経たないうちに直掩隊は制空権を韓国・クワ・トイネ側へと開け渡した。
やや遅れて、爆装したクワ・トイネ空軍のFA-50が城壁へMk.82 500ポンド爆弾を一斉投下して崩壊させ、25ミリバルカン砲の機銃掃射を浴びせる。
通りに沿って夥しい土煙が上がり、直撃を喰らった兵士が文字通り消え、魔法使いの使役する魔獣も木端微塵になるか、四肢のどれかを吹き飛ばされて絶命していく。
「「戦車、前へ!」」
葛堅とノウの命令で、擬装用の草木を纏ったK1A2、K1A1戦車が、その後ろへ隠れるようにK21歩兵戦闘車とK808・K806装輪装甲車が前進を開始した。
少なからず長距離攻撃を生き残った兵が、時速70キロ近い速度で突進してくる異形に驚きの表情を向けたが、そのときには轟音とともに120ミリ滑腔砲、105ミリライフル砲からキャニスター弾が放たれていた。
銃弾並みのスピードで飛び散った鉄球が鎧を纏う屈強な兵たちを薙ぎ払い、無数の凶弾を体中に食い込ませたゴーレムが絶叫を上げながら地を這う。
砲塔上のT75K 20ミリアクティブターレットとK10B 7.62ミリ同軸機銃も火を噴き、背中を見せる敵を撃ち倒しつつ騎兵を轢き飛ばしながら前進を続ける。
戦車の後方を行く歩兵戦闘車・装輪装甲車たちも40ミリ機関砲、105ミリライフル砲を乱射しながら荒地を駆け抜け、各車が崩壊した城壁を超えて市街地へと侵入していく。
「総員降車!市街戦になるぞ!各自十分注意しろ!」
K2C1小銃を抱えた韓国兵、クワ・トイネ兵が車両から降り、待ち伏せを警戒しつつ建物のクリアリングを実施する。
銃身下部のレールへ装着したM203グレネードランチャーでドアを突き破り、またはC4爆薬で木っ端微塵にし、部屋に侵入するや、爆発に驚いている兵を5.56ミリ弾で蜂の巣にする。
隙を衝いて向かってくる勇敢なロウリア兵もいたが、近接戦闘に特化した北朝鮮兵との戦闘を経験してきた韓国兵、国防のため厳しい訓練に明け暮れていたクワ・トイネ兵は怯むことなく銃剣やナイフで受け流しては斬り伏せ、訓練で叩き込まれた体術を駆使して戦闘不能にしていく。
『
後方上空から、ジェットエンジンとは違う空気を叩くような音が聞こえてくる。
十数機のAH-64Eを従えたKAI-LUH“スリオンMk.2”が飛来したのだ。
「葛堅殿、特戦司とは?」
「我が大韓民国陸軍の中で、最も精強な戦闘部隊になります」
米軍のグリーンベレー、日本国自衛隊の特殊作戦群も認める、大韓民国陸軍の特殊部隊である。
構成員は一般歩兵など比較にならない厳しい訓練を受けた、文字通りの精鋭だ。
国王の捕縛まで30分はかからんだろうと思いつつ、葛堅は部下へ指示を出し続けた。
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「降下!」
隊長
ハーク城の無駄に広い庭園のど真ん中に足を降ろした彼らに、隠れていた近衛兵が驚きの表情を浮かべていたが、弓を向ける間もなくスリオンMk.2のドアガン――GAU-19 12.7ミリガトリング砲と、前方固定のM134ミニガンの射撃を浴びせられて沈黙する。
護衛のAH-64Eは城の外壁に70ミリロケット弾、K-AGM″隼″を叩き込み、特殊部隊の突入孔を形成した。
個人の趣味でフォアグリップやレーザーサイトを取り付けたK2C1小銃を抱え、城内へ侵入すると、やはりというべきか近衛兵の待ち伏せに遭う。
だが、優れた銃火器と、死と隣り合わせの厳しい訓練で叩き込まれた格闘技術を持った隊員たちにとって、精鋭の近衛兵と言えど雑兵に変わらなかった。
少しでも時間を稼ごうと構築された即席のバリケードはGLX-160グレネードランチャーの榴弾で兵諸共吹き飛ばされ、近距離戦で勝機を見出そうと向かってきた近衛兵は銃身下部へ取り付けたイサカM37ショットガンの射撃と毎分700発以上の発射速度で放たれる5.56ミリ弾、銃剣やマチェットソードの剣戟によって返り討ちにされる。
「次だ!」
安宋が両開きの扉を蹴破ると、鎧を着込んだ壮年の大男に数人の部下、メイド2人が彼らを出迎えた。
男たちは憮然とした様子で特戦司の隊員を見据えているが、後者は絶望的な表情を浮かべ、脚と直下の床が濡れている。
「皆様、お初にお目にかかりm…」
前口上を無視し、兵に向けてK2C1小銃の引き金を握る。
一瞬で眉間を貫かれ、床へ崩れた死体を目の当たりにしたメイドは卒倒し、それらを尻目に玉座の間へ続く扉を乱雑に開け放った。
中に居たのは、体格の良い老人だ。
僅かに怯えはしていたが、肝が据わっているようで見苦しく逃げるような真似はしなかった。
「ハーク・ロウリアだな?此度の戦争について、聞きたいことが山ほどある」
「…好きにしろ」
あっさりと降参を宣言した彼の両手に手錠がかけられた。
「…貴様らは魔帝軍か?」
「魔帝とやらは知らんが…それも後でたっぷりと聞かせてもらおう」
閲覧ありがとうございました。
次回は戦争を受けての軍拡について書いていこうと思います。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。