ヘイ!タクシー!   作:4m

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始まりのレター04

ここで待つのももう一年

例に漏れず今日も同じだ

同じように車に乗って

呼びに行かなくてもあいつらはここに来る

んなことはもう日常になっていた

でも今日は新人も来るらしい

今さっきみりあからそうトークが飛んできた

ルンルン気分でその後もトークが飛んでくる

共に働く仲間ができるのが嬉しいのだろうか

今日は賑やかになりそうだ

 

「零次さ~んっ!」

 

そんな元気な声と共に、助手席の窓がトントンと軽くノックされた

横を見ると、いつもより1.5割増しな笑顔を浮かべて嬉しそうにしているみりあがそこに立っていた

俺は黙って窓を開ける

 

「···おはよう」

「おはよっ!零次さん!もうみんな揃ってるよっ!」

「やっほー!レイ君!なんか久しぶり~!寂しかった?ねぇ寂しかった☆?」

 

その後ろからこれまた騒がしいギャルのこれまた騒がしい声が響くと、いつもと同じ、顔の横に手の指を独特な形に曲げて持ってきて笑顔を浮かべている莉嘉がいた

 

「別に、寂しくはなかったよ」

「も~、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに~。ねぇ、もう乗ってもいーい?」

「···ああ」

 

そう返事をすると、ありがとっ☆と莉嘉は言った後に、玄関に向かって振り向き手をこまねいていた

みりあと莉嘉の隙間からその玄関を覗いてみると、見たこと無い二人組が俺たちのやり取りを観察し、片方のピンクの髪の女の子はなんだか怪しそうな目で俺たちを見ていたのだった

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「''お迎えの車''って、アレ?」

「たぶん、莉嘉ちゃんとみりあちゃんが駆け寄っていったってことは、そうなんじゃないデスかね?」

「なんだ、大企業だから高級車で送迎してくれるのかと思ったらあんな古そうな車かよ~。案外流行に乗り遅れてるんじゃないの?」

 

莉嘉ちゃんとみりあちゃんがその車の運転手と話をしている様子を見ながら、りあむサンは悪態をつく

確かに私の目から見てもその車は古く見えるのは間違っていないが、コレはコレで味があるというのではないのだろうか?

''クラシックカー''という言葉もあるくらいだし、人によっては好きな人もいるかもしれない

音が大きいのは若干気になるが、いつもヘッドセットで爆音を鳴らしながらゲームをしている自分にとっては別に騒ぐほどのことではない

もしかしたらそういうスタイルが好きな人もいるだろうし、悪く言うつもりもない

 

「なんかボボボボってうるさいし壊れてるんじゃないの?うっわ、ダッサ」

「···」

 

この人、SNSとかきっと向いていないと思う

 

「おーいっ!乗ってもいいって!おいでおいでー!!」

 

みりあちゃんにそう声をかけられて、私たちは車へと向かう

 

「ちょっと待って、それなら荷物片付けるわ」

「えっ?助手席に乗せてくれるの?も~、レイ君アタシのこと好きすぎ~」

「乗っかって潰されたら困るんだよ」

 

莉嘉ちゃんと親しげに話しているのは運転手の男性

車から降りて助手席の荷物をトランクへと運んでいた

その際に自分と目が合ったので、軽く頭を下げる

 

「おはよう。若干狭いかもしれないけど、それでもいいなら乗ってくれ」

「ありがとー、お兄さん。いやー、いい車だねー、へっへっへ」

 

りあむサンがさっきの言葉とは真逆の態度を取り、車のドアに手を掛けて乗り込んでいく

 

···もう細かいことを突っ込むのはよそう

 

みりあちゃんはもうわかっているのか、すでに後ろの座席に乗り込んで出発を待っている

莉嘉ちゃんも荷物をよけた瞬間に助手席へと乗り込んで、シートベルトを締めていた

 

「おお、案外乗り心地がいいね。シートふわってしてるし、お兄さんもカッコいいしね」

「そいつはどうも、アンタ名前は?」

「夢見りあむっていいますー。よろしくねー、お兄さん。ってなんかお兄さん手慣れてない?」

 

私が最後に乗り込んでドアを閉めると、真ん中に座っているりあむサンが前の席と席の間から体を少し前に乗り出して、そのお兄さんの顔を覗き込むようにしてそう言った

りあむサンの言うように、案外見た目は悪くない

でも、スーツでもなく346プロダクションのロゴが入ってるわけでもない上着を着ていて、この会社の人には見えなかった。#タクシーの運転手?

 

莉嘉ちゃんとみりあちゃんと親しげに話している様子から、普段も同じように送迎をしているのだろうか?

 

「じゃあ車出すけど、あれだろ?いつもの撮影スタジオでいいんだろ?」

「うん!今日は宣材撮影なのっ!それを二人は見学しに行くんだよ!あきらちゃんに、りあむちゃん!」

「ああ、アンタたちが''新人''って言ってたやつか」

「···ドモ」

 

お兄さんの言葉に私はまた軽く頭を下げるのだった

そしてお兄さんはメーター横に張り付けてある付箋を見て行き先が間違っていないかどうかと乗せるメンバーが正しいかどうかを確認すると車のシフトレバーに手を掛けて発進しようとしたその時、運転席の窓が軽くノックされる

 

「すいません!運転手さん!」

「まてまてまて、今窓開けるから」

 

お兄さんが窓を開ける前から、その人物は書類を抱えたまま慌ただしく話し掛ける

 

「まだいてよかった!今日はありがとうございます!それと実は、撮影時間を少々間違えていましてっ!なるべく早くスタジオに着かないといけないんです!先方には少し遅れるかもと伝えてはあるんですが、急いでいただけると助かります!」

「はい、わかりました」

「では失礼します!」

 

プロデューサーは要点だけを伝えると、また颯爽と慌ただしく本館の中へと消えていった

なんだか慌ただしい人だ

話していた時間が10秒もなかった気がする

 

「なんか忙しい人だなぁ、じゃあお兄さんお願いね。ぼくね、こういう車初めてなんだ~。だからね、上手くエスコートしてくれたら嬉しいなぁ。それn」

「ねーねーりあむちゃん」

「何?みりあちゃん」

「どーでもいいけどシートベルト締めた方がいいよ?」

「···なんで?」

 

みりあちゃんがそう言うと同時に、前に座っていた莉嘉ちゃんが天井に付いている手すりを掴む

自分もなんだかただならぬ気配を感じてシートベルトを締めて、同じように手すりを掴むのだった

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

現場の駐車場に着き、俺はメーターに貼り付けられている付箋を剥がす

乗せているメンバー、場所、時間、時間に関しては若干の変更があったが、それよりも全然早く着いたので良しとしよう

低く響くマフラーの音と振動を感じながらシートに体を完全に預けて、体の力を抜くように息を吐き出しながらシートベルトを外した

 

「ちょっ、りあむサン···!''それ''は本当に待ってください。今降りますから、待って待って待って」

 

バックミラーを見ると、途中から一言も話さなくなったピンク髪のねーちゃんが隣に座っているマスクをした女の子の方に強引に詰めよっていた

そして後ろのドアが勢いよく開かれるのと同時にそのマスクの女の子が外に降りると、それに続いて雪崩のようにピンク髪のねーちゃんが外に飛び出して駐車場の脇にある排水溝へと駆けていき、地面に四つん這いになる

 

「零次さんありがとっ!」

「ん?ああ、仕事頑張れよ」

「今日はあんまりブンブンしなかったんだね、珍しいレイ君」

「まぁ、あの子たちは新人だっていうし、あんまりは、な」

「おうえぇぇぇぇ!!う···うおぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

助手席に座っている莉嘉越しに窓からねーちゃんの様子を見ると、排水溝にぴったり口がつくかつかないかまで前屈みになり、思う存分思いの丈を吐き出していた

さっきのマスクの女の子がその後ろから背中を擦っている

ふむ、あの姿を見ていると初期の美嘉姉ちゃんを思い出す

っていうか、あのマスクの女の子は全くなんでもなさそうな様子だ

なかなかやるな

 

「ねぇ、レイ君。今日はもう帰るの?それともまた346プロに行くの?」

「わからん。呼ばれたら来るだろうし、今のところは自分とこに帰る予定」

「なんだー、もしかしたら新しいアイドルの人たちに会えるかもしれなかったのに」

「···まて、まだいるのか」

 

どれだけ増えたんだ新人は

変なやつがいないことを祈るだけだが

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