お待たせしたようなら申し訳ありません。
戦場を俯瞰で見下ろすと言う行動は重要な要素である。同じ方向ばかりからの情報では偏りが出来てしまうし、視界を広く保つ事で盤面を多角的に観察する事が出来る。情報の多様性とはつまりそれだけ引き出しが増え、生き延びるための手段が増えると言う事に相違ない。
だから彼女達は今、木に登っていた。それは日差しが中天を過ぎて暫し経ってからの事である。
「たーいちょー、見つけましたー。間違いなく人工の施設、恐らくは目標の兵器工場ですね。聞いてますか、お荷物たーいちょー?」
「聞こえてるよ、チョコジャンキー。やっとこさ見つかってくれたか。このピクニックも漸くと終わりが見えて来たな」
熱帯雨林には珍しい太い幹を天高くまで伸ばした立派な樹木によじ登り、その枝の一つに腰かけて裸眼で周囲を観察する無表情な副隊長が声を上げる。それに応えるのは副隊長よりも低い部分の枝に腰かけて、双眼鏡を覗き込んでいるお荷物――仏頂面の青年隊長その人であった。
副隊長がライフルのアイアンサイト越しに見つけた施設に双眼鏡を向けて、不機嫌そうだった口元をニヤリと笑みの形に歪めて見せている。
「あはっ、隊長機嫌治った、ね? うふふふっ!」
「……ん」
その青年隊長の更に下には、ニコニコ笑顔の索敵少女と大荷物を背負う無口な少女がセットで木の枝に腰かけていた。二人の手には綺麗に四等分にされた板チョコが握られ、二人はそれをモクモクと静かに口に運んでいる。
そしてそれを、無表情で横目に見る副隊長。その全身からは、表情には表れない濃密な不満の色が見て取れた。
「どうしたぁ、副隊長? 珍しく不機嫌そうじゃねぇか」
「気のせいじゃないですか、お荷物さん。私は何時でも、ニコニコ笑顔でご機嫌ですから」
ピクリとも表情筋を動かさずに言ってのける副隊長だが、その視線はチラチラと咀嚼されるチョコレートに誘導されている。そう、その様子を一言で言い表すならば、すまし顔で『待て』をしているが尻尾だけはブンブンと振っている犬であろうか。
この二人にしては非常に珍しい事ではあるが、ぴりぴりとした剣呑な雰囲気を纏いつつ言葉を交わしている。原因は言わずもがな、琥珀色の魅惑的な菓子のせいである。
「アンタ達、まだ夫婦喧嘩してた訳? いちゃつくのも結構だけど、目標が近づいて来たんだから気を引き締めなさいな、このとうへんぼくとチョコマニア」
そんな状況で一触即発で居る隊長副隊長に対して、木の下から声を掛ける者が居た。それは銀の髪を持つ斥候少女で、その手にはやはり四分の一の板チョコが握られている。
勿論それを見て、副隊長の不機嫌オーラはどす黒さを増す。顔色が変わらない代わりに、手に持つ銃がカタカタと震えだす程に力強く握り締められている。
「ははっ、顔色変わらねぇのにすげえ殺気だな。チョコレート一つ没収するって言っただろう? 姫の方は『命令』使っちまったから、お前さんにもなんか罰が無いと不公平なんだよ。解れ」
「理解はしましたが、納得はしてないだけです。あと別に、殺気出す程執着とかしてないですから。勘違いしないでよね、って奴ですよ。えーっと、このとーへんぽく?」
何と言う事だ、ツンデレが増えてしまった。しかも、凄いやる気のない棒読みのツンデレ台詞。これはいけない、益体も無い。ついでに話も進まない。
「ツンデレは二人も要らねぇよ。なんか段々面倒臭くなってきたから、残念な方のツンデレに俺の分だけ返すわ。四分の三の没収にまけてやんよ」
「言うに事欠いて残念な方とは失礼な。大体、そんなちょっぴり返された位で私が満足するとでも――はむぅ!!」
なんかもう、とても面倒臭くなった青年隊長は胸ポケットから銀紙に包まれた板チョコを取り出し、それを剥いてから無造作に上に向かって放り投げた。勢いあまって上に居る副隊長を通り過ぎ、落ちてきた所をパクッとお口でキャッチする副隊長。ぶつくさと文句は言っても、好物の魅力には抗えないと言う事だろう。
もぐもぐと固くて溶けにくいチョコを咀嚼する為に、敵地である筈だった密林は実に静かになった。
「立派な方のツンデレさんは、周囲の探索を無事に済ませてくれたんだろうな?」
「当たり前じゃない。じゃなきゃ戻ってきたりしないわよ。それから、私にデレの成分を期待するとか、愚かしいにも程があるわよ」
気を取り直した青年隊長が訊ねれば、打てば響く様な返答を斥候少女が繰り出して来る。一息で木の根元から青年隊長の座る枝まで跳躍し、すたりと降り立てば両手を腰に当てながらフンスと胸を張って見せた。そう、彼女はツンデレでは無くツンギレなのだ。デレが有ると思う事こそ愚の骨頂。
そんな彼女が一人先立って偵察してきた結果解った事は、このままでは間違いなく敵の警戒網に引っかかると言う事だった。
「流石に敵の施設の近くね。機能してるんだかしてないんだか解らないぐらいの、馬鹿みたいな数の罠がごろごろしてるわ。引っかからない様に通ること自体は可能だけれど、お勧めはしないわね」
「一々解除して回ってたら周回偵察に見つかる、か。こりゃ正面から挑むのは無理そうだな。やっぱ元々の考え通りに、下水処理施設からの侵入を狙うとするか」
斥候少女からの報告を聞いた青年隊長は、真っ直ぐに施設に向かう事を早々に断念。川辺から工場まで続いている筈の下水処理用施設からの侵入を決定する。他には正面突破での潜入や強行突入などの案があったが、どう考えても全滅する未来しか見えないのでこうしてわざわざ偵察まで出して周囲を探索していたのだ。
ならば、最早する事は明白だろう。
「よし、総員傾注。補給と装備の点検が終わったら、勝手口から敵施設にお邪魔する。お隣さんの歓迎に遭っても恥ずかしくない様に、身だしなみはしっかり整えておけよ」
「はーい、たいちょー。お出迎えに対しての返礼は鉛玉でよろしいですか?」
「良きに計らえ。って言いたいところだが、基本的にはお行儀よくだ。総力戦になったら不利ってレベルじゃねぇからな」
基本的な方針は潜入だが、ここまで来れば不軌遭遇戦は当たり前に起こりうる。もし敵勢力と遭遇すれば交戦は避けられないだろう。そのまま増援を呼ばれたら、工場施設と総力戦すらあり得るかもしれない。そうなれば、最悪の場合は全滅の可能性もあるだろう。
青年隊長の任務はあくまでも工場施設の破壊ではあるが、人員の損耗は可能な限り避けたいと言うのが正直な所。彼の上司もそれを望んで居るので、むしろこの考え方は軍人的に外れていても彼らにとっては正しい事である。
「んじゃま、さっさと行ってお土産をばらまいて帰るとしますかね」
青年隊長の声に全員の視線が無口な少女に集まり、彼女は背負っていた自身の身体に迫る程に大きな背嚢をこれ見よがしに背負い直して見せた。その中には、青年の言うお土産がぎっしりと詰まっているのだから。
それから程なくして、一行は目的の下水処理施設を探す為に出発した。山ほどの土産を届ける為に。
辿り着いた下水処理施設への入り口は、正確には下水の排出口だった。
森の中にぽっかりと口を開けるコンクリート製のトンネルにおざなりな鉄格子がはまっており、その大きさは成人男性が悠々と出入りできる程に巨大さを誇っている。鉄格子の脇には出入りの為の格子戸が有るが、それは錆ついた太い鎖と南京錠で雁字搦めになって封鎖されていた。扉の奥は壁と同じ材質の足場が光の無い深淵へと伸びており、それは工場施設の方向に延々と伸びているのだろう。
「レトロに厳重なセキュリティだ事。誰かピッキングとか出来る奴いるか?」
「はい、はーい。これを使えば一瞬で開けられますよー」
青年隊長が南京錠と鎖を眺めながら仲間達に問えば、それに副隊長が無表情のまま答えて手にしていた長大な銃器を仰々しく差し出して見せた。距離如何で鉄板を貫通する対戦車ライフルならば、確かに錆ついた鎖など簡単に切断する事だろう。
それはもう盛大な轟音と共に。
「足の沢山生えたお巡りさんが来ちゃうから却下。仕方ない、ここは本職に任せよう。つー訳で、頼むわ無口さんや」
「……ん!」
呼ばれて前に出たのは荷物運びに従事していた無口な少女。勢い込んでズズイと鎖だらけの格子戸に近づくと、彼女は太腿や腰のポーチから幾つかの部品を取り出し、慣れた手つきでガチャガチャと組み立て始める。
そうして完成したのは、地雷の撤去や有刺鉄線の除去等に使われる大型の鋏であった。両手でそれぞれの柄を持って、バチンバチンと鉄製の鎖を針金の如く切断して行く。組み立ての速さもさることながら、その手際の良さはその場の全員が思わずオオと感心する程であった。
作業が終われば大鋏は再び解体されてポーチに収まる。後に残るのは、フフンと得意げにする無口な少女ばかりだ。
「よっ、りゅうせきだね、ながれいしだね、さすがだね。んじゃ、こっそりとお邪魔させていただきますか」
「施設内だから罠よりも、むしろ監視カメラとセンサーが心配ね。出来る限り気を付けるから、皆私の通った所だけを通る様にして」
斥候少女が何時ものように先頭に立ち、短機関銃を片手で構えながら慎重に格子戸を開け放つ。後に続く順番は今回は青年隊長と大荷物の運搬少女。そして背後を長物を持つ副隊長と、突撃銃を油断無く背後に構える索敵少女が並んで続く。
幸いな事に傍らを汚水の川が流れる下水の足場は、人二人は楽に通り抜けられる広さがあった。更には鼻をつんざく様な異臭もあまり感じない為に、精神的に追い詰められる事も無く一行は暗闇の中を突き進む事が出来ている。
先導役の斥候少女の目と経験を頼りにして、本格的な敵の施設への侵入が始まっていた。
「おかしい……、何も無さ過ぎるわ。ねえ、これって罠なんじゃないの? このまま進んでも大丈夫かしら?」
「んなもん、行ってみねぇと分かんねぇよ。この勝手口が例え罠だとしても、俺達のする事は変わらねぇんだからな。それとも何か? お姫様は不安だからお家に帰りたくなっちまったか?」
先頭を行く斥候少女が前を向いたまま、愚痴とも不安とも取れない言葉を唇から滑らせる。それを拾った青年隊長としては、慰める意味も込めて敢えて突き放した言い方をするしかない。そう言う言い方をすれば、彼の知る限りでは前を行く少女は絶対に発奮するはずだからだ。
「なによ、そんな言い方しなくたって仕事はするわ。余計な気を回してんじゃないわよ、このとうへんぼく!」
「ははっ。そうそう、そうやって気を張っといてくれよお姫様。なんたってここじゃあ、笑い上戸は当てにできないんだからよ」
音響効果の強い空間では音が反響して、正確に敵の位置を探ろうとしてもどうしても誤差が生まれてしまう。故に、この施設に入ってからの索敵少女は、その耳を期待されずに一番後ろで後方警戒に付いていた。青年隊長の言葉が聞こえたのか、心なしか身体を縮こまらせてクスクスと笑っている。笑いの感情しか表に出せない、彼女独特の落ち込み様であった。
「器用な落ち込み方してんじゃねぇよ。お前の出番は工場に着いてからなんだから、今はお姫様に任せて適度に休んでろや」
「あは、あははは……。りょ、了解……。えへへへ……」
乱暴な慰めの言葉でも嬉しかったのか、無理のない笑顔ではにかんで見せる索敵少女。彼女達は基本的に役に立てる事が自己の保存に必要なので、あまり役立たずだと言い続けると無理にでも役に立とうとする危険があるのでフォローが欠かせない。
それはそれとして、精神的に追い詰められていた過去を持つ索敵少女には、あまり負の感情を与えない方が青年隊長の胃にも優しいのである。
「……広い空間に出るわ。足元に気を付けなさい」
「総員警戒……。何が出ても良い様に、腹ぁ括っとけよ」
傍目に汚水の川を眺めながら進む一行は、ついには通路を抜けて広々とした空間に出る事となった。それに合わせて足場も広がり、陣形が青年隊長を中心とした十字の隊形へと切り替わる。そのまま三秒間ほど一同が固まり、周囲に何も無い事を確認すると一先ず構えていた銃を下ろす。
張り詰めていた胸の中の空気を吐き出したのは、中央に居た青年隊長だけだった。
「本当に何も居ねぇな。ここは下水の沈殿槽、位置的に最終沈殿槽か? それ程重要な施設って訳でも無いが、それでも無警戒ってのは気に入らねぇな」
「見張りの姿はともかくとして、この規模の施設に監視カメラの一つも無いってのは確かに違和感がありますね。どうしますたいちょー、このまま一気に奥まで行ってみますか?」
他に工場へとたどり着く道が無い以上、元より引くと言う選択肢はない。副隊長の質問に対して、青年隊長は否とは言えなかった。どうせ今居るのは敵地なのだから、例え罠だろうと相手の喉元に迫れるなら行くしかないのが兵隊と言う物だ。
「……進むさ。んで、工場の責任者にセキュリティーを甘く見た事を後悔させてやろうぜ。職場を徹底的にぶっ壊してな」
「強制的に休日を謳歌させるなんて、たいちょーもなかなか粋な事を考えますね。そこに痺れもしないし、憧れもしませんが。だってお荷物になってましたしねー」
「やかましいわ。そう言う生意気なセリフは、ちったぁ表情筋を動かせるようになってから言いやがれ」
実はまだまだチョコレートの事を根に持っていた副隊長、真顔のままで隊長に対して言葉の棘をぶつけて行く。付き合いが長い分この二人のやり取りは軽快で、流暢に飛び出す言葉の数々には何処か楽しむ様な響きもある。傍から聞いている分には、そのやり取りには微笑ましささえ感じるかもしれない。
あくまでも、ここが敵地の真っただ中でなければ。
「それ以上いちゃつくと言うのなら、ここで隊を分けて二人っきりにしてあげるけど? どうせなら全部終わるまで、アンタ達二人で退路を守ってなさいな。ねえ、良い考えだと思わない?」
「「ハイ! いいえ! すいませんでした!」」
物凄く鮮やかな笑顔で告げて来た斥候少女に対して、隊長と副隊長は共に直立不動に背筋を伸ばして謝罪していた。何故ならば彼女はとても綺麗な笑顔だったのに、その額にはくっきりと青筋が浮かんでいたから。ともすれば、トリガーもカタカタ鳴ると言う物だ。笑顔とは本来攻撃的な物とはいえ、多少大げさでも部下のメンタルは安定させておいた方が良いだろう。
まるで軍人にあるまじき騒ぎ様の後に、青年隊長は大きく息を吐いて周囲を改めて見回す。その表情は先程までとは違い、緩さを排除したきりりと引き締まった物になっていた。
「これだけあからさまに油断して見せても何もなしか。どういう訳か知らんがだったら好都合だ、このまま施設の奥を目指して前進するぞ」
「了解。陣形はこのまま、こちらは油断せずに進みましょう」
気持ちを切り替えた指揮官に合わせて、部下達も一人を除いて表情を引き締め周囲に銃口を向ける。言い出しっぺの副隊長は無表情だし、荷物を運搬する無口な少女に至っては銃すらない。なんとも締まらないが、気は引き締まっているので問題は無いだろう。
そうして一行は、敵の気配も罠も無い処理施設を進んで行った。幾つかの沈殿槽と化学薬品処理の為の浄化槽を横目に見送って、役割ごとに分かれた施設内を闊歩していく。
その途中で発見した事柄だが、罠や監視カメラを設置した痕跡は確かにあった。だが、それらは壁や床に痕だけを残して、綺麗さっぱりと取り外されていたのだ。理由はわからないが、施設が動いている以上は放棄された訳でも無いらしい。悩むだけ無駄だと判断して、次第に強くなって行く臭いから逃れる為に一同は行軍を再開する。
そして最終的に辿り着いたのは巨大な排水パイプが埋まる壁と、恐らくは地上に向けて垂直に伸びる金属製の梯子が一つ。どうやらここが、この施設で歩いて行ける最深部の様だ。
梯子を上る順番は斥候少女が先頭なのは当然として、地上に出るのを見越して索敵少女がそれに続く。青年隊長は真ん中で、大荷物の無口な少女を先に行かせて副隊長は相変わらず殿を務める。
ちなみに全員色気の無いズボン姿なので、登る為に見上げる形になる青年隊長的にも一安心だ。
「皆止まって、ハッチまでたどり着いたわ。罠に警戒するけどいざとなったら、私達二人を盾にしてでも生き残るのよ?」
「例え罠があっても何とかしてくれるって信じてるよ、お姫様。良いから俺に、お前らのケツ以外の光景を早く見せてくれ。色気もねぇのにフリフリされてっと、気の毒で心が痛くなるんだよ」
「セクハラの制裁は後にしといて上げるわ、このとうへんぼく」
長い長い梯子を登り切ると、突き当りにはコンクリート製のハッチの様な物があった。それを前にしてひと悶着あったが、幸いな事に笑い上戸が片手で尻を隠しながらモジモジする程度で済んだらしい。後回しになった制裁が気になる所だが、青年隊長はそれ以上は言葉にせず手振りで先に進む様に指示を出す。
本来ならば数人がかりでないと動きそうも無い重たげなハッチを、斥候少女は片手で持ち上げゆっくりゆっくりと隙間を広げて行く。作られた隙間からは赤く染まった光が零れ、地上がすでに黄昏時だと言う事を伝えて来る。その光に負けない様に目を細めて、斥候少女は周囲の情報を真剣に探って行った。
「見える範囲に罠は無い……。持ち上げた感触でも、蓋の上に振動センサーも無いわね。このまま外に出て警戒に移るわ」
「おう、全員出るまで頑張ってくれ。発砲は自身の判断で構わん」
青年が言うが早いか、斥候少女はハッチの蓋を跳ね開けて表に飛び出して行く。そのすぐ後を索敵少女が追って、その尻を見上げていた青年隊長もまた残りの梯子を登る。恐る恐る顔を出してみれば、油断無く銃を構える少女二人が見えた。下を詰まらせる訳にも行かないので、地面に開けられた四角い穴から這い出して周囲を睥睨する。人影も無く夕闇に飲み込まれてはいたが、そこは確かに幾つかの人工の建築物が立ち並ぶ工場施設であった。一行が這い出て来たのは、その高い塀で囲まれた施設の中にあるひらけた駐車場のような場所である。
彼らはついに、待ち望んでいた場所に辿り着いたのだ。
「御勝手口から、お邪魔します。さて、いきなりお土産を配りに行くか、工場長ご挨拶に伺うか迷う所だが……」
青年隊長の言葉に合わせる様にして、ゆっくりと密林の果てに夕日が沈んで行く。暗くなった工場施設は投光器が灯り、光が強く眩くなる程に陰影を深めてくれる。奇しくも敵側の設備によって作り上げられた、潜入にはもってこいの夜だった。
そして、投光器以外に工場施設に明かりが点かない事にも気が付き、隊員達が見守る中で青年隊長の中で行動方針が固まる。
「……ちょっと聞きたい事があるから、まずは工場長を探し出して丁寧に挨拶させてもらおうかね」
漸く手の届く範囲にやって来た獲物に対して、舌なめずりする様にして青年隊長は方針を告げる。それに呼応した部下達は、それに対して声無く頷き各々の装備を改めて構えた。彼女達は青年隊長の指針には逆らわず、生まれて来た本分を全うする為にただ従うのみである。
そうして、機械の虫を操る工場長様にご挨拶するべく、一行は工場の制御室を制圧する為に行動を開始した。
集中力が全然出なくて困ります。
次回は色々な情報が開示できそうですので、不定期でもよければお楽しみに。