異界の太極   作:夜叉烏

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 こんにちは。夜叉烏です。

 今回は短めです。軍拡の様子と転移までの描写を書きました。

 海軍が強化されています。


転移

 「ふむ、軍拡は概ね予定通りか」

 

 大統領官邸の執務室で、大韓民国大統領『李舜南(イ・スンナム)』は書類を見ながら独り言ちる。

 襲い来る赤い波に対抗する力が日に日に強まっていることに、内心で頼もしく感じていた。

 

 北朝鮮を下した後、復興を推進するとともに、同国との国境線全域に全高5メートルの鉄柵を設置し、繋がりを完全に断ち切った。

 いくら西側でも経済が潤っている方である韓国とはいえ少なからぬ北朝鮮人民の生き残りを抱える暇はないため、手を下さずに放置という処分が下された。

 

 戦闘の終結後、ソ連と中国は役に立たなくなった傭兵を解雇するかのように北朝鮮へと侵攻し、領土を分割して占領した。

 国境線では近代的な戦闘服に身を包みんだ兵士がこちらを睨み、T-90、99式戦車といったソ中の戦闘車両が陣取っている。

 韓国は、北朝鮮よりも遥かに強力な二国と国境線を接することとなったのだ。

 

 陸軍はK1A2の増産および後継のK2戦車の開発を推進し、その他装甲車両の増備が行われる。

 AH-64E攻撃ヘリの追加購入も米国へ申請したほか、OH-58"カイオワ"をベースとした国産の軽攻撃ヘリコプターの開発も完了したため、部隊配備が進んでいる。

 在韓米陸軍の部隊も順次到着し、最新鋭のM1A2 SEPV6などが国内へ次々と送られており、弾道ミサイル防衛のためのTHAAD、爆撃を担い突撃してくる航空機に対するKSAMなどの自走地対空ミサイルも各地に配備され、報復攻撃を行うための玄武-3C巡行ミサイル、玄武2-C弾道ミサイルの搭載車両が多数展開し、発射準備を整えている。

 

 また、黄海で警戒任務に就いていた忠武公李舜臣級駆逐艦の一隻が、中国海軍の054A型フリゲートに追跡されたり、日本海へ展開する大邱級フリゲートの戦隊が、ソ連海軍のアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートに異常接近されたりと、海上でも緊張の動きが高まっている。

 

 海軍は現在、空母としての任も兼ねる強襲揚陸艦2隻、イージス艦4隻、駆逐艦10隻、フリゲート28隻、ミサイル艇24隻、潜水艦8隻、他支援艦艇多数と、陸軍国家らしからぬ海上戦力を保持している。

 

 これは、黄海や日本海で行動を活発化させている中国・ソ連海軍に対抗するためだ。

 黄海側は首都ソウル、仁川、水原、光州など、日本海側は釜山、蔚山といった経済都市がある。陸上の国境線のみならず、海上からこれらを占領するために攻めてくることも考えられたためだ。

 また、西側でも有数の陸軍を保有する韓国を、なんとしても中東情勢をめぐる紛争へ引き込みたかった各国の要請と支援の下、まとまった揚陸戦力も保持している。

 

 実際、各海の沖合ではソ中軍艦の出没が相次いでおり、そういった動きが顕著となったことから、海軍にもかなりの予算が下りたのだ。

 民生品・軍需品問わない韓国製品の大量輸出により、経済的に潤っていたため可能な軍拡だった。

 

 現在は、輸出用を除く艦艇建造はほとんど行っていない。

 水上艦艇は、忠武公李舜臣級駆逐艦の建造が10番艦で取りやめられ、大邱級フリゲートや犬鷲級コルベットに的を絞って建造数を増やしている。

 

 対中国では台湾海軍と、対ソ連では日本国海上自衛隊と共同で対処することとなる。

 

 空軍では、F-16Vの購入を米国へ打診したが、自国軍と台湾空軍、イスラエル空軍への供与分でいっぱいであり、購入となるとしばしの時間を必要とするため、その案はお蔵入りとなった。

 その代わりに、KF-16のアビオニクスを最新鋭のものへ換装したKF-16Eの配備を進めている。北朝鮮地上部隊への攻撃に活躍したF-15Kは、Su-35や、J-11Bといった機体の国境近くへの配備を見て、当初20機の追加配備案が却下され、倍の40機の増産が決定された。同機は既に、KF-16Eともども各企業で量産が進められている。

 

 日本と共同で開発が進められているステルス戦闘機――韓国名KFXの開発は終了し、量産化のための試験が彼の機体を待っている。採用された暁には、KF-21の名称が与えられることが決定している。

 日本でもF-3の名前で採用され、千歳や厚木、那覇の飛行場へ配備する予定とのことだ。

 

 米国より購入したF-35を日本とともに改良し、A型・C型の空戦能力、B型のVTOL能力を兼ね備えた新型の機体を両国で採用し、韓国ではソウル、烏山、大邱といった地域の空軍基地へ積極的に配備されているほか、強襲揚陸艦に搭載される機体も量産が進んでいる。

 また、アメリカ製巡行ミサイルのLRASMの導入も決定し、量産が行われ、空軍への配備が行われ、実戦配備されている。

 

 ――軍事関連の書類から目を離すと、窓からソウルの街並みを眺める。

 

 北朝鮮の長距離自走砲の砲撃によりほぼ壊滅状態となっていた市街地は復興が進み、足場とクレーンに覆われた高層ビルが散見された。大穴が開いたアスファルトの地面も埋め戻され、瓦礫も片づけられている。

 だが、道路のあちこちには銃を持った兵士や、装甲車両などが控えており、物々しい雰囲気を醸し出している。

 

 それを別にすれば、道路にはいつもと変わらない国産自動車が走り回る光景があったが、先の紛争前と比べて、車の流れは不活発だ。交通量も少ない。

 自宅が半壊又は全壊した者たちが、郊外へ設けられた仮設住宅へと住まいを移しているのもあるのだろうが、やはり一番の原因は再発した北朝鮮との争いだろう。

 彼の国の先制砲撃の恐怖を体験した多くのソウル市民たちが、他の都市へと流出しつつある。

 

 首都が砲の射程内というのであれば、ソ連や中国のものでも十分届く。わざわざ弾道ミサイルなどを使用しなくても、遥かに安価な榴弾を多数撃ち込めば、相手の本丸を制圧できるのである。

 ソ連も中国も、恐らくは同様の手段で韓国を攻撃してくるだろう。

 

 どうせまた壊されてしまうのであれば、復興の必要はなかったのではないか。それよりかは軍官民全員を釜山や仁川へ避難させ、復興分の予算を軍拡や戦死者家族への補償、仮設住宅建設へ回した方がよかったのではないか、との考えが、スンナムの脳裏をよぎった。

 

 「失礼します、大統領。これからの予定をお伝えに参りました」

 

 ノックしながら入室してきたのは、大統領首席補佐官の『金平尙(キム・ピョンサン)』だ。タブレット端末を抱えながら、執務机の前でそれを立ち上げた。

 

 「午前10時半から国防省との対ソ・対中戦争に関するブリーフィングを、その後昼食を挟みまして、午後1時半より仮設住宅街への訪問ですね。16時からはヒョンビン重工の新型戦闘機の視察です」

 

 「ほう。あのステルス機が遂にか・・・」

 

 ゴンサンの言葉に反応し、腰を浮かした。日本とともに開発したあの機体があれば、ソ連も中国も恐るるに足らない、と言いたげだった。

 だが、すぐに表情を戻すと、冷静にその先を続けた。

 

 「・・・だが、いくら強力とはいえ、数が揃わなければな。その点については、企業の方と会談が必要だ。十分な数を量産できるよう、こちらもできることをしなければならない・・・」

 

 その直後、窓の外から強烈な閃光が執務室へと差し込み、2人の姿を覆いつくした。

 

 

 

 




 
 閲覧ありがとうございます。

 韓国艦艇は結構かっこいいのが多いので大好きです。

 兵器の設定集は後々書いていきます。

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