金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート   作:シグアルト

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Q.この小説、他者視点パートが多すぎないですか?(不安)

A.気にするな!(自己暗示)




16.第三の呪文

 

 ──どうして

 

 

「《グランセン》!」 地面から土の大砲が出現し、発射された岩石が彼女を吹き飛ばす。

 

 

 ────どうして

 

 

「《グランクラッグ》!」 地面が隆起崩壊し彼女が地割れに飲みこまれる。

 

 

 ──────どうして

 

 

「《グランガルゴ》!」 地面から複数の石槍が飛び出し、彼女の体を貫く。

 

 

 ──どうして何度倒れても立ち上がってこれるの!? 

 

 

 

 エシュロスとその女の子の戦いは一方的だった。

 

 彼女の呪文は手に鉤爪を生やすだけの肉弾戦。僕は、彼女を近づけないようにひたすら呪文を唱えた。いつか諦めてくれるだろうと思って。

 

 でも、その子は何度呪文を受けても立ち向かってくる。彼女の瞳は、その間も僕を真っ直ぐ見つめている。その目が僕を見ていると僕の体からは震えは止まらなくなる。理由はわからないが、今すぐにでもその目線から逃げ出したかった。その一心でまた呪文を唱える。

 

 

「《グランセン》!」

 

「キリィ!?……疾ッ!」

 

「うあああああああああああ!」

 

「チッ……、クソッ!」

 

 

 彼女と二手にわかれこちらに向かってくる本の持ち主(パートナー)がいる。恐怖にかられた僕は、向かってくる彼に対して雄叫びをあげ拳をふるい牽制する。それを見て本の持ち主(パートナー)も一度後退し彼女の所へ向かう。

 

 

「ハァッ……ハッ……ハァッ……」

 

「お、おい……進一。大丈夫なのか?」

 

「……え?」

 

 

 “敵”が離れ一息ついた僕にエシュロスが困惑した様子で問いかけてくる。まるで僕を気遣ってくれているような言葉、だがエシュロスは今まで厳しく僕を律してくれるだけで、こんな優しい言葉をかけてくれる事は今までなかった。

 

 

「どうしたんだい? エシュロス」

 

「い、いや……お前がここまで積極的に戦いに参加するとは思ってなくてな。少し驚いていた」

 

「…………えっ」

 

 

 その言葉に僕は『自分が戦いを行っている』という事実に驚く。僕はただ恐さから逃げたかっただけだ。でもその為に僕は今、呪文を唱えてエシュロスと共に彼女と戦っている。思わず僕は視線を女の子と本の持ち主(パートナー)の方へと戻した。

 

 

「…………えっ?」

 

「どうした、進一。何か気が付いたのか?」

 

 

 エシュロスが僕に問いかけてくるが、それに答える余裕はない。

 

 少女の顔が呆れを浮かべたような表情になり、僕を見据える瞳からは先程まで感じていた『恐怖』の色が減ったような気がしたからだ。

 

 戦いに飽きたとか、変わらない状況に呆れていたとかいう理由の訳が無い。今まであんな危険な特攻を繰り返していた彼女が、そんな状況を見ているだけの第三者が抱くような事を思う筈がないから。

 

 つまりあれは別の意図がある筈だ、と僕は彼女を初めてと言っていい程にその子を真正面から見据えた。

 

 

「……!! あっ」

 

 

 僕とその子との距離は数十mは離れている。僕の視力なら決して見える筈がない、でもそんな彼女の瞳の中には『怯える僕自身の姿』が見えた気がした。

 

 

 ──その子の瞳の黒は深淵の闇へと続いているような気がしていた。

 

 ──その子が何度も立ち上がるのは僕をその闇へと引きずり込もうとしているからだと思った。

 

 

 でも違った。

 

 

 あの子は────、ただ僕自身を真っ直ぐ見てくれていただけだった。それをあの子は『まだ気付いていないのか』と呆れているのだ! 

 

 

 僕はママ以外の人物と真正面から向き合う事をしなかった。優しい人や明るい人が僕と向き合おうとしてくれたが、僕自身はその人達の事を心の中で拒絶した事で彼等は諦めて僕から離れていった。子供時代の嫌な思い出は、心の中の自分自身を他者から拒む殻のようなものになっていた事に気付いた。

 

 

「あ……、あぁ……!」

 

 

 その女の子の瞳は僕のそんな心の底を見抜き、鏡写しの様に僕に見せていたんだ。僕は彼女に抱いていた恐怖の理由を知り驚愕と……申し訳ない気持ちで一杯になる。

 

 

《「進一、お前が気に入らないものはブチ壊していけばいいんだ」》

 

 

 エシュロスが僕に言っていた言葉が蘇る。僕はその言葉に従い色々なものを壊して、立派な大人に近付いている気がした。でもまるで見当違いだった。……僕は『最も壊さないといけないもの』から逃げ続けていただけなんだ。

 

 

「! 進一、奴等また来るぞ。まだ心の力は残ってる、強力な呪文を唱えれば今度こそ押し切れる筈だ」

 

「…………」

 

 

 先程まで恐怖でしかなかった女の子との戦い。本音を言えばこのままエシュロスに任せたい、彼に全てを委ねてしまいたい。彼の呪文があれば彼女は近づけないし、エシュロスが相手をしてくれる筈だから。

 

 でも────

 

 

 

《「進一、あなたの意思で物事を決めなさい。勇気を出してそれさえ出来れば立派な大人になれるわ」》

 

「ママ…………」

 

「……? どうしたんだ、進一」

 

 

「キリカ!!」

 

 

「何!? 仲間の魔物がいたのか! 進……」

 

「《グランガルゴ》」!! 

 

 

 僕は新たにやってきた子供達を石の槍で囲い、身動きを取れなくした。

 

 僕はこれから、多分人生で最も恐い思いをする。でも逃げる事はしない、これは僕自身が決めた事だから。絶対に────

 

 

「……邪魔は、させない!」

 

 

 そう言い、僕は自ら女の子と距離を詰める。あの子の呪文は肉弾戦、本の持ち主(パートナー)の男の子も一緒だ。

 

 このままエシュロスに頼っていたら何も変わらない。だから僕は!!! 

 

 

「呪文なしで、勝負しよう」

 

「え?」

 

「は!?」

 

「何だと!?」

 

 

 彼女の本の持ち主(パートナー)へ向け、その言葉を放つ。

 

 

「おい、何を考えている!? 呪文の相性はこちらが有利、心の力もまだまだ残ってる。このまま戦えば俺達の勝ちなんだぞ!!」

 

「うん。でもそれは……“僕”の勝ちじゃない」

 

「お前、何を言って……」

 

 

「魔物の方は不服のようだが、いいのか? 此方としてはその方がありがたい。……このまま戦ってキリィが更に傷つくのは見たくないからな」

 

「構わない。だけど、一つ頼みがあるんだ」

 

「頼み? 条件じゃないのか、一体何だ?」

 

「…………その子に、見届けて欲しいんだ」

 

「私?」

 

 

 僕は彼女に教えてもらった。僕が何をすべきなのか、何をしたらいけないのかを。彼女達はとても強い。僕に『学校を壊させない』と強い意志を持って、勇気と共にエシュロスに立ち向かい何度倒れても起き上がってきた。

 

 だからこそ僕は自分だけの力と意思で君達と向き合う。その勇気が『弱虫の自分を守っていた殻』を壊す唯一の方法なんだ!! 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 

 

「疾ッ!!」

 

「ぐうぅっ!」

 

 本の持ち主(パートナー)の彼、元就君と名乗ってくれた少年が素早い動きで翻弄する。目で追うことは出来ないけど、さっきまで何度も見て来た動きだ。攻撃を受け止める事は出来る。だけどその小さな体からは考えられない衝撃が僕に襲い掛かる。

 

 すごく恐い、今の僕の隣にはエシュロスもいないし魔本もない。守ってくれるものは何もない。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 だけど僕は逃げない、涙でにじむ視界の中で動く元就君を捉え真っ直ぐパンチを繰り出す。

 

 

「チッ、何てパワーだよ。まともに喰らったら終わりだな」

 

「元就」

 

「大丈夫だ、キリィ。俺は負けない」

 

「え!?」

 

「あの動きは、何だ?!」

 

「……暗歩?」

 

 

 急に元就君の動きが不規則になる、まるで陽炎のようにゆらゆらと移動を行い僕を翻弄する。興味をなくしたように魔本を持ち座っていたエシュロスも驚いていた。

 

 それまで読めていた動きが全く読めなくなってしまった僕は攻撃を受け続ける。まともに受けないよう身を固めるだけで精一杯だった。

 

 やっぱり僕なんかじゃ無理だった、勇気を出しても何も出来ない。何も変わらない。弱虫のままなん……

 

 

《「勇気を出しなさい、進一」》

 

「!! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 ────母さんの声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

 

 

 はい、状況を見守るしかない大人気魔物キリィちゃんです。

 

 

 一体いつからこのゲームはスト○ートファ○トになったんでしょうか。魔物も魔本も呪文も関係ない肉弾戦バトルが目の前で繰り広げられています。おい、デュエルしろよ。

 

 ですが正直ホッとしています。

 エシュロスの本の持ち主(パートナー)である進一君はとても心優しい子なので、自分の意思で立ち上がった『覚醒進一君』になれば、勝敗関係なく本を渡してくれます。エシュロスに従い破壊活動をしていた事実に気付きますからね。ようは覚醒させたらそこで試合終了です。安西先生、本を……燃やしたいです。(過激派)

 

 あっ、早々に決着つきましたね。勝者は────当然、ほもくんです。

『人外の力持つ相棒』のスキル効果は伊達ではありません。正面から本の持ち主(パートナー)同士で戦えば、ほもくんに負けはありえません。玄宗? 無茶言うな。

 

 ですが進一君も頑張ったらしく、最後の一撃は防御を捨て受けた攻撃を耐えた上で反撃を行ったようで、ほもくんもフラフラです。

 何はともあれこれで無事勝利ですね。一時はどうなる事かと思いましたが、ガッシュ君達も、もうすぐ包囲された岩山から脱出出来ますし問題ありませんね。

 じゃあ本を渡してもら────

 

 

「ふざけるな!! オレはまだ戦えるんだ。進一、呪文を唱えろ!」

 

 

 何、こいつ。空気読めてないの? 勝負に勝ったら終わりの流れだったやん(ジト目)

 

 

「エシュロス、僕は負けたんだ。僕は本を捨てる、これは僕の意思だ」

 

「負けたのはお前だけだ! まだオレは負けていない、本を捨てるなんて許さんぞ!!」

 

 

 本の持ち主(パートナー)も認めているのに何コイツ? 空気読めよ(軽蔑の眼差し)

 折角まとまりかけたこの空気を壊したくありません、素直に負けを認めてもらいましょうか。

 

 つかつかとキリィちゃんがエシュロスに近付きベアクローをかまします、キリィちゃんの握力は180kg(最近成長)。肉弾戦をお前としたならこっちの楽勝なんだよ。ギリギリギリ

 

 

「ぐあああああああああああ!! は、離せぇええ!」

 

 

 エシュロスが暴れだしたので手を離しました。ベアクローだけでは駄目のようですね。

 それなら仕方ないナァ……、負けを認めないそっちが悪いんだもんネェ(謎の微笑み)

 

 

「な、何だお前。手が光りだして……」

 

「元就」

 

「あ、あぁ。わかった」

 

 

「第三の術《ミリアボル・ピルク》!」

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 

 

 ────進一の敗北宣言に納得のいかなかった俺は戦いを続けるようにいった。だが進一は頷こうとしない。

 

 それもコレも全てこいつ等のせいだ。力でオレに勝てないからって進一を丸め込みやがった。当然、オレは納得しない。こうなったらコイツを倒してまた進一を洗脳してやればいい。

 

 そう思っていた俺は急に相手の魔物に頭を掴まれる。痛ッ、痛痛痛痛痛痛痛痛!!! 何だこの馬鹿力は?! その異常な力に焦った俺は女を振りほどき後ろへ下がる。

 

 それがいけなかった、女は本の持ち主(パートナー)へ指示し今まで使わなかった呪文を唱えた。

 

 

「第三の術《ミリアボル・ピルク》!」

 

 

 女の手から閃光が迸る。だが不思議と眩しくはない。周囲を確認するも何も変化がなかった。

 

 

「ハ……ハハッ。何だ、不発か。驚かせやがって。新呪文だから警戒したがただの見掛け倒しか!」

 

「エシュロス……」

 

「進一、このままじゃオレが消えてママの願いを果たせなくなるぞ。戦うんだ!!」

 

「わかったよ」

 

 

 進一が先程の拒否が嘘の様にオレの言葉に従う。やはり『ママの為』と言ってやればこいつは何でも信用する、まだやり直せる。

 

 

「《グランバイソン》!」

 

 

 地面から巨大な土蛇を生み出して攻撃する。今まで唱えていた呪文より遥かに強力な威力だ、発動後の隙が大きく進一は使用を躊躇っていたようだが関係ない。この攻撃でアイツを潰せるはずだ。

 

 俺はそう確信していた。だが────

 

 

「邪魔」

 

 

 何と巨大な土蛇は、女の拳ひとつで叩き伏せられ地面へと沈んでいった。

 

 

「……は?」

 

 

 いくら奴が馬鹿力でも《ギガノ》級に迫るあの術を素手で倒せる筈がない。そもそも今までの戦いでは、そんな事を出来るそぶりすらみせなかった筈だ。俺は呆気にとられ放心する。

 

 

「遊びは、終わり」

 

 

 そう言って女は手をこちらへ向ける。その隣にいる本の持ち主(パートナー)が持つ魔本からは、天に昇る程の勢いで光が放たれている。明らかに何かが違う! 

 

 

「《……オ・シン・ピケルガ》!」

 

 

 

 

 

 …………オイ、今あの本の持ち主(パートナー)は何と呪文を唱えた? 

 

 最初の方は聞き取れなかったが間違いなくヤツは唱えた────《シン》級の呪文を

 

 

「あ……、あ……あぁ…………」

 

 

 女の手から巨大な力の塊が放たれる。あれが《シン》の呪文の力。エリートであるオレでさえ古い文献でしか見た事が無い、最強の呪文。その攻撃は世界の法則を変えるとまで言われる絶対的な力。

 

 幼い頃に見たあの文献の内容と、その時感じた恐怖が記憶が蘇る。……勝てる訳がない、オレは尻もちをつきその一撃を正面からその身で受けるしかなかった。

 

 

 …………身体が焼けていく。

 

 ………地面が溶けていく。

 

 ……周囲の建物が消えていく。

 

 …本の持ち主(パートナー)の進一すらも容赦なく消えていく。

 

 

 俺は消え去っていく自身を、おぼろげな精神で見ていく事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────その瞬間、世界の全てがガラスのように割れた気がした

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

「いい夢、見れた?」

 

「魔本を渡してもらえるな」

 

「……エシュロス」

 

 

 

 気付けば場所は先程と同じ場所。だが校舎は壊れていない、地面は消えていない、進一も心配そうな顔で俺の傍に立っていた。

 

 その瞬間、今見たものはただの幻覚にすぎなかったと理解した。

 

 

 

 

 

 ……だがオレには、奴等の言葉に抗うだけの精神力は残されていなかった。

 

 

 

 

 

 ───────────────【エシュロス 敗退(リタイヤ)】撃破者《キリカ・イル》

 

 




※その後、エシュロスの呪文はキリィちゃんがおいしく頂きました。


《第三の呪文 ミリアボル・ピルク》

効果:対象の『トラウマ』となる記憶を『複写(コピー)』し、幻覚として見せる

・呪文は『魔物』にしか効果が発揮されない
・呪文を唱える前に、対象の魔物の頭に触れていなければいけない
・精神攻撃である為、相手の精神力が上回っていると不発に終わる
・相手が動揺/狼狽/憔悴などの状態だと成功率が上がる
・幻覚は数分程度の内容で見せる事が可能、ただし現実時間の経過は一瞬
・幻覚内容は「対象のトラウマ」に準じたもので固定される
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