ヘイ!タクシー!   作:4m

100 / 235
シルヴィア05

『もう逃げ場はないぞアリス!本当に俺たちとやるつもりか!』

 

食後、ファイスピ最新作公開記念としてテレビの夜のロードショーで過去作が放送されていた

主人公のアリスが黒いS14の前期型に乗って街中を爆走していくのを仲間が捕まえにいくシーン

道中にあるものを色々破壊しながら、日本のスポーツカーが外国のマッスルカーを振り切っていくのは中々に爽快感があるが、凹んだりしたところ直すのにいくらかかるんだろうと思うのは職業病かな

それに、さすがハリウッド映画だから予算使ってるなぁと思うのもアレなのだろうか

子供の頃はもっと純粋に映画を楽しんでいた気がする

 

「それにしてもすごいですよね、ありすさんが試写会に招待されるなんて」

「おう、お疲れ。洗い物サンキューな」

「いえいえ、押し掛けたのはこっちなんでこれくらいは」

 

映画を観ていると、幸子が隣へと腰を下ろす

 

「今日一日ありすさんも、ありすさんのプロデューサーさんもすごい顔をしてました。ボクのプロデューサーさん・・・というか事務所も今回の仕事の話で持ちきりで。まったく、カワイイボクを差し置いて!」

「まぁ、それはそうだろうな」

 

やはり、想像通りだった

これだけ大きな仕事だ、無理もない

このチャンスを逃すのは上も惜しいはずだ、上手くやればプロダクションの名前を広げることができる

あの美城専務も海外の支社にいたこともあるらしいし、相手側の規模の大きさは痛い程わかっているだろう

アイドル部門が発足されてまだ間もないらしいし、それも兼ねてのタイミングのいい仕事なのだと思う

 

「あ、アイス買ってきましたよ?いりますか?」

「ん、ああ。何買ってきた?」

「バニラとイチゴとチョコと、クッキーアンドクリームのソフトですね。どれがいいですか?」

「じゃあ、クッキーアンドクリームで」

「えっ、志希さん食べたそうにしてたけど大丈夫ですかね・・・」

 

いい、寄越せと幸子に伝えると、幸子は自分の分のチョコアイスも持ってリビングへと戻ってくる

今、一ノ瀬志希は陽気に鼻歌歌いながら風呂に入ってるし、本屋ちゃんは廊下の部屋で自分が持ってきた本を整理している

今回は残ったアイスの選択権は巻き込まれた本屋ちゃんに譲ろう、原因のアイツは知らん

 

「ありすさん、やっぱり凄いです。ふんっ、いつかこのカワイイボクも世界に羽ばたく時が来ます!実際に空に放り出されたんですから予行演習は完璧ですし!」

 

体育座りのまま、幸子はそう言う

 

「やっぱり羨ましいか?」

「そりゃ・・・そうですよ。でも、ありすさんは演技がとてもお上手でしたし、将来も演技のお仕事もしたいと勉強しているみたいでしたから、よかったと思います。ボクも仲間が選ばれて嬉しいですし、全力で応援しますよ!」

 

そう言ってチョコアイスに食らいつく幸子

勢い余って鼻の先にアイスが付いてしまっていたのに気づいて慌てて俺の隣に置いてあったティッシュを俺から一枚受け取り拭き取ると、俺の方を見ながら顔を赤くして少し俯いてしまった

何だかこんな幸子は新鮮だ

 

「チャンスは自分で掴みます、ボクはカワイイので!」

 

顔を上げると開口一番、そう宣言すると再びチョコアイスに食らいつく幸子

俺より一回りくらい小さいのに、しっかりしてる

 

「お前、やっぱ可愛い奴だな」

「ふへぃ・・・!?」

 

よくわからん声で返事を返されてしまった

今度は唇の端っこにチョコが付いている

 

「何だ、いつも自分で言ってることだろう」

「いや、だって!そんなこと零次さんに言われると思ってなかったですし・・・!自分で言うのと人に言われるのでは・・・へ?唇?・・・ああっ!待ってください!ティッシュ・・・がないです!あっ、零次さん早く一枚ください!でもこっち見ないでください!お願い見ないで・・・。絶対変な顔してますぅぅぅ・・・」

 

そう言うと体育座りのまま顔の前にアイスを持ってきて顔を隠すように縮こまってしまった

俺は言われた通りにティッシュを一枚取って、顔を隠すようにしている手をトントンと叩くと、幸子は顔を隠しながら受け取ってもぞもぞと拭き始める

 

「れ〜いじさ〜ん」

 

そんな何だかほんわかするような空気をぶち壊すように、風呂場から一ノ瀬志希の声が聞こえてきた

 

「悪い、ちょっと行ってくるわ」

 

一言幸子にそう伝えると、幸子は無言で一つ頷く

とりあえず俺は置く場所がないので、アイスを手に持ったまま風呂場の扉の前まで行く事にした

 

「なした」

「シャンプーな〜い」

「ボディソープがあるだろ」

「ちょっ、それはいくらなんでもあんまりすぎ〜」

「・・・ちょい待ち」

 

俺は壁の上にある棚から詰め替え用のシャンプーを手に取ると、再び一ノ瀬志希に声を掛ける

 

「詰め替え用があった、入れ替えといてくれ。ちょっとだけ扉開けるぞ、いいか?開けるぞ」

「待って待って〜、はいどーぞ」

 

湯船に入る音が聞こえると、俺は少しだけ風呂場の扉を開いて見ないように詰め替えを持っている手だけを中に入れる

風呂場の湯気でアイスが溶けないように離しながら腕だけ入れるその姿勢は中々にキツかった

 

「はい、ここに置いとくぞ。いいか?いいだろ?じゃあ俺は行くぞ」

「はー・・・い、って待って、零次さんちょっと待って」

「今度は何だ」

 

中で一ノ瀬志希が湯船の中から何かをしている気配を感じる

俺が片手を入れた状態のまま待っていると、さっきまで騒がしく話していたのが嘘のように風呂の中が静まり返り、そのかわりに何やら鼻で息を繰り返し吸い込むようなスンスンとした息づかいの音が聞こえてきた

少し湯船の中から体を乗り出しているようだ、中が見えない扉のガラスにシルエットだけが見える

 

「おい、なんだ、早くしてくれ。溶ける」

「あ、やっぱし」

 

ザブンと一ノ瀬志希が湯船の中に戻ったのがわかった

 

「もう、幸子ちゃんったら。私が狙ってたのに〜、零次さんも食べちゃうなんてひどーい」

 

アイスのことがバレた?

こいつ犬か何かか

 

「やかましい、あいつが買ってきたんだ。お前に選択権はない」

「え〜、押しかけた事根に持ってるのー?ごめんってばー。上がったらご奉仕してあげるから、今は一つだけお願い聞いてちょうだい?」

「何だ」

「一口ちょーだい」

 

ちょーだいってお前、この状態で俺にどうしろっていうんだ

とりあえず俺は入れている手を引っ込めて、アイスを持っている手を風呂場の中へと入れる

早くしてくれ、マジで溶ける

 

「あー、もうちょっと右、いきすぎいきすぎ、もうちょい左。違う違う、零次さんから見て左」

 

いかんせん中が見えない状態なので一ノ瀬志希の指示に従うしかない

俺は言われた通りに腕を右に左に動かすが、上手く照準が合わないようだ

 

「オッケーオッケー、そのまま動かさないで。あーん・・・ん、ん、んー?」

「おい、どうした?早く」

「意外と届かない。ねぇ、もうちょい中入っていーよ」

「お前が湯船から出てくればいいだろうが」

「寒いんだもん。中に入ってるから見ても大丈夫だよー」

 

こうなったら意地でも引かないようだ

俺は渋々扉を開けて上半身を中へと入れる

 

「ムフフー」

 

浴槽をチラッと見ると、一ノ瀬志希がニヤニヤした表情で憎たらしくこちらの様子を眺めていた

 

「おいほら、言う通りにしたぞ。早く一口持ってけ」

「はーい。あーん・・・」

 

そう言いながら再び口を近づけてくる一ノ瀬志希だったが、食らいついた感触がない

なるべく見ないように顔を逸らしているので状況が中々わからない

 

「うーん、もうちょっとなんだけどなー。よし、まぁいっか」

 

何がいいのかよくわからない

どうしたらいいかとまた尋ねようとしたそこ時だった

ザバッと水を勢いよくかき分けて一ノ瀬志希が立ち上がった音がする

 

「お前・・・!」

「あーん・・・ぱくっ」

 

食らいついた感触がしたのがわかった

が、今はそれどころではなく、俺は''それ''を見ないように顔を思いっきり逸らすが、その方向がマズかった

壁に備え付けられている鏡に、思いっきり一ノ瀬志希の肢体が上から下まで映ってしまっている

風呂に入っている間なら湯気で鏡が曇ってよく見えなくなるはずだが、こいつは律儀にも換気扇を回しており、さらに扉を開けての会話がしばらく続いたおかげで、鏡は極めて良好な視界を確保してしまっていた

 

「あー美味しかっ・・・あ」

 

そんな満足げな一ノ瀬志希が見えたのも束の間、鏡越しに目が合った瞬間に自分の体を見回す一ノ瀬志希

映っていたのはキズやアザ一つない綺麗な肌色の体と、胸のそこそこ大きな膨らみ

その先端には茶褐色の輪と、同じ色をした少し大きな突起

股の間に目立つのは、髪の毛と同じ色の濃い紫のような色をした、綺麗に整えられていた茂みだった

それが浴槽の縁に少し乗り掛かった状態で這うようにくっ付き、その壁面に合わせて雫を垂らしていた

 

俺は慌てて目を閉じるが、もう遅かった

 

「ムッフッフ」

 

一ノ瀬志希がゆっくりと湯船に戻っていくのがわかった

 

「どうだった?しきパイの感想は?」

「・・・悪かった」

「えー、ひどーい。これでも結構おっぱいある方だと思うんだけど」

「謝ってんだよ間抜けっ!ほら、もうアイス全部やるから!」

「もう、そんな慌てなくてもいいのにー。周子ちゃんのおっぱいも見たんでしょ?」

 

あの野郎、女だから''野郎''ではないけどもあの野郎

 

「不可抗力だ、わざとじゃない」

「この前も奏ちゃんとヤッたって聞いたんだけど」

 

あんっっっっの野郎!

 

「ヤッてない!なんであいつはそう匂わせるようなことばっかり言うんだ」

「なんだ、てっきりそうだとばかり思ってた〜。じゃ、これ貰うね」

「ああ、さっさと受け取れ」

「よいしょっと」

 

ザバッと再び水をかき分ける音がした

完全に不意をつかれた

 

「はい、せっかくだから生しきパイっ」

 

俺からアイスを受け取ると、そのまま伸びていた俺の手を取って自分の胸へと押し当ててきた一ノ瀬志希

湯船に浸かっていたことで程よく温まっている温度と、少し張りがあるような、手で丁度包み込めるような柔らかい感触

濡れていてしっとりとしたその肌の質感、そして手のひらの中心に当たる少しコリっとした突起

手のひらから次から次へと情報が入ってくる

 

「どうどう?ちょい大きいほうだと思うんだけど。んっ、あ、もうちょっと上、あ、そこそこ・・・んんっ、やっぱ少し凝るんだよねー」

 

俺の手を胸に押し当てたまま、今度は位置を調整するように少し動かして、円を描くように回転させながらマッサージするように揉みしだき始めた

少しずつ、手のひらに当たっているその先端の突起が固くなっていき、一ノ瀬志希の口から甘い声が漏れ始める

 

「やめんかっ!」

「あんっ」

 

勢いよく、掴まれていた手を上に挙げて拘束を解いた

その際にプルンと揺れた胸を自分で押さえて、にゃはは〜と笑いながら湯船の中に戻っていく

 

「何でそうお前は恥じらいってもんがないんだ!今のJKってそういうもんなのか!?」

「誰にでもするわけないじゃ〜ん。あたしと零次さんの仲だからっ」

 

そんな関係嫌だ

 

「さっさとアイス食って体洗って出てこい、俺も幸子も本屋ちゃんも入れない」

「は〜い。で、どうだった?ご感想は?」

「そういうのは好きな奴とか彼氏が出来たらやってやれ。俺は知らん」

「だからやったんだよ〜ん。って言ったらどうする?」

 

そう言う一ノ瀬志希を再び見ると、イタズラっぽくニヤニヤ笑いながらアイスにもぐもぐと食らいついていた

 

「そういうカンジの人って零次さん以外にいないし〜」

「お前」

「なーんちゃって。少しは意識してくれた?」

 

すると一ノ瀬志希は両手を広げて、再びにゃはは〜と猫のような声でふざけたように笑うのだった

こいつの考えが本当に読めない

 

「まったく、そういうことしたら本気にする奴もいるんだから控えておけ」

「はいは〜い。アイスどーも、これでギブアンドテイクってやつかにゃ〜?」

 

本当にわかってんのかコイツは

俺は逃げるように風呂場を後にすると、中から再び鼻歌が聞こえ始めた

やっぱりLiPPSのメンバーは苦手な奴ばっかだ

 

「あの・・・零次さん」

「うわっビックリした」

 

廊下の部屋から本屋ちゃんがヌッと出てくる

本屋ちゃんはす、すみませんと謝りながら手を後ろに組んで俺の横に立った

 

「お部屋の片付けをしていたら、荷物の隙間からその・・・これが」

 

本屋ちゃんが恐る恐るその後ろに組んでいた手を前にして、持っていたものを俺に見せてくる

それは一枚の小さな黒い布、女性用の下着だった

 

「おい一ノ瀬志希!お前の下着みっけたから置いとくぞ!」

『あげるー』

 

あげるじゃねーよ!

俺は本屋ちゃんからそれを受け取ると、風呂場に置いてある一ノ瀬志希の着替えの上に放り投げた

 

「あの・・・お疲れ様です」

「おお、わかってくれるか」

 

俺の様子で察したのか、申し訳なさそうな表情の本屋ちゃんと一緒に、俺はリビングへと戻るのだった

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

翌日、俺は会社へ出勤すると、事務所の中はいつもと違う光景が広がっていた

 

「おはようございます」

「お、おはよう・・・」

 

ひな先輩の机の片隅に小さな机が備え付けられており、そこにはありすがちょこんと座って机を拭いていた

机の上にはこれまた即席で作ったような紙製の三角形の筒のような物が横に置かれ、そこにマジックで''専務!''と書かれている

 

「何やらお疲れの様子ですね。きちんと睡眠は取ったんですか?」

「察してくれ・・・」

「?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。