金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート   作:シグアルト

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 今回は親密度イベントを描いた番外編となります。カットするか相当悩みましたが、個人的に大好きなキャラなので幕間として入れました。

 


幕間 金山剛の評判

 

 

 

 

 ────気にいらねぇ

 

 

「高嶺! 夏休みに入ったらオレの野球の練習に付き合ってくれ!」

 

《「頭の悪い俺達を見下して、そんなに優越感にひたりてーのかよ」》

 

 

 

 ────気にいらねぇ

 

「高嶺君! 夏休みになったら一緒にUFOを呼んだりしようよ!」

 

《「頭いいのはわかったから、早く他の学校にでも行ってほしいよ」》

 

 

 

 ────気にいらねぇ! 

 

「高嶺くーん! マリ子ちゃん達が夏休みに入ったらプール一緒にいこうって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──お前等は高嶺の事が邪魔で仕方なかったんじゃないのかよ! 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 俺の名前は金山(かねやま)(たけし)、いわゆる不良だ。

 

 ムカついた奴を呼び出し金を巻き上げ、イラついた時には適当な奴に暴力を振るう。学校でも有数の問題児となり先公達からも煙たがられている。そんな俺を、周囲の人間は避けるようになり一定の距離を取っている。だがそれでいい……

 

 

 所詮、周囲の人間なんてのは“異端”を理解する事なんて出来やしないのだから。

 

 

 

 

 

「チッ、イライラするぜ……」

 

 

 俺は教室から抜け出し、屋上へと足を進めていた。今、教室ではもうすぐ始まる夏休みに胸を躍らせ高嶺を予定に誘おうかとクラスの面々が話し合っていた。

 

 この数ヶ月でアイツを取り巻く環境は激変といっていい程変わった。それが本当に腹立たしかった。そんな苛立ちを表すかのように乱暴に屋上への扉を蹴り開ける。

 

 

 

「やっぱこの時間は誰もいねーな、これでゆっくり……あ?」

 

「わたし、いる」

 

「……チッ、テメェは高嶺のとこの」

 

「キリカ、イル」

 

「聞いてねぇ、さっさと失せろ」

 

 

 どうやら先客がいたようだ。長い黒髪を風になびかせ壁際にあるフェンスの傍の段差に座りつつ、こちらを見つめるガキがいた。

 

 多少の居心地の悪さを感じ、ガキに言葉を吐き捨てると貯水槽のある一段高い所へ登り横になる。ガキの事なんざ無視だ無視。

 

 

 

 

「ねぇ」

 

「うぉ?!」

 

 

 仰向けになり風の心地よさで気分が落ち着いて来た頃、俺の顔の前に突然キリカ(ガキ)の顔が現れる。

 

 

「まだいたのかテメェ、驚かせんじゃねぇ!!」

 

「授業、は?」

 

「知るか、不良の俺には関係ねぇ事だ」

 

「不良?」

 

「そうだ、いい加減にしねぇとガキだからって遠慮しねぇでぶっとばすぞ!」

 

 

 いい加減このガキが鬱陶しくなってきた俺はスゴ味をきかせて脅しつける。こうすればコイツも()()()他の奴等と同じく俺を怖がり逃げ出す筈だ。

 

 だが、そのガキは俺の威圧等何処吹く風というように……、穏やかに笑った

 

 

「気に、しない」

 

「…………あ?」

 

「私は、大丈夫。だから」

 

 

 何だコイツは。言葉の意味が理解出来ない程の馬鹿なのか、それとも俺がそんな事をする訳ないとタカをくくっているのか……自分は敵ではないと安心させるようなその瞳。

 

 それは俺が…………、最も“嫌悪”するものだった。

 

 

 

 俺は渾身の力でガキを殴り飛ばす、軽いその体は数m以上空を飛び屋上の床に叩きつけられる。

 

 

「バカが、友達探しがしたいんだったらマシな奴を選びやがれ」

 

 

 そう言って倒れているガキを無視して校内に入る。今日はもう早退だ、気分が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そういえば、暴力を振るって気分が晴れなかったのはいつ振りだったか

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「また、来た」

 

「……何考えてやがる、テメェ」

 

 

 放課後、俺が屋上でやる事もなく時間を潰しているとこの前殴り飛ばしたガキがやって来た。

 

 

「この前ブン殴った復讐か? あの金髪のガキにでも泣きついたか」

 

 

 高嶺と一緒にいる金髪のガキは物を爆発させるよくわからない力がある。以前、水野から金を奪おうとした際に高嶺の指示で起こった爆発に俺は巻き込まれた。それ以来、俺は高嶺にもガキにも近寄らない事にしていた。

 

 やってくるのは金髪のガキか、それとも高嶺か先公か……しかし待てども屋上に誰かがやってくる事はなかった。

 

 

「気にしない、言った」

 

「……だからってブッ飛ばされたヤツにわざわざ会いに来る奴があるかよ」

 

「殴られても、平気。慣れてる」(←魔界の王を決める戦い的な意味で)

 

(俺みてぇな奴に殴られ慣れてるだと……? 何だ、このガキは)

 

 

 抑揚もなく何でもない事の様にそう呟き俺の近くに腰掛ける。

 

 ガキの言葉に疑問を持ちつつも、興味を持たぬよう俺はキリカ(ガキ)を無視し、貯水槽の脇で横になった。

 

 もうすぐ夏に入る日の夕暮れ、その空気はいつしか俺を夢の世界に運んでいった。

 

 

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 ………………………………………………

 

 

《「金山くん、どうしてお金を盗ったの? あなたがやったって皆言ってたわよ」》

 

《「どうせ金山だろ、アイツならやりかねないからな」》

 

《「金山くん恐い、あの顔は絶対悪い事を考えてる顔よ」》

 

 

 

 夢の中で思い出すのは小学校の嫌な記憶。

 

 俺はガキの頃から体がでかく顔つきも悪かった、それが原因でイジメにあい少しでも反抗したら先公にチクられ、あたかも俺がイジメっ子のように扱われた。

 

 

 何度も何度も、何度も何度も

 

 俺は《外面》だけを見て邪魔者扱いされた。いつしか俺自身、それに抗うのを止め自主的に暴力・略奪を繰り返すようになった。ヤツ等の()()通りに。

 

 そうだ、周りの人間なんて《外面》でしか判断しない。どんなに抗ったって、それを払拭する事なんて出来やしない筈だ。

 

 

 

 

 ……なら、どうして。どうして“アイツは”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

 

 意識がゆっくりと覚醒していく、日が落ちる寸前の黄昏時の終わり。肌寒さを感じ始めた風と、後頭部にかかる暖かな感触で俺は目を覚ました。

 

 

 

「目、覚めた?」

 

 

 視界にまず映ったのはさっきも見たキリカ(ガキ)の顔。そして意識がハッキリとするにつれて自分の状況も理解する。

 

 

「テ、テメェ……! 何、勝手な事してやがる!!」

 

 

 飛び起きた俺はガキの首根っこを掴み宙に浮かせる。あろう事かこのガキは、俺に膝枕をしていたのだ。放課後で誰にも見られていないのが幸いだった。

 

 

「寝てた、から」

 

「寝てるヤツに勝手に膝枕する馬鹿が何処にいやがる!」

 

「……ここ」

 

「ふざけてんじゃねぇぞ!」

 

 

 そういい捨てるとガキを放り投げ足早に帰宅する。本来であれば2,3発はブン殴っておくべき所だろうがそんな気は起きなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだガキにも拘らず、子供をあやすように膝枕をして頭を撫でる感覚が非常に心地良かったから等では決してない筈だ

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「こんにちは」

 

「ガキ、テメェか」

 

「私、キリカ」

 

 

 昼休みになると俺は屋上で一人昼食を摂る。当然、俺を恐れて他に屋上に来る奴はいない。例外を一人除いて。

 

 頻繁に俺の恫喝を無視し居座り続けるコイツを俺は諦める事にした。言っても聞かねぇ、殴っても効かねぇ(一度だけだが)、面倒臭い事この上ないヤツだった。

 

 

「ガキ、何食ってやがる」

 

「弁当。元就の特製……いる?」

 

「いるか、馬鹿。黙って食ってろ」

 

 

 半ば慣れた光景だ。馴れ合いなんてない、親しい筈もない。俺が口を開けば罵倒か罵声。

 

 だが俺は、コイツを無理矢理引き離す事はしなかった。

 

 それがどういう事になるか、十分に知っていた筈なのに────

 

 

 

「か、金山くん!!」

 

「……あ?」

 

「スズメ?」

 

 

 昼食も終わり食休みしていると、屋上の扉が勢いよく開かれ水野が入ってきた。珍しく眉を吊り上げ険しい顔を浮かべている。

 

 そういえば、以前コイツからカツアゲをした事があった。部の集金作業中の水野を強引に屋上に呼び出し、暴力を振るい金を奪おうとした。あの二人(高嶺と金髪のガキ)に邪魔されたが。

 

 思えばそれ以降、俺はカツアゲや積極的な暴力を振るわなくなったんだっけか。高嶺の変化が気に食わず、気乗りしなくなっただけだが。

 

 

「キ、キリカちゃんを屋上に呼び出して何してるの!? その子に何かしたら許さないんだから!」

 

「あ?」

 

 

 どうやら頻繁に俺の下に来るガキを見て勘違いしたようだ。

 

 分かっていた筈だ。俺の下に擦り寄ってくる奴なんて、俺のおこぼれを狙うコソ泥か恐怖で縛り付けた奴隷。それが《金山剛の周りにいる人間》の認識だ。

 

 ここで俺が選べる選択肢なんてない。《金山剛は他人に暴力を振るう存在》と周囲の認識が決まっている以上、それを覆す事なんて不可能だ。

 

 

 また面倒な事になりやがる……、そう思っているとガキが水野の所へ寄っていった。

 

 

「スズメ」

 

「キリカちゃん、大丈夫?! 金山くんに何かされなかった?」

 

「大丈夫。友達、だから」

 

「……え? 金山くん、が?」

 

「遊びに、来てた」

 

 

 その言葉に、しばしその場に沈黙が流れる。

 

 水野はガキと俺の顔を何度か見ると、やがていつも高嶺に見せるような人畜無害そうな笑顔を向ける。

 

 

 

「なーんだ、よかったぁ! ごめんね、金山くん。勘違いしちゃった」

 

「金山、いい人」

 

「そうなんだぁ、いい人なんだねー」

 

 

 

 

「おい、どう考えてもおかしいだろうが!」

 

 

 思わず声を張り上げる、まるでツッコミ不在のままボケが続けられている漫才だ。いつもコイツと付き合っている高嶺の心労を思わず心配してしまう。

 

 

「水野! 俺は前、暴力を奮ってお前をカツアゲしようとしたんだぞ。何でそんな簡単に信じ込むんだよ!」

 

「え? だってキリカちゃんが言ってたじゃない。いい人だって」

 

「は?」

 

「私、金山くんの事よく知らないから誤解して怒らせちゃったのね。本当にごめんなさい」

 

 

 そう言って素直に頭を下げる水野。俺は訳が分からなかった。

 

 誤解も何もない。俺が以前、コイツに暴力を振るおうとした事は事実だ。なのに何故、こんなにあっさりと態度を改める事が出来るんだ?! 

 

 

「金山」

 

「なんだ、ガキ」

 

「皆、見る目。変わる……変えられる」

 

「!?」

 

 

 ガキはまるで俺の考えを完璧に読み取ったかのような言葉を放つ。

 

 人の見る目は変えることが出来る、《外面》だけで判断された他人の評価も変えられると言っている。

 

 

 

 

「……チッ!」

 

「あっ、金山くん! ……キリカちゃん、私やっぱり怒らせちゃったのかなぁ」

 

「スズメ、ぐっじょぶ」

 

 

 俺はたまらず屋上を飛び出す。

 

 他人の見る目から押し付けられた評価は決して変えられない。その筈だろう! 

 

 だから俺は他人の評価通り《手のつけられない不良》になって、高嶺は他人の評価通り《他人を見下した天才》に…………なる筈だった。

 

 

 自然と脚が自分のクラスに向かっていた俺は、教室の扉の前で脚を止める。中では休憩時間中のクラスの声が聞こえる。どうやら高嶺はいないようで、アイツとの夏休みの話題で盛り上がっていた。

 

 

「高嶺との野球の練習、どの魔球にするか悩むな!」

「僕も高嶺君とどのUFOを呼ぶか迷っちゃうよ!」

「高嶺は頭いいからな、一緒に宿題こなせば早く終わるんじゃねぇか?」

「高嶺君とプール、本当に楽しみだね」

「僕は隣のクラスの野口だけど、一緒にアサガオの研究を……」

 

 

「いい加減にしやがれテメェ等!!」

 

 

 

 先程の水野とガキとのやり取りでイライラが最高潮に達していた俺は、扉を開けて怒鳴り込んだ。

 

 

「テメェ等、少し前まで高嶺の奴にどんな態度を取っていたのか忘れたのか!? アイツは自分以外の人間が全てクズだと思ってたんじゃねぇのかよ? 先公でさえも見下して馬鹿にしてたんじゃねぇのかよ? 誰一人この学校に来てほしいと思ってた奴はいなかったんじゃなかったのかよ!!」

 

 

 そうだ、周囲の人間は《外面》で全て判断して決め付ける。高嶺に擦り寄ってるこいつ等だって、以前は他の奴等と同じだった筈だ。

 

 今は高嶺と親しく振舞ってるように見せてるが、その本心を暴けばどうせ以前と同じ……

 

 

 

「……そうだな、お前の言う通りだ。金山」

「そう、だよね。金山くん」

「そうだ、そうだよ。有耶無耶にしてたけどこういう事はハッキリ言葉にしないといけないんだよね、金山くん」

「金山くん、僕は隣のクラスの野口だけど一緒にアサガオの研究を……」

 

 

「……な、何言ってやがるテメェ等!?」

 

 

 一気にクラスの連中の雰囲気が変わる。だがそれは、俺の予想していたものとはまるで違っていた。

 

 

「それにしても金山君、そんなに高嶺君の事を心配してたんだね」

「いつも苛立ってたのも、高嶺君に急に掌を返した私達に怒ってたんだね。気付かなくてごめんね」

「金山……、お前そんなにも高嶺の事を!! お前、そんな熱い奴だったのか!」

 

 

「なっ……!? 違ッ……!!」

 

 

「金山……」

 

 

「先公……ッ!! 何で大泣きしてるんだよ!」

 

 

「金山、先生は嬉しいぞ。お前がそんなにも他人を思いやれる人間だったなんてな」

 

 

 

 もう教室は収拾が付かなくなっていた。

 

 用事を終えた高嶺が戻り、先公含めた全員が今までの態度を謝罪し、高嶺も自身の行いが原因だと皆を落ち着けるまで騒ぎが収まる事はなかった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 それから俺の生活は変わった。

 

 授業をサボる事はなくなり暴力やカツアゲもぱったりとなくなった。

 

 まぁあれはイライラを収める為で、今やその原因がなくなった事でやる必要がなくなっただけだ。

 

 

「金山、この問題を解いてみろ」

 

「チッ、面倒臭ぇな」

 

「金山君、ファイトだよ」

 

「水野、お前に応援されると逆に間違えそうだ」

 

「金山くん、ひどーい!」

 

「じゃあ金山君、僕が答えを当ててあげるよ」

 

「いらねぇ、岩島(おまえ)の答えはいつも『UMA』じゃねぇか」

 

 

「コラコラ、仲が良いのは結構な事だが早く答えるように」

 

 

 

「清麿、遊びに来たのだ!」

 

「ガッシュ、授業中に入ってくるなって言ってるだろ!」

 

「私も、来た」

 

「キリカまで……、こういう所はガッシュを見習わないでくれ」

 

 

「高嶺、子供達を保健室まで送り届けてくるように」

 

 

「……わかりました」

 

 

「あー、先公。俺も行っていいか?」

 

「どうしたんだ、金山? 腹痛か?」

 

「はーい、中田先生。金山君とキリカちゃんは友達なんですよ!」

 

「……あぁ、そういう事か。わかった、授業が終わるまでに戻ってくるようにな」

 

「さっさと行くぞ。高嶺」

 

「あ、あぁ。わかった。ほら行くぞ、ガッシュ」

 

「ウヌ、わかったのだ」

 

「テメェもさっさと行くぞ、()()()

 

「うん」

 

 

 

 

 金山と高嶺は保健室へ向かい二人を預け、再び教室に戻る。

 

 その途中、金山は夏休みの遊びに高嶺を誘い快諾した二人は山で騒動を起こすが……それはまた別のお話。

 

 




 
 原作一巻での金山が暴力を奮いつつ清麿の事を語るシーンですが、あまりにも清麿の事を理解した言い回しから「もしかして同族嫌悪だったのかな?」と思い独自設定として描写してみました。

 次回からはイギリス編に入る予定です。
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