金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート 作:シグアルト
なお、読者の方からスキル名に対しツッコミを頂きましたので
『人外の相棒』→『人外の力持つ相棒』に修正しました。
変更前だとほもくんが人間ではない様にも読めるので、彼が石仮面を被る前に変更させて頂きました。ご指摘本当にありがとうございます。
────雨が私の体を叩く、清麿と怒鳴りあった時の怒りが嘘の様に収まっていく
清麿の家へと帰る道すがら、私は昨日から考えていた思考を繰り返した
昨日の戦いを、そこで出会った
◇◆◇◆◇◆◇◆
《「ガッシュと赤い本、渡して」》
その者は、私と同じ位の年齢の少女だった。私の持っている本と同じ様な桜色の本を持つ少年もいたが、その時の私は気に留める事はなかった。
何故ならその者は初対面の筈の私の名前を言った。もしかしたら記憶を失う前の私を知っているのかも知れぬ!
そう思い話しかけようと思った私を遮ったのは降り注ぐ氷柱、その少女は突然口から氷を吐いてきたのだ。何とすごい事が出来る者なのだ、と私ははしゃいだが清麿は顔を歪めその二人を睨みつけた。
《「お前、その子をいったい何処で……?」》
《「この人が拾った。ガッシュも必要。……頂戴》
? ……この者の喋り方には違和感があった、少女が言葉を続ける程にその違和感は大きくなる。
その者の言葉には何の感情も感じないのだ。ただ冷たいだけの言葉。その者の雰囲気に私は圧倒され、話しかける事が出来なかった。
そしてその者は、そんな私を更に驚かせるとんでもない事を言ってのけたのだ。
《「私は夢を叶える為のただの『道具』。『道具』が新しい服を着る必要なんてない」》
……この者、今……何と言ったのだ……?
私はあまりの驚きに言葉を失う。
……何故この者はそんな酷い言葉を平然と言えるのだ? 嘘や冗談でもなく、当たり前の事のように自分は『道具』だと告げているのだ。
もしかしてこの者は機械か何か、心を持たぬモノなのではないか?
そう思って、いや私は『そう思いたくて』知らず俯いていた顔をあげ、再び少女を見る。
……そして愕然とした。
その者の表情は先程と変わっていない、だがその者は私を見て悲しみを浮かべた。それを理解した私は余計にわからなくなる。
何故あの者は冷たく感情を閉ざし、自分を『無価値』だと断じる事が出来るのだ?
……………………
そして氷を私達に飛ばし襲い掛かる者達と、それ迎え撃つ清麿。私は時折意識を失いながらもその者達の攻撃を避け続ける。
だがその最中、私は気付いてしまう。あの少年の方が持っている本は私が持っていた赤い本と同じもの。そしてそれを使い氷を出しているかのような状況に。
やがて清麿は氷付けにされ身動きできなくなる。清麿へと語る少女の言葉は、戦ってる最中に感じていた疑問の答えを見つけるように、私の頭を動かしてしまう。
──私は清麿と一緒にいる時、何度も電撃を清麿が何かの方法で起こし皆を救ってきた。
《「人間がこんな力を持っている筈がない、つまり『化け物』」》
──その時清麿は今と同じ様に“あの少年が持つ本と同じ赤い本”を手に持っていた。
《「でも人の言う事を聞ける『化け物』、だから『道具』らしく人の言う事を聞いていればいい」》
──もしかして、私もあの者と同じ様に口から電撃が出せるのか?
《「『道具』は悔しいとか悲しいなんて感情も持たない」》
そして私も────
《「ただの『化け物』だから」》───あの者と同じ『無価値』な者ではないのか?
「黙れ!! どんな力を持っていようと関係ない。これ以上『道具』等と言ったら承知せんぞ!」
真っ白になり必死に少女の言葉を否定する。認めてしまえば、『無価値』と切り捨てた自分が全て飲み込まれてしまいそうだったから。
私は雄叫びをあげながら、氷付けになった清麿の傍に立つ少女に襲い掛かる。
これ以上、その者の言葉を聞いていたくはなかった。これ以上……考えたくはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「…………ハァ」
考え事を続けていた私の足は止まっていた。
あれから一日経ち私は落ち着いた、もう大丈夫なのだ。それに今は自分の体などより優先するべき事があった。
(あの「自分は道具だ」と言い捨て、全ての希望を失ったかのような虚ろな瞳をした少女。あの者をどうやったら救う事が出来るのだ!)
ひとまず最初に考え付いた『口から色々出せるのはすごい事なのだ作戦』を実行しようとしたのだが失敗した。まず見せる事が出来なければ皆が信用してくれぬ。
清麿に頼んで電撃を出す手伝いをして貰う事も考えたが、昨日から難しい顔をしておる。きっと清麿も清麿であの者達の事を気にしているのであろう。だからこれは、私一人でやらねばならぬ事なのだ。
どうにか何とかして救えないのだろうか。そんな私が思い出すのは昨日感じた恐怖。
自分は『無価値』かもしれない、『道具』としてしか価値がないのかもしれないと一瞬だけ考えてしまった時の事は思い出したくもない。それ程耐え難い恐怖だったのだ。だとしたら……
「自分を『道具』だと言い切っているあの者は、一体どれ程の恐怖を味わっているというのだ」
──────────────────────────────────────
────俺には大切に思っている女性が二人いる。
一人は俺を産み、育ててくれた最高の母さん。そして、もう一人はその母さんを失いどうしようもなくなった俺を慈しみ、癒してくれた大切な少女。
名前はキリカ・イル。今ではキリィと呼ぶ仲になった。
彼女は人間ではない、魔界から来た魔物だと彼女の友達であるキャンチョメとフォルゴレが説明してくれた。
彼女が人間でなくても関係ない。重要なのは魔界の王を決める戦いというものに俺の力が必要だという事だ。当然、俺は何を差し置いてでも彼女の力になると決めている。
……だけど彼女と過ごす数日の間に、“彼女自身の事を知りたい”と考え始めている自分がいた。
キリィは素敵な少女だ。見た目は正直ものすごい美人だし肌や髪も芸術品の様に美しい。最初は恐く感じていた瞳も、今やミステリアスな魅力として惹かれている。
一体、魔界ではどんな生活をしていたんだろう。キャンチョメ達の他にはどんな友達がいたんだろう。家族構成は人間と同じなのだろうか。そんな益体のない思考をしつつも、俺はキリィに直接聞く事はなかった。
キリィは寡黙な少女だが、言いたい事はハッキリ言ってくる。今日だって……
「元就」 「あぁ、新聞なら居間にあるぞ」
「元就」 「おう、醤油だな。ほらよ」
「元就」 「あぁ、戸締りは大丈夫だ。行こう」
意思疎通は完璧だ。
だが彼女は自分の事については何も話そうとしない。『そんな事は重要じゃない』とでも言いたげな雰囲気を感じた俺は自分から聞く事が憚られた。
……だが本当は、少しでも聞くべきだったのかもしれない。一体彼女が、何を抱えていたのかを。
《「つまり俺は一切手出しせず喋らない。呪文のタイミングも任せて欲しいって事なのか?」》
《「そう。お願い」》
《「キリィの頼みなら聞くけどさ。理由を聞いてもいいか?」》
《「ガッシュと、戦う。でも、倒す訳じゃ、ない。育てる」》
《「育てる? 実戦経験を積ませたいって事か?」》
《「ん」》
初めて言ってきたキリィの頼み、断る選択肢などなかった俺は二つ返事で受ける。
俺の手出しを断るって事は、ガッシュって友達を襲うフリでもするのかな? でもキリィ、君に演技は無理だと思う。彼女は表情こそ乏しいが、行動は年相応の所もあるし一緒にいると落ち着くやさしさのようなものを感じる。
でもキャンチョメからこの戦いの厳しさは教えてもらっている、ただの練習相手だとしても、いい経験にはなるのかもしれないな。
……そう楽観視していた自分を殴り飛ばしてやりたい。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今、キリィは俺が連れてきたゴスロリショップの店員にもみくちゃにされて抗議の声をあげている。
その表情には疲れと呆れ、若干の憂いが混じってはいるが微笑ましさを感じる。
《「私は夢を叶える為のただの『道具』。『道具』が新しい服を着る必要なんてない」》
……間違ってもあの戦いの時のような【無】を体言したかのような振舞いではない。
あの戦いの直後はキリィの体が心配だったし、ガッシュ達に向けた言葉は直前に戦った『細川』とかいう最低な男の言葉尻を真似したものなのだろうと理解していたので気にならなかった。
だが今になり、あの時の彼女の様子に不安を感じる。あの戦いの時の『全てを諦めた』虚ろな顔は何だったのだろうか。
万が一にも、あの周囲の心を凍りつかせるような言葉が演技だったなんてあり得ない。つまりキリィには
現にあの時のキリィの冷たい心の奥底には、きっと傍にいた俺しか気付かないような激しい心の機微を感じた。それが完璧なまでにキリィの振る舞いにより隠れていたのだ。
俺は魔界にいた頃のキリィについて何も知らなかった事を後悔する。彼女の背負っているものに気付かず、ただ助けられていただけの自分に怒りを覚える。
もっと相談して欲しい、もっと頼って欲しい。
そんな思いをこめて、店員から解放され休んでいる彼女の負担にならないようイタズラ混じりに伝える。
「これに懲りたら次からは俺にも相談して欲しいな。一人で勝手な事しないでさ」
「ごめん。ガッシュ、友達……友達」
どうやらわかってくれたみたいだ。でも繰返すほどにガッシュって奴の事が気になるのか。
もしかして────
「……そんなにガッシュって子の事が気になるのか?」
「うん、大事」
万感の思いを込めたかのように答えるキリィ。やっぱりそうなのか、君は……。
だけど、それがわかった所で俺のやる事は変わらない。俺はキリィの力になるって決めているんだ。
「……そうか。わかった、協力するよ。お互い勝手な事したしこれでおあいこ。次からは一緒に頑張ろう」
心がチクリと痛んだ。この痛みはきっとキリィと一緒にいる限り消え去る事はない。だけど構わない、今はこの痛みが何よりも愛おしい。
何故ならこの痛みこそが、君の力になるって決めた証に違いないんだから。
──────────────────────────────────────
────俺は家に帰るとカバンと赤い本を机に放り投げ、ベッドに横たわった。
考えるのは先程の喧嘩。その時にガッシュが放った一言。
《「よ、よいではないか! 電撃が吐けるのだぞ。『私達は』人より優れているという事ではないか!! 自慢して何が悪い!」》
「私達……か……」
その言葉の真意に気付き、思わず言いかけていた言葉を止めた。あの力は人殺しの手段になり得る、それを諫めるつもりだったが今にして思えば言わなくてよかったのかもしれないと安堵する。
自分が普通の人間ではないんだと知り傷ついているのは、ガッシュだって一緒の筈だから。
「俺の赤い本とあの男の桜色の本。ガッシュと似た女の子。口から電撃や氷が出せる子供」
俺は思考を切り替え今ある情報を頭の中で整理する。様々な予想や憶測が頭の中で浮かんでは消える。現状ではあまりにも情報が、ピースが足りない。何か決定的な情報がわかっていないんじゃないか? そんな思いが心の奥で湧きあがる
「いや、それ以前に……ガッシュとあの子しかいないのか? あんな力を持つ子供は」
その可能性は低い、ガッシュだけならまだしも、もう一人が現れた今それ以上いないなんて楽観視が出来る筈もない。
そして、あの少女はガッシュを明確に『敵』だと判断し攻撃を仕掛けてきた。
ならば他の子供もガッシュと出会ったら…………
「まずい!!」
即座に飛び起きた俺は、赤い本を掴みガッシュの下へと急ぐ。クソッ、居心地が悪いからって置いていくべきじゃなかった。
だが階段を駆け下り家を出ようとした俺を、インターフォンの間の抜けた音が邪魔をする。
「! 誰だ、こんな時に……。くだらんセールスか勧誘だったらどなってやる!」
そんな悪態をついて扉を開けた俺を出迎えたのは────
「この本を見せれば大体の事情はわかるかしら? 話し合いに来たわ、応じてもらうわよ」
────俺の持つ本を同じ『黒い本』を持った女性と漆黒を纏った男だった。
細川「こいつ(魔物)は夢を叶えてくれる『道具』なんだぜ」
↓
キリィ「私(魔物)は夢を叶える為のただの『道具』。」
セリフの意味を変えずに細川ムーブに変換するとこうなります。
そりゃドン引きされますよね。
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