金色のガッシュ!!称号『覇道の王』獲得原作ルート 作:シグアルト
ラウシンって背景設定を考えていくと面白そうですよね。
────生きるという事が日々を積み重ねるという事ならば
────俺はきっと死人なのだろう。
「ハッ……ハッ…………」
日本のとある町の山奥にある一軒の家屋、野球場が丸々入る程に広いその土地に大きな武家屋敷が建っていた。
年季を感じる佇まいではあるが人の気配は全くない。
何故ならその屋敷には誰もおらず、唯一の住人である少年は屋敷から出てその周囲を回るようにランニングを行っていたからである。
規則正しく行われるその呼吸は屋敷を何十周と回ろうとも乱れることはない。
そして太陽の位置が大きく変わった頃にようやくその少年は走りを止め、屋敷内へと戻っていった。
────最後にこの家の外に出たのはいつだっただろう。
────最後に人と言葉を交わしたのはいつだっただろう。
その少年はいわゆる『ひきこもり』であった。
幼い頃に父を亡くし、親族の悪意に押し潰され、最後の拠り所であった母親を病気で失った瞬間少年は糸の切れた人形のようになった。
両親が遺した莫大な遺産は親族に管理という名の搾取が行われ、少年は誰もいない屋敷に一人住む事となった。
悪意に僅か残された慈悲か、はたまた復讐を恐れたのか、ひとまず少年は慎ましく暮らしていくだけなら不自由のない資金を親族から残されていた。
先日高校も卒業したが大学に入る気も就職する気も起きず、少年は屋敷という殻の中に篭っていた。
────まだ体が動く、これでは足りない
────このまま意識を失えば“また”思い出してしまう
少年は普通の引きこもりとは違った点がひとつあった。
彼はひたすら己の体を鍛えた、身体に後遺症が残らない程度にまで体をいじめぬき毎夜気絶するかのように意識を手放した。
そうしなければ思考の波に飲まれ嫌でも実感してしまうからだ。
母の死を、果てしない孤独を、無為な時間だと思いつつ何も変わらない自分を。
そうして逃避を続けて数ヶ月が経過した、冬の終わりと共に引き篭もり始めた少年であるが季節は夏を迎えようとしている。少年は体を鍛えるだけでなく、インターネットで知りえた技術を学んでいった。決してこの時間は停滞などしていない、そう言い聞かせるように。
だがこんな事をしても母は帰ってこない、いい加減前を向いて生きなければならない。そんな"理屈"は頭の中ですでに巡り続けている。
だがあと一歩、最後の一歩が踏み出せない。
少年は諦めの中で、そんなきっかけを求め続けていた────
────────────────────────────────────────────
ピンポーン
「こんにちはー、世界的大スターでーす!」
はい、こんにちはー(便乗)
フォルゴレさんを味方につけた大人気魔物キリィちゃんです。
今回は
忙しいフォルゴレさんを長期引き止めるわけには行かないのでキャラメイク時の情報を頼りに
迷いなく進みすぎたので怪しまれるかと心配してましたが、キリィちゃんの直感スキル(ウ・ソ☆)によるものと勝手に納得してくれているのでスルーでOKでした。
あ、出てきました出てきました。
健康的な肉付きではありますがしっかりと絞られた細マッチョ体型、女性を魅了する甘いマスクは若干幼く身長もやや低めです。
このお姉さん受けしそうな微ショタがキリィちゃんの
略称はほもくんです。お呼びじゃないと言ったな? あれは嘘だ。
ごめんなさい一度やってみたかったんです。何でもしませんが許してください。
という訳で気を取り直し、今はほもくんの家の中でフォルゴレさんとキャンチョメが口下手なキリィちゃんの代わりに魔界の王を決める戦いを説明してくれています。話は二人に任せて居間の脇にある仏壇に飾られた綺麗な女性が少年と笑顔で写っている写真を見つけます。この少年がほもくんですね、非常に可愛らしいです。今もですが(野獣の眼光)
では、この合間の時間を利用して、ほもくんの能力を確認しましょう。
ふむふむ、固有スキルは『正当なる血統』『無職』『一人立ち』ですね、これはキャラクリ時に私が指定したものなので間違いがないかの確認だけです。
これらは詳細を省いてまとめると「この人は自由に動ける身で資産を持ってる人ですよー」という事を示す効果です。(身も蓋もない)
今チャートは原作以上に世界を回ったりする回数が多くなるので学生や社会人だと毎回毎回休みを取るのが難しく、場合によっては出勤したまま気付けば敗退のパターンもあります。まぁ分断中に狙うのは当然だよね。
また妻子持ちはNG、家族のいる土地から離れられないだけでなく「俺この戦闘が終わったら~」と意味不明なタイミングで死亡フラグを立ててきます。それに巻き込まれるキリィちゃんも堪ったもんじゃありません。(4敗)
そんな訳で建前上は大学浪人中であるほもくんです、大きな家で資産もあるしヨイゾヨイゾ。
またキリィちゃんが習得した『人外の力持つ相棒』の効果なのか筋力と体力のステータスも非常に高いですね。マスクデータである敏捷値もきっと高めに設定されている事でしょう。
さて、次は後天的に追加されたスキルですがこれは『何もなし』の場合がほとんどです。まぁ一般人なんで全く期待はしていませんが────
『暗殺術』
…………( ゜Д゜)
『暗殺術』
…………( °Д° )
暗殺術? ちょっと待ってこの子一般人だよね。何で裏の家業の人しか取れないようなスキル持ってるのおかしくない?
キリィちゃんだって驚愕のあまり目を見開いてびっくりしてるじゃないか。
ほもくんって逸般人なの? 設定面には……あ、もしかしてこれか?
【インターネットで様々な技術を覚え、いくつかは体得している】
いやいやいやいや、ネットで暗殺術を覚えるとかどんな通信教育よ。え、君なら出来るって? 暗殺がユーキャン(君なら出来る)とか怖すぎるわ。
◇◆◇◆しばらくお待ち下さい◇◆◇◆
お待たせしました。
ひとまず落ち着いた私は、急いでザケル的攻略雑誌から情報を集めて来ました。
この情報によると『暗殺術』の効果は『隠密』と『不意打ち』の習得、及びその対抗判定の成功率アップとの事です。
とはいえ魔物相手にはまず成功しないし、殺したり重傷を負わせる程の不意打ちは出来ないとの事(暗殺とは一体)
まぁヘイト値を下げる事が出来るので、デメリットなしの有用スキルとわかってホッとしました。
ザルチムの
……さて、思わぬスキルの登場で画面から目を離してましたがほもくんとそろそろ仲良くなれたかな? ここは目ぼしいイベントがなかったのでオートプレイにしていたんですよね。
「フォルゴレ~~」
「仕方ないさ、キャンチョメ。また説得に来よう」
アレ?! これほもくんに王を決める戦いの参加断られてない?!
おかしいですね、試走中何度か同じ
……(考え中)…………
フォルゴレ! オマエちゃんと説明出来てなかったな! (責任転嫁)
これはまずいですね、すぐ仲間になってくれると思ってたのでこのチャートには時間をほとんどかけられません。仕方ありません、多少強引ではありますが【奥の手】を発動させたいと思います。
ではもう一度家の中に入れてもらうようお願いしましょう。
ちょっと待ってくださ~~い(扉ガンガン)
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────俺は手に取る事はしなかった。地獄にたらされた蜘蛛の糸を
愚鈍な日々を過ごしていた俺の下に現れたのは世界的大スター「パルコ・フォルゴレ」
母がファンだとよく話題に出していた男だ。いつも張り詰めた雰囲気だった母が、彼の話の時だけは楽しそうに話をしていた。少しだけ子供っぽいなと苦笑しながらも俺はそんな母さんが嬉しかった。
面識のない男が急に訪ねてきた事にやや不信感を覚えつつも、生前の母に笑顔を見せてくれた感謝にと隣にいた子供達と一緒に招き入れる。
少年の方はアヒルのような口当てをし落ち着きのない動作を終始していた。フォルゴレに同行している所を見るに共演中の子役なのだろう、と判断した。
問題はもう一人の少女。小学生くらいの年齢だろうが将来美人になる事が約束されているであろう容姿、その艶やかな長い黒髪は触れてみたいと身体の欲求が湧き上がるような気がした。
だがそんな浮ついた気持ちは彼女を目を見て一瞬で霧散する。
ブラックホールを想起させるような【無】を感じさせる黒の眼。眉ひとつ変化しない能面のように貼り付けられた顔でじっと見つめられると非常に落ち着かない気分にさせる。
「魔界の王を決める戦い、か……」
そんな一行から説明された突拍子もない話。
先程までの俺ならばこの停滞した時間を進めるにはいい戯れになる、と二つ返事で了承していたのかもしれない。
だが今の俺はそんな気になる筈もなかった。
原因は目の前の少女、彼女だけは男二人が説明を行う間何一つ言葉を発さなかった。
自分をじっと見つめ続けたかと思うと、突如眼を見開いた。その顔は驚愕した様にも見えるが表情が変化していないので違うな、とその思考は切り捨てた。
見開いた眼は瞳孔まで開き瞬きもせずじっと俺を見つめている。まるで俺の奥底に眠る感情やトラウマを全て抉り出そうとするかのように。
正直に言うと……俺はびびっていた。
男二人はそんな彼女に気付かず“魔物”だという少年を大砲のようなものに変化させ訴えていた。違う、そうじゃない。魔物だとか魔界だとかを信用していない訳じゃないんだ。
彼女の眼を見た俺には、この誘いが「悪魔の契約」のようにしか思えなかったんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ひとまず考えさせて欲しい、と話を切り上げた俺は三人を玄関まで送り扉を閉める。
だが俺は、そこから一歩も動く事が出来なかった。
────本当にこれでよかったのか?
俺の胸の中に去来するのは鬱屈された疑問のみ。
例え悪魔の誘いであろうと、今のまま死にながら生きていくよりはずっとマシではないのか?
どちらが正しいのか、どちらが間違っているのか。もう正常な判断を下すことが半ば出来なくなっていた。そんな俺はもう────
「教えてくれよ……母さん」
そう溢さずにはいられなかった。
ドンドンドンドン!!
扉がとんでもない力で叩かれる、ハッと我に返った俺はほぼ反射的に扉を開く。
目の前にいたのはあの黒髪の少女であった。
少女は背負っていたリュックのようなものを下ろすと中から“桜色の魔本”を取り出す。確かキャンチョメとかいう少年が言っていた呪文を使う為の道具だ。
それを俺に無理やり持たせた少女はフォルゴレの下へ行き、彼の魔本を軽く叩きながら言う。
「読んで」
呪文の力を見せて納得させてやろうとでも言うのだろうか。まぁそれで彼女の気が済むなら構わないだろう。
確かに一節だけ色が変わって文字が読める場所があるな。
「第一の呪文、《ピルク》!」
すると黄色い魔本を叩いていた手が止まり、
「キ……キリカ?! これは大丈夫なのか!?」
「大丈夫、問題ない」
フォルゴレがその様子に狼狽したが問題はないようだ、もし魔本が燃えてしまったら大事らしいからな。少女の言う通り桜色の光はすぐに収まった。
特に何も変わらない。フォルゴレも自分の本を見てみるが特に異常はないようだ。
一体何が起こったのか。その答えは俺の手元にあった。
「……読める文字が増えている?」
「何?! こんなすぐに第二の呪文まで?!」
「いや、どうやら違うようだが……」
「読んで」
少女が簡潔に促す、どうやら先程の現象の答えがこの増えた文字なのだろう。
いいさ、読んでやるよ。
「《ピルク・ポルク》!」
ざぁっ…………
その瞬間、白い煙と共に桜の花びらが舞い落ちた気がした。
その時脳内に広がった記憶は昔、母さんと一緒に見た桜舞う光景。
そして煙が開けた時、そこには────
────あの時と変わらぬ笑顔を浮かべる母さんがいた。
呪文の詳細情報は次回になります。
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