金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート   作:シグアルト

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 久々の執筆によるリハビリ回です。短め






③キリカの招待・原作ティオ編

 

 

 

 

《ここは ガッシュカフェ

 魔物達がお茶を楽しみ お喋りに花を咲かせる社交場です》

 

 

《ですが お客様を招待するのは私ではなく────》

 

 

 

「私。キリカ・イル」

 

 

 

《そう 私はガッシュカフェという “空間”を提供するだけです》

 

 

《そして今回のお客様は……》

 

 

 

「ねぇ。コルルに呼ばれてきたんだけど、恵がどうしているの?」

 

「さぁ、気づいたらここにいたわ。深く考えちゃダメみたいよ、ティオ」

 

「まってた」

 

「魔物? ()()()()()かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

《今日のお客様は“原作”ティオです》

 

 

 

 草原の広がる一角にある、ガッシュの顔を模した佇まいの店。

 そこの木陰のテラス席でキリカの対面に座っているのは、桃色の長髪をした可愛らしい少女『ティオ』であった。

 そんな彼女の手元には、恵が運んできたティオの好物であるストロベリーシェイクにイチゴのショートケーキがあり舌鼓をうっていた。因みにこれは厨房にいる元就のお手製である。

 

 

「……つまりあなたは、私のいた世界と違う『並行世界』で私と友達になった魔物って事ね」

 

「よくわかったわね、ティオ。私は未だに実感できてないわ」

 

「たまたまそんな能力がある人間界の漫画を最近ワイズマンから借りたのよ。確かD4……」

 

「それ以上、いけない」

 

 

「まぁいいわ。それで、何であなたの世界の私じゃなくてこの私を連れてきたの? 初対面同士じゃ話もはずまないじゃない」

 

「今、見せる」

 

 

 キリカが手を上げ合図を送ると、厨房にて料理を作っていた筈の元就が傍に歩いてくる。執事が纏うような燕尾服に着替えているが、彼が引いているのはティーワゴンではなく“あるもの”をのせた普通のワゴンだった。

 

 

「これ……テレビ? よね」

 

「えぇ、私たちの世界に昔あったテレビね。私も見るのは初めてだわ」

 

 

 

 昭和の日本で使われていたブラウン管テレビ。西洋の優雅な雰囲気を醸し出している周囲の雰囲気に置かれるその存在は、明らかに浮いていた。

 

 とまどう一同をよそに、キリカは少し誇らしげに言った。

 

 

「これで、ティオを見る」

 

「私を? ……! もしかして“あなたの世界での”私を、って事かしら?!」

 

「つまり並行世界のティオって事なの? 本の持ち主(パートナー)は違う人?」

 

「それは、いっしょ」

 

「何よそれ、面白そうじゃない! 早速見ましょ」

 

 

 別の世界線での自分自身が見れる、そんな貴重な経験が出来ると知りテンションをあげ笑顔を浮かべるティオ。恵は興味深そうにブラウン管テレビを見つめていた。元就はテレビを円形テーブルで向かい合うキリカとティオの間に配置しスイッチを入れる。ブラウン管から光が放出され、テレビと共に用意していたスクリーンに映像が映し出されていく。

 

 

「すごいわ、映画みたい! 人間界って昔からこんなのがあったのね!!」

「……その見た目の意味はなんだったのかしら」

 

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────もうどのくらいの時間がたったのだろう

 

 私の耳に聞こえる音は、天井から落ちてくる水滴だけだった。

 

 魔界の王を決める戦い、期待に胸を膨らませていた私を待ち受けていたのは……非情な現実だった。

 

 ……ふと、暗闇の奥から何かが動く音がした。

 

 

「ッ!!?」

 

 

 私は(うずくま)っていた体勢から突然立ち上がろうとしたが空腹と疲労、そして同じ姿勢を取り続け固まった体をうまく動かせず尻もちをついてしまう。だが、今の私にそんな事を気にする余裕はない。怯えきった目をつぶらない様に意識し、音の正体を見定める。

 

 

「チチッ」

「……何よ、ネズミじゃない」

 

 

 現れたのは小さなネズミ、そもそも影の大きさからして“敵”の筈がない。緊張で止めたままだった息を吐き、今更ながらそんな簡単な事実に気づいた自分を嘲笑するように口の端があがる。

 

 

 

 

 もう限界だった。

 

 

 

 人間界に来て早々に出会った友達の魔物『マルス』に襲われて以来、私の生活は彼の手から逃げ出すものになった。

 

 既に本の持ち主(パートナー)を見つけ呪文が使える彼に、本の持ち主(パートナー)のいない私では勝ち目がない。それをわかっているのかマルスは執拗に私を追い続け、今ではこうやって地下水路に隠れて住んでいる。

 

 もし私にもう少し勇気や気概があれば、地上に出てマルスに追われながらもこの世界を巡り、今頃は私も本の持ち主(パートナー)に出会えていたのかもしれない。

 

 

 

 ─────でも私には、もうそんな気力は残っていなかった。自分でもいったい何がしたいのかわからない。

 

 

 

 こんな戦いもうどうでもいいと投げ出すのであれば、適当な魔物に本を差しだして燃やしてもらえば全てが終わる。それなのに、未だ人間界(このせかい)にしがみついている自分がいるのだ。

 

 もう本の持ち主(パートナー)に出会えるなんて奇跡は起こらない。いつかやってくるだろう敵の魔物に敗れ去り、みじめに魔界に還っていくだけだというのに……

 

 

 

 

 

 コツン……    「ひっ?!」

 

 

 

 

 ─────思考が真っ黒に覆われていた時、静寂を支配していた地下水路に先ほどのネズミとは違う、ハッキリとした人の足音が響いた。

 

 その足音は迷いのない足取りでこちらに向かっている。魔物の気配を探知できる能力でも持っているのかもしれない。

 

 いつか来ると覚悟していた心の壁は簡単に砕け散り、マルスに襲われた時の感情が蘇る。

 

 

 怖いよ……

 

 悲しいよ…………

 

 つらいよ…………

 

 

 だけど私にはどうする事もできない。相手の魔物に抗うだけの体力も気力もとうに尽きている。

 

 私は体を丸め目をつぶり、やってくるであろう衝撃を震えた体を抑えながら耐えようとした。

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 ………………………………

 

 

 ………………………………………………ふわっ

 

 

「!?」

 

 

 だが、諦観と共に覚悟していた衝撃はおきず、代わりに私の体は暖かなものに包まれた。

 

 思考が混乱を起こしショートする。何も考える事ができず、この後なにか痛い事をされるのではと怯えていたが一向に変化は訪れない。

 

 一体どれだけの時間が経ったかはわからないが、私の死体のように硬直していた体には熱が戻っていくのが感じられた。

 

 私を包んでいた“暖かいもの”に対して、久しく忘れていた心の中の何かが揺さぶられていくのと共に、固く閉じられていた瞼が開かれその姿があらわになっていく。

 

 

 

 

 

 ……私は抱きしめられていた。

 

 長い黒髪をしている、多分女の子。目線の先には私のと違う『桜色の魔本』が置いてある事から魔物の子だと判断する。

 

 

 

 状況は理解できた。でも理由がわからない。

 

 何故この子は私を攻撃しないのだろうか、何故この子は私を抱きしめているのだろうか、何故この子は…………こんなにも私に安らぎを与えてくれるのだろうか

 

 

 

「大丈夫。私、仲間」

 

 

「! ……ぁ」

 

 

 

 そんな私の心の疑問に答えるかのように、その少女は抱きしめたまま子供をあやす様な声色で話しかけてくる。

 

 

仲間

 

 

 そう言ってくれる彼女、その言葉が干からびた砂漠に染み込む洪水のように私の心に流れ込んでくる。

 

 

 

《「ティオ。この戦いはどれだけ他人を蹴落とせるかだ。そう、どんな手を使ってもな!!」》

 

 

 

 そう言って私に襲い掛かってきた友達()()()()()()()魔物、マルス。彼の言葉がどれだけ薄っぺらいものだったか今の私ならわかる。

 

 あんな奴、友達でも仲間でもなんでもなかった。

 

 本当の仲間っていうのは、私に安らぎを与えてくれる存在。私に活力を与えてくれる存在。私の存在を許してくれる存在だった。

 

 鉛のようだった私の体が、今は羽根のように軽くすぐにでも飛び立っていけそうな程だ。

 

 

 もう、何もこわくない

 

 

 探そう、私の本の持ち主(パートナー)を。もっと長く、この気持ちを感じていく為に。

 

 

 そして殺そう、敵を、全ての魔物を。他の誰にも、私の“しあわせ”を奪われないように 

 

 

 

 

 ティオの虚ろだった目に色が宿っていく……

 

 だがそこには一切の光はなく、ドロドロに淀んだブラックホールのような闇が灯りだして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「ストップ! ストォォォォォォォップ!!!」

 

 

 

 

 

「ど、どうしたのティオ?!」

 

「『どうしたのティオ』じゃないわよ、恵!! 誰なのよコイツは!!!?」

 

「別世界の、ティオ」

 

「嫌あああぁぁぁ! 絶対、絶対認めないんだからぁ!!」

 

 

 突如プロジェクターを止め、桃色の髪を振り回しながら狼狽するティオ

 

 映像途中から激情を我慢するように震えていたが、ついに許容量を越えたらしい。

 

 

「少し落ち着け、ティオ。キリィも困ってるじゃないか」

 

「うるさい、うるさい、うるさ──ーい!! こんなの私じゃないわ、ノーカンよノーカン!!」

 

「わかってるわティオ。だから一旦深呼吸しましょ。ね?」

 

「ムリ! キライ! シンドスギ!」

 

 

「一応、違う世界の映像も、ある」

 

 

「えっ、あるの?! み、見せなさいよ。それを早く!!」

 

「スイッチ、オン」

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ─────「ァ……ハッ……! 馬……鹿な……」

 

「……ティオ」

 

 

 私はやっとの思いで見つけた本の持ち主(パートナー)と共に、あの『マルス』と対峙していた。

 

 アイツは本の持ち主(パートナー)のいなかった私を執拗に追いかけ、いたぶり、あざけり、嘲笑し、玩具の様に扱った。

 

 

 ……そんなマルスは今、私に首を絞められ苦しそうに呻いていた。

 

 

「もう止めて、ティオ! 相手の本の持ち主(パートナー)も気絶している。勝負はついた筈よ!」

 

 

 恵は何を言っているのだろう。まだ勝負はついていない。まだ()()()()()()()()。そんな思いと共に私は両手に更なる力を籠める。

 

 

「……!? ……ッ……ハッ」

 

 

 マルスはもう声も上げられないようだ。いつもいやらしい笑みをずっと貼り付けていた彼の顔は今、苦悶に満ちている。

 

 そんな顔を見ていると、私の中で今まで感じた事のない激情が産声を上げ始めた。

 

 

 

 

 

「………………アハッ♪」

 

「ティオ……、あなた……」

 

 

 

 楽しい! 

 

 

 愉しい!! 

 

 

 タノシイ!!! 

 

 

 

 彼の命、彼の生、彼の全てを私が支配したかのような全能感に包まれる。

 

 

「アハハハハ、アハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 そして私は、その感情に身をゆだね─────両手をそのまま……

 

 

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

「もうやめてぇえええええええええええええ!!!」

 

 

「落ち着いて、これ、食べる」

 

「いらないわよ! 何でこんな場で酢昆布が出てくるのよ!!」

 

「好物?」

 

「そんなの食べた事すらないわよ! ……ないわよね?」

 

 

 先程以上に狼狽したティオ、彼女はあらん限りの力でテレビに何度も殴り掛かっていた為、拳の跡がいくつもくっきりと残っていた。

 

 

「あはははは……、別世界のティオはワイルドなのね」

 

「ちょっと恵!? 露骨に距離を取らないでよ!!」

 

「ごめんなさい。冗談よ、冗談」

 

「全くもう。心臓に悪い冗談は止めてよね」

 

 

 恵がおどけつつもいつも通りの振る舞いを見せた事にティオは安堵した。映写機の映像を元就が止めた事により、混沌に包まれていた場も落ち着いていく。

 

 

「でもキリカちゃん、本当なの? ティオがあんな事するなんて」

 

「本当」

 

「だけど、最後の映像のティオ……あんな風になるなんて一体どうして」

 

「ガッシュと、会わない、世界」

 

「…………え?」

 

 

 キリカが恵の問いに淡々と答えていく。もはや触れたくない話題と無視を決め込むつもりのティオだったが、看過できない言葉を耳にし反応してしまう。

 

 

「ガッシュと会わなかっただけで……、あんな風に?」

 

「だけ、じゃない」

 

 

 キリカはティオを見つめ、真っ直ぐ言葉を言い放った。

 

 

 

 

「ガッシュが、全てのはじまり」

 

 

 

 

(「私のはじまりが……、ガッシュ?」)

 

 

 キリカの言葉を若干歪曲して反芻するティオ。確かに人間界での魔界の王を目指す戦い、そして『やさしい王様』を自分も目指すと決めたはじまりはガッシュとの出会いからだった。

 

 ティオの戦い、ティオの新たな人生はガッシュによって始まった。そして今、彼女はガッシュと共に人生を歩いているといっても言いかもしれない

 

 

 

 

 ……と、そこまで思い至り納得した所で、自分が多少意味深な言い回しをしてしまった事に気づき赤面する。

 

 それに気づいた恵は、微笑ましい彼女の様子に頬を緩めると共に、自身が共に歩く少女は真っ直ぐな心を持った少年に救われたのだと再確認し、心の底から安堵した。

 

 

 

 

 

 ─────因みにキリカは「ガッシュが主人公だから」と言っただけで、意味深な意図は全くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《今日も平和な ガッシュカフェ

 

 ティオの心は、確かに救われていたようです》

 

 

 

 

 

《さて 次回のお客様がいらっしゃるかは

 

 招待者である キリカ・イル次第といったところでしょうか》

 

 




◇◆◇◆別室で映像を見た一行◇◆◇◆

フォルゴレ(ガタガタガタガタ)
キャンチョメ「な、何とかしろよガッシュ。お前がいないのが原因だったんだろ!」
ガッシュ「い、嫌なのだ! 怖いのだ~~~!!」


清磨(全く、実際にその場にいたら放っておかない癖に)

おまけパートはどうだった?

  • 面白かった、他のも見たい
  • さっさと本編進めなさいよ、このクズ!
  • 完結後なら見たいと思う
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