【僕のヒーローアカデミア】No.1ヒーローの元ライバル 作:高月 弾
趣味を続けたいと思いました。
「な、なんだよこれ?」
上鳴が目の前に広がる異様な光景に戸惑いの表情を浮かべる。
「負けたはずの
「勝負に負けて、試合に勝ったと言うところか。」
常闇が目の前の状況に対して言葉を当てはめる。
まさしくその状況を説明するにはふさわしい言葉であろう。
緑谷は両手を大きく負傷し気絶、麗日は能力を自身に使ったために酔いを起こし座り込む。
対して飯田はそんな麗日のそばに寄り背中を擦ってやり、爆豪は倒れたり座り込むことなく目を見開きどこかあらぬ場所を見つめる。
その後すぐに二機のロボットによって緑谷は医務室へと運ばれていく。
観戦ルームでは、そんなボロボロな
そんな中、オールマイトはすぐさま戦地へと駆けていく。
爆豪は目の前の状況を頭のなかで整理する。
緑谷の焼けた左腕、壊れた右腕、試合終了の合図、核を回収された…
【負けた】
それもただ負けたのではない。
(デクのやつ、最後も俺がどこを攻撃するか完全に読んでいやがった…。読んだ上であの攻撃をやりやがった…!あいつも個性を使って全力だった。俺は…個性を使ったあいつに…完全に…!!?)
「爆豪少年。」
突然彼の肩に手が置かれる。
それに驚いて即座に振り返るとそこには自身がもっとも尊敬するスーパーヒーローが立っていた。
「オール…マイト。」
「講評だ。行くぞ爆豪少年。」
「…。」
オールマイトにそう言われた爆豪は一言も返すことなく静かに観戦ルームへと移動する。
緑谷は怪我がひどいため一人だけ保健室で治療を受けることとなり緑谷を除いた3人が講評を聞くこととなった。
オールマイトは自身で講評しようとはせずに生徒自身に分析させる。
「では、今回のグループの中でMVPを決めるとしたら誰かな?」
「はい。」
八百万がまっすぐと手を上げる。
オールマイトが彼女を呼ぶと彼女はすぐさま説明を始めた。
彼女曰く今回のMVPは飯田くんだったらしい。
「爆豪さんは戦闘を見た限り、私怨丸出しの独断。それにヒーローチームの2人も核が張りぼてでなければあんな作戦はできませんわ。」
ごもっともだった。
私怨丸出しの爆豪は言わずもがな、ヒーローチームの最後の作戦は核が本物ならば爆発しかねない非常に危険なものだった。
緑谷の施設破壊も爆豪が注意を受けていた理由でアウト。
麗日の戦闘訓練なのに集中しきれていない点もおかしいと言わざるをえなかった。
それとは引き換えに、飯田は最初から最後まで自分自身の
まさに今回のメンバーの中ではもっとも素晴らしい活躍をしていたと言っていいだろう。
(…にしても、先生に見られてる状況でよくあそこまで私怨丸出しで行動できたな爆豪。本当に高校生かあれ?)
爆豪の行動に嫌悪感すら抱く生命だが、それを表に出すことはせずに心の内にとどめておく。
やがてオールマイトからの講評へと移ったのだが、八百万の完璧なまでの講評に言うべき言葉を失ってしまった。
とはいえ講評としては八百万の言っていたことがほとんどなのでそのまま次の対戦カードへと移った。
2戦目は、BチームVSIチームの戦いになった。
全員が見守るなか開戦のホイッスルが鳴り響く。
障子が動き出そうとするが、轟がそれを手で制する。
すると轟はビルの入り口へと歩いていき右手をビルの側面に着ける。
次の瞬間、ビルの表面は一気に凍りつき氷の建造物へと姿を変える。
障子は目を丸くして轟を見つめるが轟はそんなこと一切期にせずに建物の中へと進んでいく。
やがて彼は核兵器のある部屋へとたどり着くが、その目の前には尾白がいた。
足を氷漬けにされ動けない状況だった。
「動くなとは言わないが、動いたら足や皮膚はただではすまないぞ。」
轟は核兵器に向かって歩いていきながら
「ヒーローチーム!Winーーーー!!!」
観戦ルームでは氷のせいで恐ろしい寒さに震えながらその圧倒的な実力を目の当たりにする者たちがいた。
(う、嘘だろ?核兵器ごと…いや、建物ごと全て凍結させることで敵を無力化するなんて…あまりにも強すぎる。まさか、あの葉隠さんが完封されるなんて全く想像してなかった…。これが推薦組の実力か。)
その実力に息を飲む。
つい自身と比較をしてしまう。
圧倒的な個性の強さ、そして相手の足だけを凍らせたその精密性、核の即時発動を防ぐ個性の汎用性。
どれをとっても一流と言っていいものだった。
自分の個性ではとてもなしえることの出来ないものであると思うばかりだった。
(体力テストなんて本当にただ試しているだけだった…まだまだ誰のことも分かってないぞこれは。)
次の対戦相手は同じ推薦組である八百万のいるCチームVS Fチームだった。
はじめの準備時間で防衛に必要な金属壁などの武装を整えたCチームはFチームに付け入る隙すら与えることなく核の防衛をやりとげる。
そして次に回ってきたのは生命のいるEチームVSIチームの戦いだった。
核の
「よーし!いよいよ私たちの番だね!がんばろう!生命!」
「あぁ、絶対に勝とう。芦戸さん。」
「おう!瀬呂俺らで必ず勝ってやろうぜ!」
「おうよ、守りきってもいいけど、ヒーロー側を捕縛して終わらせちまおう。」
全員がやる気を全開にそれぞれの配置へとつき作戦や準備を始める。
「ねえ、芦田さん。なにか作戦とかやりたいことって決めてる?」
「私?う~ん、私は2人とも倒しちゃうのが簡単なんじゃないかって!」
「なるほど。」
芦戸さんは勉学の様子を見ていてもあまり勉強が得意ではない様子が見られていた。
対して体力テストの際は個性がいかせない競技でも比較的高い成績を残していることから考えるに彼女は肉体派なのだろう。
そんなことを考えながら作戦を考える。
動きたい彼女にとっては不本意かもしれないがある案を提案してみる。
その案とは、
「潜伏?ほとんど潜伏時間に費やすの?」
「あぁ、あの兵器を核とするならなるべく戦闘などによる衝撃を与えたくない。となれば相手と戦闘を行い制圧するより、核を回収してけりをつける方が現実的だと思うんだ。」
「なるほど、たしかにそうかもしれないね!じゃあ具体的にどうするの?」
「それは…。」
芦戸に今回の戦略の説明を終えてすぐに開戦のホイッスルが鳴り響いた。
「フフフ、あいつらはこれで核には触れられないぜ!」
「あとは直接倒すだけだ!」
回収側はビルの中へと入り口から侵入していく。
パッと見ではビルの様子に違和感などはなく罠が仕掛けてあるような様子ではなかった。
が回収の2人は入口付近で足を止める。
すると生命はビルの壁に手を当てて意識を集中させるために目をつむる。
大きく息を吐いてリラックスした状態になる。
自分の持つ生命力を薄く薄くそれを引き伸ばしていくかのように円形状に形を変えていくようなイメージでレーダーを作り出す。
あくまでイメージであるため実際に生命力をそこまで引き伸ばしているわけではない。
がそのレーダーをビル全体まで引き伸ばしなにかを探る。
時間にして10秒ほど。
ようやく生命が口を開く。
「…見つけた。」
そう呟きながら目をゆっくりと開く。
「どこにいたの?」
芦戸も声を小さくしながら問う。
「案内するよ。」
そう呟きながら歩き出す。
芦戸はそれに静かにしながらついていくとやがて一階の端っこの部屋で立ち止まる。
「この部屋のずっと上、最上階。そこに【2人】ともいる。どうやら部屋での戦闘を計画してるみたいだね。」
「本当に分かるんだね、生命の個性って結構便利?」
レーダーのようにして特定していたのはふたりの位置だった。
2人の生命を関知することによって2人の位置を正確に割り出すことが出来たのだ。
場所が分かってしまえば先手を打てるのは必然的にこちらになる。
2人は一度作戦を確認しあう。
「さてと、まさか2人とも核のところで固まってるとは思っていなかったな…。」
「どうする?1人が外にいないと2人の距離が離れたタイミングが失くなっちゃうよ?」
当初の作戦では1人が先兵として相手を探しだし戦闘を行うとばかり思っていたが、今回の相手はそうではないらしい。
(相手にはこの狭い場所で機動力を出せる人がいないのか、だから拠点でまるごと迎え撃つつもりなんだ…。)
そう考えると、思考を巡らせる。
作戦を変えるのか、それとも変えないのか。
芦戸も自分なりに考えて答えを導き出す。
「「もう少し待ってみよう(よ)。」」
それが2人の出した答えだった。
まだ焦るような時間ではない。
それならば
2人は階段を上って核のある部屋の真下の部屋へとたどり着くとそこで待機する。
この対決の時間は15分。
そのため生命たちは1分ごとにレーダーを用いて2人の位置を把握して突入のタイミングを計る作戦に切り替える。
そんな様子をテレビカメラでオールマイトと他の生徒たちが確認する。
そんなお互いに攻めない様子に疑問を浮かべる生徒が何人もいた。
それに対して再び口を開いたのは八百万だった。
「彼らは両方とも受け身の選択をとりましたわね。」
「受け身?ヴィラン側はもとかく、ヒーロー側も受け身なのか?」
八百万の言葉に佐藤が疑問を返す。
すると八百万はすかさず説明を始めた。
「恐らくEチームは何らかの方法で核の場所か2人の場所を特定したのでしょう。だからこそあのヴィランチームの真下の部屋に移動した。どうにかヴィランチームの隙をつけるタイミングを見計らっているのでしょう。」
「そうか。」
その言葉で気づいたかのように今度は轟が話し始める。
「ヴィランチームはヴィランチームで、ヒーローチームが自分のたちの作ったフィールド内で戦わせるようにその場から離れるつもりはない。一見時間制限があるからヴィランチームが圧倒的に有利に見えるが…。」
「制限時間いっぱいなにもしないことはあり得ない。その焦りがヴィランチームを動かすかもしれない。それは逆も待たしかり。」
轟と八百万はそれぞれの考えが合致していることを察したのかお互いの考えを止める間もなくはなしていく。
「「その勝負、忍耐力が鍵にな(りますわ)る。」」
時間にしてもうそろそろ8分、半分以上が過ぎようとしているが両チームともに動くことは全くしなかった。
「…なんか見ててつまらないな。全く変化がおきやしねぇぜ。」
「そうね、見てる側からしたらつまらないわ。」
「だが、実践ではこんなことはざらにあるぞ。有効な手だてがない状態ではいかに相手を刺激せずに確保まで持っていくか、それが重要になってくる。」
そういいながらオールマイトは画面を見つめる。
「それに、これは時間制限があるんだ。いつまでもじっとはしていられないさ。」
「…たっく。それにしてもヒーローチームは一体いつまで探してるつもりなんだよ。」
「そろそろ動かないと時間的にも厳しいと思うんだけどな。まだここをみつけられてねえんじゃないか?」
「可能性はあるな。」
そういいながら入口付近に再び目を向ける。
切島が警戒しながら出入り口の付近まで歩いていき顔を出して回りを確認する。
相手の姿形は全く確認できなかった。
「ダメだな、まだいるようには見えねえよ。」
「隠れて機をうかがってるわけでもないのか。」
そんな相談をしながら敵チームは待ち構えていた。
「ねぇ、そろそろ時間が不味いんじゃないかな?」
芦戸が少し不安そうな声で言う。
生命はそれをみて少し考える。
その後に帰ってきた答えは芦戸の考えていたものとは違う返答だった。
「まだ待とう。特攻を仕掛けるなら残りが3分になってからかな。」
「3分!?そ、そんなに短い時間で核をとるの!?」
衝撃的な時間設定に芦戸は思わず声を荒らげる。
がそれでもなお生命は大真面目な顔でその姿勢を崩そうとはしなかった。
「芦戸さんの個性ならヴィランの2人に優位をとれる。万が一正面戦闘になっても勝てる可能性は十分にある。」
それを聞いた芦戸は笑みを浮かべながら手に酸を生成する。
それにたいして生命も笑みを返すがすぐに真剣な表情に戻る。
「問題なのは俺の方さ。」
「生命が?」
「あぁ、俺の個性は別に2人に対して…なんなら戦闘向けの個性じゃない。それどころか瀬呂くんに対してはむしろ相性が悪い。」
生命の個性【ライフチェイン】は本来戦闘向けの個性ではない。
ゆえに正面戦闘はあまり好ましくはない。
それに彼は遠距離への攻撃手段をほとんど持ち合わせていない。
ゆえに遠距離からの拘束、妨害手段を持つ瀬呂はまさに天敵だった。
「だから理想としては切島君が防衛にのこって、瀬呂君が偵察に出るパターン。最悪、正面戦闘になったとしても瀬呂くんと芦戸さん、俺と切島くんの戦闘でないと厳しいと思うんだ。」
芦戸は話を聞くと小さく頷いてその時を待つようにかがむ。
生命も少しかがんでからサーチを始める。
次の瞬間生命が立ち上がり上の階を見つめる。
「生命?どうしたの?」
「動き始めた…2人のうちの一人が、部屋の入り口に向かってる!」
「!」
「あぁ!!いつまでたっても来ねえ!!なにやってんだヒーローたちは!!」
「残り時間は後5分か…さすがにこなさすぎるっつの。」
ヴィランチームはあまりの進展のなさに呆れさえも感じていた。
いくら探知系の個性がいなくともあまりにも見つけられなさすぎだと。
第一試合の緑谷たちはもっと早く見つけていたと。
「瀬呂!俺はちょっと辺りを見回ってくるぜ。隠れてたとしたら男らしくねえからブッ飛ばしてやる!」
「オッケーだぜ。ただこの階から離れないでくれよ。」
「あたぼうよ!」
そう掛け声を上げて答えると、切島は部屋から出て辺りの偵察を行いに行く。
瀬呂はそれを見送ると部屋のなかで防衛に着く。
切島が部屋を出てから1分ほどだろうか、瀬呂は部屋にある違和感を感じる。
部屋の床に空いている人一人が通れるくらいの穴。
それがふと視界に入って離れなくなる。
(…あんな穴あったか?いや、罠を仕掛けてるときもこんなのがあった記憶はないはず…だよな?)
「ヨッ!」
「は?」
何かが穴から飛び出してくる。
飛び出してきたものはこちらに振り返るとつい言葉を漏らす。
「「あっ…。」」
ついに
が、その予想外の出会い方にお互いに思考が止まる。
「生命!ごめん!敵の正面に出た!!」
前に行動に移ったのはヒーローだった。
「構わない!作戦続行!!」
「了解!!」
芦戸の掛け声に返答しながら今度は生命がその穴から勢いよく飛び出してくる。
部屋の様子を見てヒーローチームは目を丸くする。
当たり一面をテープがまるで結界のように張り巡らされていた。
これでは核までたどり着くのは困難なようにも思えるが、芦戸は酸で生命は手刀を用いてテープを排除していく。
瀬呂はテープが切られたことを視認した瞬間に【ハッ】とする。
すぐさま両腕の肘からテープを伸ばし芦戸と生命を捕縛しようとする。
しかし、自分のテープの軌道から外れつつ、芦戸と瀬呂の間に入り込みそのテープを手刀で切り裂く。
その様子を驚きながらも頭を必死で働かせる。
(芦戸を守った!?芦戸を核まで運ばせる気か!だけど、どうやって俺のテープを手で切り裂けるんだ!?そんなやわじゃないぞ!!)
視線をその手に移すと生命の手にはコンクリートの欠片が握られていた。
(あれか!?破片を使って切ってたのね!)
その疑問が晴れるものの状況は変わらない。
再びテープを2人に伸ばすが前ほどと同じように生命に防がれる。
2人はテープの結界を破りながら核へと近づいていく。
瀬呂1度標的を生命に絞る。
「き、切島!!ヒーロー達が来た!!すぐに戻ってこい!!」
そして両腕の両方のテープを生命に放つ。
生命は一方のテープは手にしたタイルの破片で切り裂くが、もう一方は間に合わずに左腕に巻き付かれる。
「よっしゃあ!」
(このままトラップに叩きつけてやるぜ!)
そう意気込んで思いきりテープを引っ張る。
しかし、テープで捕縛した先の人物はほとんど動かなかった。
(なっ!?)
「力比べか?いいな、付き合ってやるよ。オーバーヒート!」
生命の肌が赤みを帯びると彼の力がさらに強くなる。
このままではまずいと、とっさに自らテープを切断して引っ張られるのを回避する。
生命は自身の左腕に巻き付くテープを切断して取り除く。
その間にも芦戸はテープを溶かして核へと向かっていく。
「ちくしょう!」
瀬呂は再び生命に2本のテープを放つ。
生命は前ほどと同じように右手で片方を切り裂き、もう片方は左腕で受け止める。
が、そこからの展開が先ほどとは違った。
瀬呂はすぐさまテープを切断して、もう一度テープを放つ。
生命は左腕のテープを処理するのを中断して、放たれたテープに対応する。
左腕にこれ以上負担をかけないために片方のテープを回避する。
そこで生命にある違和感が襲いかかる。
左腕が引っ張られる感覚。
左腕を確認すると切断されたテープのあまり部分が結界のように張り巡らされたトラップのテープとくっついてしまっていた。
「しまった!?」
「!」
すぐさま標的を生命からもうすぐにでも核を回収しようとしている芦戸へと移す。
「おぉらぁ!ヒーローども!核はとらせねぇぞ!!」
切島がついに部屋の入り口にたどり着く。
瀬呂は芦戸に向かってテープを伸ばす。
生命はとっさに芦戸とテープの間に飛び込んでその攻撃の盾になる。
生命は瀬呂のテープに捕縛されて動けなくなる。
しかし、芦戸は動ける。
芦戸は目の前にある最後のトラップを溶かして核に手を伸ばす。
切島は走るが確実に間に合わない。
瀬呂はテープを伸ばそうとするがトラップと捕縛したテープに絡まっている生命が邪魔で直接狙うことが出来なかった。
ヴィランチームは最後の最後であがく手段を見失い、ヒーローチームが核を回収する瞬間を見つめた。
「ヒーローチーム!W I I I I I I N!!!」
大きな掛け声の放送が鳴り響き、勝者を告げた。
自分の好きを失くしたくなくて戻ってきました。
更新がいつになるか分かりませんが続けていきます。