金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート   作:シグアルト

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 今回は三人称視点というものに挑戦してみましたが、想像以上に大変で難産でした。次回からは実況パートに戻ります。
また今パートは色々ツッコみ所が多いかと思われますので、後書きに少し追記しておきました。




27.紫電の雷帝

 

 

 

 

 

 ────「セッコロ、お前は先に行って親父や囚われた人達を解放するんだ」

 

「え、清麿達はどうするんだよ」

 

「俺達も後で行く。とにかく囚われた人達を解放して先に城を出るんだ」

 

 

 バルトロを倒したガッシュ達一行、そんな彼等の前に現れたのはガッシュと瓜二つの容姿をした魔物だった。

 

 ガッシュと違うのは彼の金色とは違う白銀の髪、暖かみを感じさせるガッシュとは違う射殺すような鋭さを持つ紫電の眼光、そして他者を寄せ付けない冷たさを感じる少年だった。

 

 どう考えても友好的とは思えない彼等の雰囲気を察した清麿はセッコロに先に行くよう指示を出す。少し逡巡するセッコロだったが、すぐに了承の意を示し白銀の少年に背を向け走り出す。

 

 白銀の少年はその行動を無視し、本の持ち主(パートナー)の白髪の少年はそもそも全てに興味がないと言わんばかりに後方で佇むだけだった。

 

 

「お主、一体何者なのだ」

 

「お前如きがそれを知る必要があるのか?」

 

 

 ガッシュの言葉に返答した瞬間、圧倒的な威圧感が白銀の少年から溢れ出す。恵やティオは思わず後ずさり、清麿とガッシュは頬に嫌な汗が流れつつも少年を変わらず睨みつけていた。

 

 因みにキリカはバルトロとの戦いでの消耗が激しく部屋の隅で座り込んでおり、傍に元就が控える形になっている。

 

 

「お前が他の魔物が言っていた“ガッシュに似た魔物”か」

 

「……オレは『ゼオン』。わざわざ名乗るのも業腹だが、“ガッシュに似た魔物”等とふざけた呼び名をかける事は二度と許さん」

 

「ぐ……!」

 

 

 ゼオンから放たれる威圧感が更に増す。ガッシュと清麿を睨みつける瞳、そこに篭められた感情は異常とも思える程の『憎悪』であった。

 

 

「お……お前がバルトロに指示を出して親父を攫わせたんだな……。目的はガッシュの魔本か?」

 

「ホゥ、オレの威圧を直接受けてまだそんな口が叩けるか……」

 

 

 清麿は全身から冷や汗が流れ足元から震え上がる感覚を必死に抑え込み問い質す、ゼオンはそんな清麿を見下すような笑みを浮かべながら答える。

 

 

バルトロ(アレ)はただの戯れだ。ガッシュを苦しめるのに丁度良さそうなコマだったからな。せいぜい利用させてもらった」

 

「ウヌゥ、お主一体何が目的だ!! 何故親父殿まで巻き込んで、私を他の魔物に襲わせるのだ?」

 

「オレの目的はただ一つ。ガッシュ……、お前に地獄と絶望を味わわせるだけだ!!」

 

 

 そう言い放つとゼオンは一瞬でガッシュへと距離を詰め右手を前に出す。本の持ち主(パートナー)の魔本が光り出した事から清麿は呪文の発動を予見しその手から逃れようとするが機敏なその動きから避ける事が出来ない。

 

 

「クッ……!? 《ラシ……」

 

「違うわ! こっちよティオ!!」 「わかったわ!」

 

 

 敵の攻撃を防ぐべく防御呪文を唱えようとする清麿だが、恵の制止の声により思わず呪文を止め振り返る。彼等の少し後ろにいた恵は、傍に控えていたティオに真横を向くように指示を出す。すると、そこにはたった今まで()()()()()()()ゼオンがいた。

 

(「分身、いや残像?!」)「ティオ! 恵さん!」

 

 

 

「……《ザケル》」

「《マ・セシルド》!」

 

 

 ガッシュの黄色い電撃とは違う、青い稲妻がゼオンの手から放たれる。

 

 ティオが出現させたのは中級上位の威力を持つ《ギガノ》級呪文すら完全に防ぎきる強力な防御呪文。だが《下級呪文》である筈の《ザケル》は、その盾を揺るがす程の威力を持っていた。明らかにガッシュの放つ《ザケル》とは桁違いの威力である。

 ティオの防御呪文には、全方位を守れる防御呪文《セウシル》もあるが防御力は数段落ちてしまう。もしも恵がゼオンの動きを追えずそちらの呪文を選択していた場合、その電撃を防ぐ事は出来なかっただろう。

 

 

「よくオレの動きに喰らいついたな。盾の防御力といい悪くない力を持っている」

 

「……それはどうも」

 

「何よ。見直したからどうだって言うのよ、素直に引いてくれるワケ?」

 

 

 ゼオンの不意打ちを防いだ恵だったがその顔に余裕はない。持ち前の《鑑識眼》でゼオンの心理を読み攻撃先を予測したにすぎず、次の攻撃を防げる保証はないからだ。ティオもそれはわかっており、一縷の望みをかけて問いかけてみる。

 

 

「そうはいかない。『ガッシュの仲間』にはここで全員消えてもらう」

 

「そう……、それは残念ね」

 

 

 ティオは震えあがる体を必死に抑え込み、ゼオンを睨み続ける。

 

 

「お主、どうしてティオを狙うのだ! 私が憎いというなら何故私を狙わぬ!」

 

「その通りだ、オレは決してオマエを許しはしない。だが簡単に魔界に還させもしない。ここでオマエは仲間を失い再び孤独になり、この戦いの地獄の中で苦しむんだ」

 

「……ッ!」

 

雑魚(バルトロ)相手に圧倒した程度で『自分は強い』等と勘違いしているオマエに今一度思い知らせてやるよ。所詮オマエはただの落ちこぼれだ」

 

「そうはさせぬのだ! 清麿!!」

 

「あぁ!! 突っ込め、ガッシュ!」

 

「ヌオオオオオオオオオオオ!」

 

 

 ゼオンに突撃するガッシュ。当然ながらゼオンは軽々とその攻撃をかわし距離を取る。部屋の中央にガッシュやティオ達、手前側入り口にゼオンの本の持ち主(パートナー)、奥の出口にキリカと元就がおりゼオンはガッシュ達とキリカに挟まれた形になる。

 

 

「恵さん、今だ! ガッシュ、SET(セット)。《ザケル》!!」

 

「《セウシル》!」

 

 

「……ホゥ」

 

 

 清麿は恵に指示を出し円形状のバリアを張る呪文《セウシル》を()()()()()()()発動する。バリアによりゼオンへの攻撃は届かなくなるが、逆にゼオンの移動が阻害される。その隙に清麿はゼオンの本の持ち主(パートナー)へ向けて電撃の呪文を放つ。

 

 ゼオンはガッシュ達を圧倒するほどの脅威的な力を持つ。それを肌で感じた清麿は狙いを本の持ち主(パートナー)へと変える。ゼオンの移動速度は《ザケル》の電撃よりも速いと考えた上での奇襲だった。

 

 

「『デュフォー』、問題ないな」

 

「…………」

 

 

 古城の壁に背を預けていた体勢の『デュフォー』と呼ばれた男は、ゼオンの言葉に応えずゆっくりと姿勢をただし()()()進む。多少距離があったとはいえ、彼に襲い掛かる電撃は目の前まで迫っていた。だがそこでガッシュ達は信じられない光景を目撃する。

 

 ゼオンの本の持ち主(パートナー)、デュフォーは体を横にし姿勢を落とす。それだけで電撃は彼の体を縫うようにすり抜け後ろの壁に当たった。デュフォーと呼ばれる少年は、それが何でもない事の様に平然とその場に立っている。

 

 

「なっ……?!」

「ヌ!?」

「嘘でしょ!? ガッシュの電撃が外れるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

「オレが離れてチャンスだとでも思ったのか?」

 

 本の持ち主(パートナー)の少年の行動に呆気に取られ隙を見せた一瞬。

 ティオの呪文のバリアを破壊し一瞬でガッシュの正面に移動したゼオンは、背後から声をかけられ思わず振り向いてしまったガッシュの胸倉を掴む。二人の身長差はほとんどないが、ゼオンの圧倒的な膂力で持ち上げられたガッシュはもがきつつも抜け出せない。

 

 

「オマエはそこで見ていろ。大切な仲間達が魔界に還っていく姿をな」

 

「……《ギルド・ザケル》」

 

「ヌアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」

 

 

 ガッシュを掴んでいる手から青い電撃が迸りガッシュの体全体を駆け回っていく。通常であれば地面や空中へと霧散していく筈の電撃は、ガッシュの体に纏わり付くように威力が衰える事はなかった。

 

 

「この(いかづち)はオマエの体にダメージを与え続ける、痛みで気絶する事も許さんぞ」

 

「ヌ……ヌアアァァ……アアアアアアアア!!!!」

 

「ガッシュ!? ガ──ッシュ!!」

 

 

 ゼオンに持ち上げられた状態のガッシュ、電撃の苦しみ故に清麿の声も届かず苦悶の声をあげるのみだった。

 

 

「恵!!」 「《サイス》!」

 

 

 ティオはその光景にたまらず唯一の攻撃呪文である小さな聖なる刃をゼオンに向け飛ばす。だが本の持ち主(パートナー)をひるませる程度の威力しかないその呪文が通用する筈もなく簡単に弾かれてしまう。

 

 

「……! 今だ、《ザケル》!」

 

 

 だがティオへ意識が削がれガッシュへ向ける電撃の威力が弱まったのか、はたまたガッシュが力を振り絞った抵抗か、その顔をゼオンへと向けていた。それを察知した清麿は即座に呪文を唱える。

 

 ガッシュから放たれた電撃はゼオンに直撃し、呪文を至近距離で放ったガッシュは反動で後方に吹き飛ぶ。清麿はそれを空中でキャッチしながら砂煙のはれた先の人物を睨みつけていた。

 

 

(「クソッ、ここまで力の差があるなんて……!」)

 

「……落ちこぼれの力なぞこの程度か」

 

 

 呪文が直撃したにも関わらず何のダメージも受けていない様子に歯噛みする清麿。ゼオンは心底軽蔑したといった視線をボロボロになったガッシュへ向ける。

 

 

「終わりにしてやるよ。デュフォー」

 

「《ジャウロ・ザケルガ》」

 

 

 ゼオンの前方に電撃の輪が出現する。激しく帯電するその輪からビームの様に一本の直線状に走る電撃が飛び出し、ティオ達に襲い掛かった。

 

 

「《マ・セシルド》!!」

「う……くぅぅぅぅぅ!」

 

 

 先程の《ザケル》より遥かに強力な電撃、《ギガノ》級に並ぶ程の一撃をティオは必死に防ぎきる。

 

 だが次にゼオンから嘲笑と共に放たれた言葉に、ティオと恵は絶望を顔に浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククッ、防いだか。さて、《ジャウロ・ザケルガ》が放つ電撃は()()()()()()。オマエは何本まで耐えられるかな?」

 

 

 その言葉を証明するかのように、電撃の輪から先程と同じ直線状の電撃が次々と放たれる。

 

 

 二本目……、盾が軋みティオが苦悶の表情を露わにする。

 

 

 

 三本目……、盾に亀裂が入りティオは膝を付いてしまう。

 

 

 

 四本目……、恵が心の力を注ぎ込み今にも砕かれそうな盾が修復されていく、だがその顔には一切の余裕がない。

 

 

 

 

 

 五本目……六本目…………恵は必死に襲い掛かる電撃の猛威を耐えようとするが既に限界だった。

 

 そんな恵とティオの下にガッシュを小脇に抱えた清麿と、体力がある程度回復し動ける様になったキリカと元就が合流する。

 

 キリカは恵の下へ行くと、素早く彼女の朱色の魔本に触れる。

 

 

「第一の術《ピルク》!」

 

 

 恵の持つティオの魔本が桜色の光に包まれる。その光景を遠目に見たゼオンは何が起きているか理解する。そして彼が命じると、残っていた五本のビーム状の電撃が一斉に襲い掛かった。

 

 

「《ピルク・マ・セシルド》!」

 

 

 元就の唱える呪文によりティオの盾と同じ物が出現しガッシュ達を守る。二重の盾となったそれは五本の電撃を受け崩れ去り砂煙が立ち込め視界が塞がれる。

 

 だが奥にいるガッシュ達にはその電撃が届かなかったであろう事をゼオンに予感させた。

 

 

(「今のが《イル》の呪文か。実際に見るのは初めてだが……、何だこの違和感は?」)

 

 

 キリカの呪文に何かを感じたのか思案するゼオン。しかしすぐにその思考を切り捨てた。 

 

 少し遊びすぎたか、そう自省するゼオンはガッシュ達のいる場所を見つめている。……そして彼の“憎悪”の元凶とも言える《あの呪文》を唱える声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第四の術、《バオウ・ザケルガ》ァァァ!!」

 

 

 

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 砂煙の中から現れる電撃の龍。清麿が起死回生に放ったガッシュの最強呪文だった。

 

 電撃の龍は意思を持つかのようにゼオンへと襲い掛かる。敵の大技を相殺し、次の一手をお互い模索している状況。そこに打ち込む最大の切り札だった。

 

 ゼオンは避ける事は許されない。彼の後ろには本の持ち主(パートナー)のデュフォーが立っており、そのまま襲い掛かる事も可能な位置、すべて清麿が狙った配置だった。

 

 

「これが《バオウ》……、最強たる《ベル》の雷」

 

 

 襲い掛かる電撃の龍を感慨深げに見上げるゼオン。咆哮をあげながら大きく口を広げゼオンを飲み込もうとする。

 

 その威容を目の当たりにし彼は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()が《バオウ》だと……?」

 

 

 心からの侮蔑と落胆の表情で見据えるだけだった。

 

 

 

「《テオザケル》」

 

 

 ゼオンが放ったのは中級の放出呪文。だがその巨大な電撃はガッシュの最強呪文を飲み込み、そのままの勢いで襲い掛かる。

 

 幸いゼオンは上空から襲い掛かる《バオウ・ザケルガ》に向け呪文を放った為、ガッシュ達に直撃はせず天井の壁を突き抜けた。しかしその風圧で全員は部屋の隅まで吹き飛ばされてしまう。

 

 ゼオンはゆっくりと彼等へと向かう。《バオウ》を破った以上、ガッシュ達に打つ手はもうないだろう。後はガッシュ以外の魔本を燃やせばいい。

 

 ガッシュは仲間を失い、今回の戦いがトラウマになりもっと深い絶望を味わうかもしれない。その思考に多少溜飲を下げつつも歩みを進めていた。

 

 

 

 

 

 そんなゼオンへと襲い掛かる一筋の電撃。彼は一歩素早く後退するだけでその電撃を回避したが、顔には苛立ちがありありと出ていた。

 

 

「ガッシュめ、まだ動けたか。往生側の悪い奴だ」

 

 

 電撃が放ったガッシュの方へと顔を向け────、初めてゼオンは驚きの表情をその顔に出していた。

 

 

 

 

 

「ティオ達、やらせない」

 

 

 ゼオンを睨むのは黒髪の少女。傍に倒れふす清麿の持っていた『赤い魔本』に手を触れながら、彼女は堂々と紫電の眼光を放つ雷帝へ闘志を放っていた。

 

 

 




 

【オリジナル呪文】
《ギルド・ザケル》
原作にもある呪文《バルギルド・ザケルガ》の強化前バージョン。
電撃を相手の体に帯電させ続ける事で継続ダメージを与える。ゼオン自身も発動中動けなくなる為、戦闘中にはあまり用いず拷問などに適した呪文。




Q.ゼオンならもっと強い筈じゃない?
 「ガッシュ相手に本気など出さぬ」と金ピカ恒例慢心状態となっております。
 具体的には物理攻撃禁止・瞬間移動の連続使用禁止・マント使用禁止などです。

Q.《ジャウロ・ザケルガ》ってこんな使い方できたっけ?
 wikiには『任意で数本ずつ当てる事も可能。』と書いてあるので、なら一本づつ撃てるんじゃね?という考えの演出です。

Q.《ジャウロ・ザケルガ》はもっと威力があるのでは?
 筆者解釈では《ジャウロ・ザケルガ》の強みは集束攻撃による威力で、一発だけの威力は《ザケルガ》より劣るものと考えています。
 なので原作でギガノ級を簡単に打ち破った《ザケルガ》よりは威力が落ちるという解釈です。

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