金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート   作:シグアルト

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※あとがきにお知らせがあります。

 ガッシュの登場人物をwikiで毎回調べますが、パピプリオは別項目になっていました。
 ガッシュメンバー以外での別項目扱いは

バリー
ゾフィス
ゼオン
クリア
パピプリオ

 このメンツに喰い込むパピプリオの人気ってやばない?




42.原作崩壊タッグマッチ

 

 

 

 

 

 

 ──────────「《ドグラケル》!!」

 

 

 

 なし崩し的に始まったガッシュ・ゾボロンペアとキリカ・パピプリオペアのタッグバトル。その開幕の狼煙はヒゲの唱えたゾボロンの呪文によりあげられた。ゾボロンの口から吐き出される直径2~3mはあろうかという破壊球。その大きさに元就は一瞬怯むが……

 

 

「ん? ……お、遅い?」

 

 

 その速度は、人間の一般的な歩行速度にも劣る程のゆっくりとしたものだった。あまりの遅さに虚を突かれ、元就はどう対処するべきか悩み足を止めていた。

 

 

「おい、元就! 何、突っ立ってんだよ。早く離れろ!!」

 

「パピプリオの言う通りよ、元就ちゃん! 距離を大きく取るの!」

 

 

 ゾボロンの呪文をよく知るペアの言葉に気付き、破壊球から距離を取る元就。(因みにキリカは即座に退避、自分の言う事をノータイムで信じてくれたとパピプリオの機嫌が更に上昇。彼の戦意は更に高まっていた)

 

 そして、破壊球はプールサイドの床に着弾し──────────上級呪文と間違えそうな程の大爆発が巻き起こされた。

 

 

 

「! うわぁああああああああああ!!」

 

「くぅぅぅっ! 相変わらず威力だけはヤバすぎるぜ、ゾボロンの呪文」

 

「元就ちゃん、大丈夫!? 直撃は勿論、爆風もすごいから爆発する場所から大きく離れるのよ!」

 

「は、はい……わかりました。キリィは大丈夫?」

 

「平気」

 

 

 回避が遅れた上、キリカに爆風の影響が及ばない様に自身の体を盾にしたので、爆風の衝撃のほとんどを受け止めた元就だったが、ケガはない。ヒゲやルーパーがヒマラヤ山脈で修行をしたのと同じく、独学ではあるが鍛錬を重ねた元就もまた一般人以上の体力と胆力を備えていた。

 

 対してガッシュ・ゾボロン陣営では、そんな自身(の魔物)の力に衝撃を受けた様子の相手を見て悦に浸るヒゲがいた。

 

 

「ヒハハハハハハハッ! 見たか、ワシの呪文のパワーを!!」

 

「……す、すげぇパワーだ」

 

「ウヌゥ、でも遅いのだ」

 

「あぁ、遅いな」

 

 

 ゾボロンの呪文の破壊力は下級呪文としては規格外。その一点において驚愕をうけるも、致命的な速度のなさに今一つ脅威を覚える事の出来ない清磨とガッシュだった。

 

 そのもう一つの大きな要因として、本の持ち主(パートナー)も関係しているだろう。現にヒゲは《ドグラケル》の爆発で生まれた敵の隙を活かさず大笑いし、逆に砂埃に隠れて彼に忍び寄る存在を見落としていた。

 

 

「今だ。やれ、ルーパー!」

 

「《ダレイド》!!」

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

「!! 避けろ、ガッシュ!」

 

「ヌ!? ヌァアア!!」

 

「チィィ!! SET(セット)、《ザケル》!」

 

「へっ、当たるかよ!」

 

 

 パピプリオの口から粘度の高い液体が飛び出す。ヒゲはその液体をモロにかぶり、延長線上にいたガッシュの膝下にも液体がかかってしまった。

 

 清磨は素早く本を構えパピプリオを迎撃するが、即座に退却しキリカ達の下へ戻っていく。

 

 

「なんだ、この液体は。ガッシュ、大丈夫か?」

 

「ウ、ウヌ。痛くもかゆくもないぞ」

 

 

 特に何のダメージも受けない液体に清磨が不思議がるが、その答えは同陣営だったヒゲから暴露される。

 

 

「クソォオオ! お前達、その液体はすぐに固まるぞ! 身動きが取れなくなる前に何とかしろ!」

 

「何!? ガッシュ、靴についた液体はすぐには拭けん。すぐ脱ぐんだ!!」

 

「わ、わかったのだ!!」

 

 

 

 

 

「全部脱ぐんじゃねぇええええ!! 靴だけでいいんだよ!!」

「ヌゥ?!!」

 

 予想外の呪文効果に慌てるガッシュ達。

 

 その姿の滑稽さに自身の呪文に対する優位を感じたパピプリオは、先程のヒゲと同様相手の状況を見て愉しんでいた。

 

 

「フハハハハハ!! どうだ、驚いたか。お前達は素直に本をさしだせば許してやってもいいぞ?」

 

「素晴らしいわ、パピプリオ。きっとこれであの子もメロメロよ」

 

「そうか! それはいいな!! よし、後はあのヒゲをボコボコに「《ドグラケル》!!」……え?」

 

 

 再び起こる大爆発。

 

 だがその爆心地はヒゲのすぐ近くだった。パピプリオ達は自爆かと思ったが、その砂煙の中から仁王立ちで現れるヒゲには先程あびせた粘着液は残っていなかった。

 

 

「そうか。破壊球の爆風で液体を吹き飛ばしたのか。……すごい体力だ」

 

「マ、マジかよ元就……。あのヒゲ、ゾボロンの呪文をすぐ近くで受けたのかよ」

 

「自分の呪文だから本は燃えないとはいえ、とんでもない方法を考え付いたわね。」

 

「ヒ、ヒハハ、ハハハッ!! ワシは修行で力をつけたのだ。お前の呪文に怯えていた昔のワシでは……ゴブフゥ?!」

 

 

 やはり隠し切れないダメージがあったのか、仰向けに倒れ息絶え絶えといった様子のヒゲ。ガッシュと清磨は、彼の下に駆け寄っていく。

 

 

「ヒゲ殿! 大丈夫か?」

 

「あ……ぁあ、ワシはもうダメかもしれん。だが最後に……奴等にだけは一泡……吹かせて」

 

「ウヌ、ウヌ!! わかったのだ。私が前に出て戦うから、お主は休んでいるのだ!」

 

「すまねぇな。ガキ……」

 

 

 

「なんだ、これ」

 

 突如はじまったガッシュとヒゲの寸劇。確かにダメージはあるが、どう考えても軽症である。

 

『もうコイツに敬語を使う事をやめよう』と心の中でヒゲの評価を数段落とした清磨は、二人を捨て置き視線を相手に戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 ……そこには、いつの間にか数m先にまで近づいていたキリカの姿があった。

 

 

「《ピルク・ドグラケル》」

 

「うぉおおおおおおおおお!!」

「ヌアアアアアアアアアァ!!」

「ぐぁあああああああああ!!!」

 

 

 三者三様の叫びをあげ、キリカの口から出て来た先程と同じ破壊球から全力で後退する3人と1匹。

 

 先程に勝るとも劣らない大爆発が、今度はガッシュ陣営で引き起こされる。

 

 爆風で吹き飛ばされ親子亀のように四段重ねになった清磨達だが、幸いダメージはなかった。

 

 

 

「クソッ、あのメスガキ。ゾボロンと同じ呪文を使うのか。厄介な」

 

「き、清磨。キリカと一緒にいるあの者も強いのだ。本当に戦うのか?」

 

 

 キリカとの戦いの意味も意義もまるでわからないガッシュは清磨に問いかける。

 

 だが清磨の闘志は欠片も揺らいではいなかった。今起こっているキリカとガッシュ、いや自分との確執。それを解消するための“答え”。それを彼女にを示す為には、この戦いの『勝利』は何よりも必要だと考えていた。

 

 

「……あぁ、俺達は戦う。そしてキリカに勝たなきゃダメなんだ」

 

「清磨」

「小僧」

 

 

 その真っ直ぐな決意を間近で見た二人は、多少の打算や迷いを抱きつつも清磨の指示に従い力を合わせる事を改めて誓う。

 

 

 

 

 

「これから、本番」

 

「ととと当然だな! さっきのは様子見みたいなもんだ。いくぞ、ルーパー!」

 

「わかったわ、パピプリオ。作戦はお任せでいいかしら、元就ちゃん? 私達、もう万策尽きてるのよ」

 

「バラすなよ、ルーパー!!」

 

「大丈夫。キリィの指示は世界一ですから。協力していけば大丈夫です」

 

 

 そして有象無象のタッグが協力の姿勢を見せた事で、その対戦相手も呼応する。

 

 本当のタッグマッチが、ここから始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みにガッシュは服を着た。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ──────────「《ドグラケル》!!」

 

 

 

 戦いの開始は先程と同じ。ゾボロンの破壊球がキリカ達の下へと、非常にゆっくりと進んでいく。

 

 だが今度はキリカ達も動き出す。全員高い俊敏性をもっているこのペアは、スプリンターもかくやという速度で二手に分かれて走り出す。

 

 

「ハハハハ! 今更そんなもの怖くはない! 我々に当たる筈がないだろう!」

 

 

 パピプリオ達はまっすぐにガッシュ達を目指す。

 

 破壊球の呪文は彼等にとってすでに何度も見ている呪文。その軌道から着弾地点を割り出す事も容易である。

 

 爆発するのは自分たちの遥か後方になるだろうと判断した二人は、破壊球の脇を通り最短距離でかけぬけようとしていた。

 

 

 清磨の思惑通りに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《ラシルド》!」

 

 破壊球の進行方向を遮る様に出現した、ガッシュの反射盾の呪文。

 

 パピプリオ達は破壊球を通り過ぎた直後だった為、盾の出現に気付かない。その状況を少し離れた場所で見ていた元就は、一瞬遅れてその狙いに気付く。

 

《ラシルド》で反射した物体は同じ速度で跳ね返る。元々遅い破壊球の進行方向を変えても当たる筈がない。つまりその狙いは……

 

 

「相殺による着弾地点の操作!?」

 

 

 

「ぐふぁああああああああああ!」

「な、なんですって───────!!」

 

 

《ラシルド》の盾が破壊球の威力を防ぎきれず、その場で大爆発を起こす。背後で予想外の衝撃を受け、爆風で転がりまわるパピプリオ達。

 

 

「よし、相手の体勢が崩れた! SET(セット)《ザケル》!」

 

「させない」

 

「《ピルク・ドグラケル》!」

 

 

 キリカの出す破壊球が電撃を呑み込み無効化する。オリジナルと同じく、ゆっくりと移動する破壊球の進行方向から脱した清磨達は、急に走り出した勢いでつまづきながらも呪文を唱える。

 

 

「チィィ、《ジケルド》!」

 

 

 強力な磁力を発生させる呪文をキリカへと唱える。季節外れのプールサイドエリアには今は使われないイベント看板や鉄材が隅に放置されており、それが一斉に磁場の源であるキリカへと襲い掛かっていく。

 

 

「《ピケル》!!」

 

 

 元就が第二の呪文を唱えると、キリカの手から野球の球くらいの大きさの破壊球が発射される。

 

 硬球のように速くはないが、それなりの速度を持った破壊球は鉄材と衝突し《ドグラケル》程ではないものの小さくない爆発を起こす。

 

 キリカはグミ撃ちのように破壊球を何発も飛ばす事で、迫りくる鉄材を撃ち落としていく。そして全ての鉄材を退けたキリカの手は、そのままガッシュと清磨の方向に向けられる。

 

 

「《ピケル》!」「《ザケル》!」

 

 

 再び連射される小破壊球と電撃が衝突した。《ピケル》でスケールダウンしてもゾボロンの強力な呪文性質を受け継いだお陰なのか、小破壊球はガッシュ達の近くまで電撃を押し返していき爆発。彼等を覆い隠す程の砂煙を巻き起こす。

 

 

「小僧! ガキ!! ……クソ、ワシも援護するぞ。《オル・ドグラケル》!」

 

 

 ガッシュ達から少し離れた場所にいたヒゲ。ゾボロンの口から十字のエネルギー帯が追加された姿の破壊球がキリカに向けて放つ。

 

 キリカはまだパピプリオの傍から離れてはいない。追尾能力が追加されたこの呪文はキリカをターゲットにして放ったが、先程のグミ撃ちの衝撃で体勢を整え切れていないパピプリオもまとめて倒そうという狙いもあった。

 

 

「元就」

 

「あぁ! ……ルーパーさん、準備はいいですね」

 

「いつでも大丈夫よ。タイミングだけ教えて頂戴」

 

 

 本の持ち主(パートナー)同士で連携を確認すると、キリカがおもむろにパピプリオを担ぐ。正確に言うならば“振りかぶる”。

 

 

「行くよ」

 

「あ、ああ、あぁ!! 問題ない。あのヒゲにジャイアントスイングされるよりずっとマシさ」

 

 

「せー、っの!」

 

「うあぁああああああああ!」

 

 

 そしてキリカが斜め上空へと投げ飛ばした。叫び声をあげながらも「気を付け」の姿勢で綺麗に飛んでいくパピプリオ。

 

 

「チッ。バカガキには逃げられたか。だがワシの呪文は止まらんぞ。死ねィ、メスガキ!!」

 

 

 物騒な言葉で追尾型破壊球の直撃を確信するヒゲ。

 

 だが彼は失念していた。追尾能力が付与され速度も僅かに向上したとはいえ、『根本の弱点は変わっていない』という事を。

 

 

「キリィ、ダッシュだ!!」

「うん」

 

 

 パピプリオを投げたキリカは、勢いそのままに砂煙に隠れているガッシュの下へ向かう。多少速くなったとはいえ、致命的な足の遅さを持っていた呪文。走る速さに追いつける筈もなかった。

 

 

「何!? おい小僧、ガキ! ワシの呪文に気をつけろ!」

 

 

 そして追尾能力の弱点、誘導による同士討ちを狙っている事に気付いたヒゲは、まだ砂煙で見えないガッシュ達へと注意を放つ。

 

 だがその砂煙は、()()()()降り注ぐ紫色の液体によりかき消されていった。

 

 

「《ポレイド》───!!」

 

「な、何ィ────────!!? 麻痺毒を撒き散らすだと?!」

 

 

 キリカがパピプリオを投げたのは退避ではなく、死角をなくし砂煙全体に麻痺毒を散布する為。

 

 速効性はないが、効果が出れば圧倒的優位にたてるパピプリオの《第二の呪文》。《ダレイド》と違い直撃しなければ効果がほぼない為、麻痺毒をばらまいた地面をキリカが疾走する事には何の問題もなかった。

 

 そして砂煙の晴れた先から姿を現す清磨達。彼等は麻痺毒の範囲にいたが、ガッシュのローブや清磨の上着を頭から被っていた為に直撃はしていなかった。迫るキリカに気付いたガッシュが、それを迎え撃つ。

 

 

「ヌォオオ! キリカ──────!!」

 

「……ガッシュ」

 

 

 お互いの拳がぶつかり押し合いになる。だがローブで防いだとはいえ麻痺毒の影響を受けてしまっているガッシュ。ヒゲの叫びを信じるなら、このままでは毒が回り事態は悪化するだけだと清磨は感じていた。

 

 キリカの戦法を先読みし上着を被っていたのはいいが、粘着液ではなく麻痺毒が来るとまでは予想できなかった。自身も多少麻痺毒を受けている以上、先延ばしにはもう出来ない。迫りくる破壊球を見据え、清磨は短期決着のための作戦を実行する事にした。

 

 

「ガッシュ、前を向け! 《ラシルド》!!」

 

 

 キリカと拳を突き出したまま押し合いをしている状態のうつむいていたガッシュに前を向かせ、盾で破壊球を防ぐ。このままでは諸共爆発に巻き込まれてしまう事を防ぐ為の盾、ヒゲのアシストが無駄になった瞬間である。

 

 なお呪文発動により一瞬気絶しているガッシュだったが、キリカは追い打ちする事はなく後退していった。

 

 爆発に吹き飛ばされながらも、ガッシュの首ねっこを掴んでヒゲの下に駆け寄った清磨は急ごしらえの発案を口にする。

 

 

「オッサン。“アレ”をやるぞ!」

 

「アレ?」

 

「さっき話しただろ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《合体》だ! 《バオウ・ザケルガ》──────!!」

 

「なるほど、アレか。《ドグラケル》───────!! 

 

 

「バオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 ガッシュの口から現れる電撃の龍。

 

 その龍はゾボロンの口から出された破壊球を口にくわえて飛び上がると、そのまま急降下してパピプリオ達の陣営へと突っ込んでいく。

 

 

 

「ルルルるぅううルルとぅるるっるるるるルーパー!! どどどうすんだよ、アレ!!?」

 

「あわわわわわわわわ」

 

 

 攻撃呪文を一切持たないパピプリオ達には、対抗する術がなかった。粘着液も麻痺毒も効かない強大な合わせ技による呪文。逃げる時間も余裕もない二人はただ慌てるのみだった。

 

 

 

「《クラリオ・イズ・マール・ピケルガ》!」

code(コード)……《オル・ドグラケル》」

 

 

 キリカが放つ最大呪文。

 

 だが彼女が持つ呪文は『複製(コピー)』した魔物が()()使える最大呪文。下級の中では強力でも、上級呪文を覚えていないゾボロンの呪文の『複製(コピー)』ではキリカも対抗する術がなく、破壊球は《バオウ・ザケルガ》に吞み込まれていった。

 

 

「負けた」

 

 

 その状況をいつもと変わらない無表情で眺めるキリカ。横目でそれを見たパピプリオは、狼狽していた心を立て直し本の持ち主(パートナー)へとすがる。

 

 

「ルーパー、何とかならないのかよ。ルーパー!!!」

 

「パ、パ……パピー」

 

「あんなの喰らったら終わりだぞ! キリカと離れ離れになるんだぞ!! そんなの嫌だよ、ルーパー!!」

 

 

 

 万事休す。元就はそう考える。

 

 キリカが何故ガッシュと戦う事になったのかわからなかったが「キリィが望む事なら」と考える事をやめ勝つ為に力を賭した。しかしどうしても勝てなかった。清磨の事だから威力は抑えているだろうが、電撃の性質上魔本が燃える事は避けられないだろう。

 

 何とかしてキリカとの繋がりを残す為、元就は込み上げてくる恐怖を無理矢理抑え込み電撃竜を睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、彼だけは気付いた。

「バオオオオオォォオオ!」「えっ?」

 

「第三の呪文《モケルド》──────────!!」

 

 

 パピプリオの叫びにより生まれた新たな呪文。

 

 周囲を視界を塞ぐ程の濃密な煙幕がパピプリオの口から放たれる。それによりパピプリオやキリカ達の姿が隠れ、清磨は彼等を狙う事が出来なくなった。

 

 

 

 ……そして砂煙が晴れた頃、息絶え絶えといった様子だが『誰一人欠けず』戦いは終了を告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 ──────────戦いは終わった。俺とガッシュの勝利だ。

 

 

 改めて思ったが、キリカは強かった。

 

 出来れば《バオウ・ザケルガ》は使わずに勝ちたかったが、戦術面に優れたキリカを相手に出し惜しみする余裕はなかった。《バオウ・ザケルガ》の軌道を最後僅かに変えたお陰で直撃しないですんだが、あの煙幕がイレギュラーにならなくて本当によかった。

 

 まぁ逆に考えれば結果オーライだったのかもしれない。

 

 直前で元就が気付いてくれた上に、負けを確信してうつむいていたキリカにはバレなかっただろう。()()()呪文を外した事にはな。

 

 

「まだ戦うか? キリカはともかく、お前たちはこれ以上やるなら本を燃やさせてもらうぞ?」

 

み、見逃してくれるのか?  フ、フハハ、フハハハハ!! また会おうぜキリカ──!」

 

「じゃ──ね───キリカちゃん、元就ちゃん! 今後ともパピーをよろしく───!!」

 

「小僧ども、いい働きだったぞ! だがこれ以上ここにいられるか、ワシは帰らせてもらう!!」

 

 

 脱兎のごとく、の言葉が似合う程の逃げっぷり。

 

 だがあいつ等にはもう用はない。俺の言葉をキリカに伝える為の『見本』を見せてくれたお礼に、今回は見逃す事にする。

 

 

 

「キリカ」

 

 

 うつむいたままだが、俺の言葉に一瞬肩をふるわせるキリカ。

 

 後ろめたく思っているのだろうか、恐ろしく思っているのだろうか、激怒されると思っているのだろうか。だがそれはどれも正しくない。

 

 俺は何も言わずキリカを見つめ、彼女が沈黙に堪えかねて顔を上げるのをじっと待っていた。

 

 

 

 ────────そしていつかの『やさしい魔物』を止める為に戦った時と同じく、微笑みながら頷く。彼女を肯定するように。

 

 

「キリカ。お前がガッシュの為に他の魔物と戦い、本を燃やしている事はわかってる。でもこれは戦争じゃない、魔界の王を決める『戦い』なんだ。相手をただ倒せばいいんじゃない。倒した相手の『思い』を背負い、自身の目指す『王道』の糧とする。それが大切なんだ」

 

 

 いつもと変わらない無表情のキリカ。

 

 だが、彼女のその目は少し見開いているように感じる。まるで驚愕している様に。

 

 

「だから俺達は戦うが、絶対に本を燃やす訳じゃない。相手が悪い奴や許せない奴なら別だが、何よりも大切なのは自分たちの目指す『王様』が魔界の王になる事なんだ」

 

「ウヌ、だから私は『やさしい王様』を一緒に目指してくれるティオやキャンチョメ。ウマゴン達とは戦わないのだ」

 

「あぁ、だからキリカ。もしお前が目指す『王様』っていうものがまだないのなら……ガッシュと一緒に目指して見ないか? 『やさしい王様』を」

 

 

 俺とキリカの視線が交差する。

 

 キリカは何も言わない。再びうつむいてしまい、そしてゆっくりと振り返り元就の下へ向かう。

 

 元就は心配そうにキリカを見るが、口を挟む事はない。元就はひたすらにキリカを肯定する。それが彼なりのキリカの傷を癒す方法なのだと決めたのなら、矯正(意見)をするのは俺の役目だ。

 

 

 そして元就を連れ俺達の下から去ろうとしたキリカだったが、数m程離れた所で足を止め。一言だけ、告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えておく」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 キリカに俺達の想いは伝わったのか。

 

 再び俺達と『やさしい王様』を目指してくれる気になったのか。あの日はそのまま解散し、ガッシュと共に悶々とした日々を過ごした。(そのせいで国語教師のモンモン先生にイジられまくったが、あれは彼女なりの気の紛らわし方なのだと思う事にした)

 

 だが何日か経ち、元就からひとつの知らせを受けた俺達はガッシュと共に笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリカが、心優しい魔物『ウォンレイ』を救い出したのだと。

 

 

──────────────────【パピプリオ 残留(アライブ)

 

──────────────────【ゾボロン 残留(アライブ)

 

 

 




 

【お知らせ】

 お読み頂いた通りゾボロン残留です。
 ダニーに続き、本来脱落する筈の魔物を残留させた事で『脱落キャラ生存』タグをつけようか悩みました。
 ですが『魔界の王を決める戦い』の性質上、タイミングが違うだけで最終的には脱落させる事は確定です。
 なので、タグ詐欺になりかねないので生存タグは今作品では付けない方針でいきたいと思います。(完結させますよ、という願掛けを兼ねて)


 余談ですが、前話で反響くるまでゾボロンは脱落させる気マンマンでした。
 予想外のゾボロン人気に「何かできないかな」と考え始めた結果、今後のアイディアが沸々と湧き、結局残留させる事に決定しました。
 今作品は2割のプロットと8割の思い付きで出来ているという事がよくわかる結果ですね。ご了承ください。

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